ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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血に沈む太陽 灰に埋もれる明日 その3

「ーーという訳で、カイザーの皆さんにはキヴォトスから出ていって貰おうかな〜って」

 

 

灰色のオフィスで革のソファーに座らせてもらい、色々と事情を説明する。

本当に色々始まる前に、カイザーの皆にも参加者になってもらわないといけないのだ。

 

 

「…巫山戯ているのか?」

 

 

「いんや?」

 

 

「………小娘、貴様が話した戯言の為に掛かった時間で幾ら我社にとって損害が出たと思う?」

 

 

「被害損害どうのこうのの話なら、私めちゃくちゃカイザーの軍事用基地潰しまくってたんで今更じゃないっすか?」

 

 

「…この世界は、金が全てだ!金があれば弾薬を買える、金があれば武器が買える、金という価値が、我々の『力』の源泉であり、貴様の損失額で命は容易く奪えるという事を理解しているか?キヴォトスの住民が幾ら硬かろうと、数分弾丸を打ち込み続ければ死ぬ、戦車で撃ち抜き続ければ死ぬ」

 

 

「でも、そうやって私達を殺すのに費用対効果が見合ってないから、アビドス砂漠に手を出してんでしょ?より強力でより簡単に、より儲けれる様に、そしてあの戦艦を手に入れる為」

 

 

いつだって記憶だけは有効に働くもので、カイザーの狙いがなんであるのか、そこまでして手に入れたいものの正体が何であるのか、利用方法すら知っているのだから利用しない手は無い。

 

 

「…………」

 

 

「ジェネラル、貴方は別にさっきの話を戯言だなんて思ってないっすよね、あんな宇宙戦艦やら古代の科学兵器やらを見といて理解していない筈がない、既に事実である事を認識しておいて、プレジデントに正確な情報を伝える為に目の前敵から得れるだけの情報を取ろうと考えている」

 

 

「分かった、もういい、要求を話せ」

 

 

「流石、物分りが早いっすね!」

 

 

「そもそも貴様が空間転移、契約相手から教授されたあの戦艦の能力と似た様な事象を引き起こし、ここに現れた時点で私の仕事の範疇を超えている、武力行使、武力制圧は意味を成す相手にしか効力は無い、特に貴様らキヴォトスの住民はな」

 

 

キヴォトスの奴らに足りていないものは知恵と策略、子供の我儘が大人に致命的なダメージを与えうるこの世界でそれが我々がつけ込める隙だ。

但しそれもシャーレの先生の様に生徒を使われた上で戦略を練られたり、目の前の存在の様に余りにも未知数である敵に対しては効果が無い。

 

 

「それじゃ業務提携って事で、宜しくお願いするっす」

 

 

「貴様と握手等するものか、化け物め」

 

 

「化け物って、麗しの女子高生に酷い事言うもんすねぇ」

 

 

「ならいい加減それを仕舞え、部下が怯えて敵わん」

 

 

コイツがここに転移してきた瞬間の事だった。

 

 

壁から現れた瞳に見つめられ、触手らしきギロチンに首を包まれたのは。

 

 

「それじゃ、お疲れ様でした〜」

 

 

別れの言葉を告げると共に、空間の狭間へと姿を消した事で安堵の息を漏らしたのは私一人では無かったのだろう、今でも軽く手が震える。

 

 

「……」

 

 

「ジェ…ジェネラル…」

 

 

「動け」

 

 

「は、はい?」

 

 

「プレジデントに連絡を早くとれ!さっさと動いて今起きた事を全て報告するんだ!!」

 

 

「了、了解!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“……”「先生!アロナ専用の対空防護システムに反応がありました!」

 

 

通路に佇み、水を飲む。ヒナタには案内をしてもらう途中で休憩してくると言って抜けてきた。

 

 

「すぐそこまで来てます!!」

 

 

“分類は?”

 

 

「巡航ミサイルです!マッハ13!!()()()()()()()!」

 

 

三発、それを聞いた瞬間、身体中から冷や汗が湧き出てくる。

 

 

“ここら一体を吹き飛ばす程度じゃ済まないね、地図から消し去って尚余りある火力……”

 

 

熱する思考をひたすら水で冷まし、この状況をどうにかする為の思索を続けなければ……。

 

 

どうする?

