ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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奇跡の終着点

“発動には特定の条件が必要である…!”

 

 

分かたれる二つ、相反する者達の奇跡の残穢。

 

 

“ミカ、ヒフミ!手を繋いで!”

 

 

「うん!」「はい!」

 

 

一寸の狂いなき肉体、完全な肉体による入れ替わりスワンプマン。

 

 

“マエストロ!起きろ!起きてって!いつまで寝てるの!?投げ飛ばすよ!?”

 

 

「ーーーー」

 

 

「先生、彼は既に力を貸していますよ」

 

 

「そういうこったぁ!!!」

 

 

境界線に立ち、存在の解釈を無限へと薄める。

 

 

“アロナ!地下から露出したナラム・シンの玉座を強制起動して!聖槍二本とシャーレ管理区域の全てのリソースを今吐ききっていいから!!”

 

 

「了解しました!先生!」

 

 

そしてセフィラを語る使徒とDECAGURAMMATONの天路歴程の転用。

 

 

“アリスーー!!!お願ーーい!!”

 

 

「せんせー!!」

 

 

最後に基点、全ての奇跡が在る場所へ。

 

 

“最後だ、デミ、私の…カードを握って?”

 

 

「…は?いや、そんな事したら…!」

 

 

“デミ”

 

 

「…もーー!!!惚れた女の弱みだ!もう!もうもうもう!!どうなっても知らないですよ!?最後には絶対私の事手放して…」

 

 

“うるさいうるさい!なんも聞こえないや!ガッハッハッ!!”

 

 

「マジでこのクソ教師ッ!!」

 

 

 

ふぅ!はぁっ……!…はぁ……【ナグ・ハマディの福音計画】を…一体何処で知ったんだ…?コレは、私とゲマトリアしか知らないはずだったのに…。

 

 

 

「……先生は何処のどいつと…手を組んで…」

 

 

 

 

…………そもそも、私達ゲマトリアの今回の目標はなんだったのか。

 

 

調印式のアリウス襲撃『自体』を乗っ取ってまで、何がしたかったのか。

 

 

一言で表せば、無名の司祭への対抗、だ。色彩を敵対視するゲマトリアにとって、同じく崇高への道を阻害する司祭の干渉も防ぐべき事象であり、それが私という世界滅亡の要因そのものに成りうる存在に対しての干渉ならば尚のこと。

 

 

それより前に、『私』を使ってしまおう、という事なのだ。

 

 

“完全発動まで、3、2、1…!!”

 

 

「はぃ!?先生っ!?何発動しちゃってんすか!!アレが発動すれば、キヴォトスの全生徒が人類補完計画……モゴモゴ…ってな感じになっちゃうんすよ!?」

 

 

“発動ッ!!”

 

 

「このバカァ!!?」

 

 

 

端的に言い表せば、この計画は崇高への到達に等しい。私の存在を代価とした真の神の器の顕現。

 

顕現させるのは器のみ……だが、その器が顕現してしまえるという事は…その『中身』も共にこの世界に降り立つ事と同意義だ。

 

 

つまり、ゲマトリアは崇高と謁見する機会を得る。私は私でその代価として消費されるが……。

 

 

その影響のついでで、この世界は永遠に崇高の手によって封をされる。

 

 

進む事も無い、戻る事も無い、永遠に幸せな夢の中で囚われ続け、未来を失うんだ。

 

 

それがこの世界の救済方法、永遠の微睡みと停滞によって行われる、『これ以上の不幸』が存在しない楽園。

 

 

……。

 

 

正直、理解出来たのはここまでなんだよなぁ…。羽音デミと連邦生徒会長が、それからどうやって、一体何を引き起こすのかすら分からない。

 

 

“……大丈夫”

 

 

「大丈夫って……ッ!?ぐっ……ぐぞぉ…あたま…いっった……」

 

 

「…!!!」

 

 

「ヘイローが…!!」

 

 

私の頭の上に浮かんでいた黒い太陽の様なヘイローが、ひとりでに浮かび上がり遥か上空へと飛んでいく。

 

 

そうして形を成していき、辿り着いた先は……。

 

 

 

 

「…は!?嘘だろ、色彩…!?」

 

 

 

記憶にある、色彩の姿だ。

 

 

 

だが色彩そのもの、というよりは少し……。

 

 

 

「……いや、少し違う…あれが…崇高?」

 

 

「違いますよ、羽音デミさん……どうやら、最初から私達は利用された様ですね、『羽音デミ』という存在の記号をここまで己の意志で利用するとは…」

 

 

ゴルコンダの話し方は毎度毎度理解しにくい…!

 

 

「………」

 

 

…あれは色彩でも無く、崇高でも無い。なら、あれは…なんだ?何が起きている?何が始まろうとしてるんだ…?

