ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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中編です


寒く冷たい貴方の血が私のぬくもりであるように

 

『“デミはきっと、この世で一番自分が嫌いなんだろうね……”』

 

奥空アヤネは思い出す、シャーレにてカイザーに関する資料を先生と共に漁っていた時の事だ。

 

「デミさんが、ご自身の事を?」

 

“うん、何となくだけど……今の私に足りないものも分かった気がするよ”

 

「先生に足りていないものですか?私には到底思いつきませ…いや、強いて言うなら……女心でしょうけれど」

 

“ハハ…手厳しいね……うん、今の私に足りていないものはね…背負っているものだ”

 

私は…背負っているもの、と聞いて最初に頭に出てきたのは…私達の事だ。「アビドス対策委員会」その支援をお願いした立場であり、それを受けた先生は未だこうやって『何ら関係ない部外者』だったはずが、その責任を背負い続けて下さっている。

 

この前の激しい議論の最中でも先生は決まってこう言うのだ『“それは君たち生徒の負う責任じゃない。先生が、『大人』が背負うべき世界の責任だ』と。

 

私は……先生が言う「大人が背負うべき責任」というものはまだよく分からない。それが何なのか質問しても先生は『“それを考えるのも大人への一歩なんだ”』と言ってはぐらかしてしまう。

 

だが、きっとそれは果てしなく重い……ホシノ先輩でも背負いきれないだろう責務なんだと感じる……それでいて「足りない」と言えてしまうのだこの人は。

 

“大人だからね……不相応に積み上げてきた人生だけど、それでも多くの責任は背負ってきたつもりだった”

 

“私は、甘かったんだ…自分に。君たち生徒に与えるよりもっと大きくね”

 

先生の言葉を、全く理解できない。身を粉にしてシャーレの業務とアビドスの問題を解決しようとしているのに。

 

“アヤネ……まだ、私の事…信頼出来るかい?”

 

意味不明な問い。しかし答えなければいけない気がして……。

 

「はい」

 

“……ごめんね、情けない大人で…。アヤネに言っておきたい事がある、デミの事なんだけど…………”

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

■数分前

 

 

「ぐっ……で、デミちゃん!!」

 

「……」

 

今、私は彼女の足に縋りついている。

 

「待って!少し、少しだけでいいから聞いて!!」

 

空から降ってきた彼女は気絶している先生を見た後、無言で立ち去ろうとしている。きっとこのままだと自死をしてしまいそうな顔つきで…。

 

「先生から貴方の事を聞きました!貴方は……!貴方は先生が背負っている以上の何かを!背負っていると!!」

 

あの時見た彼女の本気ならば、今私が彼女を引き留めておける筈がない!私の声がまだ届いている証拠だ。

 

「先生から!!伝言です!!『“君の中の全ての戦いが終わるその時まで共に居続ける”』って!!これ以上は背負わせないと!キャッ……!」

 

ビュン…

 

「れ、連絡![不味いです、みんな、止めてください!彼女を死なせないで!]

 

行ってしまった……頼まれた事は伝えた、私にこれ以上彼女に出来ることは無いだろう。

 

「先生、本当にさっきの言葉だけで大丈夫だったんですかね…?」

 

横になっている先生からの返事は……

 

“うん、ありがとうアヤネ”

 

「えぇ大丈夫ですよ……先生!?ま、まだ動いちゃダメですよ!というかいつ起きたんですか!?」

 

“デミが行く寸前にね、惜しかった……アヤネ、動ける?”

 

頭と脇腹、腕に包帯を巻き付けたまま先生は歩き出す。

 

「わ、私は大丈夫ですけど、先生!無理しちゃダメですってば!」

 

“私は全然大丈夫さ、それよりも彼女を止めに行かないと、走ろうか”

 

何一つ苦しみの無い顔で戦場へ駆け出す先生、私にはそれを止める権利はない。どれだけ先生の事を大切に…好きに思っていても、ここで引き止めるのは違うのだろう。

 

その背中を見ているだけでは……ダメなのだ、もっと先を…!自分で作る物語(ブルーアーカイブ)を……!

 

「行きましょう!先生!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

あぁ……

 

 

先生…先生が、倒れて……

 

 

目の前には眠った様に静かで動かない先生がいる。

 

それがどうにもさっきの光景と重なって……

 

 

『君の中の戦いが終わるその時まで共に居続ける』

 

 

言葉を噛み締めても出てくるのは鉄の味。今私の最善手は先生の傍にいることだ、風紀委員を殴りに行く事じゃない。

 

自分の行動原理が分からない、何故こんなことをしようとしているのかも。

 

「っぐぅッ……!ぎぃ…!」

 

先生、先生のせいだ、あんなに私の心を揺さぶらから…こんなに私の目の前で傷つくから!