 

 

“決まってる”

 

 

どうなる?

 

 

“どうにかなる”

 

 

賭け金は既に手中にある、後はオールインするだけ。

 

 

「残り数秒で着弾します!先生だけなら…!5、4、3……!?」

 

 

「先生!!ミ、ミサイルが…!」

 

 

アロナの叫び声が耳をつんざいた。

 

 

()()()()()!!」

 

 

“……っ!?”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“アロナ!今すぐ周囲の探知をお願い!”

 

 

ニトロを追加された様に高鳴る心臓が、更に稼働を早めていた。

恐らくこれはアリウス側でも想定外の事態、空中で爆発したのでも無く、移動させられたのでも無く、唐突として消えてしまった。

 

 

「はい!ミサイルの所在を突き止め……な…にこれ?時空間の歪み……?せ、先生!データが、謎の位置情報がシッテムの箱に、直接転入されて来ました!」

 

 

急いでアロナの電子空間の中に入り、送られてきたデータを確認してみると、何故か手紙の形を取っていた。

そして隅には可愛い字体で『先生へ♡』と…。

 

 

内容は『頼みます』とだけ。

 

 

“10000%デミからだね、その位置への転移準備、用意しておいた切り札も切ろう”

 

 

「あわわわぁ…こ、このぉ…!転移が阻害されている!?『Pass』が構築済みで突破するのに数分かかっちゃいます!送られてきた位置のみに誘導されているかのような…ぬぐぐ…」

 

 

“黒服の仕業か、ホドの権能だね……ビーチの基点からの遡行干渉は?”

 

 

「つい先程何者かに破壊されちゃってます!?復元不可能、現在利用できる機能は『神の目』、クラフトチェンバー、シャーレビル提携による擬似聖槍一発のみです!ど、どどどうしましょう!?先生!」

 

 

“ナギサとヒナ、マコトと正実のグループチャット、ハナコの内誰かに連絡は取れるかい?”

 

 

「えっと…えっとえっと…!あ!正義実現委員会、ヒナさん、ハナコさんにだけは繋がりました!」

 

 

取り敢えずは連絡、現状の混乱を収めきれる人物を挙げていき、この中で誰か一人でも繋げれたら僥倖だったけれど、ヒナとハナコ、それに正実に連絡が付くならなんとかなる。

 

 

“事情だけ説明しておいて、後それと…『必ず戻る』って”

 

 

私の手段を奪う様に、先程からピンポイントに狙い済まされた妨害だ、しかし『妨害』に留まっているという事はデミ自身が何かしらの要因で動けないか、権能を一時的に封印しているかのどちらか。

 

 

その気になれば今すぐここへ乗り込んで場を壊滅させきれる力がある、それを行わない理由も『羽音デミ』から、あの『ヒント』を貰って理解出来た。

 

 

「うんしょっ……あれ、あれれ?えええ?!?!」

 

 

一斉送信を行った後に、『Pass』の分解を始めようとしたアロナだったが、更なる凶報がどんどん流れ込んでくる事に対して涙目になりながら対応を続けている。

 

 

「シャ、シャーレからの接続が遮断?神の目とクラフトチェンバー機能停止、ミレニアムとD.U区、廃墟から不可解な軍隊出現!?各地のビナーを除いた預言者達にも反応があります!!?」

 

 

“っ!!C&Cに依頼通達!アビドスの皆に連絡、便利屋と温泉開発部、美食研、百鬼夜行の皆にもお願い!”

 

 

“最重要なのはアリスの保護!!C&Cと……ーー”

 

 

ドゴォォォォォォンン!!!

 

 

“なんっ…爆発!?”

 

 

急いで別れたヒナタの元へ戻り、状況を確認しようとするが…。

 

 

“うわっ…!?とと、危ない!”

