「いやあ、なんかお邪魔して申し訳ありません」
顔が赤くなるほど飲んで少し気分が高揚しているライトハローさんがそう言う。
「大丈夫ですよ」
ことの経緯はこうだ。まず仕事終わりに飲みに誘われる。そこで俺はグランドライブのときにお世話になったから、手料理を振る舞いたいと言い出す。で、今は俺の部屋で宅飲みしている。
なぜ部屋に誘ったか、単純に俺が料理に自信があるのと、人混みが苦手なので居酒屋はあまり好きじゃないからだ。
「これ、サーモンのなめろうと、とん平焼きです」
「ありがとうございますー!」
美味しそうに食べならが飲むライトハローさんを見る。これは誘った甲斐があるな。
……しかし、普段酒を飲まないから酔いが回るのが早い。少し眠くなってきたな。
ソファに腰をかける。少しずつ意識が睡魔に支配されていく。
─────
ピピピッというスマホのアラームが鳴っている。それで目が覚めた。部屋が多少散らかっている。缶ビールとか、おつまみの袋とか。あとライトハローさんも寝っ転がっている。
……ん?ライトハローさん?
そういえばあの後ライトハローさんを帰した記憶が無い。どうやら二人共そのまま寝落ちして朝を迎えたようだ。
「ライトハローさん、起きてください……」
多少頭が痛い。二日酔いか……
「うぅ……って今何時!?」
突然ライトハローさんが立ち上がる。
「ってトレーナーさん!?あれ!?ここどこ!?」
「ここ……俺の部屋です」
「ええ!?もしかして私トレーナーさんの部屋で……」
少しづつライトハローさんの顔が赤くなる。
「そういうことになりますね」
「す、すすいません!」
「いえいえ、それより急いでここを出ましょう」
「そうですね……」
─────
バタバタと急いで片付けをして、ライトハローさんを見送る。
「ホント、すいませんでした……」
「いえ、こちらこそ気付けなくてすいませんでした」
「じゃあ、学園で!」
「はい、では!」
ライトハローさんに恩返しをしようとしたら、まさかドタバタすることになるなんて……また今度埋め合わせを考えないとな。
ライトハローさんがドアを開ける。そこから冬の冷たい空気が入って、俺の肌を撫でる。
パタン、とドアがゆっくりと閉じられる。
「……俺も準備しないと」
あくまでも今日は平日、俺もやることをやらないといけない。
そう思い玄関から離れようとした瞬間、
ピンポーンと、チャイムが鳴る。
もしかして忘れ物したのかと思いドアを開ける。
「ライトハローさん、忘れ物でもしたのですか?─────ってキタサン?」
ドアの前にいたのは、ライトハローさんでは無く俺の担当、キタサンブラックだった。
「おはようございます。トレーナーさん。……なんで今ライトハローさんの名前を言ったんですか?」
顔はニコニコしているが、どことなく怖い雰囲気を感じる。むしろニコニコしているのが怖さを引き立てている。
「えー?あー、それは……」
「取り敢えず失礼しますね」
少し強引にキタサンが部屋に入る。
「さっきライトハローさんとすれ違ったんですけど、仄かにお酒の匂いしたんですよ、トレーナーさんからするお酒の匂いと似ていますね。あと、この部屋も、ライトハローさんがよく使う香水の匂いがします……一体何があったのか、教えて頂けますか?」
俺に対する目線が怖い。あと名推理がすぎる。怖いって。
「えーと、その、まず昨日俺とライトハローさんは俺の部屋で宅飲みをしました」
「はい」
「で、お互いに寝落ちしちゃって、気づいたら朝で……」
「なるほど、つまり……『何も』起きていないんですね?」
「まあ、そうです……」
ここで言う「何も」はつまりそういうことだろう。確かにそういうことがあったらキタサンも嫌だよな。もう少し自分の管理をしっかりしないといけないな。
「それは良かったです……ところでトレーナーさん」
「はい?」
「ライトハローさんと、私のこと、それぞれどういう存在だと思っていますか?」
突然にして、凄い質問が飛んできた。……もしかしてキタサンは俺がライトハローさんと宅飲みしたことを嫉妬してるのか?
「えーと、ライトハローさんは同僚で、グランドライブでお世話になったし、キタサンのことは大切な生徒だって思ってるよ」
模範解答をだす。
「なるほど……それ、本当にそう思っていますか?他に気持ちは無いんですか?」
「な、無いです」
ちょっとずつキタサンが俺に近づく。俺は一歩ずつ下がるが、壁にたどり着いてしまう。
「私のこと、本当になんとも思っていないんですか?どうなんですか?答えてください」
キタサンが手を壁につける。今俺は壁ドンをされている状態だ。改めてキタサンの顔を見るととんでもない美少女だ。
「……」
キタサンは壁にやっていた手を、俺の首の後ろに持っていく。更にキタサンが近づいてくる。俺の胸にキタサンは自分の体を預ける。何がとは言わないが、キタサンのがしっかり押し付けられる。
「……それはだって君はまだ未成年だし……」
キタサンは俺の耳元に顔を近づける。そして俺に囁く。
「関係ありません……お酒を飲みすぎて頭が回らないですよね?さ、私に全てを任せてください」
「後悔のないようにはしますので」