ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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終わらぬ狂熱

「…綺麗だな」

 

 

洛陽が遠くに見える、オレンジ色に染まる視界には見覚えがある。

 

 

「綺麗…」

 

 

夢の中の、幾百、幾千倍綺麗だ。

 

 

「眠たい」

 

 

夢の中じゃないから眠い、遠目に見える太陽が眩しい、瓦礫と、人の血の匂い。

 

 

同じじゃないのは、あの言葉……『どうして』とだけは聞こえない。

 

 

きっと、どうしてこんなことをするのか…なんて理由は、聞くまでもなく言うまでもなく、何が理由でもどうだっていいから。重要なのは全て燃やす事だけ。

 

 

そして、その言葉を言うべきも、■■■■が…。

 

 

「……暑い」

 

 

身を焦がす様な火も、本心から熱いわけじゃなくて…まぁ、真夏に長袖着てる感じ。

 

 

「……………寒い」

 

 

そして、こんな炎の中にいて……

 

 

寒い。

 

 

寒くて、冷たくて仕方がない。足先から指先まで冷え込んで泣いてしまいそうになる。

 

 

 

「眠いし寒いし、疲れたしダルっ!……はぁ、早く寝たいな」

 

 

「貴方が寝る場所は、冷たいヴァルキューレの牢獄だけど」

 

 

「うるせぇうるせぇ、なんで三割使った上で負けなきゃならないんだよ」

 

 

「貴方が弱くて、私が強いから」

 

 

「……はは」

 

 

流石に倒壊させたビルの半分を打ち砕いて、そのまま私ごと吹き飛ばす力技は驚いた。

 

 

そのまま蜂の巣にされ続けて、炎上の影響もあるし再生の限界が来ちゃって…夢の中だと勝ててたんだけどなぁ…強くなりすぎじゃね?

 

 

「ヒナテラーとホシノテラーを見る事が無くて良かった…これ以上にボコボコにされたらたまったもんじゃない」

 

 

「……?」

 

 

「…世界が燃えていく事に貴方達は強くなる、『本質』に近づいていくから、本当を隠し切れる程のリソースを割けなくなっていく」

 

 

「ヒナちゃん、貴方は自分の真実に耐えられるかな」

 

 

「先生を守りきれなかった、貴方の罪に」

 

 

「…何を言って…ーー」

 

 

突然、なんの怪我も受けていないヒナがフラフラと倒れ、気絶する。

 

 

「…始まったか、そろそろ無名の司祭共の干渉も始まる……それまでに燃え尽きれるかな」

 

 

後るは…

 

 

五割。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

豪炎に包まれる調印場に、戦争を思わせる程の射撃音と獣も逃げていくような叫び声が走る。

 

 

 

 

「クソ!熱いな!!」

 

 

「デェェェェェェミィィィィ!!!!」

 

 

「…なんだあの化け物」

 

 

空を『走る』化け物、ツルギは空中に浮いているデミに向かって突撃している。

 

 

対するデミは空を見上げたまま、ボーッとしていた。

 

 

 

「焼却割合は…五割か」

 

 

「ワイルドハント……ハイランダー…アビドス、ゲヘナヒノム火山、廃墟……」

 

 

「……!やっべ、エリドゥが先に燃えちゃうのかコレ…しまったなぁ、記憶に準じてると考えればパヴァーヌ関連はもうちょい後ろで…」

 

 

「デミィィッッ!!!」

 

 

「……はぁ、そんな!叫ばなくても!!聞こえてますよォッ!!」

 

 

 

ツルギのショットガンは遠に砕け、燃えカスとなっている。

 

 

 

友愛を送った、元友人へ彼女が振るえるのは拳のみ。

 

 

 

「辺獄よ、その熱を解き放て」

 

 

「ぐがッ…!?」

 

 

拳が届く一歩前、ツルギの手が『凍った』。

 

 

 

「権能並行使用、預言者をここに」

 

 

 

頭上に浮かぶ、赤黒い太陽が輝きを増す。

 

 

 

「ナラム・シンの玉座と接続……反転の預言者を出力、同時にシッテムの箱へのジャマー開始」

 

 

「玉座の影響範囲を炎球内へ限定放出、反転(テラー)を引きずりだせ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここ…は…」

 

 

「調印式場………ぐッ…!」

 

 

身体が痛い、感覚的に数本骨が折れている。それに加えて相当の被弾をした様で身体が思う様に動かない、視界もブレブレで立っているのがやっとだ。

 

 

「…一体何が、私は…」

 

 

頭から血が流れ、瞳に入ってくるのを手で払い、思考を覚ます。

 

 

私は彼女と戦闘中だった筈、漸く追い詰めて銃を突きつけた後……。

 

 

「……分からない、けど……動かなきゃ…」

 

 

周囲を見渡すと、先程の瓦礫だらけの光景と大きな違いは無いけれど…。

 

 

血、血の匂い。噎せ返るような血の生臭さが香っている。瓦礫の下からはゲヘナかトリニティかどちらか分からない生徒の手がはみ出ていて、下敷きになったまま息絶えているのかどうかも分からない有様。

 

 

太陽が差し込む事は無く、赤黒い太陽から曇天が輝く真っ暗闇の真下にいる様な感覚に襲われる。

 

 

そして地獄の様な見た目とは裏腹に、真夜中の田舎道程に静かだ。

 

 

「…曇り空……一体どれぐらい気絶して…」

 

 

『……ーー』

 

 

「…!!」

 

 

そんな空間で、ふと声が聞こえた気がした。

 

 

 

