「へー、今日から年賀状の特別扱いが始まるんだー」
「そうよ」
俺は、担当ウマ娘のキングヘイローとトレーナー室で談笑している。
「年賀状かあ、送る人も送られる人もいないから縁がないんだよなあ」
「……貴方自分で言ってて悲しくないの?」
「ないね」
謎に自信満々で答える。そんなものは5年前くらいに捨てたぜ。
「そう…………あ!良いこと思いついたわ!トレーナー、貴方にこのキングに年賀状を出す権利をあげるわ!」
「ほう」
「ついでに私もトレーナーに年賀状書くわ!」
「ほう」
「……なによ、さっきから変な顔して」
失礼だな。俺は温かい目をしていただけだ。俺は知っている。キングが予め年賀状とペンを持ってきていること、それを背中に隠していること。
最初から「一緒に年賀状書こう」と素直に言えないのがキングの可愛いところなんだよなあ。まあそんな事口に出して言ったら、膝蹴りが飛んでくるだろうけど。
「別に?よし、そうとなれば早速書こう!年賀状もってる?」
「もちろん!一流は用意周到なのよ!」
オーホッホッホと高笑いしながらキングは答える。気分が良いと、高笑いも元気なるなあ。
「さすが一流」
というわけで、お互いに宛てて年賀状を書く。
来年は、辰年?だっけ。じゃあ龍の絵でも書いておくかな。ちょっと昔に水墨画教室に通っていたのがここで役に立つとは。
「謹賀新年 あけましておめでとうございます」とペンで書く。こんなもんでいいでしょ。
「キング、書き終わった?」
「ちょっ、見ないで!」
結局送るんだから見ても問題ない気がしたが、彼女なりのこだわりがあるんだろうと思い、見るのを諦めた。
「……これで、よし。私も書き終わったわ。すぐそこのポストへ出しに行きましょう」
「おーけー」
校門前にポストがあったので、そこだろう。
「うう、寒っ」
外に出ると、冬の冷たい空気が肌を突き刺す。
少し速く歩いてポストの前に行く。
「ここね」
2枚分の年賀状を入れる。
ガコン、とポストの蓋が閉まる。
「今年も、いろいろあったな」
何故か感慨深くなる。
「そうね」
「たくさんトレーニングして、たくさんレースに出て、たくさん、たくさん、思い出を作ったな」
「そうね……」
「来年もよろしくね」
「こっちの方こそ、キングが一流であるために支えてね」
「フッ、もちろんだよ」
「今鼻で笑ったでしょ!?」
「笑ってないです」
「いーや、笑ったわ!」
「笑ってない」
「笑った」
「笑ってない」
「「……」」
「「フフッ」」
お互い見合って、笑ってしまった。
来年も、こんな感じの良い年でありますように。