 

 

“本当に成し遂げているとはね”

 

 

「……教えてくれます?」

 

 

“時間が無いから、端折るけどね……”

 

 

“アレが何か、それはデミの遺した二つの日記に答えはある、正体を記す記号は『有から無へ、名を失う』『天命を下せ』『精神の内海』……デミが約半年前に儀式を自力で発動し、成りたかったものは何か……”

 

 

無名の司祭と同じ状態とは一体どういう事なのか。

 

 

無名の司祭、それは太古の神々を信仰していた人々の成れの果て、私に託された記憶の中では…彼らは、キヴォトスの全ての生徒の破滅を願っていた。

 

 

…それは、キヴォトスの生徒が、名も無き神々の終着点だという可能性があるからだ、堕ちた神々の姿に彼らは癒えぬ憤怒を抱いていた。

 

 

だが無名の司祭達はシロコの内なる神秘、テラーと化してアヌビスになった時、それを信奉した……つまりは、無名の司祭の様な存在になるとは、『神秘を反転させる』事だ。

 

 

デミの、神秘……その、本当の姿になる事。

 

 

失われた名を取り戻し、名も無き神へと帰還する。

 

 

 

 

 

“少し……陳腐になるけれど、彼女は…”

 

 

 

 

“神になった”

 

 

 

「それ、は……」

 

 

 

“『アレ』が、デミだ”

 

 

先生の目線の先は、色彩を彷彿とさせる黒い太陽に向いている。

 

 

“来るよ…!”

 

 

黒い太陽が全てを飲み込んで広がっていく。

 

 

炎も、瓦礫も、気絶している生徒達も全て。

 

 

調印式に存在するもの全てを飲み込む勢いで膨張を続け、何れキヴォトス自体をその影に呑み込むであろう。

 

 

 

「来ました先生!サンクトゥムタワーへの干渉ですッ!」

 

 

“権限放棄!物理的にも干渉している全てのものを…『受け入れて』!”

 

 

「は、はぁ!?ちょい先生!?モロ色彩の到来っすよ、コレ!」

 

 

“ふっふっふ…私の事は信じれないかい?”

 

 

「それは……」

 

 

先生の元に集まった者たちを見渡す。

 

 

ゲマトリアを除けば、誰もが先生の手を握って…先生を見つめて、信頼し全てを託していた。

 

 

…それは恐らくこの場に居る生徒だけじゃない。アビドスの皆も、調印式場に居た全ての生徒がそうだろう。

 

 

「……まだ、四章もアリウスも始まって無いんすけどね…全くもう…」

 

 

「仕方ないなぁ……」

 

 

「先生は…」

 

 

もう私の身体に下半身は残っていない、さっきカードを握った手も崩壊している。

 

 

だから預けられるのは心だけ。

 

 

“……”

 

 

あの日、夢の中で見た光景が全て飲み込まれていく。

 

 

 

恐ろしく、絶望的な風景だが…。

 

 

 

呑み込まれる寸前、初めて、この世界に来て初めて……見た事の無い世界(ブルーアーカイブ)を見れた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白く、広く、ただ白い世界。

 

 

 

何も無い。誰もいない。

 

 

 

 

「……どこだ、ここ」

 

 

 

 

「先生は…あれ、皆んなも……」

 

 

 

 

「…私、生きてる?」

 

 

 

 

目を覚まし、周囲を見渡してみると辺りは白一辺倒の世界。

 

 

手足は元に戻り、血の匂いの欠片も無い。

 

 

視界に映る赤はなく、ただただ真っ白な世界。

 

 

「……」

 

 

ふと、胸の中に先生からの言葉が浮かび上がる。

 

 

「次は私の番、か……どういう事なんすかね」

 

 

「産声を聞いた、私の?……ごめんなさいって言う為だけに世界滅ぼそうとした人間の、何が良いんだか……」

 

 

「……」

 

 

「しばらく、歩いてみるか」

 

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

 

「……」

 

 

 

何も無い世界を歩き続ける。

 

 

黄泉路を歩む、そんな人生の中で…こんなにも静かな時間は久しぶり。

 

 

 

…ここが終着点じゃない事を祈る。

 

 

 

まだ、私にはまだ……。

 

 

 

「……」

 

 

「…………」

 

 

「…!!!」

 

 

 

急激に足元が沈んだ。そのまま落下してしまうかと身構えて……気づいた。

 

 

「ゴボッ……」

 

 

 

落ちてるんじゃない、溺れてるんだ。

 

 

 

「…………」

 

 

 

暗く、冷たく、命の暖かさは無い死水に沈み続けている。

 

 

 

「……」

 

 

このまま、この場所で漂い続けてしまうのだろうか?

 

 

「…寒いな……あぁ……」

 

 

 

「…さ『むい』…っ!」

 

 

 

『さむい』

 

 

 

 

「……」

 

 

 

私じゃない、誰かの言葉。

 

 

でも、私とずっと一緒にあった言葉。

 

 

夢の中で、血の中で、苦しみの中で嘆き続けた言葉だ。

 

 

 

 

「…そっか、ずっと……ずっっと…一緒に…居たんだ…」

 

 

『さむい』

 

 

「ごめんね、迎えに来るのが遅れて」

 

 

「寒かったよね」

 

 

「先生……私の番が来たよ」

 

 

 

深海へと沈む……いや、潜っていく。

 

 

 

 

漂う■■■■を掬い(救い)上げる為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぁう

 

 

うあう

 

 

 

 

 

「ごめん、ごめんね」

 

 

 

「本当に、遅くなったね」

 

 

 

「ありがとう、声を聞かせてくれて」

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

あう

 

 

 

「……」

 

 

 

「さようなら、■■■■」

 

 

 

 

…ーー泡沫へと消えていく。

 

 

 

たった数度の産声をあげた水泡が、漸く数度の産声をあげた胎児が。

 

 

 

産まれる(生命)という奇跡を通り過ぎていく。

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