にんじん2本(ウマ娘短編集)   作:のるどすとりーむ

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36本め「目覚まし時計の秘密」ウマ娘?:駿川たづな

 嫌な夢を見た。担当がレースで惨敗する夢だ。ただの夢なら良いのだが、その夢はやけにリアリティを持っている。偶然かどうかわからないが、これからやろうと考えていたトレーニングが原因で彼女は負けていたのだ。そう、トレーニングによる怪我で。

「トレーニング変更するかなあ……」

 夢に影響された、といえばそういうことになるが、それ以前に少し彼女に無理をさせ過ぎた気がしていたのも事実。だから今一度トレーニングを見直すことにした。

─────

「おはようございます。トレーナーさん」

「おはようございます。たづなさん」

 校門の前にいたたづなさんと挨拶をする。 

「……トレーナーさん、よく寝れていますか?クマが凄いですよ?」

 たづなさんが、目元を指さしながら言う。

「あー……ちょっと最近寝付けが悪くて、あんまりしっかり休めていないんですよね」

「それは大変ですね……今度おすすめのアロマとかお貸ししましょうか?」

「いいんですか?ありがとうございます」

 

─────

 そういえばよく眠れなくなったのは、あの目覚まし時計を買ってからだな。

 前まで使っていたやつが壊れて、学園の購買で買ったんだけど、あれから担当がレースで大敗したり、怪我をしたりする夢を見るようになった。そしてその夢をよく思い出すと、その日にやろうとしていたトレーニングが原因だったりした。そういう未来もあるのかもしれないと、予知夢だと思ってそういう夢を見た日はトレーニングを変えていた。今日も、そうしようかな

─────

「トレーナーさん、おはようございます」

「おう、おはよう。早速なんだけど、今日はこのトレーニングを変更しようかなって」

「……このトレーニングですか?今日のコンディションであれば問題なくできそうな気がしますけど?」

「そう?……」

どうしたものか、俺もこのトレーニングを変える理由は「夢に出た」からなんだよなあ。

「じゃあ、変えないでやっちゃうか」

「わかりました。じゃあ準備してきますね」

「ありがとう」

─────

 俺も彼女を追いかけるようにトレーニング場に向かう。

 

その途中の道で、人影を見つけた。倉庫から何かを取り出しているらしい。

 

「うん……しょっと」

 見覚えのある緑の制服─────たづなさんだ。何かが入ったダンボールを5個くらい抱えている。……5個?

 

「……たづなさん?」

「ひやあっ!?」

 声をかけたら、たづなさんは俺の声に驚いたの変な声を上げながらか高く跳ね上がる。それと同時に運んでいたダンボールがバランスを崩してたづなさんの元に落ちてくる。

 

「あ、あ危ない!」

 急いで駆け込み、たづなさんを庇うようにする。その3秒後、大きなバットで叩かれたような衝撃が何回かに渡り背中に伝わる。

 

「いてて……すいません、たづなさん。お怪我してないですか?」

「トレーナーさん?……こちらこそすいません。油断していました」

 視線を崩れたダンボールのほうにやる。ダンボール自体は特に形も崩れていない。俺の背中がクッションになったのだろうか。

「あの……トレーナーさん、そろそろ離してほしいのですが……」

 たづなさんが申し訳無さそうに、俺に言う。今の俺の体勢はたづなさんに覆いかぶさるように抱きついている。たづなさんを守ろうとしたことに夢中で全く気づいていなかった。

「すすすいません!」

 いそいで離れる。危ない、真面目にセクハラで訴えられてもおかしくない。

「いえ、むしろありがとうございます」

 

「いや、俺が声をかけてなければ、そもそも起きなかったことですので」

 倒したのも俺、守ったのも俺、とんでもないマッチポンプだ。

 

「それでも守ってくださったのは有り難いですよ?」

「そうですか…………ちなみに何を運んでいたのですか?」

「ああ、それはですね……」

たづなさんがダンボールの中身を見せてくれる。

「時計……?」

 見覚えのある時計だ。ちょうど俺が購買で買ったやつと同じもの。

「購買の商品の補充をしようと思いまして……」

「なるほど……ところでこの時計ってどこで作られているんですか?調べてもメーカーが出てこなくて」

 夢に悩まされた時、まさかと思って時計を調べようとしたのだが、全くヒットしなかった。

「ああ……それは、少し秘密のある目覚まし時計ですので」

「秘密、ですか?」

「はい、その時計が生まれた経緯を話しますと……『むかしむかし、全戦全勝のすごいウマ娘がいました。そのウマ娘は、とあるレースのあと怪我で引退をしてしまいます。実はその怪我は本来はできるはずのなかったものでした』」

「本来は……?」

「はい、急遽特訓をしようと焦って、怪我をしてしまったのです。『そして、その後そのウマ娘は自分と同じような運命をたどるウマ娘がいなくなるように、という願いを込めて、この目覚まし時計を作りました』……この目覚まし時計は、そういう思いが込められているんです」

「なるほど……いい時計ですね」

「そうでした……この時計を使っていると、トレーニングに失敗したり、レースで負けたりする夢を見るって言ってましたよね?……この時計、実は『失敗する前の過去に遡れる』という都市伝説があるので、もしかしたらその夢は未来に見るはずだった光景かもしれないですね」

 たづなさんが最後に怖いことを言う。

「あ、トレーナーさん、ここにいたんですか?早く行きましょう!」

 担当ウマ娘が迎えに来てくれた。そうだった。これからトレーニングをするんだった。

「たづなさん、では失礼します」

「はい、ではトレーニングお気をつけてください」

「はい!」

 その場を離れた。

─────

 トレーニング頑張ってくださいじゃなくて、トレーニングお気をつけてくださいと、さっきたづなさんが言ってたよな?もしかして……

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