私には唯一、知らない事がある。
以前言ったかもしれないが、私は以前の私の感情を知らない。
記憶はある、しかしその記憶でさえ『今の私』というファクターを通じて感情として出力される。
故に、私は“私”に共感出来ない、ヒフミちゃんが抱えているその悲しみを一緒に悲しんであげられない。あらゆる面で以前と同じ様な生活をしていた筈なのに、みんな目やら顔やらで物事を話す。それは……まるで誰もが以前の私を見て…今と比べているみたいで……。
「……」
『どうして悲しいの?今の私も私だよ?』『昔は、昔、今の私を見て?』
『なんでみんな、今の私を見てくれないの?』
そんな軽々しい考えがよぎる頭を撃ち抜く。あの時のような破壊力は無い筈の弾丸が容易く私の脳を貫いた。何故だろうか。まだ腹が立つので一弾倉分は撃っておいた。
『みんなが救おうとしている
『みんなが必死に、励まして…心の底を吐いて…心配して…沢山の事を与えてくれている中に……私は……居ない』
『みんなは…………私を見ない、その目の先には……“私”しか……』
他者への責任転換、一体幾ら私は恥を重ねればいいのか?頭の中でありとあらゆる暴言を己へと投げつける。
『
幻覚を見なくなった代わりに自傷行為が増えている……反省をしなくては、しかし以前よりは自分の思考に割ける時間が増えたのは余裕を持てている証拠だろう。
結局カズサちゃんも私の顔を見た後そっこーで突っぱねられた。あのゴミを見る様な目で見られると癖になってしまいそうだ。
そして明日は再びシャーレに戻ることになる。先生が言うにはしばらく交互に在中する事で、擬似的にシャーレ部員と正義実現委員会の活動を両立できる…と。
今日の残り時間は適当に路地裏をふらふら歩きながら、正実のお手伝いでもしておこう。
「『幽鬼』だ!!テメェらさっさと逃げるぞ!!!」
あぁ…しまった、またやってしまった。自傷行為が増えたせいで頭を吹き飛ばした後、髪染めまで取れてしまったまま動く事が増えてきた。
既に髪色は全て白に染まっている。
「…話したら…殺す」
「ひゃ…ひゃい……わ゛がりまじだ…」
不良は適当にボコしてさっさと脅す。そうしたら後はリリースする事で、割と自治活動にはなっている。
ピロン……!
そうこうしていたら、ふと携帯から着信音が鳴った。クロノス報道の通知音だ。何か大きな事件でも起きたのだろうかと適当に流し見……流し……
『カイザー理事解任!?カイザーコーポレーションの理事が違法行為の社内摘発と隠していた悪事が暴かれた!!既にジェネラルと呼ばれている者が理事に就任している様です、罪状については………』
はァァァァァァ?????!!!??
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■アビドス砂漠 カイザーPMC基地
“散々長い名乗りをして”
“舌の根が乾く前に生徒達を煽り”
“さも、これが大人の力だ、と見せつけるように借金利子を引き上げた後”
“全てが罠で、生徒にまんまとしてやられたカイザー元理事さん、いやカイザー窓受け係さん。全てを失った今……”
“どんな気持ちだ?小悪党”
「このっ!!!クソガキ共がァァァ!!!!」
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ある日、ホシノのに携わっていた大人…黒服という奴に合ってみる事にした……見た瞬間、思い出した。
“黒服くぅぅぅん???ホシノがぁぁ!!お世話にぃ!!なりましたぁぁ!!!”
「クッ……ククッ…クククッ…ククッ…」
先生は今、黒服にチョークスリーパーをかけている。
「あ、あの〜先生?「大人の戦い」ってこんな感じなの?」
“そうだよ!ホシノ、これは大人のケジメ、大人のチョークスリーパーだ……そしてこれが大人のコブラツイストだァァァァ!!!”
「ククッ…ぐっ…クククッ…先生…ぐっ…些か誤解が…ククッ…含まれそうな……クククッ!!」
「絶対違うよね!?!」
オフィスに入っていった先生は、まず初手で黒服にプロレス技を掛けている。……大人の姿か?これが。
先生が黒服から手を離して、お互い応接室のソファーに向かい合って座る。
“ふぅ……ふぅ…さて黒服、大人の戦いをしようか、貴方と私。決して混じり合う事の無い議論を”
白衣を払って急に真面目に話し始める先生……というかやっぱりさっきの大人の戦いでも何でもなかったのか……。
「……クックック…えぇ先生、より良い契約を…致しましょう」
“あぁ…契約を始めよう、黒服”
“まず第一に、貴方達がホシノに…アビドスにしたことは到底許すことは出来ない。大人である貴方が、生徒に課したもの、その責任はとってもらうよ、ホシノとアビドスから手を引け”
「はて、責任ですか…クックック、それにそれはまだ要求…見返りを提示してもらいた……い…」
先生の懐から黒い……大人のカードが取り出される。
「ぉ……おおっ…なんという神秘…!一体……どれほどの……神秘が具現化している…?いやここまでの物質化……顕現とでもいいましょうか?暁のホルス、空に浮かぶあのヘイローでさえそのような予兆は一切無かったというのに…!!
