年も明けた一月上旬、トレーナー室にこたつを置いてみた。
「おお、こたつだ」
ナイスネイチャが驚きの表情をみせる。
「出そうと思ってたんだけど、すっかり忘れてね。もう春だけど出しておこうかと」
「いいね〜ネイチャさん、こたつでゴロゴロしてま〜す」
「どうぞ〜」
ナイスネイチャがこたつに入る。俺もこたつに入りたいから、反対側に座る。パソコンを開いて、作業をする。
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暫く作業をしていると、さわ……と足に何かが触れた感覚がした。まあ、多分ネイチャの足だろう。あたってしまったからには、少し足の場所を変えなければならない。少しだけ変な姿勢になるが、足を斜め横にして、正面を向いて座る。
「あ、そういえばみかんあるけど食べる?」
「いいの?」
「うん、こたつにみかんは作法ってものでしょ」
「確かに」
一旦こたつから離脱して、みかんを取ってくる。
「はい、どーぞ」
「はい、どーも」
そしてまたこたつに足を突っ込む。
今度は足を入れた時に、ネイチャの足と少しだけぶつかってしまった。
「あ、ごめん」
「ひへひへ(いえいえ)」
みかんを口に含みながら、ネイチャは言った。特に気にしてないようだ。
─────
それからまた5分後ぐらいに、今度はさっきよりもはっきりとした感じで、さわ……って触れた。ちょうど彼女が足を動かした先に俺の足があっただけだろう。
「あ、お茶持ってくるけど飲みます?」
「あー……じゃあ緑茶をお願い」
今度はナイスネイチャがこたつを離れた。
「はい、どーぞ」
「はい、どーも」
お茶を受け取る。あったかいこたつであったかいお茶は最高だ。
─────
作業に少し行き詰まったので、みかんを手に取る。生まれがみかんをよく食べるというところでもあるので、少々特殊なむき方をする。
「へーそうやって剥くんだ」
「ああ、俺の地元ではこうだったよ。手が汚れにくいからおすすめ」
「なるほど〜……試してみるか」
ネイチャもみかんを手に取る。
やり方は簡単、皮をむかずに皮ごと4等分に切り分ける。でそれの一欠を食べる時に皮を取って食べる。
剥くのに時間もかからない。
「美味い……」
「そういやこのみかんはどこで買ったんです?」
「俺の親がわざわざ送ってきたんだけど……明らかに一人で食べ切れる量じゃないからここに持ってきた」
「あー……確かにここだったらあっという間に消費できる……」
─────
暫く雑談した後、また各々のやることに戻った。ネイチャはスマホ、俺はパソコン。
キーボードの打鍵音だけが部屋の中に響く。
そしてまたまた、今度はしっかりとさわ……って触られる感覚があった。……まあ、たまたまだろう。
しかし、ここで突然、左足を挟まれた。抜け出すために俺は足をジタバタさせる。しかし、人がウマ娘に勝てないのと同じで、びくともしない。
「あのー……ネイチャさん?」
「はいー?」
「足離してくれません?」
「んー……?トレーナーさんの足が一番あったかいので却下」
「ええ……」
そんなに俺の足はあったかいだろうか?まあいい。これでも作業に支障は出ない。
─────
暫くしていると、今度は別の感じで、さわ……という感覚がした。これ以上こたつに足は存在しないことから、多分ネイチャの尻尾だろう。偶に触れたり、軽く巻き付いてくるが、それでもまだ本格的にはこない。
またここで侵入を赦した。俺が油断したその隙に、俺の両足を尻尾で縛った。
「ネイチャさん!?」
「……あ、あったかいので……」
声が震えている。これ絶対わざとだろ。
「あ、そ、ソウダー、多分トレーナーサンがチカクニイタホウがアッタカイナー」
すごい棒読みでネイチャさんが変なことを口走る。まさか、と思ったが既に手遅れだった。
縛られた足を引っ張られ、こたつに吸い込まれる。成人男性の出せる力の限りを尽くしたが、それでもこたつに吸い込まれる。
全身がこたつに入ったところで、グルンと、180度方向転換をする。
そしてこれまた尻尾を器用につかって、俺がネイチャの隣に出てくる。
「……」
「……」
ちょうどお互いに向き合う体勢になる。
「……」
「……ねえ」
「はい……」
「誰がこれ教えたの?」
「エイシンフラッシュさんです……」
やっぱりか、ここまでの計画性とこのあざとさ。やっぱりあの娘だったか、エイシンフラッシュのトレーナーさんも今同じ状況なのかな。
「うーん……今すぐここから脱出したいけど」
「けど?」
「あったかいのでヨシ」
俺は完全にこたつから出ることを諦めた。
「……」
やることもないのでネイチャの顔をずっと見ている。やっぱり可愛いよな。もうちょい自信もったって誰も止めないのに。
「……トレーナーさん……」
「はい?」
「顔、近くないですか?あと私の顔見過ぎじゃないですか?」
「だってやることないし。ネイチャの顔はずっと見てられるし」
「……」
しっかりと顔が赤くなっている。
「やっぱりあれだいつ見ても可愛い。なんかもうすごく凄いくらい可愛い」
「クッ……」
褒められ慣れていないのか、更に顔が赤くなる。
「全てのパーツに均衡がとれている。もしかして神様の生まれ変わりだったりします?」
「……私が悪かったです……だからやめて……」
「いやいや、こりゃ将来が楽しみだな、絶対枕詞に【可愛すぎる】ってつくから」
「もうやめて〜」
なぜかこたつでとれる暖かさよりもあったかくなった。なんなら少し暑いくらいだった。