ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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燃やせ、想いを

「ふふ、あはは、はは」

 

 

「ケヒャヒャヒャ…」

 

 

胸元にクロスに組んだショットガンをゆっくり解いていく。

 

 

「はははは!!!」

 

 

…何回、手合わせしたっけな。

 

 

「はは」

 

 

天井は熔け、壁は融解し、古聖堂だったものが流動していき外へと流れ出す。遠目から見ていた者からは火山の活動を錯覚する程、マグマの様な液体が地上へ垂れ流されていた。

 

 

「滅却開始!!私のブルーアーカイブをここへ!!!」

 

 

「シネェェェェェ!!」

 

 

獄炎の中、血に染ったツルギがデミの首根っこを掴んで顔面に拳を叩き込むと、その衝撃で古聖堂の二階の床が崩壊する。

瓦礫含め二人が揉み合いになりながら落下し、そして悲鳴と叫び声が炎へと吸い込まれていった。

 

腕は胸を貫通するもそれに留まる、ショットガンから放たれた球は顔の原型を無くすがそれだけ、そして炎が燃え盛ると同時に何一つ跡を残さず元に戻った。

 

 

「…!!」

 

 

先程聞こえた悲鳴と叫びの元を捜し、瓦礫の隙間に視界を通して察知して助けようとする……

 

 

が、しかし真下のここは避難場所だ。つまりは……。

 

 

「ぶっ潰れろォォォォ!!!」

 

 

「はは゛!足りて゛ない!!火力上げてけよ!!ツルギ先輩ィッ!!」

 

 

落下地点は避難場所、銃を取り出したデミは現在進行形で肉体に火を灯しており、拳銃からも炎が吹き出していて、放たれる弾丸は銃弾では無く赤い光線。

撒き散らされる血は爆発し、爆発に巻き込まれたものは吹き飛ばされるのでは無くデミと等しく燃えていく。同じ様に、全ては灰へ。

 

 

「チィ゛ッ!!」

 

 

デミの身体に突っ込んで発射したショットガンも延焼が始まった。

 

 

救える人数の最大限を求めたとしても、ツルギは瓦礫を吹き飛ばすのが限界、残りの意識はデミへと配らねば今すぐにでも燃やし尽くされる。

デミのヘイローは変質し黒い太陽へとその姿を変えた。彼女の神性が遂に現れようとしているのかどうか…。

 

 

「ツルギっ!」

 

 

揉み合いになっている両者の間を弾丸が貫く。

 

 

「あぁぁぁ゛!!」

 

 

落下してきたツルギに対してハスミがショットガンを投げ渡し、それを口でキャッチした。

 

 

「マシロ!!イチカ!」

 

 

「「はい!」」

 

 

「ははははははは!!」

 

 

デミを四人が取り囲み、全員照準を一寸の狂いなく合わせる。

 

…が。

 

 

「神性ッッ!顕現!!!」

 

 

地面に着いた手から、『風景』がヒビ割れ、デミを見つめている全員の視界が崩れていき、瓦礫もそれに伴って消し飛ばされ炎となっていっている。

 

 

世界が壊れ始めていく。

 

 

 

「うぉっ!?なんだァ!?」

 

 

「くっ…これは!!『空白』!」

 

 

「きゃー〜ーっ!?」

 

 

辺り一体が炎の荒野へと変わった頃、空からネルとトキ、ユズが落下して落ちてくる所にその全員を覆い隠せる程の炎が波となって襲いかかっていた。

 

 

アリスとそれ以外のメンバーが全員隔離されてしまう。

 

 

「クソッ!訳わかんねぇが…ここは、調印式場か!!てかアチィな!?」

 

 

「先輩、一時休戦です…『空白』を一刻も早く…!」

 

 

デミの分身体、その一人がアリスの身体に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!!王女の身体を…!」

 

 

「目覚めて、アリス…お母さんだよ」

 

 

「な…ーー…お母さん?お母さんですか?」

 

 

権能を発動しようとしたケイも、その頬に触れられて、その言葉を告げられると意識の内海へと攫われ沈みかけてしまう。

 

 

「駄目です王女!!その女に惑わされては…!!」

 

 

「お母さん、これは一体…」

 

 

「アリス、お母さんね、ちょっと悪い事してるの……丁度世界を滅ぼそうとしてるし…魔王って所かな?アリスは、ん〜と、自分の事、ケイに教えて貰った?」

 

 

「…はい、試練の空間で…私は、世界を滅ぼす役目を持っているって…魔王は、アリスだったんですね…アリスは、勇者じゃなくて…」

 

 

表情が沈んでいくアリスの頬と頭を優しく撫でる手が、少し荒いものになる。

 

 

「ほれほれ、うりうり」

 

 

「む、むぐぐ……はッ!この手つきは!!あの時の傭兵さん……?」

 

