この度俺は、VTuberになりません。 作:初見さん
「なあ、お前らゲームってするか?」
下校時刻となり皆で集まって下駄箱に向かう間、気になっていた事を聞いてみる。
すると、二人ともまるで信じられないものを見るかのような目で俺を見てきた。「正気か?」とでも言いたげなその目線は、少なくとも俺がちょっとイラッとくるくらいの威力はあった。俺がお前らの諍いを見てる間、ほとんど毎日思ってる事だぞ、それ。
「お前、もしかして記憶が…」
「この前一緒にスマブラやったばかりだろう」
「あ、そういう事か。言い方が悪かったな」
「え、待ってください。スマブラ一緒にやったんスか?」
俺が二人から指摘されたことを修正してもう一度言いたい事を伝えようとすると、それを遮るように今度は長身が会話に挟まってきた。なんかこのままだと本題に入れなさそうで本末転倒だが、このままじゃ埒があかないので仕方なく耳を傾ける。
「長身もやりたかったのか?」
「いや、そういう訳じゃないんスけど…まだ全然下手ッスし」
長身も割とテレビゲームの類はやるようだ。高校生だしそりゃそうか。とは言っても、俺や主将レベルとなるともう高校生の遊びとは言えなくなってくるが。不良も普通にオンラインで勝ち残れるくらいには強いし、この学校にスマブラ強者が集いすぎてるだけのような気もする。
「ぬっ!(興奮)」
「ん? 『自分もスマブラは結構やり込んでるから、今度やろう』? まあそれは構わんけど」
「お前読解力エグいな…」
「たった一字にそれだけの意味が…」
隣人と俺の会話にドン引きする不良と保母。
俺も元々はこいつの言っている事なんて一ミリも理解できていなかったが、春休みの間何回かやり取りしたのでそれで慣れた。そう難しい顔をする必要もなくなるし、むしろこちらの方が口数が少なくて自分に合っているとさえ思えてきた。
「こいつが『保母はどうなんだ?』って言ってるッス」
「ここにいる全員スマブラ経験者だからな、多分保母も…」
「いや、ゲームとかそういうのは何一つ…」
主将はほう、と疑問に思うような仕草をしながら続きを促した。俺も少し興味がある。ゲームをあまり知らない人は他にどんな娯楽を楽しんでいるのだろうか。
保母は知り合ってからまだあまり立っていないので、何かを言われてもあまりピンとこない気がするが…
「暇な日は動画配信を見てるよ、二次喜劇とか」
「めちゃくちゃピンときたわ」
下駄箱で靴を履き替え外に出ようとして、雨が降っている事に気づいた。見事なまでの土砂降りで、走れば無問題とかそんなあからさまなフラグを建てて笑っていられる雨量ではない。
「げっ、傘忘れた…」
「もう梅雨の時期か…早いものだな」
不良と主将も突然の降雨に、思わず呆気にとられている。俺も正直この時間に雨が降るとは予想してなかった。天気予報も今日は晴れだったし…いや、天気予報の言葉をバカ正直に信じるのもそれはそれで問題か…今度から折りたたみ傘くらいは常に携帯しておくようにしよう…
「傘あるんで、お先ッス〜」
「私のに入ってるだけじゃん…確かに持ってもらってるけどさ」
長身は本当に長身がすぎるからな、保母が持っていたらあまりの身長差に傘に頭が埋まって大惨事になるだろう。
しかし、傘…俺も不良も主将も隣人も持っていないとなると、もう保母と長身に頼るしか…しかし全員で入れる訳はないし…などと俺がブツブツ一人で色々と考えていると、不良が保母に近づいていく。
「頼む保母、俺達も入れてくれ」
「へ?」
「そこのコンビニまで行けば傘買えるから、そこまで……な?」
なるほど。
それくらいならあまり濡れなそうだな。傘があれば被害を最小限に減らす事ができそうだ。となるともう完全に保母頼りになるが…
「うーん…分かりました、協力します」
「おお、サンキュー!」
不良と保母の交渉が成立し二人が楽しそうに笑い合う中、唯一主将だけは不良に対してあまり面白くなさそうな目を向けていた。
何か気に食わない事でもあったのかは知らないが、主将の冷ややかな目線は少しゾクッとするので恐らく原因である不良にはさっさと謝ってもらいたいものだな。
「さて、準備はいいかな?」
「『ああ、悪いな』って言ってるッス」
「うす」
無理ゲー感が凄まじいが、これで果たして無事にコンビニまでたどり着けるのだろうか。いや、保母に無理を言ってまで作戦を始めた以上死んでもたどり着くしかないのだが。
「いやギュウギュウすぎんだろこれ!」
「絶対濡れるッスよこれ!」
「覚悟の上だ! 一気に走るぞ!」
