ケース1「サトノダイヤモンドの場合」
「トレーナーさん、本当ですか?」
昼休み。いきなりサトノダイヤモンドが俺のところを訪ねてきた。
「ああ、どうやら海外のトレセンに配属されることになりそうだ」
「……誰が」
「はい?」
「……誰がそんなことを考えたのですか?」
「おそらくURAの上層部じゃないかな。ほら君が活躍したから、俺の評価が上がって、みたいな感じ?」
実際そうだと思う。凱旋門賞を連覇するとは自分でも想像できなかったもん。
「納得できません!」
「でもしょうがないことだよ。……まあ偶にはこっちにも顔を出すからさ」
確かに、ダイヤと離れるのは淋しいが、コレも俺が成長するための大事な機会であると考えよう。
「トレーナーさん、だめです。これからも私と一緒にいなければなりません」
あ、あれ?ダイヤってここまでワガママだったっけ?
「でもね……」
「大丈夫です。サトノ家の力を使えば余裕です」
「で、でもそれは良いことなのか?」
「大丈夫です。貴方もいずれサトノになるのですから」
なんか雲行きが怪しくなってきたぞ?
「へ?」
「さ、早く手続きをしましょう。大丈夫です。お互いの両親にはこちらから既に話はつけています」
「あれ?」
段々と俺とダイヤの距離が近くなってくる。ダイヤさん?
「さあ、早く」
耳元でこう囁かれる。
「私と一緒になりましょう?」
ケース2「キタサンブラックの場合」
「トレーナーさん」
「どうした?」
トレーナー室で
「トレセン、辞めちゃうんですか?」
「ああ、その話か。……まあ、多分そういう事になるだろうね」
「嫌です。トレーナーさんがいなくなっちゃったら、あたし……」
そっと頭を撫でる。
「大丈夫。君はとても強い娘だ。大丈夫だから。俺がいなくても君はうまくやれる」
「でも、でも……」
「なに、これで二度と会えなくなるわけでは無いんだから大丈夫」
「え?……じゃあ次はいつ来てくれるんですか?」
「うーんまだ具体的に決まっていないからなんとも言えないけれど、夏くらいにはかえってくるかな」
「本当ですか?じゃ、それまでこれ、つけていてくれますか?」
何やら指輪?のようなものを渡される。
「ありがとう。これどこにつければ良いの?」
「それは薬指につけてください。私のものだっていう証明ですから」
「え?」
ケース3「アドマイヤベガの場合」
「そう……貴方海外に行くのね」
「ああ、そうだ」
「まあ、良いんじゃないかしら?貴方の実績がちゃんと評価されているのは私としても嬉しいわ」
「ありがとう」
「ただ……」
「ただ?」
「ただ、貴方はその事に満足しているの?私はそこが少し気になるわ」
「え……?それは、どうだろう。でも少なくとも世界を見ることができるのは嬉しい、かな?」
「そう」
少しだけアヤベさんからの視線が冷たくなる。
「あのー……アヤベさん?もしかして怒ってる?」
「怒ってないわ……」
「怒ってるよね?」
「怒ってない」
「……どうしたら機嫌を直してくれる?」
「……それくらい自分の胸に手を当てて考えて」
「ええ……」
「……」
アヤベさんはただ無言でこちらを見ている。本当に心当たりが無い。
「……?……」
「……はあ。……こんなことが分からないなら、他の所へ行ったら上手くいかないわよ」
「……そうなのか……?」
「そうよ、まだ私と一緒にいなさい」
「……わかった」
・???の場合
「懇願!どうかトレセン学園を離れないでくれ!」
理事長が凄い頭を下げてくる。
「すいません」
「哀願!君がいなくなると上層部とかファンとかメディアが黙ってないんだ!たのむ〜!私を助けると思って!」
凄い必死さが伝わってくる。まあしょうがない、
「いやあ……」
「私からもお願いです」
「たづなさん!?」
いつの間に?……それにたづなさんも俺がここを離れてほしくないのか……
「せめて、あと1年はここにいてもらうことはできませんか?」
たづなさんが折衷案を出してくる。
「……そうですか、分かりました。一度考え直してみます」
「ありがとうございます」
「感謝!心からお礼する!」
二人から感謝されたけど、別に考え直すだけだしなあ。
その夜、俺は自室で考えていた。やっぱり断ろうかな。
「トレーナーさん、ごめんなさい」
いきなりそんな声がしたと思ったら、なにやら布袋のようなものを被せられる。無理やり体を起こされて、そのまま何処かへ連れられる。
「どこだ?ここ」
一面コンクリートの部屋に閉じ込められる。
『申し訳ありません。トレーナーさん』
眼の前のテレビにたづなさんの姿が映し出される。
「えっと……これってどういう状況ですか?解放してもらえませんか?」
『それは難しいですね。そもそも、貴方が悪いんですよ?』
「はい?」
『私の気持ちをあれだけ惑わせておきながら、勝手に海外に行こうとするなんて』
「……」
あきらからにたづなさんの様子がおかしい。
「ですから、少し『教育』し直そうと思います」
テレビからの音声ではない、背後からの声だ。
「大丈夫です。ちょっとだけ長い時間、私と共に愛し合ってもらうだけですから」