ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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盛大なお芝居を貴女に

 

「『報われるんだ』人はいつか報われるべき、だから歩けるんだよ」

 

 

炎を振り払って歩き始める。

 

 

「うん」

 

 

赤い世界に多くの人影が現れる。赤い空からも、瓦礫と業火の中からも、そこから現れるのは……。

 

 

 

 

「デミちゃん!!」

 

 

「うぇぇっ!?ここどこー!?って、ハナコ!?」

 

 

「なんでまた空から落ちてるんですかぁぁぁぁぁぁ!!???」

 

 

「っ、先生!!……先生?…ここは?」

 

 

「……デミちゃん、色々言いたいことはあるけど、取り敢えず…あの子を助ければいいんだよね?」

 

 

 

 

「ん、貴方とは縁があるね」

 

 

「うへぇ〜…何処だろうねここ…」

 

 

「ちょっと!あの木人形はまだ殴り足りないんだけど!?」

 

 

「ヘリが……ヘリが…」

 

 

「そう気を落とさないで…また新しく買いましょう、アヤネちゃん!」

 

 

 

 

空からも炎の壁からも、そして瓦礫の下からもどんどんと声が響いてきていて、デミは既にミカに頭を掴まれながらボロボロの木のイスへと座る彼女へ向けて走ってきていた。

 

 

皆にテラーの面影は無く、全てはあの世界(本編)と同様だと感じれる。

 

 

 

 

「…見知った顔が沢山だね」

 

 

 

「そうっすよ、アンタと私が歩んできたこの世界の『縁』の可視化っす」

 

 

頭の中に、デミの声が響く。

 

 

「友とは繋がりそれそのもの、友愛とは全能ですら理解出来ない青春の一ページ」

 

 

「…私を倒すのなら、貴方一人でいいよね、これに何か意味が?」

 

 

 

「意味ならある、ここはアンタの自壊領域…私にも呼応し、適応されて、権能は燃やされていっている…出来るのは、こうやって皆を呼び込む事」

 

 

 

「……はは、つまんないなぁ…そういう時位絆の力だとかなんだとか…」

 

 

 

「信じる力に絶望してる相手に、そんな解説が必要っすか?」

 

 

 

「………そうだった、貴方には知られてるんだった、同情でもした?」

 

 

 

「したっす、哀しかったし悲しかった、苦しかったし嫌だった、勿論貴方本人を目の前にして言えることじゃないっすけど…私は…あの物語がいつか光を浴びて欲しい、暗く、深い『虚無』のお話だ」

 

 

最後には何も残らなかった、最後には何も成しえなかった。

 

 

多くの無意味を積み上げた物語、意味を失わされた物語。

 

 

誰がどう見ても虚無でしかない、悲しく虚しい…ーー

 

 

 

「そんな物語が、私の光なんだ」

 

 

 

 

「……全くもう…」

 

 

 

「父親のお陰であの子に会えた、弟のお陰で私は世界に色が灯されて、この世界に来てもその灯火は輝き続けていた」

 

 

 

「……」

 

 

 

「でも、それでもこの世界は私の居場所じゃない、ここは『私にとって』影の中なんだから」

 

 

 

「あーー!!もーー!!分かってるよ!!!!!じゃなきゃ(全能)の心が動くかバカ!」

 

 

 

そう叫んで頭の中の声が途切れる。

 

 

 

「…ふふ、そっちから言ってきたのに……」

 

 

 

天命に従え(自分自身に)って」

 

 

 

 

責任とは罰では無い。

 

 

責任とは、罪では無い。

 

 

責任は、いつか報われる自分の為に背負う……救いである。

 

 

 

「……でも、もしそれが……いつまでたっても、いつまでも待っても…」

 

 

「報われ事無く、打ち捨てられていったら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったくあのバカ…自分で選択しぼって進むか戻るかの二者択一しか出来ないのはリオちゃんの二の舞だろうが、はやく先生のメンタルセラピーにぶち込まないと…」

 

 

「え〜?バカって今言った〜?」

 

 

「うぎゃぁぁぁっっっ!?!?痛い痛い痛い!アイアンクローやめてミカ様ちゃん!」

 

 

「あは☆その呼び方辞めてって言ってたよね?空っぽの脳みそのデミちゃんじゃ覚えてないかな〜?」

 

 

「ごめんなさい!ごめんなさいってば!色々黙ってたことは悪かった!」

 

 

「あらあら…楽しそうなことしてますね、ミカさん、デミちゃん?」

 

 

「ウゲェッ!?あ、あの…その……」

 