「「「「「「いっせーの!!」」」」」」
「おかえり。ビッッショビショだね」
「………おう」
いやだって、まさか二歩目で車が飛ばした水たまりにダイブするとは思わないだろ。長身ですら頭頂部までずぶ濡れだったんだ、俺を含む一般身長の者が無傷でいられる道理などあるはずもない。そんなこんなあって、ウチに
「間違えて持たないよう、君には『オイラー』の名を与えよう」
「何と間違えんだよ、こんなにあるのに」
こんなにある、というのは父さんが「今日は大丈夫だろ」と傘を持っていかなかった日に限って、スコールと遜色ないレベルのえげつない土砂降りが地域一体に降り注ぐから毎度コンビニ傘を買うからだ。…そうだ、どうせならそれを逆利用して父さんが天気予報に利用するか。
100%当たるから父さん以外の全地域民が助かるぞ、やったね。
「うわマジで書いてるし…しかも油性かよ」
「え?でも他のも全部書いてあるよ?」
「マジかよ、どれどれ…『アイザック』、『ニコラ』、『ジョン』、『レオナルド』…何故全部学者なんだ」
「この風習の始祖は父さんだからなぁ、聞かないとわかんないや」
まさかの全ての元凶。何年前からやってんだよ、全然気づかなかったわ。いや、それ以前に買った傘全部に名前つけるとか物に対しての愛着度合いが凄過ぎるだろ。そのうち付喪神宿りそうだな。
あとたまに傘に肖像画書かれてるのは何?
「まあいいや。風呂浴びたらアタシの部屋来て」
「は? 何でだよ?」
今日は予定なんかあったか? 最近ないから油断していたがまさかVtuber関連の仕事じゃないだろうな…梅雨に入って五月病みたいになって来たこの時期に…いや五月病なのはいつもか。
とにかく、今回の配信はどんな無茶振りを
「今日はソシャゲコラボだよ」
「しばくよ」
・ライブ中 だ
32,548人が視聴中
笹峯ノイズ 52万人
ず え お・ライブ中 し ろ わ だ
32,548人が視聴中 い う へ ほ つ そ
笹峯ノイズ 52万人
「ごゆっくり! 二次喜劇一期生の韋駄天楓羅です。そして」
「うぇーい、笹峯ノイズだ」
「あじゃすぱーな! 私の名前は
「急に謎すぎる挨拶が飛び出て頭がバグりそうな弟妹です、どーも」
姉とスマホを片手に通話しながら挨拶とか、今世紀最大の謎行動だな。もっとも、次の世紀まで生きていられるかも分からんが。
というかこの配信、もしや番宣か? 登録者の多いワクセイや韋駄天さんにも配信をしてもらう事でVtuber勢を取り込むという、何ともベタで、そして一番効果的な手段だ。
コメント:いや別にこれ新しくないぞ
コメント:新規かエアプか?
コメント:確かGjkOuOt_Uss
コメント:あーその動画の挨拶か
コメント:おいここに動画をタイトルじゃなくてURLで把握してる化物いるぞ
コメント:そしてクリックするまでもなく文字列で内容を理解する化物もいる
コメント:普通の事では?
コメント:解読系は基本人権スキルやぞ
コメント:って三態兄が言ってた
アルバ・ルイス:何それ知らん…怖…
コメント:いるんかい
「開始早々コメ欄が荒れまくってるな、流石ネットのおもちゃ共」
「ブーメランの大きさが過去最大ですね」
「11割アンタのせいだよ」
「マイガッ」
まださわりなのでしばらく導入や前置きの雑談をしなければならない。資料は全員の手元にあるなので、出来る限りこれに沿って進めたいのだが…いくら俺がツッコミタイプでも、そして画像の操作は姉に任せるとしても、一人でそう何分もこの狂戦士の相手を出来る訳ではないんだ。
誰か助けて。
「今回コラボしたのは私と笹峯さん、それとチ丸さんですね」
「チ丸の代役として来る事になったのが私だ」
「本来コラボするのは星さんの予定だったんですけどね…」
なんでも、途中で乗り気じゃなくなったからと契約を破棄したらしい。
そんなバカげた理由でコラボキャラの座を降りたのもとんでもないが、チ丸を推薦したのも同じくワクセイというのがもっととんでもない。普段どういう物食べてたら自分がコラボしなくなる代わりに自作のキャラをコラボさせようって発想に至るの?
「防御系のサポートに優れる楓羅先輩、範囲攻撃に長けるのがアタシ、そんで単体アタッカー最強格がチ丸だな」
「程よく分かれてるのな」
コメント:はよガチャ画面行け
コメント:まままままあああああ焦んなって
コメント:一番焦ってるのお前定期
コメント:正直チ丸のアタッカー感は異常
コメント:刀とかいう最高に銃社会に似合わない武装好き
コメント:普通に銃弾切りそう
コメント:斬鉄剣かな?
