にんじん2本(ウマ娘短編集)   作:のるどすとりーむ

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エキストラ本め「トレーナーが昔ひどい目に遭っていたらウマ娘は何を思うのか」ウマ娘:ジャングルポケット・トウカイテイオー

─────ジャングルポケットの場合

「おう、邪魔するぜ」

「こんにちは」

 ずかずかとトレーナー室にジャングルポケットが入ってくる。

「……何だそれ」

 俺がちょうど背中の古傷に湿布を貼っていたところを見られた。

「これ?これは……まあ、昔にちょっといろいろあってね……」

「『ちょっと』?これのどこがちょっとなんだよ?明らかに何回も打撲……」

 いつもとは違って、ジャングルポケットは少し怯えて怖がるような表情をみせる。

「親がね…………今はもう死んじゃったけど」

 みなまで言わなくても分かるが、俺は親からあまりいい扱いを受けていなかった。

「……お前は辛くないのか?」

「辛いっちゃ辛いかもしれないけど……それでも世界に一人しかいない親だからね、恨むようなことはないよ」

 その言葉を聞いて、ポッケは驚いたとも、怒っているとも、取れるような表情をする。でもすぐに顔をうつむかせてこう言った。

「…………悪ぃ。こういうことは聞かないほうがいいよな」

「ううん。大丈夫。それに、謝るべきは俺の方だよ。……実を言うと、最初出会ったときの君が、どうも昔の俺に似ていてね」

「……それは、どういう」

「なんというか、周りから見れば、何処まで行っても手のつけられない問題児で、そして当の本人だれも自分をわかってくれない。みたいな感じだった。……俺が家庭に事情があって、周りから冷たい目で見られていた時に、間違え自分の心を閉ざしていた時に、近いなって思っちゃって……」

「……」

 少しポッケが目線を下にする。どこか思うところがあるのかもしれない。

「でも、今は全然そうじゃないと思っている。君はとても優しくて、いい娘だよ。だから……これも、いつか言おうと思っていたんだけど、君は、俺みたいな大人の近くに居るべきでは無いんじゃないかな」

「……はぁ?それって……おい、それってどういう意味だよ!!」

突如として俺の眼の前に顔を寄せるポッケ。

「そのままの意味だ」

「ふざけんな!!!オレがここまでこれたのは紛れもないお前のおかげだ!今更になってそうそう簡単に手放せるかよ」

「でも」

「でもじゃねえ!……わかった。じゃあオレが証明してやる。お前がオレに必要な存在だってこと。オレがレースに勝って、オレにはお前がふさわしいことを証明してやるよ」

 突如として彼女の雰囲気が変わった。

 

「……それで、良いんだろ?」

 ポッケの目から涙が溢れる。

 

 どうやら俺はまた、間違えてしまったようだ。

 

─────トウカイテイオーの場合

「トレーナー!今日もトレーニングよろしくね!」

「もちろん。じゃあ先に用意してまっているから」

「はーい!」

 ボクのトレーナーはスゴい。このトウカイテイオー様のトレーニングをしっかりと考えてくれるし、ちゃんとボクへの気遣いもできている。

 ピロン、と通知音が鳴った。てっきりボクのスマホかなと思ったらどうやらトレーナーのスマホみたい。……もしかしてトレーナーの彼女とか?いや、ないない。だってトレーナーはボクに夢中だもんねー。

 ……でもやっぱり気になってきちゃうな……少しくらいなら見ても……

「妹  今月の分の金よこせよクソ兄貴」

 ……なにこれ?どういうこと?トレーナーの妹さんが、トレーナーに金をたかってるの?どうして?

  再び通知が来る。

「妹  てめえのせいでどれだけ私が生活に困っていると思ってんだ」

 ……本当にどういうこと?

「あ、やばい今月の分送るの忘れてた……ってあれ?」

 トレーナーが部屋に戻ってきていた。

 

「もしかして……みちゃった?」

「……うん」

「そっかー……このことは他の人には内緒でお願いね?」

「……トレーナーはどうしてこんな事してるの?」

「え?……それはね……昔、俺が家族と海でバーベキューしに行った時に、俺が溺れて……で、それをみて助けようとした両親が一緒に溺れて……俺だけが生き残って、妹と俺だけになってしまったからだね」

「それで、どうしてトレーナーの妹はトレーナーにお金を要求しているの?」

「それはね、妹には昔夢があってね、美容師になることだったんだけど、両親が亡くなって、お金が無くて、妹はその夢を諦めたの。で、俺がそもそも溺れなければ妹は夢を追えたし、ということで俺が毎月妹に金を渡している。昔じゃ無理だったけど、でも今はそういうことができるからね」

「……ぇ」

 トウカイテイオーは驚いた表情をみせる。でもその驚きには少し自分に対する怒りもあるようだ。

「ボクになにかできることは無いの?」

「残念だけどないよ。でもありがとう。俺はそのテイオーの気持ちが嬉しいよ。……それにこれは他の誰でもない、俺が悪いんだよ」

「そんなことはないよ!トレーナーの親はトレーナーがそう思ってほしくて助けたの?」

「……」

「おかしいよ、こんなこと……」

 テイオーの顔が涙やら鼻水やらでぐしゃぐしゃになる。

「なんでテイオーがそんなに泣くの?」

「だって……だって……」

 まあ、何となく分かる。自分ではどうすることもできないと、自分の無力さに嘆く。嘆き悲しんだって状況は変わらないのに。

 

 俺もそうだったな……

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