「救助者…!もっと声を上げて!!直ぐに向かうわ!」

 

 

 

『…ーーナ』

 

 

 

「ッ!近い…!しかも、瓦礫の下…!」

 

 

 

この地獄の様な場所で、少しでも救える命があるのなら一つでも…。

 

 

『……』

 

 

無理矢理身体を動かして、瓦礫をどける。

 

 

 

 

 

“ヒナ”

 

 

 

「…せん、せい……?」

 

 

 

「ぁえ…ぁ……ぅ…ま、待って…え…?」

 

 

 

瓦礫を退けると、腹部に鉄骨が刺さり動けなくなっている先生が居た。

 

 

胸の中心には…大きな風穴。

 

 

…そして、女性だった。

 

 

 

「先生ッ!!先生、先生!!先生!!!」

 

 

“…ご……めん、私のせいだから、だからヒナは悪くないから…”

 

 

「もう喋らないでッ!!直ぐに救急医学部に…!」

 

 

“目を、つぶって”

 

 

「せんせ…ーー」

 

 

 

 

“いつか……託す、私に……だから、それまで、この記憶を思い出しても……”

 

 

 

 

“待ってて、きっと迎えに行く……ヒナの、せいじゃない”

 

 

 

 

それだけ言われて、息絶えた。

 

 

 

 

「ぅ…あ…なん、で……あれ…女の、人?…先生……あれ…」

 

 

 

頭の中に駆け巡る記憶が告げている、これが現実だと。

 

 

 

実際に引き起こされた事態、この女の人は先生で、そして思い出す。

 

 

 

 

 

この光景を生み出したのは、自分だと。

 

 

 

 

 

「ぅ………ぅぅ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎球の中に居た生徒が、また一人また一人と頭を抱えて叫び出し始めた。

 

 

 

「うぐッ…あ、頭が…クソ、アリス…!」

 

 

「…リオ……ぅ…誰…せん、せい?」

 

 

「ぅあああああ!!?!!?」

 

 

「だからッ!言ったのに…!!だから!!…ぅぅッ…ぁあ…もっと、早く……私が連れて帰っ…ーーえ?」

 

 

苦しむ皆は様々な様子を見せるが……共通して一つの単語を吐いて、それぞれ気絶していく。

 

 

 

 

「「「…(アタシ)のせい…?」」」

 

 

 

 

 

 

炎の平野の上で意識を保っているのも、ここ周辺ではたった二人になる。

 

 

 

 

 

 

「…さてと、アリス〜…おいでー」

 

 

「……お母さん…」

 

 

「ごめんね、醜い所見せて…ほら、膝の上乗りな」

 

 

「……」

 

 

対話を終えたのか、いつの間にか起き上がっていたアリスがトコトコと歩き、ボーッと空を眺めながら座り燃えているデミの膝に座る。

 

 

「…なつか、しいなぁ……」

 

 

「こうやって、よく……本当は、もう一人……」

 

 

「…お母さん」

 

 

「はは、アリスみたいな子をよくお膝の上に乗せてあげてたから…」

 

 

「…でもねぇ、お母さん、お母さんとして失格だから…もうお母さんなんて呼んじゃダメだよ?」

 

 

「……」

 

 

燃え尽きる速度は加速していっている。先程は指先や手足の先までだったが…今は、もう…。

 

 

 

「…ごめんね……ごめん、ごめんなさい…」

 

 

「あの子を…殺して……置いていって…」

 

 

「…お母…ーーデミお姉さんは、一体…何を……?」

 

 

 

 

 

「はは」

 

 

 

 

「私が殺しちゃったのはね、一人じゃなかったの」

 

 

 

憎たらしいあの男、自分と血が繋がっているとすら考えたくない最悪の大人。

 

 

それと、もう一人。

 

 

 

「…ここに来て、何歳目だっけなぁ…今、18歳で……向こうで…15辺りだったから…33かぁ……長生きしたなぁ」

 

 

 

 

辺獄とは、罪なき幼子や原罪、洗礼の恵みを受けないまま死ぬ事で罪の罰無き死後を迎える場所。

 

 

 

だからきっとここは、その子の夢の中かもしれない。

 

 

 

私が殺した人間は、もう一人居る。私の父親(クズ)と…ーー

 

 

 

 

私が、宿していた

 

 

 

もう一つの命。

 

 

 

 

「だから、燃え尽きるまで…終わらないんだ、ごめんねアリス」

 

 

 

「…っ、お母さ…ーー」

 

 

 

「終わらないんだ、終わってない、終わらせなきゃ」

 

 

 

「それだけが、最後の望み…だから……ね…」

 

 

ゆっくりゆったり目を瞑る、誰かのせいじゃなかった、私のせいだったから。

 

 

貴方が世界に産まれること無く、誰にも産声を聞いてもらう事無く消えていったのは私のせい。

 

 

 

 

『どうして』

 

 

 

 

私のせいだよ、■■■■。

 

 

 

 

 

 

 

 

“聞いたよ、君の声を”

 

 

 

肯定(産声)を”

 

 

 

“だから次は…君の番だ、デミ”

 

 

 

「先生…?」

 

 

 

「……は?…はは…どう、やって……全部の戦力を、奪った上で……マエストロに足止めを…」

 

 

 

“迎えに来て欲しそうだったから、先生としてその手を取らない選択肢は無いかな”

 

 

 

「私も、居ますよ…デミちゃん」

 

 

 

「あぁ」

 

 

「ダメだ、駄目だよ来たら…その為に巻き込まないように…燃やさないように、『先に』燃え尽きるように…」

 

 

 

「…ヒフミちゃん」

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