にんじん2本(ウマ娘短編集)   作:のるどすとりーむ

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32本め「逃走中に食うラーメンは美味い」ウマ娘:ファインモーション

「ハァ……ハァ……」

 息を切らしながら、路地裏の室外機に座り込む。路地裏は日が入ってこないためか、昨日の雨が少し残っていて、ジメジメとしている。

「あのー……大丈夫?」

 眼の前のウマ娘に心配される。

 なんでこんな事になったのか、酸素の足りない脳を使って思い出す。

─────

「嫌です!」

「しかし……」

いつもの通り、家の近くを散歩していると、黒色のスーツに身をに纏った人達(ウマ娘もいる)の人だかりと、その真ん中に、お嬢様?というべき気品を持ったウマ娘が居る。その娘は黒服に腕を掴まれているが、嫌なようで、ずっと振り回している。

 この時俺は何を思ったのか、声をかけた。

「あのー……?」

「はい?どちら様ですか?」

「いや、その、この状況って撮影とかじゃないですよね?その娘嫌がっているので、離したほうが良いんじゃないですか?」

「ああ、お構いなく」

 黒服は平然とした態度をとる。こうなったら奥の手を使うか。

「いや、でもおかしいですよね?警察に通報します」

「え?それはやめてください!」

 急に態度を変えてきた。

「1,1,0と……」

 手元に打ち込む。

「こら、やめろ!」

「なんてな!」

 俺がスマホのように持っていたのはさっき近くで貰ったポケットティッシュだ。それを黒服に投げつけてから、 一瞬怯んだ黒服たちの隙を突いて、真ん中にいた気品のあるウマ娘を腕を取って少し強引に連れ出す。

 

─────

 で、今の状況と言うわけだ。

「え?本当に大丈夫?」

 逃げる過程で全力疾走をした。そしてあり得ないくらい息が切れている。

「ああ……うん……大丈夫……」

 連れ出したウマ娘が心配してくる。そういえば、名前を知らないな。

「ありがとうね。あの状況から助けてくれて」

「いやいや……別に」

 なんか凄い気まぐれに助けただけです。

「さて……これからどうしよう」

 ウマ娘がそうつぶやく。確かに。無計画に逃げたからなあ。

「今は外を歩き回るのは危ないし、俺の家に来ない?」

 この口は一体何を呟いているのだろうか。

「いいの?」

 まさかの乗り気だよ。……まあ確かに家なら見つかる心配も無いだろう。

─────

 徒歩5分くらいで俺の家についた。ちょっとしたアパートの2階だ。

 

「汚いかもしれないですけどどうぞー」

「おじゃましま〜す」

 

家の中は、もちろん来客を想定していなかったため散らかっている。特に参考書の類が大変な事になっている。

「もしかしてキミなにか勉強しているの?」

「ああ、トレーナーになるための勉強、をね」

「キミ、トレーナーになりたいの?」

 ウマ娘の声のトーンが上がる。もしかしてこの娘はレースに出たいのだろうか

「あ、うん」

「そっかあ……」

 何故かその娘はニヤニヤしている。怖いって。

「さて、どうしたものかな」

 時間はお昼時、というかお腹が減った。

「ねえ、お腹へってない?」

 一応ウマ娘の娘にも尋ねる。

「うーん。少し減ってる、かな?」

 やっぱり二人共お腹は減ってるんだな。

「わかった、なにか作るからそこで待ってて」

 こう豪語下のは良いが、冷蔵庫を見たら驚くほど食材が少なかった。

 

……しょうがねえインスタントラーメンだ。

 

 乾麺を丼に入れてお湯を注ぐ、そして3分待った後に、

 残っていたネギと焼き豚でそれっぽい見た目のラーメンにする。

 

「わあ!ラーメン?

「そう、インスタントだけどね」

「いただきまーす!」

 

 彼女はあっという間にラーメンを平らげた。

 

 俺もラーメンを完食し、

「そういえば、なんであの黒服たちに囲まれてたの?」

 

途端、彼女が固まる。

「……それ……聞いちゃう?」

「聞かないと不味い気がするんだけど」

 なんか雰囲気が変わった?

 

「実は……ソノ……私はアイルランドから来ていて」

「ほうほう」

「ちょうど今日がアイルランドに帰る日で」

「ほう?」

「その、周りの護衛さんたちが私を帰そうとして、私は駄々をこねていただけで」

「ほうほう……つまり」

 

「俺の助けはタダの無意味だったと」

「いや違うから!ラーメン食べたり、こうやってキミと会えたし私は満足したよ!」

「そっか……ん?」

 

「じゃあ、ありがとう。あとは一人で大丈夫だよ」

 

玄関から出ていった。

 

─────

「というよくわかんない昔話がある」

「……トレーナーはその人に見当つかないの?」

「うーんないね。あの時は受験で忙しかったし、会ったのも短い時間だったから顔とかも覚えてない。あ!でも声はファインにそっくりだったよ」

「……世の中には私と似た人がいるんだね」

「そうだね〜」

「……そういえば今日は久しぶりにラーメン、食べたいな」

「いいけど、どこの?」

 

「いや、今日は『インスタントラーメン』にしようかなって、焼き豚とネギを付けた、ラーメンかな」

 

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