この度俺は、VTuberになりません。   作:初見さん

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台本ストライク

「いぇーい、進級!!」

 

「相変わらず騒がしいなお前は…」

 

不良の全力投球の叫びをサラッと流し、悪態をつく主将。何だかんだで仲は良いようだ。進級した事によりクラス替えというイベントが発生する。

今までの俺ならば別に気にする程の事でもなかっただろうが、今は違う…気がする。自分でもよく分からないが、不思議と緊張してて、表情が強張っているっぽいんだよな。

 

「お前はお前ですげー顔…」

 

「あぁ?」

 

不良が苦笑いしながら俺の顔を見てきたので、主将に手鏡を貸してもらい自分の顔を見てみる。目の隈が以前より悪化しているな…あと単純に目つきが悪い。視線だけで人殺せそうとか言われる奴だこれ。

取り合えず『お前みたいな奴でも手鏡なんて持ってるんだな』とかいう不良の人の心のない発言にブチギレた主将が、変わらず斬ろうとしている…のは放っておいて、目つきと髪で出来た影くらいは整えておこう。モブとして扱われる分には丁度いいが、近寄りがたい雰囲気を出したい訳でもない。

 

「おーい、クラス替えの結果貰ってきたッスよー」

 

「ぬん(同意)」

 

長身が主将と不良に、隣人が俺に、それぞれパンフレットを渡してきた。どれどれとパンフレットを開くと、俺の名前はC組に書いてあった。そしてクラスメイトの名前を見るに…見るに…

 

「悪いが、俺お前らの名前知らないから何組か言ってくれないか?」

 

「えぇ…」

 

不良がやれやれとパンフレットを開くと、それに追随して他の人たちもパンフレットを開き始めた。名前を探している間、俺は学校の中央に生えている桜の木を見ていたとかそんなロマンチックなことする訳なく、終始スマホしか見ていなかった。まあうちの学校の桜の木が綺麗なのは確かだが、そんなわざわざ感傷に浸る程でもない気がする。

そんな事言ったら校長先生に助走つけて殴られそうなので絶対に言わないが。

 

「あ、俺C組だわ」

 

「ほう、奇遇だな。私もだ」

 

「ぬ、ぬ(同上)」

 

「こんな事ってある?」

 

不良、主将、隣人は俺と同じクラスらしい。かなり都合のいい展開な気がするが、こういうのは素直に受け入れておくに限る。因みに長身はF組だった。あっちには長身の多分友達のギャルがいるので迂闊に近づけないな…

 

「残念ッスね…あーしもC組行きたかったッス」

 

「でも今までの二年間は私達別クラスだったし、それはそれこれはこれで結構いいクラス替えなんじゃないかな?」

 

「ん-、ま、そッスねー」

 

噂をすれば…長身はまだいいにして、ギャルか…俺はギャルというかノリの軽い女子は基本苦手なんだよな…フットワークが軽いと外出も多くなるし、出来るだけカロリーを消費したくない俺とは対比のような人種だ。

口調がギャルらしくないのはさておき、苦手な奴は適当に挨拶済ませるだけで終わらせた方がいいだろう…

 

「…ども」

 

「あ、どうも。えっと、噂はかねがね…えーっと、名前…あれ?」

 

「思い出せなくて当然ッスよ。こいつの名前はあーしも知らないッス」

 

「それって友達として大丈夫なの…? あ、ごめんね。私は……」

 

思わず耳を塞いだ。

出会って数分で自己紹介とか陽キャの思考だ。というか全く恥じらいがないのが怖い。自己紹介が当たり前とか、色んな意味で俺とは別次元の存在だろ。

 

「嫌われてるのかなあ…?」

 

「いや、陰キャ特有の拒絶反応ッスね。つーか、あーしもこいつに自分の名前教えてないッスし。出会って二秒であだ名つけられたんで」

 

「へっ!? 二秒であだ名…!? すごいね! どんなの?」

 

「長身」

 

「あだ名…?」

 

許せ名も知らぬギャル…俺のネーミングセンスではこれが限界なんだ。

記憶中枢が多分ぶっ壊れてるので、漢字二文字じゃないとどうも覚えづらい。むしろ鉄パイプやゼビさん、鶏冠井さんなんかはあだ名ですらないのにどうして忘れないのか逆に不思議なくらいだ。

 

「じゃああっちのヤンキー君は?」

 

「不良」

 

「あそこの竹刀持ってる子は?」

 

「主将」

 

「じゃ、じゃあ私はなんて付けられると思う…?」

 