 

 

余りの地響きの大きさにすっ転びながらヒナタに突っ込んで行ってしまう。

 

 

「わ、先生!!ちょ、丁度良かったです!」

 

 

“な゛、ナイスキャッチ…”

 

 

「えっと、そのあの!ゲヘナからやってきた飛行船が大爆発を起こして墜落してきてます!それと、それと…ナギサ様が……って先生!?か、身体が消えかかって…!?”」

 

 

指を指して驚くヒナタの反応で気づいたが、つま先から徐々に身体が消えていっている、だけど消滅じゃない……これは…

 

 

(“強制転移…!”)

 

 

“ごめんヒナタ、ちょっと色々あってこの場を離れるけど絶対に戻ってくるから……でも少し遅れちゃうかもだから、コレ持ってて!”

 

 

「えぇ!?えっ、あっ、はい!??」

 

 

“それとワカモ!!ごめんね!!行ってくる、だから頼んだ!ーーうぉぉわぁぁ!?!”

 

 

「はい、貴方様」

 

 

「キャッー!?い、一体何時からここに!?というか貴方は!?」

 

 

「貴方、先生に渡されたソレ、死んでも手放さないで下さいね」

 

 

先生の姿が掻き消えて、手元に残ったのは謎の黒い筒のみ。

引き起こされている惨状と残された希望が余りにも釣り合っていない状況だけれど、先生は戻ると言った。

 

 

「〜っ!と、取り敢えずサクラコ様に連絡しなくちゃ……繋がらない?な、何故…!」

 

 

「……サクラコ、サクラコという方が貴方達のトップでしたね」

 

 

「え、えぇ…そうですが…」

 

 

「なら急ぎなさい」

 

 

「わっ!?」

 

 

ヒナタを一瞥してむんず、と身体を掴み走り出す。

 

 

「な、何を…」

 

 

「先生は私に『頼んだ』と仰いました、ならばソレを託された貴方を、先生の頼み通りにするのが役目、というまで」

 

 

「この場、この事態を先生が帰ってくるまで持ちこたえさせる、故にサクラコの位置を話しなさい、そこまで届けてあげましょう」

 

 

「分かり、ました……貴方は、確か厄災の狐と呼ばれている方ですが先生のお言葉を信用します、お願い出来ますか?」

 

 

「ええ、先生の期待を裏切る事、それをせぬように全力を尽くしなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調印式の場を眺める。火の海に包まれるはずだった、叫び声が、苦しみの声がうごめき……意味のない人生を歩んできた私たちの願いがようやく成就される瞬間のはずだったのに。

 

 

望んでいた筈の光景が訪れることなく、規定時刻を過ぎても目に映るのは平和に保たれた世界。

 

 

確定されていたはずの未来が、覆された。

 

 

 

「クソ…一体どうなっている!!」

 

 

《リーダー!!捕捉された!!!》

 

 

《(スッス…スッスス…)姫様、お下がりを!リーダーこちらチームⅠ、Ⅴ、契約相手が裏切りました!!》

 

 

《チームⅡ、Ⅲ、半壊!撤退の指示を!》

 

 

 

「通信を遮断しろ!そっちにすぐ向かう、姫を死守しろ!」

 

 

しかし、思考を止めてはいけない。この瞬間の一秒一秒が今後のアリウスの生死を分けている、既にマダムはアリウスを必要としていない。この計画が失敗した時点で私たちは廃棄だ。

 

 

《うわぁーーーん!もう終わりですぅ!!》

 

 

「なんだ、どうなっている…!クソ、これが例の…ーー」

 

 

こんなことをできるのは、ただ一人。マダムの最重要警戒相手にして、角外の能力を持つ、このキヴォトスでも屈指の重要人物……。

 

 

その気配を後ろから感じた、遊満ながらこちらに向かってくる革靴の足音。

 

 

 

 

“初めまして、アリウススクワッド”

 

 

 

「先生の力か…!!」

 

 

 

 

“…なるほど”

 

 

 

“頼む、か…”

 

 

 

“頼まれたからには、貴方達に償いを”

 

 

 

「貴様はここで死ね、先生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これは……」

 

 