何故かは知らないが、ワクセイよりもチ丸の話をしている方がリスナー達の盛り上がりはいい。なんというか…いい意味でも悪い意味でもよく知ってるんだろうな、ワクセイの事…
それはそうと、チ丸の立ち絵を初めて見たな。黒髪ポニーテールに陣羽織が似合う、和風な女性だ。何で帯刀してるのかは知らんし「木枯し紋○郎」よろしく口に葉っぱを咥えているのも分からない。キャラ付けのためではあると思うが、チ丸はモチーフ的に多分武士という訳でもないのでそこら辺含めて全てが謎だ。
「! おい、玄米…私はとんでもない事に気づいちまったかもしれない…!」
「な、なんだよ、ワクセイ…?」
「これインストールってどうすんだ?」
もういい、さっさと本題入ろう。頭痛くなってきたわ。
今回は事前に配布された石を使ってガチャを引く…訳ではなく。石は全て自分で用意した分のみ、足りなければ課金も自腹。せめて会社負担にしろよ。儲かるのは結局そっち側で、ライバー側には雀の涙ほどしか入ってこないんだから。
「アタシはそもそもやった事がないからな…弟妹、今回のオススメとかある?」
「そんな日替り定食みたいに」
ただ、初心者向けならアタッカー優先か? タンクも重要ではあるが、プロローグが終われば入手できるものだし…姉がどれくらいハマるかが未知数な今、適当な事を言って払うという選択肢は取れない。
しかし俺はエンジョイ勢、格ゲーとは違ってガチでやってはいない…ただ、そうだな。俺が引くとすれば…
「俺が引くとすれば、韋駄天さん狙いかな…」
「ふえ!?」
サポート職あんまり持ってないし。防御技と回復を両方持ってるキャラはSS評価だって、紀元前から決まってる。
コメント:おやおやおやおや
コメント:百合です、百合ですよナナチ
コメント:いやこれ性能の評価してるだけじゃない?
コメント:天然たらしかよ
コメント:男友達みたいな扱いしてるくせにこういう雰囲気になるとさも当たり前のように女って事にするの草
コメント:人はそれを現実逃避と呼ぶ
コメント:あまり強い言葉を使うなよ
コメント:泣くぞ
コメント:メンタルクソザコニキ涙吹けよ
「えと、その、私ですか?」
「え? ええ、滅茶苦茶いいので(性能が)」
「滅茶苦茶いいんですか!?(キャラが)」
え? 韋駄天さんも未経験とか正気か? このコラボ配信内で俺以外にソシャゲ…というかクリメモやってる人誰もいないの普通におかしくない?
この前のレトロゲームの時はゲーム自体の面白さを、初心者だからこそ若い世代に強く伝えれたし、まだ許せたけど。流石に今回はおかしいだろ。ガチャ配信なのに何でわざわざ経験が一切ないライバーにコラボさせるのか、全く理解が追いつかない。
「まあ待て、インストール終わるまであと97%だからさ」
「何で20分も経っててそのザマなんだよ、おい」
「アレですね!?星さんまたここのWi-Fi切りましたね!?」
「いや、ただただ
「志は立派だけども」
コメント:い つ も の ワ ク セ イ
コメント:やっぱバカだろ
コメント:特にワクセイのリスナーでもない俺らがいつものなんて言うんだぞ
コメント:もう終わりだよこの国
コメント:俺たちの方もそろそろアプデ終わるな
コメント:やりますか
伊神蘭丹:10連目で来てくれたら、それはとっても嬉しいなって
コメント:勝てんぜ、お前は
コメント:ンアーッ!運が悪すぎます!
コメント:ソシャゲっていつもそうですよね…!私達の事なんだと思ってるんですか!?
コメント:訓練されたコメント欄
コメント:鉄パイプが来た瞬間これかよ…
「取り敢えずアプデは終わったか。ガチャを確認して……」
配布キャラはチ丸さん、ガチャで韋駄天さんと、ついでに姉。俺はどこで追加されるのか聞かされていないのであまり分からないが、二次喜劇のようなザル企業ではなくちゃんとした所のちゃんとした支部が作ったんだ、何も問題はないはず…俺がこう言うと確定で問題がある。やっぱり父さんの子供だな、俺も。
「それじゃ地獄の200連行きますか」
「さらっと言うけど、それって石いくつ使うんだ? 700くらい?」
「24000」
「貯めれるかそんなの!!」
姉が激昂した。20回タップして天井で交換するだけの簡単なお仕事だが、20回タップできるようになるまでのコストを貯めるのがものすごく大変である。
しかもそれで出てこなかったらキャラは一人しかもらえないというとんだ鬼畜仕様。愚痴っても仕方がないので韋駄天さんのピックアップを選択してまずは1回目のタップ。
…2回目…3回目…
「…………F☓☓K」
「弟妹!?」
「現在100連目、ここまで確変なし、最低保証五回……」
ボソボソと呟いた半ば独り言みたいな言葉に、全員首を傾げている。ソシャゲやった事ない勢だからな、そりゃそうもなるだろう。
用語の解説をすると皆絶句していた。見せかけの同情はいらない、これはお迎えするまでの孤独も含めて戦いだからな。
「110連目でようやくか…今まででダントツで運悪かったな」
何が出る…今までの経験から考えるとすり抜けの可能性は限りなく高いが…それとも本当に韋駄天さんが来てくれるのか…
二次喜劇のロゴマークが出たな、ヨシ。対戦ありがとうございまし
『…ん? 呼んだ? …じゃなくて…うぇーい、笹峯ノイズだ。…まあ、よろしくな』
何を見て『ヨシ』って言ったんですか?