「いやそれは知らないッスよ」

 

テンポいいなこのギャル。

長身のラフな性格と一見相容れないように見えるが、そこそこ仲のいい友達なのは見れば分かる。何故かは知らんが、どうやら本当に親友のようだ。

長い付き合いになるとは思えないが、前々から長身には懐かれていたしな。無邪気なのに図体がデカいからはしゃぐとそこそこ危険だし…そうだな、長身専用の緊急避難先の意味も込めて、今日からお前をこう呼んでやろう。

 

「ふむふむ……『保母って呼んでやる』…って言ってるッス」

 

「色々終わってないその名前!?」

 

いや、でもこれが一番しっくりくるからなあ。

 

ーー

 

そんな訳で、進級は割とすぐに終わった。今は帰宅中だ。

入学も卒業もしない中途半端な年はこういうあっさり終わる事が多いので、楽でいい。

因みにどうでもいい報告なのだが、隣人は今回も隣人になった。出席番号順に並ぶのだが、丁度左隣に来るのが隣人。どういう偶然だこれ。

 

「まあ、いいか…よろしく」

 

「うす」

 

ついでに他の人の席だが、黒板を上とすると不良は一番右上、主将は俺の二つ後ろ。そこそこ離れてるが、それだけだ。どうせ昼休みになったら全員でここに覆いかぶさってくるのだろう。

 

「ひでぇ言われよう…」

 

「だが事実だろう。私は否定しない」

 

「いやお前もだろ? いつも先に攻撃仕掛けてくるのはそっちだし、お前のレスバがクソ雑魚なだけじゃん」

 

「その喧嘩喜んで買わせてもらおう」

 

そしてまた始まった、本日二回目の異種格闘技。圧倒的フィジカルの不良も強いけど、やっぱり主将の安定感が異常なんだよな…ゲームと同じで、どのタイミングでガードすればいいのかを反射神経で読み取れている。それ自体はゲーマーなら誰でもとは言わないがある程度の人はできる。主将の戦闘力がバグってる理由は、偏にそれを一人称でやってのけているからだろう。

不良が腕を振り回せば、蹴りを出せば、必然的に視界は埋まる。その瞬間は何が飛んでくるかの予測が難しい。にも関わらず、主将は不良の死角からの攻撃を全ていなしている。

 

だからと言って不良が弱いとは一概に言い切れないが。一度だけ不良が主将のガードを破って下段蹴りを決めた事があったのだが、その時主将はふわっと浮かされて地面に倒れこんだ。要するにバランスを崩したんだろう。だが、人の足を蹴って転ばせるという手は相手が油断している時のみ有効な手段で、正面から戦っている時に発動する技ではない。ましてや反射神経の鬼である主将を相手にしているのだから、なおさらだ。

しかし、不良は転ばせた。それはつまり、主将の踏ん張りを無視するレベルで強力な蹴り、恐らく彼女の体重を動かすに十分な重さの蹴りが炸裂し、主将がバランスを崩したという事だ。

 

「う、ぬ…(困惑)」

 

「俺も困惑してるよ…毎週この戦いを見る羽目になるが、未だについていけん」

 

まあ結論としては、両者ともにバグっているとしか言えない。その辺の不良なんて瞬殺できそうなレベルで鬼強いんだよな、こいつら。不良は前に組に狙われてるとか言われてたが、あまり友達の心配なんてしなくてもいいんじゃないか? というか、多分主将の方が不良より強いと思う。

 

「道路上で諍いすんな、轢かれてぇのか」

 

「「でもこいつが…!」」

 

仲いいなお前ら。ボロボロになった制服でお互いを指差しあう不良と主将。隣人がクスッと笑うのを見て、俺も何かジワジワき始めた。さっきまではバトルマンガみたいな目線で二人の戦いを見ていたのに、改めて見返すと子供同士の喧嘩みたいに思えてきてしまうな。

 

「ふ、ふふっ…」

 


 

「と、いう訳でして。だから多分今後は忙しくなると思います」

 

「すみません、今の話に忙しくなる要素が見当たらないのですが…というか、え? その、弟妹さんのお知り合い二人ってそんなに強いんですか?」

 

二次喜劇とのコラボの件でまた呼ばれたので、念を押しておこうと思い経緯を話した。しかし、相生さんは顔を青ざめさせながら聞いてきた。ここまで話しといてなんだが、俺に言われても分からん。正直二人はまだ全力を出してないようにも見えるしな…ただ何となく言える事となると…

 