頭上で起きた爆発に加え、飛来物の消失、先生から送られてきたメールによって状況を把握する。

 

考えるにあのミサイルは以前から先生が警戒していたアリウスとやらの隠し玉、ラムジェットエンジン等という技術がキヴォトスに有ったとは思いもしなかったが、あれが三発……。

 

 

(打ち壊せても一発が限界だった……その後の二発で確実に死んでいたけれど…)

 

 

敵の狙いは把握し切れていない、調印式に参加した全員を殺害したとしてもその技術と力を見せてしまったアリウスに『その後』は無い、キヴォトスに存在するあらゆる企業と学園に再び潰されるのがオチ。

 

 

頭上で墜落途中の……マコトが乗っていた飛行船が爆発し、火の粉を撒き散らしながら落ちてきているのもアリウスの仕業だろう。

 

 

「アコ、戦術指揮をお願い」

 

 

「っ!はい!」

 

 

ただ、目の前で起きている事が先生にも、アリウスにも把握されていないという事だけは分かる。

 

 

「メールで送られてきた事に、『ユスティナ聖徒会』の事は書いてあった」

 

 

聖典に記述されていた今のシスターフッドの前任、戒律の守護者。

先生の推測だと調印式にもしもアリウスの襲撃があれば、本当の狙いは私達への復讐でも何でもなくて、戒律の守護者を操る権利を得る事。

 

 

なら、何故その前にゲヘナもトリニティも全滅させる程の火力投下を行ったのか。

 

 

そして何故、それらは突如として霧散したのか。

 

 

「けれど貴方の事は、送られてきたメールに書いていない」

 

 

 

 

 

 

 

《あ〜あ〜…初めまして!ゲヘナとトリニティ、そしてキヴォトスの皆さん!》

 

 

《この放送は現在、クロノス報道を通じてキヴォトス全体に報道されていると思います》

 

 

《もう一度初めまして、此度アリウス分校の生徒会会長に就任致しました……羽音デミと申します》

 

 

マイクを持ち、ユスティナ聖徒会を身辺に配備し、三体の怪物を背にしながら堂々と宣言を行う。

 

 

《私達の目的はただ一つ、積年の憎しみ……ゲヘナとトリニティによって闇に葬られ、忘れ去られ、そして蔑ろにされ続けてきた私達の手で、両校を滅ぼすことっす》

 

 

《貴方達は、責任を取れない》

 

 

《選択を誤る事は誰にでもあるっす、でも引き起こされた過ちや後悔に対して責任を持つ事は無かった》

 

 

《誰かが声を上げることも、誰かがそういった現実と向き合う事も》

 

 

《この舞台に貴方達の代わりをしてくれる人はいません、まぁ昔の話を持ち出してギャーギャー言うのもなんすけど、結局貴方達は変わらなかった、あの様な悲劇が再演されない様に…》

 

 

《エデンの名のもとに、貴方達に審判を》

 

 

彼女の見下ろされた視線が私に届いてきた。

 

 

「嘘をつくのが本当に下手ね」

 

 

上着を脱ぎ捨てて、戦場に立つ。

 

 

「はは」

 

 

「ヒナちゃん、貴方は私に勝てないよ」

 

 

愛銃を構える、背後の怪物も周囲の兵も動く気配は無い。

 

 

「貴方こそ私にはもう勝てない」

 

 

「………」

 

 

胸から引きずり出された拳銃は、あの時から一切変わりない。装飾も名前も何も付いていない無骨な拳銃。

 

 

「ここにいる全員が死ぬっす」

 

 

「ならどうしてミサイルを消したの?」

 

 

「はは…確信が無いことをあんまり堂々と言わない方が良いっすよ?」

 

 

「確信しているわ、貴方が何をしたいのかは知らないけれど、別に誰かを殺したい訳じゃない、そうじゃなきゃ先生は貴方の事を話すだろうから」

 

 

「…ヒナちゃん、どうして私の記憶が残っているのかは言及しないけれど改めて宣言しましょう」

 

 

 

「皆死ぬ、私の手で」

 

 

 

「やってみなさい」

 

 

 

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