「おい、少しだけ……私の昔話をしていいか?」
「えーと、いいけど」
シリウスシンボリが唐突に話し始めた。一体何なのだろうか?昔話?
「まあ、私がここに来る前の話だ」
─────
私は昔から自分でも分かるほど、気性が荒かった。まあ、今もだけどな。でもあの頃は今の比じゃねえ。レースに出れそうにない可能性だってあった。だけど、いきなり出てきたアイツが見事変えてみせた。
「ハハハ、君は元気だね」
「うっせー」
そいつは別にシンボリ家の関係者ではなかった。私が少しだけいたちびっこレースクラブのトレーナーだ。
「まあ、とりあえず私が君を最高のウマ娘にして見せるから」
不思議な奴だと思った。大体は私の名前を聞けば媚びへつらうか、逃げ出すのに、アイツは飄々としていた。
「は?……じゃあこの私を問題なくゲートを出れるようにしてみせろ」
「わかった」
それから練習の日々が続いた。アイツはあの頃の私の性格を把握して、私がやる気になるようにもしていた。
「チッ、やっぱり無理だ」
「そんなことはない。ま、このままだったらできないかもしれないけどね」
「は?おい、どういうことだ?」
「いや、だって私がもう一人持っているウマ娘なら、もうゲートは完璧だよ。それに比べて君は……」
オーバーなリアクションで落ち込むふりをした。
「あ?そんなわけねえだろ。もう一回、やるぞ」
「そうこなくっちゃ!」
それでもやっぱり自分の気性が荒いことがずっと邪魔をしていた。
それを相談したときもあったな。
「はあ……やっぱり私のこの性格じゃ、無理があるかもな……」
「……そんなことはない。君は絶対にゲートを出れるようになる。私が絶対してみせる」
「でもよ……」
「大丈夫」
「っ……」
初めてだったな、あんなの。優しい目でありながらもどこか強い闘志とでも言うべき強い感情がある。初めて私は気圧されたな。
「ほら、もう一回、もう一回!」
「チッ……」
そして、アイツの教え甲斐あってか、とうとうゲートを上手く出れるようになった。それにはだいぶ時間がかかったはずだ。アイツも、こんなの見捨てればよかったのにとは思ったが、それをする気もなかったのだろうな。
「凄い!やったじゃん!」
「お前のおかげ。私は何も……」
「何言ってんの?君が私についてきてくれたから、上手くできるようになったんだよ?」
「……そうか」
その後、まもなく私はシンボリ家に戻された。アイツら、私が気性難を治すことができないからあの場所に預けたのにゲート一つ出れるようになっただけで、このザマだ。……愚痴はここまでにする。最後にアイツと会ったんだがな、
「じゃあね。私は君のレース、全部追いかけるようにするから。その時また会おう」
と言っていた。……まあ昔のことだ。アイツも忘れているかもしれないが、でも私は……
─────
「私は居る方に賭けたい。……トレーナー、アイツに活躍の舞台を見せたい。できるよな?」
なるほど、そういうことか、
「もちろん、任せて」
─────
『さあ、今年のクラシック、ダービーの冠を手にするの一体誰なのでしょうか!今年は一体どんなレースになるのか、どんな夢を見せてくれるのか、まもなく出走です!』
実況の声高らかに響く、東京レース場。数万の観客がレースの成り行きを見る。
「じゃ、言ってくる」
「頑張って」
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『日本ダービーを制したのは!シリウスシンボリ!!東京レース場に一番星が輝きました!』
相手のウマ娘を3バ身も離した圧勝だった。
「ほら、どうだ!見てるか!」
観客に向けて握りこぶしを掲げる。その言葉の意味はあのトレーナーに向けて言っているのかもしれない。
「!」
突如としてシリウスシンボリが観客席の方へ駆け出す。もしかして……
最前列のとある人の眼の前で立ち止まる。
「よお、久しぶり。元気にしてたか?」
「……もちろんだよ。君も元気そうで」
どうやら、彼がシリウスシンボリの師だろう。たしかに彼女の話していた人物のように、温和だけれど、どこか鋭いものがある気がする。
「まあ、コレだけじゃないからな。見ておけ」
不敵な笑みを浮かべた後にこう、高らかと言う。
「これからが私の伝説だからな」
最近ツイッターで話題のあの人を参考に書いてみました。