ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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前編です










不安で不安定な暴走の始まり

 

 

 

「ふんふんふ〜ん」

 

やぁみんな。自粛を言い渡され、実質的に絶賛シャーレ軟禁中の私だ。

 

ハスミ先輩が来た時に『正実の活動は私が抜けてて大丈夫っすか?』と聞いてみたが『貴方が数日抜ける様で崩れる程私達は弱くありません、丁度いい機会です。休暇としてシャーレに居候しておきなさい』と無表情で言われるもんだからちびるかと思った。

 

数日が経って、先生からはセリカちゃんのバイト先行ってきた事だとか、便利屋のみんなにラーメンを全員分奢ってあげたとか、結局その後襲撃されたけど戦闘員が定時で帰っちゃってずっこけたアル様だとか……。

 

 

「あはは、それで倒れちゃったアルさんを背負って便利屋事務所まで行ったんすか?馬鹿っすね〜」

 

“便利屋の皆も良い子達だったよ”

 

「まぁご無事なら何も言うこと無いっすけど」

 

アル様が関わって先生が怪我するのは基本的には有り得ないだろうから大丈夫だとは思いながらもちょっぴり心配だ。

 

更にだいぶ早い段階だが、カイザーとの繋がりを先生とアヤネちゃんが協力して洗い出した様だ。もう生産されていないらしい戦略兵器、生産中止の物品はブラックマーケットでしか手に入らない。それに加え……先生がアヤネちゃんをやわらか〜く誘導して、今のアビドス自治区の所有権について調べさせたらしい。

 

有能すぎるっす!!先生!!もはや展開がコマ送り早送りで凄い事凄い事……。

 

『“アヤネなら見つけられるはず、この繋がりを。一つ一つの問題を切り離して考えるのも大切だけど、自分の勘を信じてごらん?君のアビドスを救いたいって気持ちは必ず結び付けてくれる筈さ…今のアビドスの現状がどうなっているか”』

 

 

結果、その金の流れがカイザーに辿り着き、カイザーコンストラクションが二年前にアビドスの土地の所有に関する取引を行っていた事。過去の生徒委員会達が何をしていたのか。これからどうすればいいのか、そしてどんな思いでアビドス学園を救いたかったのかを対策委員会の面々と話し合ったらしい。

 

勿論、話し合いは激化…セリカちゃんは飛び出していっちゃったし、ホシノちゃんの言動から「うへ」も「おじさん」も消えてしまった。ただノノミちゃんの協力もあってなんとか『カイザーローンの借金』を不正証拠による摘発で無くすという結論に。

 

『“私が調べておいたことがあるんだ、連邦生徒会に保存されていたアビドスの土地の権利書、その登記申請書は無い。つまりカイザーは登記申請書を契約していないし、交付されていないアビドスの権利は現状、正式には宙ぶらりんという訳さ。連邦生徒会に目をつけられたくなかったんだろうね』

 

『“違法も違法……浅ましい悪党のやる事はどこまで行っても浅ましい、決まって愚かな結末を迎える”』

 

『“今まで連邦生徒会の目の届かない場所でコソコソ動いたんだ、もう十分アイツらは甘い蜜を吸ったさ”』

 

そして他にも犯罪の動かぬ証拠を手に入れる為、先生に絆されきったヘルメット団の子から聞いた情報…資金提供元のカイザーローンの銀行を襲撃する予定を組んだらしい。

 

……ほとんどメインストーリーとはかけ離れた挙動をする様になってしまったが、それもこれも先生が何か隠していること、そしてヘルメット団をほとんど壊滅に追い込んでしまった私の失態だ。

 

ただ、ブラックマーケットに入った時にヒフミちゃんとエンカウントした事…そして覆面水着団リーダーファウストがこの世に爆誕したのは語ることもなかった……頑張れ!ペロき……ヒフミちゃん!いつも見守ってるよ!!!

 

 

 

そして……

 

 

 

“デミこそ、ハスミに頼んで家からお泊まり用セット持ってきてもらったけど、数日間シャーレで過ごしてみて問題は無い?”