「まあ不良は頑張ればコンクリート壊せるんじゃないですか?」

 

「それは流石に嘘でしょう!? 冗談はよし子ちゃんですよ弟妹さん!?」

 

相生さんは相変わらずだ…溜息を吐くと、隣でも溜息を吐いている人がいた。相生さんの死語に反応できる人はやはりこの会社にいるのか。俺が今まで出会った人達は全員無反応だったから、何だか親近感を…

 

「チッチッチ…Not good.」

 

「お前かよ!!」

 

畜生、似合わず叫んでしまった…何でワクセイが隣にいるんだよ、どう考えても配置がおかしいだろ…いや、隣にチ丸さんもいるし、真正面には韋駄天さんもいる。大丈夫だ、この会議…いける。

 

「なあ、腹減ったから出前頼んでいい?」

 

「駄目に決まってるでしょうが!!」

 

いけないかもしれない。

 

「大体、ワクセイはマイペースが過ぎるだろ。もっと会議に集中して…」

 

「待てよ、自分で作れば解決なのでは…!?」

 

「話聞けや」

 

俺の言葉も完全にシャットアウトしているようだ。ワクセイはもう自分の世界に入ったようで、完全に使い物にならなくなった。出鼻をくじかれたなと会議に目をやれば、何事もなかったかのように再開していた。最初から戦力として期待されていなかったようだ。…なんかそれはそれで可哀想な気がしなくもないな…

 

「で、ですね。惑さんを除いた全員に通達なのですが…」

 

「はい!」

 

「「おん」」

 

「…まさか私もか?」

 

相生さんに指名され、最初に韋駄天さんが元気な声を、俺と姉が揃ってハーモニーを奏で、チ丸さんが困惑したような表情をした。まあ今回のソシャゲコラボの件でまた何かあるのだろうが、取り合えずは耳を傾ける事にした。

 

「単刀直入に言わせてもらいます…ボイス録ってください」

 

「よし帰るぞ姉」

 

「決断早くない?」

 

だって帰らないと強制参加だろ。いや選択の自由は多少はあるけど、ぶっちゃけ社会的圧力に屈する未来しか見えないんだわ。今ここで伝えたから当たり前だが、それでも俺は言いたい事がある。だから、どんな状況だろうとこれだけは言わせてほしい。

しばくよ。

 


 

「そもそもこれ誰の声でもいいのでは…?」

 

ニュースで出るレベルの音声加工を加えているんだから、最早原形など分かるまい。適当にその辺のスタッフに代役を頼めないのか。会社中総当たりしたら一人か二人は面白がってノッてくれるだろ。楽な道に逃げてはいけないという、相生さんなりの仕事意識なのか?

 

「私も無理に録音させるのはいかがなものかと最初は反対したのですが…どうやら本人の声でないと一部のファンに一発で見抜かれるようで…」

 

「…俺のファン怖…」

 

耳が良いとかの領域を明らかにオーバーしてるだろ。そんな狂気に満ちたファンいらないよ、ワクセイにでも回しておけよ。…え? ワクセイの動画に出て一部のリスナーが俺の配信に手を出したから? 元々ワクセイのとこのかよ。納得したくないけど、何かできてしまった…

 

「えっと、じゃあ録音を…」

 

「今先輩が使っているので、そのあとですかね」

 

先輩というと、チ丸さんか。見るからにしっかり者な感じだし、恐らくそういうキャラ…というか、コラボとは言え俺たちは演じる訳ではないし、不自然なキャラ付けはかえってユーザーの不満を買う事になりそうだな…そういう点もしっかりするべきなのか…

えーとそれじゃあ俺の台詞を…

 

弟妹 台詞

『掴みの挨拶的な事(を漫才風に)』

 

思いっきり台本を床に叩きつけ、窓に向けて蹴り飛ばした。誰だこんな改悪加えた奴。製作会社は良いとして、監修は…ワクセイ。畜生、またワクセイか。何がしたいんだよお前。

 

「ワクセイ、台本をあらぬ方向に捻じ曲げたのお前だろ」

 

「まあちょっとした刺激があった方がユーザーも喜ぶし、多少はね?」

 

「俺が配信でこんな台詞発した事ねぇよ。刺激どころの話じゃないだろこれ、どこのパラレルワールドから引っ張り出してきた」

 

俺がそう言うと、ワクセイは頭をぶって舌を出してきた。俗にいう『てへぺろ』という奴だ。無性にムカついたので、今度同じような事やったら自分で頭ぶつ前に叩き潰そうと決意した。

 

「でもさ、この小説の読者だってお前がツッコむとこ楽しみにしてるかもしれないんだぜ? 私が積極的にボケに回ってやるから心配すんなって」

 

「マジでお前は何を言ってるんだ」

 

こいつにツッコめばツッコむだけ無駄な気がしてきた。もう諦めて…いや。それじゃあスケジュールを組んでくれた相生さんや皆をまとめてくれた韋駄天さん、そして先陣を突っ切ってくれたチ丸さんに申し訳が立たない。ここは逃げではなく、逆に立ち向かってみるのも一興なのではないか?