 

「お話、しよっか」「お話、しましょうね」

 

 

「「デミちゃん」」

 

 

「ごめんなさいって!本当に!本当に反省してます!!あの!でも今時間が無くて!!ほ、本当に時間が無いの!ヤバいって!!あぅあぅあぅあ……関節、関節が!!」

 

 

身体を2人がかりで雑巾絞りにされ、ミカが持つ足側に至っては引きちぎれそうな程に捻られている。

 

 

さておいてといった雰囲気でデミを床へと放り投げて、瓦礫を積み上げた場所へと佇む少女へ目を向ける。

 

 

「既にヒフミちゃんはコハルちゃんと一緒に向かってますね……そしてあの子が、やっぱり…あの時のデミちゃんですね」

 

 

「ふーん?もしかしてあの子もデミちゃん?」

 

 

「さ゛さ゛っしがいいっすね……はなこ…あの子が、アンタが憐憫を抱いて手を伸ばそうとしていた方の…子供っす」

 

 

「合宿場で共に過した…」

 

 

「『お願い』『助けてあげれますか』?」

 

 

「………」

 

 

 

「ミカさん」

 

 

 

「行きましょう」

 

 

 

「貴女に言われなきゃ行かないとでも思ってるの?」

 

 

 

「うふふ、それもそうですねぇ…」

 

 

 

 

「うぐぐ…」

 

 

 

放り投げられた身体を起こし考える。

 

 

勝利条件は至極単純。

 

 

この領域は私の大権能を封殺するが故に、他者がそこへ干渉すればこの世界は崩壊する。

 

 

つまり…。

 

 

「触れたら、勝ちっす」

 

 

私以外の誰かじゃないと駄目だが…ここにはもう、私以外の希望が大勢居る。心配する必要があるのは…。

 

 

「……」

 

 

本当に世界の終わりの様な光景が目の前に広がっている。

 

 

あの時の炎では無く、血炎が舞っていて…本来自分自身しか焼却出来ないはずの炎は血という『質量』を持つ事でこの領域のあらゆる角度から壁と血の柱が襲い続けていた。

 

 

「…燃え尽きる速度が早い……」

 

 

この世界、連邦生徒会長と先生の会遇場所へと侵入する為に、私は以前の世界でアトラ・ハシースを取り込んでいるし、『以前』の私の人格を覆い潰した子も私の中で眠っている。

 

 

全能、方舟、救世の魂、それをもってしても彼女の自滅速度の方が早い。

 

 

…考えろ私、このまま指くわえて見てるだけか?

 

 

 

 

 

「行って!絶対道は開ける!!」

 

 

「ヒナさん…!ありがとうございます!!」

 

 

赤の摩天楼、その空を駆ける主役は全員。

 

 

だがその中で一番のスポットライトが当たるのは…ヒフミ、彼女だ。

 

 

四方八方から血の壁が襲い、足場は消え、無理矢理空中戦を続けてはいるが墜落も時間の問題…彼女が座っている瓦礫の山と椅子以外の足場がどんどん血炎の塊となって消失しているのも苦戦の理由っぽい。

 

 

「……」

 

 

…足りないのは、あの頂上まで辿り着く足場だよな。それと連携もそれぞれ別々に妨害され続けてるせいで難しい。

 

 

やれることはある、だけど一か八かの掛けどころじゃない。失敗と全滅の単語が永遠と脳内でループしている。

 

 

 

「ーーデミ」

 

 

そんな迷い、低迷する思考の中を一筋の声が貫く。

 

 

何度も聞き慣れた、私の最も信頼出来る先輩の声だ。

 

 

「ハスミ…先輩…!!」

 

 

「普段から突撃と破壊しか出来ない貴女に聞くのもなんですが……策はありますか?」

 

 

「…あるっちゃ、有ります……ヒフミちゃんだけが辿り着ける希望的観測過ぎる策が」

 

 

「やりなさい、私がサポートします」

 

 

「…へ?いやでも…」

 

 

 

 

「貴女が見てきた私達は、『その程度』ですか?」

 

 

 

 

その言葉を胸に受けた瞬間から、既に私は…。

 

 

 

「そうっすよねッ!!」

 

 

 

ーー即座に行動に移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

身体の中から突如湧いた違和感。

 

 

それはきっと、この視線の先にあるものが原因だろう。

 

 

 

「…崩壊したアトラ・ハシース……」

 

 

あの時のように空中で爆発しながら、ここへと落ちてきている。

 

 