 

 

「問題だらけっすよ!ユウカちゃんの視線は日に日に強くなってるし、世間の噂知ってます!?『正実の鬼神がシャーレの先生に手篭めにされた』って!!」

 

“あはは、ごめんね、でもこうしないとデミは直ぐどこかへ行っちゃいそうだし?デミが悪いんだよ?私の手を振りほどいて行っちゃったから……”

 

ジトっとした視線を向けられながら近寄ってくる先生。

 

「ハハ、あの先生?目が、目が怖いっす!ちょ、ちょっと待ってにじり寄らないで!?」

 

ガッと手首を掴まれ先生の胸へと抱き寄せれる。

 

“ほら…デミ、振りほどいてご覧?”

 

「あ、う……その…」

 

駄目だ…こんなの卑怯だ、振り解けるわけない。

 

“君は力を振るえば直ぐに私の事なんて置き去りに出来てしまう、それをしないのが君の優しい所だよ”

 

「でもあの時……!」

 

“それは私が頼りないからさ、君の優しさに答えれる程私は強くなかったし頼りなかった。だから…頑張るよ、君に頼られるような『大人』としてね”

 

連日この様子で、私を離してくれないのだ…それをなし崩し的に受け入れている私も私なのだが。

 

未だに夢は見ない、寝るのが今は怖くない。今私は生きているのだろうか?本当はあの時無茶して死んで…………その死体が見続けている夢なのではないか?そんな漫然とした不安がのしかかるほど、苦痛から離れている。

 

幸せ……なんだ、幸せになっていいのか?なんで今私は……いやいい、先生が『大人』が助けてくれているんだ……今はもう…。そんな幻想を抱く程に、私の心は絆されていく。

 

「もう!先生の事大っ嫌いっす!!!この!この!」

 

“いて、いてて、ごめんってば〜”

 

 

「そんなタラシムーブばっかしてると、いつか誰かに後ろから刺されても知らないですからね!!」

 

本当にこの先生は狡い、まさに『大人』なのだ、私は生徒で『先生』というものはこうやって

 

 

 

 

 

パン…

 

 

 

 

 

ニコニコしながら、先生の胸に顔を埋めていると、そんな軽快な音と同時に先生が、頭から血を流して……流し…て?

 

 

 

 

「え……?あれ?」

 

 

「先生!?先生なんで、え?先…生!せんせい!!せんせ…」

 

 

 

さっきまで力強く抱き寄せられていたのに、今は私にもたれ掛かるばっかりで

 

 

 

「せ、せ゛んせい?いき、生きて…生き返って゛そうじゃない!!まだ…死んでない!まだ…」

 

 

先生だったものの血が顔に垂れてきて、混乱と恐怖から私にもたれ掛かっているものを突き飛ばしてしまった。

 

 

「あぇ……?ち、ちが!ちがうこんなことしたかった訳じゃ……あっ」

 

 

 

 

死体(先生)と目が合った

 

 

 

 

 

逃げるな

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ…ハァッ…!ハァッっっ……!」

 

 

「先生!!!!せんせいっ!何処…どこに……どこに!!せんせっわた、私が!気を許した゛から゛…ッッ!ッハァッ……!ぅあっ……ハアッ…」

 

シャーレの事務室、そこのソファーで目が覚める。

 

「あ………………あぁいや、はぁっ…さっき先生と話して…便利屋の子達にまたラーメン奢ってくるって……」

 

「あ、あはは……ぅおぇえ…!!おえ゛っ、はぁ、ダメだな私…ははは……ちょっぴり…先生に優しくされたからってすぐこんなんじゃ……はははは」

 

時計に目を配ると、まだお昼どきで昼ごはんも食べていなかったなーと思い出す。

 

“逃げるな”

 

「逃げるな…か、そうか、そうだよね…これは『逃げている』だけなんだ。いつか来る結末から……」

 

また見えてくる、瓦礫の平原、血に塗れた手、屍の山。私の足を掴んで話さない、ブルーアーカイブ。

 

「ぅ……うぅううう……!!!」

 

ピロン…!

 

懐にしまってある携帯から着信音が鳴る、モモトークの通知音だ。

 

「…ん、誰からだろ」

 

メールを送ってきたのは…アヤネちゃん?お昼ご飯のお誘いかな?

