ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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終幕

 

 

「…先生」

 

 

星空が輝く空のもとで、先生だけと話す。

 

 

「過去の罪は…許されるの?私、もう全然分かんなくなってきました…」

 

 

分からない、全てのしがらみから解放されたからこそ、急に何もかもの意味が分からなくなってきた。

 

 

「許しを求めてるわけじゃないんです、ただ…分からないんです」

 

 

「みんなが、何を伝えたいかが、分からない」

 

 

「言ってる事は分かっても、私がどう受け取ったら良いのかもわからない」

 

 

分からない、分からないんだ、皆が何故ここまで行動を起こすのか、先生がどうしてここまで手を焼いてくれるのか。

 

常識が私の頭の中にはある、それに基づいていえば皆異常でしかない。

人はそこまで他人に手を差し伸べようとはしない、理由もないのに出来るはずが無い。

デミちゃんはバカだった、ヒフミちゃんは優しすぎる。

 

言ってしまえば怖かった、人はいずれにしても【わからない】恐怖には抗えない。

 

 

 

 

“う~ん、私もそうなんだけど、たぶんみんなは…『伝えよう』としているというよりかは、『示して』いるんだ”

 

 

「…示す?」

 

 

“君にこの世界の価値を、だよ”

 

 

“君が選ぶ選択、大人が背を向けて放棄してきた全ての不当な責任によって君は選択そのものを縛られ続けてきた”

 

 

“なら、示すしかない、君に背を向けた世界の責任を取らなきゃいけないんだ”

 

 

“世界の輝きを、君の見る未来の価値を定義するのは君自身だからね”

 

 

「…難しい…」

 

 

“んーと、そうだ……日曜日好はきかな?”

 

 

「日曜日…?」

 

 

唐突な発言に困惑してしまうが、日曜日と言われてイメージするのはどれも明るいものだ、日曜日がつぶれれば暗い気分になるし明日が日曜日ならうれしい気分になる、そんな曜日。

 

 

“私はね、実は案外仕事が嫌いなんだ…もちろん生徒のためになることなら大丈夫だけど、シンプルに仕事疲れに殺されかけた時もあるからさ…”

 

 

「…先生って案外人間だったんですね、アンドロイドか生徒狂いの化け物だと思ってました」

 

 

“そんな風に思われてたの!?!?”

 

 

「ふふっ…軽い冗談です、それで、日曜日と何の関係が?」

 

 

“……私にとって日曜日はね、唯一生徒の事だけに集中できる日で、そんな日が一生終わってほしくないって思ってる”

 

 

「やっぱり生徒狂いじゃないですか」

 

 

“あはは…まぁそれでね、つまりは日曜日が来てくれるのを心の底から望むのと同時に、日曜日が一番来てほしくない曜日になっちゃう、なんでかわかる?”

 

 

「……全然」

 

 

“『日曜日が終わる』からだよ”

 

 

“日曜日が来てしまえば、日曜日はいつか終わって月曜日になる”

 

 

“ふざけた話でしょ?”

 

 

「……ええ、まぁ、でも…言いたいことは…分かりますよ、先生」

 

 

きっと私にまともな学生経験があったら共感できただろう。

 

 

皆、日曜日を心の底から望むがゆえに、それが過ぎ去ることを拒んでしまう。

そうなると先生の言葉も言えてしまうのだろう、『それなら日曜日が来る』ということ自体も嫌いになってしまうのではないか?と。

 

 

 

“皆、幸せになることを望むのと同じくらいに『幸せを失う事』も怖がってしまう、恐怖はそれだけに留まらない、いつしかそれは『その幸せを受け入れる事』にすら恐怖するようになっちゃうんだ”

 

 

“…それでも、私は日曜日が来てほしいって思う”

 

 

「はは、不思議な話…ですね……矛盾してても受け入れなきゃダメってことですか…?」

 

 

“ううん、違うよ…私が日曜日が来てほしいのはね、それ以上に、その恐怖以上に私の中で生徒の存在が大きいのさ”

 

 

「……」

 

 

“『日曜日(未来)』の価値を定義するのはね、自分自身だと思う”

 

 

“恐怖も不安も、矛盾も苦しも乗り越えていけると思える希望を、幸福を、そんな輝く未来があるって……”

 

 

()()()がそう思わせてくれるんだ”

 

 

 

「……ははは、はは…」

 

 

 

“つまり、我が儘の仕方さ”

 

 

“『自分の未来には!こんなにも価値があるんだ!』って、強欲に、我が儘に望むんだ”

 

 

「……それが、『報われる』って…ことなのかな…」

 

 

…でも。

 

 

それでもだ。

 

 

それでも、その未来が訪れなかったら?報われることなんてなかったら?

 

 

世界は、驚くほど不平等なんだから。

 

 

 

「……それでも、です、先生…それでも、過去の罪は…」

 

 

“それこそが『恐怖』なんだよ、君の根源にあるのはその『未来』に対して許されることなんてないと信じている恐怖なんだ、大人が責任を放棄したからこそ、君の恐怖はいつまでたっても未来を乗り越えることができなかった”

 

 

「…っ」

 

 

“うん…だからね、君にこの言葉を送るよ…”

 

 

“【理解できないものを通じて、私たちは理解を得ることができるのか】”

 

 

「それって…」

 

 

七つの古則の、二つ目。

 

 

“自分自身で価値を定義できない、そして歩みだせないのなら…”

 

 

“みんなの事を、見てあげて?”

