「布団乾燥機?」
「そう、貴方も使ってみたら?よかったら私の貸すわよ?」
「いいの?」
「まあ……私の面倒見たりで疲れているだろうし、寝るときぐらい快適にしてほしいわ」
「……いやー?俺は別にアヤベと一緒にいたいから居るだけで疲れることは無いぞ?」
「っ…………と、とにかくそれ、使ってみて」
「わかった」
─────
ということで、布団にセットしてみた。さっき軽く手を入れてみたが、結構あったかくなっている。これはいいな。
俺一人しかいない部屋に布団乾燥機の音が響く。
そういえば、ぜんぜん睡眠とか食事とかって気を遣ってなかったな。
口うるさく言われる前に生活習慣を見直さないと。……もしかしてもう手遅れ、とか無いよな?
30分ほどで乾燥が終わる。試しに布団の中に入るが今までと段違いで布団が暖かい。あとなんかすごいふわふわする。
これはいいな。と思いながら眠りについた。
─────
「どうだった?」
「あ、布団乾燥機?すごくよかったよ」
「それは良かったわ……ところで貴方は枕とか、布団はちゃんとしたものを買っているのかしら?」
「……買ってないな……全部安物だ」
「それは駄目。いい?睡眠は一流のアスリートであるなら気にしているの。つまりそれくらい日中でのパフォーマンスに影響するわ……今度一緒に寝具を選びましょう」
「……わかった」
なぜかすごい睡眠のことをきにしてくれる。一体何があったのだろうか?まあいいや。
─────
「これとかどうかしら?」
「いいね」
今俺はアヤベと一緒に寝具のお店に来ている。
なぜかアヤベさんは、凄いふわふわの布団とか枕をセレクトしてくる。それは貴方の趣味では……?
でも実際今の布団よりは断然マシだ。今高い布団を体験したからわかる。家にあるのはあれ布団じゃない。あれは畳だ。布団じゃない。
─────
「これで大体は揃ったかしら?」
「そうだね。ありがとう。ここまで付き合ってくれて」
「いや……別に……たまたま時間が空いていただけよ」
「そうか」
目をそらしながらアヤベは言う。これが俗に言うツンデレと言うやつですか?
─────
家に帰って買ったものを確認する。枕に布団、枕カバー、など……色々ある。この短期間で凄い睡眠の質が上がりそう。
『そういえば布団乾燥機は貴方にあげるわ。もう少し睡眠に気を遣ってほしいから』
アヤベさんからメッセージが届く。そんなに良くしてもらうとこっちが少し申し訳なく感じる。今度アヤベさんお気に入りのパン屋さんで、パンをたくさん買ってあげようかな。
─────
「アロマ?」
「そう実は結構いいの。寝る時に落ち着いた気持ちになれるから。これ、試してみて」
オレンジの香りのアロマスプレーをもらう。
「もしかしていつもコレ使ってるの?」
「ええ、結構良いのよ」
「わかった、試してみるよ」
─────
アロマスプレーを軽く噴射する。布団周りにオレンジのいい香りが鼻腔をくすぐる。
「おお……」
少し感動を覚えた。
─────
「風水?」
「そう、寝るときも大事にしたほうがいいらしいの。ちょうどさっきコパノリッキーさんから教わって……」
「ちょっと待ってくれ……」
「?」
「ここ最近凄い俺の睡眠を気遣ってくれるけどなにかあったの?」
「……嘘でしょ?」
アヤベさんが至極驚いた顔をみせる。俺何かしたかな?
「……先週くらいに、貴方凄いクマができた状態で私のトレーニング見ようとしたのよ、その時に、どれくらい寝てるのか訊いたらあなた、3時間って……」
「あ……」
言った覚えがある。あの時は疲れがピークで思わず本当の時間を言ってしまったのだった。
「私は、あの時本当に貴方が死ぬんじゃないかって思ったわ……私はもう……二度と大切な人を失いたくないの」
少し涙目になりながらこちらを見る。そういうことか……俺は思わず大変な心配を彼女にかけていたらしい。これは反省しないとな。
「ごめん。これからはちゃんと健康な生活を送るよ」
「そうしてくれると有り難いわ……ところでさっきの風水なんだけど、部屋の家具の置き方にもよるらしいから、今日家に帰ったら部屋の写真を送ってくれない?」
「わかった」
─────
家に帰って写真を送る。
すぐにメッセージが届いた。
『あなた、いつの間に私の部屋の写真を撮ったの?正直気持ち悪いわよ?』
「いや、これ俺の部屋なんだけど……?」
『あ、ごめんなさい。よく見たらところどころ違うわ。どうやら寝具が私の使っているものと一緒のようで』
そのメッセージが送られた後に
『このメッセージは削除されました』と表示される。
ちょっと待て。アヤベさんと寝具が一緒?そういえばあのお店も、アヤベさんよく行ってるらしいし、アロマとか、布団乾燥機は彼女から貰ったし……
合点がいった。
『アヤベさんのトレーナーさん、カレンチャンです。なぜかアヤベさんがずっと布団の中で悶えているんですけど何があったんですか?』
今度はアヤベさんの同室─────カレンチャンからメッセージが届く。
『今すごく顔を赤くしながら「これは……たまたまだから……」とかブツブツ言ってます』
俺はそれでなんとなく察した。