「トレーナーさん、少し良いですか?」
「おう?どうかした?」
廊下でグラスワンダーに呼び止められる。
「実は、その私と一緒に『日本っぽい』写真を撮って欲しいのですが……」
「日本っぽい?」
「実は、年末なのでお母さんとお父さん宛てに年賀状を送ろうと思うのですが、親から『どうせなら日本っぽい写真にして』と言われたので……」
「なるほど」
日本っぽい、か。ぱっと思いついたのは富士山とかお寺とかだけど、富士山はここから全然遠い場所にあるし、お寺は写真としては不向きだよなあ。
「……『東京タワー』とか?」
「東京タワーですか?」
思わず口に出していた。でも東京タワーもありかもしれない。スカイツリーができた今でも、日本、というか東京の象徴として君臨しているし、ここから行ける距離でもある。
「じゃあ放課後に行ってみる?」
「ええ、問題ありません」
「じゃ、決まりだね」
放課後になり、グラスと合流する。現地集合にしても良かったのだが、俺が迷子になることを心配しているのか、一緒に行こうと、グラスは譲らなかった。
電車を乗り継いでから、少し歩くと、大きな紅い鉄塔が姿を表す。ちょうど、夕方の時間であることも相まって、紅い色の東京タワーが映える。
「わあ……大きいですね」
グラスが見上げながらつぶやく
「もしかして、東京タワーに来るのは初めて?」
「そうですね」
「そっか、実は俺もなんだよね」
東京タワーって登る機会が少ない気がする。(気のせいかもしれないが)
「じゃあ、このへんで撮る?」
「解りました。じゃあ少し私に近づいてください」
「? こうかい?」
よくわからないがグラスの方へ、一歩分近寄る。
「そうです。ありがとうございます」
グラスは、スマホを取り出して、自撮りの形にして、俺と東京タワーを画面の枠の中に入れる。
「じゃあ撮りますね。3……2……1……」
パシャ、とスマホのシャッター音がする。
「……大丈夫そうです。ありがとうございました」
「いいよいいよ。ついでに東京タワー、登っちゃうか?」
「良いんですか?」
「まあ、ここまで来て登らないのも変でしょ?」
「たしかに……そうですね」
平日の夕方でも結構な人が展望フロアにいた。中にはカップルもいる。こうやって並んでいると俺たちも……いやナイナイ。グラスにとんでもなく失礼な妄想だったな。
「そういやグラス、東京タワーって、現代では作ることができないロストテクノロジーだって知ってる?」
「そうなんですか?」
少し目を輝かせてこちらに振り向く。彼女の性格か、「ロストテクノロジー」というのに興味があるようだ。
「そう。命綱とかない状態で職人が手作業でコレを積み上げたんだ」
「すごいですね……でも、どうしてそこまでして東京タワーを作ろうとしたのでしょうか?作業員の人にも危険が伴っていたのですよね?」
「そうだな……これは俺の予想だが、『見上げて』欲しかったんじゃないかな」
「……見上げる?」
「東京タワーを作ることになった当時の日本は、戦後で何もなかった。国民は貧しく苦しい生活を強いられていた。でも、それでも日本は復活するという、戦後からの復興の象徴として、この紅い鉄塔が建てられたんじゃないかな」
「……そうなんですね」
グラスが少し悲しい顔をする。
「俺は、グラスもこの東京タワーのように、皆を元気づけるような存在になって欲しいと思っている」
「どういうことですか?」
「東京タワーって今でも昔でも、日本人の支えになっている。君もそのように人々の心の支えとなるような存在になってほしいんだ」
「なるほど…………確かにそうですね……」
「だろ?」
グラスへ
年賀状、見ました。
トレーナーさんと仲良く頑張っているようで良かったです。あと、年賀状に書いてあったことも読みました。貴方も目指す像が見つかったようで良かったです。
トレーニング頑張って!
ところで、
When will Mr.trainer meet us?(トレーナーさんはいつ私達の所へ挨拶しに来るのですか?)