にんじん2本(ウマ娘短編集)   作:のるどすとりーむ

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42本め(最終話)「三女神からの招待」

 気づいたら何も無い空間にいた。本当に何もない。自分の身体さえも。

「ようこそお越し下さいました、トレーナーさん」

 なにか霧のようなもので周囲が包まれているため、声がした方には誰かの人影があることしか分からない。頭の上にウマ耳があるから、多分ウマ娘だろう。

「……ここはどこなんですか?」

 一番気になっている質問をする。夢の中なのかな?

「そうですね、少し説明が難しいですが、簡単に言えば【天国】です」

 丁寧な口調でとんでもないことを告げられる。

「えっ、俺死んだんですか?」

 すごく動揺する。

「いえ、一時的にこちらに呼ばせてもらっただけです。わたしたちの用事が終われば無事に帰しますよ」

「よかった……」

 安心した。まだ現世ではやり残したことがある。たくさん

 

「さて、呼ばせてもらったのは他でもねえ、お前がトレーナーとしてしっかりと仕事しているか調査しにきた」

 今度は別の方から声がする。やっぱり誰だが分からない。最初の人よりも少し語気が強い。

 

「まずはコレを見ろ」

 いきなり頭の中に映像を流し込まれる。……これは今日の昼くらいの出来事だな

『トレーナーさんのバカ!もう知らない!』

『あ!待って!……』

 そうだ、今日はトレーニングについて担当と揉めたんだった。それで、担当がトレーナー室を飛び出していって……

 

「……なんでこの時追いかけなかったのか、説明してもらえるか?」

 いきなり質問される。

「え?それは、だってウマ娘ですよ?俺が走って追いつける訳がない」

 当たり前だろう、と思いながら回答する。ウマ娘に追いつける人間は多分桐生院トレーナーが確率あるくらいじゃないか?

「……それ本気で言ってるの?」

 怒っている?のか声のトーンが少し低くなる。

「ええ、まあ」

でも当然のことなので、特に動揺したりはしない。

それを聞くや否や、2つの影は近づいて、何やらコソコソ話している。

「(どうする?このトレーナー女心をわかってないぞ)」

「(そういうもんですよ、でもどうします?ここで真実を伝えるとアレですしね……)」

「(ここは私に任せてくれ)」

 

「ゴホン……私が聞きたいのは、理論的に追いつかないことじゃないくて、なぜそこで諦めてしまったのか聞きたい」

 

「……そうですね」

 言われてみると確かにそうだな……

「もしかして、君は彼女との関係を間違って解釈しているのかもしれないな」

「はい……?」

「トレーナー、君はおそらくウマ娘はトレーナーをサポートしてくれる人としか思っていないと考えているんじゃないか?実際走るのはウマ娘だし、トレーナーは対して重要じゃないと」

「そうですね、確かにそう思います」

「そこが違うんだよ」

「そうなんですか?」

 てっきりトレーナーとウマ娘の関係ってそういうもんだとおもっていた。

「うん。ウマ娘にとって、トレーナーとは唯一自分と一緒に歩んでくれる人だ。ウマ娘のレースは孤独な勝負になる。でも、トレーナーという心の支えがあるから、折れずに大きな成果を出すことにつながるというのもあるんだよ」

「……なるほど」

 そういう考え方だったのか……そういう考えなら、あの時担当がなぜなのようにしたのか大体説明がつく。次会ったら謝らないとな……

「(これで大丈夫そうだ)」

「(そうですね)」

 

「おい、二人共何をしている?」

「「あ」」

 三人目の影が出てくる。今度は2人目の人よりも語気が強い。なんというか軍人?みたいなイメージがある。

「えーっと……暇潰し?かな?」

「……わざわざ下界のトレーナーを連れてまですることか?」

「アハハ……すいません」

「トレーナー、ここに呼び寄せて申し訳ない。どうやらこの二人の駄女神が君を暇潰しのために呼んだようだ……すまない」

「いえ、大丈夫ですよ」

「そう言ってくれると助かる。今元に戻すからな……」

 

─────

段々と意識が覚醒してくる。自分の体の重さに気づく。カーテンの隙間から少しの光が漏れている。どうやら朝のようだ。

「しかし……変な夢だな……」

 三人の、女神?みたいな人が夢に出てきたなあ……あ!そうだこうしてはいられない。早く担当に謝りにいかないと。

─────

 

急いで朝の支度をして、部屋を飛び出す。

 

駆け足でトレーナー室に向かい、ドアを開ける。

 

「すいません!トレーナーさん、私が悪かったです!」

「ゴメン!昨日は俺が悪かった!」

 

 トレーナー室に入ると、何故か鏡に向かって謝っている担当がいた。

 

「もしかして……?」

「その、か、鏡で謝る練習をしていたんですけど……」

「…………ホンット、すいません」

 自分という空気が読めない存在が本当に殴りたい。

「いえ、こっちの方こそ」

 

─────

「何やかんやで解決したね」

「多分だがコレ私達がいなくても解決したぞ」

「まあまあ、そう仰らずにー」

 

『今日のトレーニングはどうする?』

『そうですね……トレーナーさんが決めてください』

『いいの?』

『もちろんです』

『分かった……じゃあスピードの練習をしようかな』

『わかりました』

 

「うんうん、これでよし!」

「関係が正常になったようだな」

「そうですね〜」

 

 

 




【お知らせ】
この度、誠に勝手ながら「にんじん2本」の連載を終了させていただきます。短い間でしたがご愛顧いただきありがとうございました。

連載終了となりますが、「にんじん2本」の更新を停止し、別のシリーズで短編を連載しようということにしています。なのでウマ娘の短編がこれ以上見れなくなるわけではありません。
また、連載終了の経緯としましては、
・作品管理を見直したい
・短編自体の長さを調節したい
など、現行のシリーズではどうしても連載しながら上記の修正をすることが厳しいと感じたためです。

また、この作品は削除等は行わない予定ですのでいつでも見ることは可能です。

それではこれにて「にんじん2本」の連載を終了とさせていただきます。
ありがとうございました!
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