 

 

“恐怖に囚われれしまったときは、みんなを通じて、みんなが見ている自分の事を見るんだ。幸福な未来を、日曜日の明日を理解できないなら、その時は落ち着いてみんなを見る”

 

 

“君が見てきた、『自分にとって理解できないことを伝えようとする』皆の姿でいいんだ、その姿を見れば君に伝えたい皆の言葉も理解できる”

 

 

“その姿は君にとってどんなものだったかな?”

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

 

 

「……ぅぅ…あぁ…」

 

 

 

 

ーー枯れていたはずの涙が、頬を伝う。

 

 

 

「…う゛ぅ…」

 

 

 

 

“■■”

 

 

 

先生が彼女の名を呼ぶ、けれど聞こえない。

 

 

 

でも、少しずつ聞こえてくる。

 

 

 

“■ミ”

 

 

 

 

“帰ろう”

 

 

どこへ?

 

 

 

“デミ”

 

 

 

私の名だ

 

 

 

“すべての奇跡が、始まる場所へ”

 

 

 

「は゛い゛!」

 

 

 

 

涙と疲れでうまく立てない。

 

 

先生が膝立ちをしてくれて、背中に背負ってくれた。

 

 

 

“帰ったら、何をしようか”

 

 

「お゛墓…建てます゛…あの子たちのために…」

 

 

“私も手伝うよ”

 

 

 

ゆったりと流れていく時間。

 

 

鼻水、涙、よだれで先生の背中がびしょびしょ。

 

 

 

「おげ、げほっゲホッゲホッ…」

 

 

“おっとっと、ハンカチ居る?”

 

 

「いらな…いります゛!゛!゛」

 

 

 

 

 

顔面をびしょびしょにしながら先生に背負われ続けるその姿は…。

 

 

 

 

 

 

温かな、親子のように見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デミちゃん!うわぁぁぁ゛ぁぁん!!!心配した…って爆睡してる!?」

 

 

“あはは、泣きすぎて疲れちゃったみたい”

 

 

眠ったデミを電車に乗せて、外に残るは『デミ』と私とアロナだけになる。

 

 

目の前の電車には、キヴォトスの殆どの生徒が乗っていた。

 

 

 

 

 

 

“さて”

 

 

 

「先生」

 

 

 

“これで、100%、かな”

 

 

 

「いえ」

 

 

 

“んん?”

 

 

 

「よくよく考えてみれば、私の望む明日って完全完璧、運命なんてくクソくらえのアルティメットハッピーエンドなんすよ」

 

 

 

「だから、その寿命の事を隠して行こうとする先生、それが99.99999%の最後の残りでした、失敗失敗」

 

 

 

“…でも私は君に、この計画にすべてを使わせてしまった”

 

 

“最後、っていうのはこっちの言葉だったかもね……”

 

 

“アロナ、約束の時間だよ”

 

 

 

あの日交わした約束を果たしてもらう時が来た。

 

 

 

デミを現実世界に返すには残ったカードを使うしかない。

 

 

 

「……」

 

 

 

「…………」

 

 

“…アロナ?”

 

 

「ごめんなさい、先生」

 

 

“ぐっ…!?”

 

 

身体に抗えない引力が働く、そしてそのまま電車の中にへと押し込まれて扉が閉まってしまう。

 

 

アロナ!!?”

 

 

「へへん!最後にミスったっすね先生!!私とアロナちゃんを二人きりにしすぎっすよ!!」

 

 

“待って!二人とも!!駄目だ!そんなこと…!!”

 

 

「今まで自覚なしに誑し込みまくった報いでーーす!それじゃ出発しんこーう!」

 

 

電車が動き出してしまう、扉をたたいても先生の力では破ることができない。

 

 

 

“アロナ!!デミ!!!”

 

 

 

「だいじょぶだいじょぶ!」

 

 

 

「奇跡はきっと起きます」

 

 

 

「だからその日まで、待っててくださいね?先生」

 

 

 

「ごめんなさい…先生」

 

 

 

見送る二人と先生の距離はどんどんと離れていき…

 

 

“ーーーーー!!”

 

 

遂には、声も届かなくなってしまう。

 

 

 

 

「行っちゃったな~」

 

 

 

「ありがと、デミちゃん」

 

 

 

さっきとは違う声色、振り返ってみると…。

 

 

 

「おっ!連邦生徒会長ちゃ~ん!お久っす!」

 

 

 

「久しぶりだね」

 

 

 

「まっ、ここまでお疲れ様っす」

 

 

 

「あはは、お互いさまにね?」

 

 

 

「長かったよ~…那由多の時間より長かった、それじゃ、お疲れさまっした~」

 

 

 

「ふふっ、心配してないんだ?先生の事」

 

 

 

「はは!何言ってんすかそりゃアンタの選んだ大人っすよ?なら絶対に…」

 

 

 

 

 

 

「奇跡なんて、何度も起こして迎えに来てくれますよ」

 

 

 

 

 

 

「ーー…」

 

 

 

 

「…うん!それじゃ私もそうしとこっかな~?あ、そうだポテチ出してよ、映画も」

 

 

 

「全能の使い方雑すぎ~仕方ないなぁ」

 

 

 

「そうだ、連邦生徒会長と先生のボロアパート概念って知ってます?」

 

 

 

「あはは!何それ!?」

 

 

 

「いや大マジっすよ?マジで人気あるんっす、生徒と先生の二人暮らしボロアパート妄想ってもはや一大コンテンツっすよ」

 

 

 

「…それ、分かっちゃうの、なんか嫌だなぁ」

 

 

 

 

「でしょ?それからーー…っと、しまったしまった、映画鑑賞しながらだべる前に…」

 

 

 

 

 

 

「終幕の、お時間っす」

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