黒服も案外やるものだと思った、結論は間違ってたけど推測は合ってたもんね、流石ゲマトリア。

 

 

 

「……ヒフミちゃんが居なくなった?」

 

 

 

こっちへ向かって、皆の力を借りてずっと走ってきていたヒフミちゃんが視界から消えている。

 

 

 

「…考えてる時間は無いね……私も切り離す準備をしないと」

 

 

 

時間は無い、この焼却に皆を巻き込む訳にはいかない。

 

 

 

「待ちなさいッ!!」

 

 

「…ハルナちゃん……」

 

 

「私を味わっておいて、食い逃げは許しません!!」

 

 

「ハルナぁ!?身を乗り出さないでって!落ちるよ!?」

 

 

「…はは、ふうカーも散々だねぇ…もうボロボロを超えてるって、はは」

 

 

「お母さん!!アリスも居ますよー!」

 

 

「アリス!捕まっとけ…!!決着付けに行くぞッ!!」

 

 

「私達も居ますよ〜☆」

 

 

「とぉりゃぁっ!!」

 

 

 

 

ホシノが振りかぶって投げつけて来た盾を弾きながら考える。

 

 

……念入りにすり潰した筈のネルが、バイクらしきものに乗ってコチラへ来ているが…多分、あのバイクはトキちゃんの武装変形か。

 

 

「……」

 

 

推測通りに辺りを見渡すと、血で汚れたトキちゃんが全ての武装を解除して瓦礫に寝そべっている。

 

 

「…急に連携を取り始めた……?」

 

 

それをさせない為に血炎で全員を個別に対応していたのに、今繰り広げられている光景には『合わせ』を感じさせられる。

 

 

ずっと私の寝首をかこうとしているヒナちゃんは周りに合わせればいいだけなのは分かるが……。

 

 

バチュンッ!!

 

 

「……!」

 

 

突撃してくるヒナちゃんを狙った血炎の壁が狙撃で破壊された。

 

 

 

「カリンちゃん…?いや、この射撃音は…ハスミ先輩かなぁ…」

 

 

 

「……」

 

 

 

「……デミちゃんが何かしてるな」

 

 

「おいで、■■■」

 

 

血炎の胎児を抱き抱える。泡沫へと還ったあの子では無くて、私が守れなかったあの子の命……その贋作。

 

 

別々に分けていた血炎も全て纏めあげて作り出した、正面突破を狙ってくるのなら、正面に全てを集中させればいい。

 

 

 

『お姉ちゃん』

 

 

「…ごめんね」

 

 

「……」

 

 

胎児を撫でながら、フウカーに乗る皆やこちらへ向かって来る皆を観察してみると……。

 

 

 

「インカム……こんな一瞬で作れるのは、ミレニアムの皆か…」

 

 

 

縁の表れ…かぁ……そうだね、確かにそうかもしれない。

 

 

 

「どれが陽動でどれが本命か……見分けるのは不可能、皆んな本命だね」

 

 

 

 

「…終幕の胎児よ、全ての祖、全ての形在るものを」

 

 

 

「万象の終焉を与えよ」

 

 

 

 

『お姉ちゃん』

 

 

 

 

血炎の胎児が解けると共に、空から赤い天幕が堕ちる。

 

 

天幕からは細い糸が伸び、運命の糸の様に彼女の身体と皆の身体に絡まりついていく。

 

 

 

「熱っ!?…がっ、くそ…動けねぇ…!…あ?」

 

 

「わー!?!?車が…キャッ!?……え、先生?」

 

 

「……ユメ………先輩?」

 

 

 

そして、その糸に捕まった全員は再び夢境の中へ…。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

「意外、だったかしら?」

 

 

 

 

「ううん、全然」

 

 

 

ーー沈まない。

 

 

その糸を振り切っている。

 

 

 

「……」

 

 

「チッ…!」

 

 

 

背後に飛び出してきたヒナちゃんの手が、私に触れる前に糸で雁字搦めにギリギリで捉えた。後数ミリで私の背中へと手が届く距離だ。

 

 

 

「ねぇ、どうして…ヒナちゃんは見知らぬ他人に、そこまで全力なの?」

 

 

 

「……特別な理由は無いわ、ただ貴女を見ていると…手を差し伸べたくなるの、それだけ」

 

 

 

「そして、その『それだけ』を大切にしている人を…」

 

 

 

「間近で見続けていたから」

 

 

 

「……」

 

 

 

ヒナへと軽く、手を伸ばす。

 

 

 

「…せんせ…ーーっ」

 

 

 

「これでッ!終わりッッ!!」

 