「クソ姉が…」
「風評被害ひど」
633:名無しのライバーID:WsbCyhKBR
30000
634:名無しのライバーID:X33q9IS0Y
24000
635:名無しのライバーID:tnlwcix/u
9600
636:名無しのライバーID:XoAeNyeUo
25200
637:名無しのライバーID:VyFJzP/0g
72000
638:名無しのライバーID:+QTBVj9OY
>>637
えっ……
639:名無しのライバーID:i3fyGb03W
覚悟違うやついるって
640:名無しのライバーID:Zmwo14crY
纏めニキ…お前……
641:名無しのライバーID:vQ4eCPj4T
流石に命賭け過ぎだって
この後さらにヤバいPU来たらどーすんだよ
642:名無しのライバーID:5BrXS1Ifu
クリメモの制作陣ってば割とそういうとこあるから…
643:名無しのライバーID:4djsnxks3
配信見ながらだと楽しんでガチャ引けるよ
644:名無しのライバーID:Lddj5abP+
なお結果
645:名無しのライバーID:ovj4eehUK
ワクセイの無駄な抵抗ホント草
646:名無しのライバーID:lYw8sO8bU
毎度あんなお荷物状態でも周りから嫌われないのは偏にワクセイのエンターテイナー性にある
647:名無しのライバーID:htPqQzTNb
ワクセイのトークが人智を超越してるせいでワクセイのせいで進行が遅れてるって事を忘れるもんな
648:名無しのライバーID:uzUlOE6y3
あいつだけだよ、絵も字も使わず言葉だけで「人類には早すぎた」タグを使わせるのは…
649:名無しのライバーID:VyFJzP/0g
そんなワクセイですが何故か今回のコラボキャラじゃないっていうね
650:名無しのライバーID:VWjH9AwCU
チ丸が来たのでいいです別に
651:名無しのライバーID:deHE1Leig
>>650 まあでも世間的にもワクセイよりチ丸の方が人気だよな
652:名無しのライバーID:wEf+eWtLJ
ワクセイが爆発的に伸びたきっかけではあるからな
653:名無しのライバーID:E/cxoaizX
でもワクセイ本人は特に嫉妬とかないしむしろ仲いいよな
654:名無しのライバーID:AnnzJjm0K
>>653 中の人に罪はないし…
655:名無しのライバーID:mB57g6JOY
ワクセイは人気とかにはあんま興味ないと思うぞ
656:名無しのライバーID:bfUnCt8WW
あいつやりたい事やってる…というかやりたい放題やってるだけだもんな
657:名無しのライバーID:VyFJzP/0g
ところで…姉貴、異音、チ丸を回収して一つ分かった事がある
658:名無しのライバーID:KIxoKukVm
え?
659:名無しのライバーID:z49kac9W8
纏めニキがいつになく真面目に…
660:名無しのライバーID:Z3kFS7801
まあクリメモのおふざけって毎度度肝抜かれるからな
前回は節分イベで年の数だけ10連チケくれたし
661:名無しのライバーID:NuRn2xhkY
その前はクリスマスで全キャラの衣装がサンタ仕様になったりした
662:名無しのライバーID:dRbyQLFnj
労力えげつないのによくやるよ…
で、今回はなんだ
663:名無しのライバーID:VyFJzP/0g
全キャラのレアリティ最終進化まで行ってイベストの隠しステージコンプするとな?
弟妹が手に入る
664:名無しのライバーID:N/sNj2QkS
は?
665:名無しのライバーID:l1IEgk+aP
は?
666:名無しのライバーID:c+QMrtjOO
は?
667:名無しのライバーID:MS3D9pkYu
は?
668:名無しのライバーID:8Dt9gjbvd
は?
誰が読むかも分からない弟妹とそのクラスメイトの身長
弟妹=159cm
不良=173cm
主将=169cm
長身=190cm
隣人=152cm
保母=165cm