にんじん2本(ウマ娘短編集)   作:のるどすとりーむ

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33本め「今更に初詣」ウマ娘:サトノダイヤモンド

「トレーナーさん、初詣にはもう行きましたか?」

「ああ、そういえば行ってないな。……年末年始の混雑が嫌で後回しにしてたな」

「奇遇ですね。私もまだ行ってなかったんですよ。……その。良ければ一緒に行きませんか?」

「いいね。じゃあ今度の日曜日とかに行こう」

「はい。分かりました」

 ─────

 という経緯でサトノダイヤモンドと初詣に行くことになった。

「しかし……まだ結構混んでるな」

 正月からもう一週間以上経っていたから、てっきり神社は空いているものだと思っていたが、結構人がいる。

「トレーナーさん、おお待たせしました」

「いや全然待ってな─────」

 サトノダイヤモンドの姿を見たことで言葉を失った。

 髪は後ろで束ねていて、少し大人びた印象を与える。そして緑色を基調とした振り袖が落ち着いた印象を与え、俺が彼女を中学生であると知らなければ、多分普通に何処かのモデルさんとか女優の方だと思っただろう。

「どうです?似合ってますか?」

 サトノダイヤモンドは少しはにかみながら言う。それが今度は、大人びた装いと良いギャップになって、俺の心の中のアグネスデジタルが尊死をしている。

「ああ……とても似合っているよ」

「それは良かったです……」

「じゃあ行こうか」

「はい」

 

神社の境内に入ると、屋台が出ていた。「焼きそば」とか「たこ焼き」とか、デカデカと文字が書かた、赤や黄色の屋台が道沿いに広がっている。

 

「まずは本殿でお参りするかな?」

「そうですね。たしか、ここの神社は仕事や学業、恋愛など幅広く参拝することができるらしいですよ」

「へえー」

 この神社はダイヤに選んでもらったから特に知らなかったけど、そういう場所なのか。

 

 

 本殿の、賽銭箱の前に立つ。5円玉を入れて、二礼二拍手一礼をする。もっと細かいルールがあった気がするが、そこまで詳しくないので一般的な作法をする。

 

「……お願いします」

 隣からつぶやく声が聞こえる。真剣に願っているのだろうな。

─────

「何をお願い事したの?」

「それは……秘密です。口に出すと叶わないこともあるらしいですからね」

「そっか……じゃあ俺も言わない」

─────

「おみくじ、引いてみませんか?」

「いいね。よし、今年の運勢を占ってみるか」

 

100円払って箱から一枚取り出す。

 

「さあ……何だ?」

 

【吉】

仕事:うまくいく。

学業:注意せよ。

待ち人:すぐ近くにいる。

恋愛:問題なし。なるようになる。

 

 良かった、「トレーナーとして」仕事運は問題なさそうだ。……しかし待ち人がすぐそこにいるのも気になるけど、一番は恋愛だな。そろそろ、「そういうこと」も考えないといけない年齢になってきたけど、「問題ない」とはいったいどういうことだろう?

 

「ダイヤはどうだった?」

「はい、大吉でした」

「それは良かった。俺は吉だよ」

「そうなんですか?少し見せてください」

「いいけど。ダイヤの方も見せてくれる?」

「もちろんです」

 

互いにおみくじを交換してみる

 

【大吉】

仕事:うまくいく。ただし健康に気をつけるべし

学業:問題なし。計画的に進めよ。

待ち人:すぐそこにいる。

恋愛:慎重にするが吉。

 

 ……偶然にも「待ち人」はすぐそこに居るようだ。それ以外は結構違っていたりする。

 仕事運の「健康」に気をつける、か。なんとなく大事そうな気がする。

 

「トレーナーさんも待ち人はすぐ近くにいるんですね」

「そうだね。……この年になってきて思うけど、やっぱりいい加減いい相手を見つけないとだよなあ……親も安心させたいし」

「そうなんですか?」

「うん。俺はトレーナーになるために恋愛とかしてこなかったからさ、結婚相手とか見つからなくて心配だって、何回も親が言ってくるんだよ」

「それは……大変ですね」

 なぜかサトノダイヤモンドは少し明るいトーンで言う。

 

「ま、あくまでもおみくじは指針みたいなものだとして、頼り切りになるんじゃなくて、自分でしっかり行動しなたほうが良いね」

「そうですね」

─────

「それで、この後はどうするの?」

「そうですね……この近くにウマ娘の銅像があるらしいです。なんでもレースの必勝祈願ができるらしいですよ」

「それは行ってみたいね」

─────

「ここか……」

 本殿から少しだけ離れているため人の姿は見られず、周りには俺とダイヤだけだ。そのウマ娘の銅像は、右手を差し出すようなポーズをしている。

「これに握手すると良いらしいですよ」

「なるほど」

 軽く銅像の手を握る。やはりと言うべきか、少しだけ冷たい。まあ銅像だから当たり前か。

 

「じゃ、ダイヤも」

 その場を譲った。

 

 ダイヤ握手している時に、銅像近くの立て札に目が行った。

 

「古代の名ウマ娘。一日で千里を駆けたという伝説がある。このウマ娘がそこまでの力を出せたのは、神様の使いだとも、愛する人がいたためだとも言われている」

 

 凄いウマ娘だったのだろう。……愛する人がいたため、か。もしかしたらトレーニングに応用できるかも?

 

「トレーナーさん終わりましたよ」

「お、そうか……ダイヤ、つかぬことを伺うが」

「はい?」

「君にい愛する人はいるのか?」

「はい!?」

 すごい困惑した顔をしている。

「ああ、ゴメン。このウマ娘は、どうやら愛する人のために走ったとかで、伝説になったそうだから、もしかしたらそういう力があるのかなって」

「そうですね……た、多少はあります」

 うつむきながらダイヤが答える。

「そうか、それは良かった」

 

「その、と、トレーナーさんにはいないのですか?」

「俺?俺はなあ……正直今はダイヤの相手をしていたいし」

「それって……?」

「君のトレーニングを最優先したいってことだけど?」

「そ、そうですか」

 今度はダイヤが少し苦い顔をしている。どういう心情なんだ、それ。

 

 

「まあいいです。今年もよろしくお願いします、トレーナーさん」

「こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします」

 

「「……」」

「「フフッ」」

 お互いにおかしく思えてしまい、笑う。

 

 今年も、安らかな年でありますように。

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