羽音デミという生徒の戦い方は一言でいうと常軌を逸している。
痛がりながらノーガードで突き進む、あらゆるトラップを真正面から踏み潰す。羽川ハスミ、仲正イチカは日々の業務のなかで羽音デミの戦いを見ている、2年次から更に過激になった戦いようは、それは酷く自罰的で自虐的な様に思えた。
口では痛がっているのだが、『肉体』にその反応が無い。人は多少なりとも痛みを感じればその身に隙を晒してしまう。皆も火傷する様な熱さのモノに触れた時は、咄嗟に手を引いてしまうだろう。しかし彼女には『ズレ』があった。
剣先ツルギとの練習試合ではより顕著に現れる。頭の中で彼女に対する戦い方をツルギは数度の組手で改めていた。
『一瞬の間に全火力を叩き込む』
数度の組手、その中で感じた違和感……腹にクリーンヒットさせた銃弾に対し羽音デミはその状況で『前に進んだ』。口では「うぎゃァ!痛いっす!!」とか叫んでいたが、ならばこそその前進は有り得ないものだった。
普段の業務からでは察知しづらい違和感を唯一剣先ツルギは捉えていたが、倒れるまで一生向かってくるデミに対し(そういう性分なのかな…?)とスルーしてしまった。普段から異常者を相手にし過ぎているツケが出たとも言える。
肉体強度の限界、それを突いて彼女を昏睡させる。それが普段の勝ち筋となっていた。
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「……」
先程までうじゃうじゃと居た兵士、それが嘘かのように消え失せている。
ただし道のように連なった痕跡を残して。
(……誘われてるな)
痕跡が続く先はブラックマーケット、閉所である上に戦闘が長引けばマーケットガードまで飛び出してくる始末。
「うーん、でも追いかけ無い訳ないよね!」
後・ろ・に手を伸ばし、コソコソ隠れていた馬鹿を掴み地面叩きつける。
[ガハッ…!ば、馬鹿な。見えているのは『先生』の力では…]
「まず一人」
機械頭を殴り潰す、中から少女の顔が出てきて予想が正しかった事を知る。
(アリウス学徒…!やっぱり偽装していたか!)
縛っておいて、その後の尋問用として置いておきたかったが…多分話さないだろうし身体に何が埋め込まれているか分からないので気絶させたまま放置しておく。どうせ私が離れた間に回収しに来るだろう。
残り十四人。
「…やっぱり舐めてるよね?」
苛立ちが抑えられない、あれほど先生を仕留める為には周到な準備がされていたのに、自身に対しては『単純な戦力』でどうにかなると思われている。
「う〜ん…うむ、止めたかったら巡航ミサイル持ってこい」
身体の調子が先程からずっと良い。本気をだしている筈なのに肉体はその限界を伝えてこない。いや、自分の身体が今尚ぐちゃぐちゃになっていっている感覚はあるのだが……治っている?
破壊されていく内蔵から口に込み上げてきた血を吐き出す、ブラックマーケット内に侵入、待ち伏せしていた八人をそれぞれ感覚で感じ破壊していく。
[ぁ…え?]
残りの一人に向けてお手製のハンドガンを放つ、その瞬間銃口が有り得ない光り方をし、爆発的な火力を持った光の弾丸として突き刺さった。
「うおっ!?なんじゃこりゃ?」
残り六人、多分逃げに専念しているであろう別働隊だろうか?さっきの出来事に驚きつつ更に奥へと翔ける。
ブラックマーケットに暴風が吹き荒れた、脇に居たチンピラや店の出看板等が吹き飛ばされ、それがただの一生徒によるものだと誰も知るよしは無い。
(見つけた)
大層に散らばりながら逃げている所を発見し、勿論この速度で殴り抜ければ相手が死んでしまうので減速を挟みつつ、散開した内三人をまとめてぶっ飛ばす。
[クソっ!Flack41改を放て!諸共でいい!こっちもM13を突っ込ませる!!更地になってもいいからぶっぱなせ!!]
とんでもない駆動音がブラックマーケット中に響き渡り、次いで爆発音も鳴り響いていく。
ドドドドドドド……!!