 

「傭兵さんは、お母さんだったのですか?でも魔王だとお母さんは…」

 

 

「ん〜?元々魔王だったよ?でも、ちょっと傭兵に転職して、また魔王に転職しただけ…誰も魔王が転職出来ないなんて言ってないからね」

 

 

「……!」

 

 

「アリスも転職しちゃえば?魔王が嫌なら……勇者になってもいいと思う、それとも勇者になるには何か条件が必要かな?」

 

 

「勇者…勇者は、皆に認められてなるものだってモモイが…」

 

 

「ぶふっ…w そのまんまなんだ、聞き覚えがあるな……ゴホン、それじゃアリスは魔王勇者っていう上級職かな?…まだ、皆んなに自分の全てを知って貰えてないでしょ?だからね、これが終わったらちゃんとゲーム部の皆んなと話をしたら良いと思う」

 

 

「…はい!」

 

 

「でも、今はまだ魔王勇者…だからアリスは勇者の剣も持てるし、魔王の力も使えるんだ…ね?ケイ」

 

 

「はい!!」

 

 

「戯言を…!!王女、王女!!彼女の身体に手を伸ばして下さい、その分身体一つでアトラ・ハシース建造のリソースは確保でき…ーーイタッ!?」

 

 

半分の瞳は青く、半分の瞳は紫に怪しく光るアリス、その紫側の瞳がブレる。

 

 

「ケイ!ケイが魔王の力を教えてくれるのなら、アリス知ってます!内なる対話が秘めた力を解放するのだと、お母さん!お願いします!」

 

 

「うわぁ…て、手加減しときなよ?アリスの力でボコボコにしたらケイの顔面無くなっちゃう…」

 

 

「分かりました!一万発から一瞬千撃にしときます!」

 

 

「王女?王女!?」

 

 

デミがアリスの額に触れると共に、気絶し…横になった後ビクビクと身体が動いているのはきっと、ケイの悲惨な状態を表しているのだろうか…。

 

 

 

「デミィィィィィッッ!!!」

 

 

 

「…ツルギ先輩」

 

 

炎で隔離されたその壁を無理矢理食い破り、己の血で火を消化しながらツルギが空から突撃していた、口でショットガンを振りかぶり、小指で発射しながら拳を握り込む。

 

 

「残念♡」

 

 

「…!!」

 

 

しかし振り抜いた先に姿は在らず、声だけが響いて消える。消えた跡地を見てみれば影だけが動き、炎の向こう側へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「……本体、おーい」

 

 

「はいよ合体…っと、残り三割は……ヒナちゃんとガチ中か、これで黒服は牽制した、儀式は中断…マエストロは先生の元にか、後は…〜ゴルコンダとデカちゃんは傍観ね」

 

 

「ハァッ!!」

 

 

「…イチカちゃん…後ろから堂々と、はは!撃ち落とされに来たんすか?」

 

 

《イチカ!右腕を下げて!!》

 

 

僅かな隙間を塗って狙撃が飛んでくる、顔面に命中すると共に十字架がデミの身体を地面に磔にした。

 

 

「正義を現す神秘…」

 

 

「…っ!デミ!ごめん!!」

 

 

「だからぁ、破棄したかったものとはいえ、なんで覚えてるんすか」

 

 

「それと、何に謝ってんすか?」

 

 

ーー十字架が、燃え盛る。

 

 

「クソ、届かないっすね」

 

 

「さぁ…先生」

 

 

燃える十字架を背に、デミが全ての炎を手中へと集中させていく。

 

 

荒野と生徒に延焼していた炎も、溶けた瓦礫や液体になってしまった建物も、全て等しく舞い上がり手の中へ。

 

 

残るものは燃炭のみ。

 

 

「続きを始めましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故、複数の生徒が未だデミの記憶を有していたか、それはデミも預かり知らない所であった。

 

 

心象風景の具現、その在り方から精神の内側と世界が繋がっているデミは今現在、自分自身を燃やしている。

 

 

己の在り方を棄却し炉にくべた、それ故にデミの能力は右肩下がりに落ちていき、最後には全てを失う。

 

 

神性顕現とはその実、デミ自身が心でこの世界をどう捉えるかを現実に表象させるだけのもの。自らの名を放棄すれば世界から自ずと羽音デミの名は消えていく。

 

 

消えていく筈だ。

 

 

 

 

 

 

“手は打った、後は走るだけ”

 

 

 

「先生…そ、その火は……」

 

 

 

ーー先生の身体から劫炎が滲み燃えていた。

 

 

 

“ふふん、やられてばかりじゃ嫌だからね、反撃の時間さ、シャーレ出動ってね”

 

 

“それと……なるほど、夢幻泡影か…”

 

 

“うん、大丈夫だよデミ…私は忘れないから”

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