「トレーナーさんや」
冬も本格化した12月、トレーナー室でナイスネイチャに話しかけられる。
「どうしたよ、ネイチャさん」
「私がいつも行っている商店街で、こんなのがあるんだけど」
ピラっと一枚のチラシを渡される。
「クリスマス祭、かあ……」
赤いサンタがニッコニコでこちらを見ている。
「その、もし予定が空いてるのだったら一緒に行きたいなー、なんて」
「いいよ、俺はクリスマスでも暇な方の人類だから」
「ホント!?ありがとう!」
「あ。トレーナーさんーこっち、こっち」
「ごめん、待たせちゃった?」
「ううん、いま来た所……って言わせる気かーい」
「ああたしかに、今のセリフは悪かったな」
「(いや、別に言ってほしくないわけでは無いんだけど……その彼女みたいだし)」
「なんて?」
「ううん、なんでもない」
「スタンプラリーだって、やってみようよ?」
「いいねえ」
「あ、八百屋のおじさん」
「おっ、ネイチャちゃん、久しぶり。スタンプラリーかい?」
「はいそうです」
ネイチャがそう言うと八百屋のおじさんははんこを取り出して一個目に押した。
「じゃあはい……これで一個目だな。そうだ!コレ持って行ってよ。日頃の感謝」
「え?こんなに?いいんですか?」
レジ袋から溢れんばかりの野菜や果物が入っている。
「もちろんだよ、いつも来てくれてありがとうね」
「こちらこそ、こんなに凄いのありがとうございます」
今度は肉屋に向かう。
「こんにちは」
「おお、ネイチャちゃんだ。見た感じスタンプラリーかな?はい、これ」
ここでもスタンプを押して貰う。
「ありがとうございます」
「ああ、母さんーネイチャちゃん来たー」
少し大きい声で肉屋のおじさんが言う。
「ホントかいー?」
「ほんとほんと」
「あ、ネイチャちゃん。こんにちは。よく来たわね」
「こんにちは」
「どうせならコレ持ってって」
「これって……」
ここではクーラーボックスいっぱいのお肉を渡される。
「余った肉だよ。日頃の感謝、ありがとうね」
こういった感じで、スタンプラリーの行く先々でナイスネイチャは何かしらを貰っていた。
魚屋さんでは、季節の魚を。アクセサリーショップでは赤色のピアスを、鍵屋さんではハート型のキーホルダーを、本屋さんでは結婚雑誌を、金物屋さんでは、特製の指輪を、時計屋さんではペアルックの時計をもらっていた。そういや服屋さんでは明らかに男ものの服を貰ってたな。「トレーナーさんにあげてやって」という会話が聞こえた気がするが多分気のせいだろう。
「いやあ、なんか凄い量になっちゃった……」
「それだけ商店街の人気者だってことだね」
「そっか……」
ネイチャが少しだけ悲しそうな顔をする。まだその応援に応えられている気がしないんだろうな。俺もネイチャがG1取れるように頑張らないとな。
「これからあの人たちの応援に応えられるようにしような」
「うん……」
しばらく歩いたところで、ネイチャが立ち止まる。どうしたんだろう?
「……トレーナーさん……その、この花束受け取ってください」
いきなりそんなことを言われた。確か花屋さんで貰ったやつだ。
「いいの?ネイチャにくれたものでしょ?」
「トレーナーさんに受け取ってほしいんです」
「そうか……わかった。ありがとう」
ポインセチアの花束と、3本の白いバラを受け取る。
「あれ、この白いバラって貰ってた?」
「いや、それは私が」
「ほう……ちなみに俺、あんまり花には詳しく無いんだけど」
「はい?」
「これはそういう『メッセージ』ってこと?」
ポインセチアはクリスマスみたいな意味があったけど、3本の白いバラは「愛しています」じゃなかったっけ?まあ偶然だろうけど。
「!……さ、さあ〜ネイチャさんには分からないなあ〜」
まだ、私は言葉に出す勇気はない。でもいつかは言いたいし、言わなければならない気がする。
トレーナーさん、待ってて。もう少しで私が、
ちゃんと言葉で言えるようにするから。
「そうだ、この貰った食べ物で鍋作らない?」
「え?いいの?ネイチャが貰ったものじゃないの?」
「いや、流石にこの量は食べ切れないから」
「そっか、じゃあいただこうかな。……ネイチャさんは料理上手いから期待しているよ」
「ほほう、ならば腕を振るわなければなりませんなあ」
そう言いながら段々と商店街を離れていく二人を見送る人々がいる。
商店街の人たちだ。彼らはネイチャとトレーナーを一緒にここに呼ぶためにイベントを行い、ネイチャに上げたものはすべて彼女たちの関係を進展させるものだ。そもそも商店街の人達で『ネイチャとそのトレーナーをくっつける会』なるものができている。
「いやー、流石に結婚雑誌はやりすぎでしょ」
と、金物屋の店主が言う。
「指輪も大概だがな」
本屋の店主が答える。
「そうよ」
服屋が言う。
「服屋はだまっとれ」(ちなみに相手に服を送るのは好意を伝える意味がある。[サトノクラウンシナリオ参考])
「魚、肉、野菜。これでネイチャちゃんは料理の腕を発揮できる」
肉屋の奥さんがいう。
「時計のメッセージ伝わったかな……?」
時計屋が言う。
「どういうメッセージなん?」
「『同じ時間をともにしたい』って」
「はは、そりゃいいな」
「……しっかし」
「「「「「さっさとくっつかねえかな、あの二人」」」」」
多分周りの人間は全員思っている。