「軽量小型の戦車か、これぐらいならぁっ!!」
目の前に走り出てきた戦車の装甲を素手でぶち抜く、思っいっきり踏ん張って投げ捨てる事で無力化。
身体から異音が鳴り響いて止まらないし、もはや血を吐いてるのか何を吐いているのか分からないが自然と何時もより気分がいい。
(あぁそっか…やっぱり怖いものは怖かったんだ…失うってあんなに怖かったんだな)
夢の中で見た光景、普段見せつけられる幻覚、その全てを否定し打ち砕いている様であれだけ落ち込んでいた気分が今は幸福に埋まっている。
空から降ってくる対空砲の弾を素手で弾く、まだ降ってきているものは『ハンドガン』で撃ち落とした。
「がふっげほっおぇぇぇ!………やば!めっちゃ楽しいじゃん!」
ケラケラと笑いながら思わず口に出てしまう、2年次…あの時から死んだ筈だった私の青春が戻ってきた気がする!
[ば、化け物が!!ガァッ!]
「びぶべいな(失礼な)」
口の中にせりあがってくる全部を吐き捨てて、残りの三人も無事確保、やりたかかった事も終わり高揚した気分で先生の元へ行こうとする。
ドロッ…
「ん?あ!!」
掌に感じる感触…それはさっき殴った子の血だった、不味いと感じる。
力加減をミスってしまったか!?
「しまった…!ごめんごめん、死んでないかな?やばいなぁ…この子達も立派な
倒れている子の側まで駆け寄って安否確認をする。鼻が折れて血が出ているだけのようだ。
「ほっ、良かった」
[シ ネ゛]
「え」
ユラりと立ち上がり、表面の機械体を砕くと中に巻きけられた手榴弾を見せつけられる。
(意識は飛ばしておいた筈…!いや、動きに生気が無い、手榴弾…こんな程度じゃあ……まさか……ヘイロー破壊爆弾!?)
原作の知識がここで助けてくれた、ヘイローは殺意を持ってないと破壊出来ない。逆に言えば原理は…ヘイロー破壊爆弾はゴルコンダのテキスト、「ヘイローを破壊する」という概念。所有者が「起動する」という「殺意」を用いてぶつけてくるものだと思っている。
破壊力、殺傷力に関わらない概念的な死!それに対する対策はいの一番に準備していた!しかし問題はこの子の身体に巻きついていること、このままでは不味いので……!
「ぬぎぬぎしましょうねオラァ!!」
手榴弾を繋げている紐を衣服ごと破いて爆弾を切り離す、後で裸体をブラックマーケットで晒される事になるが許せよ。
「そしてこのままこう!」
ここまで一秒!クソ赤花女か誰が起動してんのか分からないけど、お前らの指の動きより早く動けんだよ!
懐から布を取り出し、手榴弾に被せて自分も爆風を抑えるために被さっていく。
この布は足繁く通ったシスターフッドと救護団達の祈りの神秘、『護る』という概念がたっぷり込められた一級品、マリーちゃんにも手伝って貰った、効果は実験済みだ!
力任せに布で包み込み爆弾を抱えて後方に飛んだ瞬間ーー
ドッゴォオォオン……!!
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“デミ……”
「ただいまっす、先生。あの〜そのごめんなさい?」
“デミ……!!!”
急に抱きついてきた先生にびっくりしたせいか、今まで力が籠っていた身体が緩んでいく。
「うがー!身体痛いなー!やばい!死ぬ!」
自分の身体の状態を思い出し、そう口に出す。先程までの便利な再生能力は無くなっているようだった。
「あ〜バタンキュ〜」
本当は一時足りとも、一瞬でも先生から目を離したくないが、直感が伝えてくる『今は安全だ』と、周りに対策委員会もいる事だしお世話になる事にしよう。
「おやすみなさいっす先生……グゥ…zzz」
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そう言って、私の胸に張り付いて寝てしまう、いや気絶だろうか?
頭のヘイローは完全には消えず、チカチカと点灯を繰り返している。
“デミ…こんな…無理して……!”
彼女の服装はそれは酷い状態だった、煤に塗れ至る所が破れ、服のほとんどが血に濡れていた。なのにも関わらず彼女の身体には表面上傷が無い。
あの時見えた……何度も腕をナイフで刺しまくったかのような刺突跡、背中の火傷もお腹の傷も何一つ無かった。
“考えろ、考えろ考えろ…”
彼女にあそこまでの傷を治す再生能力は無いはず、ならば内臓に問題が?
“アロナ、バイタルチェック” 「はい!」
問題は……無かった。何も無い、はずが無い。
現に彼女は痛みを訴えて気絶し、倒れた。精神的疲労?それとも自分が知らない彼女の神秘か?彼女が抱えている秘密は多い、あの身体能力も説明されていない。
“……”
「先生、一旦帰ろっか。その子にも聞きたいこと沢山あるしさ?」
“そうだね、ホシノ、教室に帰ろうか”
「大丈夫なの?デミは?…………傷がひとつも無い?」
「ん、おかしい。先生を渡してきた時はあんなに傷ついてた」
[それ含めて聞かせてもらいましょう!]