 

それに台詞だって、改悪された部分だけ無視して読めば、元に戻るかもしれない…やってみる価値は十分にある。俺はレコーディングスタジオに足を踏み入れ、台本を開いた。

 

『座布団三枚を掲げる』

 

『(デデーンという効果音と共に)姉貴、チ丸、アウトー』

 

『ここで会場大爆笑!』

 

「…………」

 

やっぱり台本は蹴り飛ばした。

 


 

538:名無しのライバーID:iQtWDKzWY

さて、どうする?

 

539:名無しのライバーID:QKmkImAeG

何をだ?

 

540:名無しのライバーID:lqWM0Xh1p

今回のガチャの話?

 

541:名無しのライバーID:ln4IyTjIF

二天井は確定な

 

542:名無しのライバーID:+/2xfdCA6

まあ常識だよね

 

543:名無しのライバーID:4ATxsMLxD

多分この期間逃したら二度と手に入らないだろうしな

 

544:名無しのライバーID:68mU16nDh

>>543

マジかよ三天井目もつぎ込むわ

 

545:名無しのライバーID:k2IAWLB9k

>>544 シタタッカー

 

546:名無しのライバーID:kOTFcKx88

限定募集

クリメモ勢は、その言葉に弱い

 

547:名無しのライバーID:JZUazrYf3

言ってる事絶妙にダサくて草www

 

548:名無しのライバーID:8i7w1hREb

草に草を生やすな

 

549:名無しのライバーID:1pmvl1pl1

いつにも増して流れるの激しいな

俺が言ってるのはクリメモじゃなくて大金欠ニキよ

 

550:名無しのライバーID:kTkpM9qBx

え、大金欠ニキどうかしたん?

 

551:名無しのライバーID:KlL4U0AcC

知らんのか?あの人V化したぞ

 

552:名無しのライバーID:7i6MFDu90

>>551 ファッ!?

 

553:名無しのライバーID:wZp1t3YkE

>>551

マジで言ってる?

 

554:大・金・欠ID:Gold/None

>>553

おうマジだぞ

 

555:名無しのライバーID:cSkKikrlP

>>554 大金欠ニキじゃないか!

 

556:名無しのライバーID:hY7PYtM+s

>>554

マジでV化したの!?

 

557:名無しのライバーID:X4aH9Z/xv

>>554 もうちょい質のいいマイク買え!

 

558:大・金・欠ID:Gold/None

>>557

金欠なんですっ!

 

559:名無しのライバーID:T1xXZjiSB

でも大金欠ニキどういうことするんや?

 

560:名無しのライバーID:khqUTHs+z

>>559 普通にゲーム実況

あとスマブラ

 

561:名無しのライバーID:KVI7gkSSe

因みに充電が切れるまではずっと配信するらしい

 

562:名無しのライバーID:A0JSBje5x

モバイルバッテリー買えって言ってんだろ

 

563:名無しのライバーID:eYTgN4QQ7

金欠なんだろうなぁ

 

564:大・金・欠ID:Gold/None

>>563

先に言われたッ!!

 

565:名無しのライバーID:EOa5zDShh

金欠アピールをアイデンティティにするなwwwww

 

566:名無しのライバーID:oJOS7UkeO

でも大金欠ニキのビジュ普通にかっこいいな

 

567:名無しのライバーID:c5ltU5og4

何で乞食モチーフの服装でここまでかっこよさ出せるんだよ

 

568:名無しのライバーID:a6NtfgSQf

イラストレーターは不思議な生き物だからね…

 

569:名無しのライバーID:qR+dZ944J

つか絵師しらぬいさんやん…神ビジュも納得

 

570:名無しのライバーID:T7U1PSUcr

そんな大物に頼んで金大丈夫だったのか?

 

571:名無しのライバーID:uJSkAZiMt

絶対金欠の理由それだろ

 

572:大・金・欠ID:Gold/None

>>571 そそそそそそそんなことないですけど??

 

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