「トレーナー君正気かい?」
面と向かって堂々と失礼な事をいうウマ娘がいる。俺の担当、アグネスタキオンだ。
「正気だよ。今日は外でトレーニングするぞ」
「今日の天気は雪なのにかい?」
ここでも4年ぶりとなる雪の日。これはトレーニングしないわけにはいかない。
「そうだ。むしろ雪のバ場を想定して練習ができるだろ?」
「でも、今日は非常に寒いけども?」
「大丈夫、走ったらあったかくなるから」
「嫌だね!今日はここから動かない!」
「じゃ、雪だるま作ってくる」
「ええ!?私を説得しないのかい?」
「いや、それより雪で遊びたい!じゃ、そういうことで」
子供のようにはしゃぎながら外に出る。フッフッフ、どうせタキオンのことだ、一人でいるのもつまらなくなって外に来るぞ……
……ざっと30分経った。まだ出てくる気配はない。
雪だるまが2つできてしまった。これじゃあ大の大人がただ雪遊びしているだけになる。
「タキオ−ン、一緒に雪合戦しようよ−?」
「いやだね。今日はこの部屋に居るって決めたからね」
声で拗ねているのが分かる。……タキオンもまだまだだな。今彼女は、そっぽを向いてこちらを見ていない。よし。少量の雪を手に持って、タキオンの背後に近づく。
「そんな事言わずに!っと」
手の雪を背中に入れる。
「ひやぁ!?」
面白い声が聞けた。コレはいい。
「トーレーナー君ー?」
低いトーンで呼ばれる。おっと、怒らせてしまったようだ。
「あばよ、とっつぁん」
ル◯ン三世さながらの逃げ足で逃げる。まあ相手はウマ娘なのですぐに捕まるだろう。
外に出て、また雪を拾う。走りながら手元で固めて、振り向きながら投げる。
「遅いね」
サッっと避けられてしまう。そっか、ウマ娘だから動体視力も瞬発力も人間の比じゃないのか。
「悪かったって……ちょ、無言で雪玉投げるのやめっ……ちょ、一方的に投げるのヤメて!」
そしてウマ娘の身体能力を使って、マシンガン並みに雪玉が連射される。
「ふう……」
「はあ……」
お互い動き疲れて、その場に寝っ転がる。
「ほら……寒くないでしょ?」
「……そうだけども、トレーナー君……」
もう、これトレーニングってことで良いかな。
「よし、一回トレーナー室にもどるぞ」
「なんでだい?」
「そりゃこのままじゃ風邪を引くだろ?だから、『秘密兵器』を作ってきた」
「秘密兵器?」
紙コップに、魔法瓶に入れてきたコーンスープを注ぐ。
「やっぱね、冬は暖かいスープに限るよ。はい」
タキオンに注いだ紙コップを渡す。
「ありがとう……トレーナー君」
魔法瓶の方をくいっと飲む。
「……っかあー!体に染みるぅー」
「……もっとマシな飲み方をしてくれないかねえ?」
とは、言われてもアラサーの基本の飲み方だからな。
タキオンもスープに口をつける。
「……!おいしい!」
「そうだろそうだろ。体も暖まっただろ?」
「……まあ、そうだね」
はあ、今日はなぜかトレーナー君に振り回されてしまったよ。いつもは逆なのだがな……彼も雪でテンションが上っていたのかもしれない。ま、こういうのもたまには悪くないかもしれないね。
……あと、コーンスープは美味しかった。