 

 

脳裏に過ぎった人物の名前を呼ぶより前に、獣の表情をしたホシノがヒナを踏み越えて襲いかかってきている。

 

 

どうやって…とは言わない、ホシノの背後に焼けながらも送り出した皆の姿が見えるから。

 

 

 

伸ばした手に、ホシノが触れるまで後…ーー

 

 

 

「ごめん、ホシノちゃん」

 

 

「っ!?」

 

 

 

掴もうとした手が空を切る。

 

 

 

「自切…!!」

 

 

 

ヒナを拘束していた糸が1本伸び、ピンと張り詰められていた。

 

 

宙に舞う腕を蹴り飛ばしてホシノへとぶつけ引き剥がす。

 

 

 

「ぐっ…まだっ…」

 

 

「いや、もう大丈夫だよ…ホシノちゃん」

 

 

「くうっ…」

 

 

まだ暴れようとしているホシノを糸で絡みつけて…糸を使って、絡みついている分の全員を領域の外へと運び出し…椅子へと腰掛けた。

 

 

 

 

「これで…ほぼ私の勝ちか、案外寂しいね」

 

 

『お姉ちゃん』

 

 

「うむうむ、お姉ちゃんは寂しくても大丈夫、■■■が居るから大丈夫」

 

 

「そんな不安そうな顔をしなくても〜問題無しっ!…てね、大丈夫だよ」

 

 

「…■■■が言ってた通り、面白いね…ブルーアーカイブ、奇跡がポンポン起きちゃうんだから!最終章も好きだけど、やっぱりエデン条約編が一番盛り上がったなぁ〜…」

 

 

……まぁ、最後は私のせいで巻き込んで、綺麗な物語からグダグダ逃げてただけだけど…。

 

 

「……」

 

 

結局あのアトラ・ハシースは何だったのかが疑問。その真実を知る為にデミと断絶していた思考の通信を元に戻っ……。

 

 

 

 

「デミちゃんッ!!迎えに来たよ!!!」

 

 

 

天幕が敗れ散り、星の尾が世界へと侵入する。

 

 

星の光が私の頭に降り注ぎ…。

 

 

そして同時に自身の失態を悟った。

 

 

 

「最終章の…再現……!」

 

 

 

何故気づけなかった、あれはアトラ・ハシースが本題じゃない、落下する先生が主体だ。

 

 

その配役にヒフミちゃんが当てはめられた…!

 

 

あれは止められない、物語として完成している『流れそのもの』。

 

 

止めることも防ぐことも出来ない。

 

 

 

「この瞬間を…」

 

 

「待ってたよ☆」

 

 

「全くもう!いい加減にしてよね!」

 

 

「文字通り、四方八方…だ」

 

 

「すまんが勝たせてもらうぜ!私!!」

 

 

 

そしてわざとらしく残っていたメンバーが私の逃げ道を潰す。

 

 

 

「…でも、デミちゃんになら触れられる」

 

 

「ぐえっ!?」

 

 

糸を伸ばし、デミの腕に絡ませて位置を交代した後……。

 

 

2度目の失態を犯した。

 

 

 

「ぁ…」

 

 

目の前、ほんとにすぐに手が届く位置。

 

 

キラキラとした目をして、涙ぐんで私のことを見ているその子と…。

 

 

 

「デミちゃん」

 

 

 

その名(羽音デミ)』を通じて、私の事だけ見てくれた親友と目が合った。

 

 

終幕が華やかである必要は無い。暗幕は静かに会場を包み、そして演者に平穏を与える。

 

 

 

 

「……負けか」

 

 

 

空に駆ける星のキラメキが胸を通り過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“よっと”

 

 

空からヒラヒラと紙の様に落ちてくる少女を先生がキャッチする。

 

 

「うし!それじゃ私達は先に行っとくね〜先生ー」

 

 

“うん、分かったよ…ありがとう、デミ”

 

 

「あいあい、ほなサイナラ」

 

 

 

壮大な一人喧嘩だったが、それも終われば静かなものだ。

 

 

 

“さてと…”

 

 

 

“ 君の中の戦いが終わるその時まで共に居続ける…だったね”

 

 

 

「……」

 

 

 

“漸く、君の声を聞くときが来たよ”

 

 

 

「………」

 

 

 

 

“でもまぁ…そうだなぁ、その前に…”

 

 

 

 

 

“恋バナでもするかい?”

 

 

 

 

「…先生なんか嫌い」

 

 

 

それは恋をしていない相手と成立するものだって、分かってる癖に。

 

 

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