 

携帯に目を落とす。

 

聞きたくない話が目に飛び込んでくる。

 

《先生が!先生がゲヘナの風紀委員の迫撃砲に巻き込まれて……》

 

それ以降の言葉は覚えていない、それよりも疾く私の足は飛んでいってしまっていたから。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

■破壊されたアビドス市街地

 

 

「50mm迫撃砲、着弾確認!」

 

「よし!包囲開始と共に第一小隊と…第二分隊は私に続け!」

 

 

 迫撃砲命中の声に頷き、イオリは風紀委員達に指示を出していく。

 

 

「……イオリ、幾ら命令が出たとはいえ…少しやり過ぎでは?」

 

 

「え〜?大丈夫でしょ!そもそもアビドス……だっけ?この自治区とっくに数年前から自治活動放棄されてるし廃校寸前のアビドス学園から誰か来るわけじゃないでしょ?」

 

「それは……そうなのですが」

 

 

爆煙が晴れ、ラーメン柴関が半壊した姿が現れると同時に、視認してしまった…その半壊した柴関でシャーレの先生らしき人物が倒れているのを。

 

 

「あ、あれは……イオリ!何故先生があそこで便利屋と共に倒れているのですか!?」

 

「は!?いや、ち、違う!だってシャーレの先生がアイツらと一緒に居るだとか思わないだろ!?」

 

ムクリと起き上がり始める便利屋の面々。

 

 

「風紀委員会!!一体どういう了見が!あって!あんたたちが!!先生を!攻撃してるのよ!!!」

 

 

「ア、アル様!せ、先生が、先生が!頭から血を流しなが、流して動かなく…」

 

 

「カヨコ!先生の手当と後方への避難!信頼には信頼で、無法には無法で返すわ!!ムツキ、ハルカ!行くわよ!!」

 

 

「分かった、手当と避難が完了したら直ぐに戻る」

 

 

「……あはーっ、私達にあ〜んなに良くしてくれた先生をこんな風なしちゃうなんて……ぶっ殺すしかないよねっ!!!」

 

 

「許さない…許さない…許さない!!」

 

 

「ク、クソ!とりあえず向かいうて!先生への話は便利屋を制圧してからだ!」

 

「私としては事情を話した所でもう許してくれなさそうだと思いますけどね……」

 

 

戦闘が始まり、便利屋の各々は先生のサポート無しでも驚く程の連携を見せ、風紀委員達を圧倒していく。

 

 

「ただいま社長、行き道アビドスの奴らとも出会ったから連れてきたよ」

 

カヨコの背後には対策委員会のメンバーが怒り心頭といった様子で銃を構えている。

 

「うちの先生を怪我させたって本当!?許さないわ風紀委員会!」

 

 

「……潰す」

 

 

「あはっ、どんな言い訳を用意していたらこんな事出来るんですかね!教えて貰いたいです〜!」

 

 

[こちらアヤネ、一通りの救急処置は終わりました。命に別状はありませんがまだ目は覚めていません、やっちゃって下さい]

 

 

対策委員会……ホシノを欠いてはいるが。三人が合流し、風紀委員が殲滅されていくスピードは更に増していく。

 

「なんでアビドスの奴らまで!?ま、まてまて!こちらには事情が」

 

「そんな言い訳の仕方じゃあのガトリングを構えている子に吹き飛ばされますって…!」

 

「許さない…許さない!!」

 

「はっ!?うげぇっ!」

 

肉薄されたハルカにショットガンをぶち込まれきりもみ回転で吹き飛んでいくイオリ。混沌を極めていく戦場の最中、通信がポツリと繋がる。

 

 

[お待ちください、対策委員会の皆様]

 

 

「っ!アコ行政官!」

 

「ぐぇ…アコちゃん!?」

 

その通信に戦闘の手が一旦止まり、戦場は静寂に包まれる。

 

[対策委員会の皆様、まずは挨拶……そして謝罪を、私は天雨アコ。ゲヘナ学園所属、風紀委員会で秘書の様な役回りをしています。私達所属の銀鏡イオリによる自治活動の結果、先生の負傷という事態が起きてしまったこと…深く謝罪致します]

 

 

[天雨アコ…行政官という事は風紀委員会のNo.2ですね?このような他の自治区に侵入し、戦闘活動を行った理由はそれだと?]