カタカタヘルメット団は残党残らずヴァルキューレに突き出した
“(さっき見えたFlack41改の砲撃、あれも潰しておくか…)…アロナ、出来るかい?”
小声で彼女に話しかける。
「既に掌握済みです!」
“所有権は私へ、辺り一帯の監視カメラ、それとヴァルキューレに通報”
「了解です、先生!」
今や洗練され、自動化された対空砲は逆にこういったハッキングに弱くなってしまった。と言ってもシッテムの箱、元いアロナの力のゴリ押しだが…。
“(カイザー会社の対空砲に、出自の分からない兵…あぁ、
“アヤネ”
[はい、何でしょうか?先生]
“君の疑問は正しいよ、今度一緒にシャーレで調べようか”
[っ!?先生何故……!有難いは有難いのですが……]
「うへ〜また先生のエスパー?おじさん怖くなっちゃうね」
「「「?」」」
そのまま皆で帰ろうとしていた中、ホシノが駆け寄って耳元で囁く。
「先生、その傷、大丈夫?」
気づかれていたか。
“大丈夫だよ、本当に軽く裂いただけさ”
「ふーん?先生…いい背中みせるじゃん?頼りになる『大人』…だっけ?おじさんちょっぴり見直しちゃったな〜?」
“あはは……でも私は情けない大人だよ。まだまだね”
「うん、だからちょっぴり…ね?」
“ハハハ、よぉしまずは第一歩歩き出したって所かな?”
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■シャーレ休憩室
あの後、もうそれはそれはこっっっってりと先生に叱られ、ホシノちゃんからは凄い重圧で『あーゆーのは良くないとおじさん思うな〜』って詰められて、それに緊急事態とは言えアロナの名前を言ってしまった事、傷が治っていた事等問い詰めらたが知らぬ存ぜぬで押し通した。
それから大事が無いように一度シャーレに帰らせられてしまった私だ。
シャーレに帰ると……
もうカンカンに怒ったハスミ先輩がやって来て、更に絞られてしまった。
「囧」
しなしなくろもっぷ
「はぁ、ストーカー先生inセリカちゃんとか、柴関with先生と対策委員会、見たかったなぁ……」
一旦の活動自粛をされてシャーレの休憩室でゴロゴロしながらため息を吐く。
「……ふふっ」
でも嬉しい事があった。
「あははっ……」
「あははは!ははっ!はぁ〜……」
無駄じゃなかったんだ、今まで頑張って来た事って。
布は効果があった、故に今生きている。
「ふふふっ……ヒヒ、あは」
笑いが止まらない、ニヤケヅラが戻らない。あの光景は打ち破れるものなんじゃないかと思えたし、なんなら今回は打ち破った。
お前のせいだ
休憩室でジタバタする、気分が軽い、足も腕も軽快で視界もセピア色じゃない。『1年次の私』が少し戻った気がする。
お前が生きているから
無駄じゃなかった、私は無駄じゃなかったし、この世界はやはり透き通っている!
お前が存在しているから
頭の片隅にあの光景を退ける、自分は必要だった、自分のお陰で先生が生きている!
落ち着いて考えれば……少し血を出させてしまったが、命は救ったんだよ!!!
煩い!!!!!!
「はぁあぁ〜〜『ブルーアーカイブ』最高!!」
雑音は聞こえなくなった。けれど
この話は私の■■のお話
あぁ‥ でも‥
いつか、いつか… この
ブルーアーカイブの隅っこでーー
ようやくカタカタヘルメット団、殲滅完了です……。なんやこの長さァ!?おかしい、私の頭の中じゃパパッとデミちゃんが片付けて今頃みんなと恥ずかしがるセリカちゃんをツマミにラーメン食ってるはずが!!?!?どうしてこうなったんですかね(真顔)
すまんがセリカ誘拐とラーメンイベはキャンセルだ……誘拐に必要なもん全部吹き飛ばされました!!!まぁこの先生なら好感度稼ぎなんてちょちょいのちょいよ!!
でましたね……タイトルコール、時々タイトルコールは挟んで行こうと思います。そしてこのタイトルコール…………『現状デミちゃんが自分の事をどう思ってるか』次第で、続く言葉が違います。皆様もデミちゃんの気持ちになって考えてみてくだせぇ……!
え?デミちゃんはもう悪夢と幻覚と幻聴が聞こえなくなったのか?まっさか〜これからも付き合っていくに決まってるじゃないですか〜。