 

何度も何度も、先生の死体と目が合ったあの瞬間が蘇る。幻覚の筈だった、また数日経てば先生は私の中で『護る者』として……自身を呪って、慣れて終わるはずだった……!なのに!またすぐに傷ついて!!どれだけ心配していると、どれだけ傷ついて欲しくないか知っている癖に!!

 

まただ、また私が物語を汚したから先生は血を流す羽目になった。

 

“お前のせいだ”

 

頭を掻きむしる、視界は赤く……紅く夕暮れの中のように染まっていく。血潮の匂いがする、怨嗟の声が聞こえる。

 

爆発的な推進力を保ったまま戦闘中の市街地に降り立つ。

 

 

[トリニティの鬼神!?何故ここに!?]

 

 

「デミ……ちゃん…?」

 

 

戦場を見渡す。

 

 

瓦礫の……山だ、そうかここは……いや違うあれは夢で……今は現実で…

 

 

「ぁ……ぁぁ…」

 

なにが……分からない、私は今生きているのか?どっちだ?どっちが現実だ?

 

「あ……あぁみんなこんにちはっす、助けに来たっすよーなんて、あはは」

 

「だ、大丈夫?顔色が凄く悪い所じゃ……」

 

セリカちゃんが心配して近寄ってきてくれて

 

「“どうして?”」

 

「ヒッ…!」

 

振り払ってしまった。

 

違う!違う違う違う!彼女はこんな事言わない!

 

「ちょっと!本当にどうしちゃったのよ!」

 

「ちが、ちがう、私は……ごめ…ォエッ」

 

「ノノミ先輩!ちょっと手貸して!」

 

 

[……何が何だか分かりませんが、彼女が弱ってるうちに叩きましょう!トリニティの正実が何故このような場所に来たかは分かりませんが、たった一人ならまだ言い訳もつきます!イオリ!]

 

「え!?アコちゃんやっちゃっていいの?いいんだ……仕方ない!許せよ鬼神!」

 

イオリのライフルが羽音デミに向けられる。

 

そんな中、その本人は惨めに這いつくばりながら瓦礫を掻き分けて逃げている。

 

 

「フー…!フゥ゛ー…!ハッ…ハァ゛ッ…ハッ…ゲホッ!……ァあう…ぉ、ォエッ!はァッ…んぐっ…おぇぇぇぇえ!!!!…カヒュッ……カヒュッ…」

 

 

そ、そうだ!やっぱり先生の所に戻って傍に居とこう!!目を覚ましたらたっぷりと叱ってやって……!目を……覚ましたら…?

 

 

 

 

『“デミ”』

 

 

「ぁうぅえ…?せ、んせい?」

 

 

この場に居ないはずの先生の声が聞こえる、あぁ…こんな惨めな姿を見せちゃいけない…!そう思って顔を上げて

 

 

 

 

 

『“君のせいだ”』

 

 

 

 

 

そう言って

 

 

 

 

パンッ…

 

 

 

 

私の先生(幻覚)が頭を撃ち抜かれたのは同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!クリーンヒット!結構効いたっぼいか?倒れ込んだみたいだな!」

 

[……あの鬼神がこんなアッサリと?有り得る筈が………っ!やはりまだ起き上がってきますか、イオリ!第一中隊全員で撃ち込みなさい!彼女はは他のメンバーより警戒度を引き上げて!]

 

「アコちゃんそんなに警戒しなくても、もうひょろひょろだぞ?しかもなんか……血?オイ!血吐いてるじゃん!そんな血を吐くような射撃してないっての!」

 

 

 

「……」

 

「………」

 

 

掌を見る、血に染まっている。

空を見る、落陽が世界を包み込んでいる。

足元を見る、屍で埋まっている。

辺りを見渡す、瓦礫の平原だ。

 

「………わたしの」

 

「せいか」

 

夢で何度も言ったような、そんな気がした言葉を口にだす

 

 

そうか、あの光景を……地獄を作り出すのは……

 

 

 

 

 

「私か」

 

 

 

 








馬鹿め!!騙されたな!!!本当はあの夢の結末を自覚するってオチだよ!!幻覚に苛まれすぎて頭の中で混同していますなぁ…よっ、吐き姿日本一!似合ってるね〜。



曇らせの胃もたれの……口直しにでも適当にご覧下さい。
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