 

「自治活動…?これの何処が自治活動っていうのよ!」

 

 

[それに関しては本当に申し訳ございません。本来は私達の学園の規律違反者……便利屋の逮捕の為に活動を行おうとしていたのですが、イオリが少々突っ走ってしまいあらぬ誤解を招いてしまいました]

 

 

「ちょ、ちょっとアコちゃん!?私、指示通りに」

 

 

[一体いつ、誰が、無差別に発砲をしろといいましたか?反省文のテンプレートの位置、覚えています?]

 

 

「……」

 

 

[という訳で、アビドスの皆様にも活動の協力をお願いしたかったのですが……こうなっては仕方ありませんね、諸共鎮圧させてもらいます]

 

アコが右手を上げると、周囲の兵が動き出すと共にアヤネがレーダーから異様な反応をキャッチする。

 

[こ、これは!包囲網の更に後から大隊規模の人数が確認出来ます……!どうしてこんな…]

 

 

更に追加された兵力に一旦は狼狽を見せるが、アコの話を聞いた二人が声を揃えて話す。

 

 

「「……嘘だね、天雨アコ」」「ん、貴方も気がついた?」「アビドスにも感が鋭い奴がいたんだ」

 

「「[!!]」」

 

「本当の目的は私達便利屋でもなんでもない、ここまで強制的な捜索を行った理由……先生、でしょ?」

 

 

[カヨコさん……]

 

 

[先生…!?それは一体どういう…]

 

「ここまでの兵力、私達を相手にするには多すぎる事、後から来た大隊で更に確信した。別の部隊…先生との戦闘まで見越して戦力を用意したね?」

 

「ん、私は勘」

 

「……しまらないな、ともかくアコ、付け加えるとこれはあんたの独断行動。便利屋を追うだけでこんな非効率的な運用は普段の風紀委員会のやり方じゃない」

 

そう指摘され、先程まで冷血淡麗であった顔は少し怒りの感情が混ざったものになる。

 

[ふふっ。そうでした…便利屋にカヨコさんがいるのをすっかり忘れてペラペラと……そうです、私の目的は先生、もとい『シャーレ』あのような超法務的機関……この先のゲヘナとトリニティの条約にどんな影響があるか分かりません]

 

 

[故に条約締結までは風紀委員会の庇護下に居てもらおうかと……その場にいた不良生徒の戦いに巻き込まれた先生を治療しなくてはなりませんしね?]

 

 

ザッザッザッ…とそれまで聞こえていなかった戦闘の始まりを告げる足音が響き渡る。

 

 

「ようやく分かりやすく戦う気になったわね!便利屋!行くわよ!」

 

「言われなくても私の先生を怪我させた奴らに、これっぽっちも服従する訳ないじゃない!便利屋68!出勤!!」

 

「先生の怪我した分、身体で払ってもらいましょう☆」

 

「ん、ぶっ飛ばす」

 

 

[ふふっ……ふふふ…この戦力差で貴方達に何が出来ると?頼みの先生は気絶中、こちらは戦力の殆どを真正面からぶつけるだけでも勝てますよ?]

 

 

「それがどうしたっていうのよ、諦める理由になると思ってんの?」

 

[いえ、単なる事実です。実際にこれ以上の不安要素は………]

 

 

[不味いです!!みんな!!!止めてください!!]

 

アコの通信を遮るようにアヤネが全力で叫ぶ、その唐突な悲鳴のような叫びに対し誰もが耳を傾けた。

 

「アヤネ!?一体何が…」

 

 

 

ズドォオオォオオオォオオンンンンン!!!!!

 

 

 

 

戦闘の余波で瓦礫となった柴関に隕石の衝突とも錯覚できる程の衝撃が走る。立ち込める土埃……その中から表れたのは…。

 

[トリニティの鬼神!?何故ここに!?]

 

 

「デミ……ちゃん…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

暴虐 到来




G-1.0見てきました……神木隆之介さんはサディストな監督に好かれすぎる運命にでもあるんですかね……?



連続の曇らせで気が滅入りそうだ……私も本当はこんな事したくないんだよ……でもこうでもして消耗仕切らないと君、人に頼んないでしょ?自分の手が満杯になってこぼれ落ちる前にこうしなきゃ、きっと取り返しのつかないミスをしてしまうだろうから……。だから、だからこの話が終わったら沢山休もうか……デミちゃん。




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