「ククッ…クックック…ですがそれは仕舞って下さい、先生。それは……」
“分かってるよ、分かった上で私は使う事は厭わない、黒服、私はね…生徒の為なら何でもするんだ、文字通りね”
カードを構える手に更に力が入った様に見える。
「…何故?何故何故何故何故?所詮は他人ではありませんか、先生がそこまでする理由も何も無いと言うのに」
“だから私達は分かり合えない、貴方はこの子達が背負うべきでない、誰も責任をとるものが居なかった彼女たちを見放した。私はただ大人が背負うべき責任を背負っているだけさ”
「サンクトゥムタワーの制御権を手放しになさったのも、同じ理由ですか……しかし先生、それでは生徒の奴隷とも言えるのでは…?」
“礎、だよ。私は生徒達が明日を、未来を望むというのなら、喜んでこの身に在る全てを使って彼女達が歩き出す為の道になる、私は『先生』だからね、貴方には言っても分からないもの、それに私は全てを差し出せるんだ”
“私は、生徒達が心から信じる未来を…夢を……希望を信じて、それを死んでも支える。生徒達自身が望み…歩める様に”
「…ククッ…クックック…文字通り……ですか………流石先生…と言ったところでしょうか?……分かりました、ここは私の負けです。先生、契約を結ばさせてもらいます」
「それと…他の『要求』を申し付けて下さい…ある程度は融通致しましょう」
“そう、じゃあまずは…ホシノに謝ろうか、その為にもホシノに着いてきて貰ったし”
「え!?先生そんな…」
「…ククッ、本当に貴方は面白い…ゲマトリアに入って頂けませんか?」
“断る”
「クックック……残念です。そして…暁の…いやホシノさん、申し訳ございませんでした」
あの黒服が、今私の前で頭を下げている。
「私は…絶対にお前の事を許さないけど、その恨みも…責任も、先生が背負ってくれるらしいから…これ以上は何も無い。それだけ」
「えぇ…しかと」
“よし、それじゃ後はこれ”
先生が端末の画面を黒服に見せる。
“カイザーから手を引いて、それと内部告発の誘導よろしくね。資料はここに…こっちが持ってるものは後で全部渡しておく、要求はこれくらいかな”
「分かりました、その程度なら…丁度必要なくなった所ですので」
“こちらからの見返りは…うん、そうだね……“好きにして””
「…クックック……好きに、ですか…」
“そう、好きに”
懐に仕舞ったカードを再度取り出し、今度は使う意思は無く、見せつけるようにヒラヒラと見せてやる、『シッテムの箱』と一緒に。
“見てみたい、でしょ、見せさせてみなよ…私の生徒達は強いけどね”
「ククッ…!!クックック…!それはもっと大切な事に…貴方自身の事に…と言いたいところですが…」
“そう、黒服が考えてる事が合ってる、『信用』だよ。契約という形で、私は貴方を、貴方は私を信用する、ただそれだけだ”
「本当に…本当に貴方は興味深く、面白い。契約の形で私が丸め込まれるとは…」
「えぇ…分かりました、好きにさせていただきます」
「貴方の…先生の信用に応えれる様に……クックック…」
“帰ろうか、ホシノ…決着を付けに行こう。醜い小悪党とのね”
「…うん、うん!!行こう!先生!」
“さようなら、黒服”
「えぇ…さようならです、先生」
「あぁ……それと……」
「お返しのジャーマンスープレックス……です」
“え?グァァァァァ!!??!!!”
■
帰り道、ホシノに声をかけられる
「先生……あのね、嘘だとしても……詭弁だとしても……『死んでも』だなんて言わないで…欲しいな……?」
“……うん、分かったよ。心配してくれてありがとうホシノ”
先生の顔を見つめる………ごめんね。と書いているような顔で、苦い顔でそんな事を言うものだから、全く信じられなくて……。
「……羽音…デミ…」
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先生から私のモモトークには、ホシノに撮ってもらったのか、プロレス技を掛け合っている大人二人の写真が送られていた。
「…………はぁ」
■
「やはり子供か…私有地に侵入し、挙句の果てに戦闘活動等…被害を借金に加えても良いのだが、そこまで変わらんか……あぁ丁度いい、[進めろ]……おっと、カイザーローンからの信頼がどうやら変わってしまった様だぞ?」
[そ、そんな!金利が3000%って!]
「はぁ!?ちょ、そんな嘘でしょ!?」
「フフ……ハハハ!古くから続くこの借金も、全て合法の流れにそって契約として手に入れた私有地も、全て私の手の平の上なのだよ?お分かりかな?対策委員会諸君」
「ククク……それにそうだな、9億円の借金に対して預託金を用意してもらおうか?我がカイザーローンに3億円の預託してもらおう、この利率でも返済出来るという証明をしてもらわねばな」
「くっ…そもそもアンタ達は何が目的なのよ!」
「目的…目的か、私がここで何をしているか、何故アビドスの土地を手に入れたかか?それを聞くためにここに来た…様だな」
「ならば教えてやろう、宝探しだ。このアビドスの何処かに眠るお宝を、頑張って見つけようと……おっとそう睨むな、狼、何…れっきとした事実だぞ?」
「何…よ、それ…ふざけるのも大概に…!」
「そう言いたいのは此方の方だ、貴様らは未だに何故アビドスにこだわる?そもそも借金の在処は学校そのものにある、これでようやく諦めがついて日常に戻れるのだぞ?」
「それを…ヘラヘラと毎日毎日楽しそうに……訳の分からん理由で粘られてきた此方の身にもなれ」
「…貴方には分かりっこないでしょう、私達が何故、この様な道を歩み続けているか」
「あぁ全く分からんな、ノノミ嬢…話すことも話した、本当はこのままお帰り願いたい所だが……事情が変わってな?」
「とある協力者に、貴様ら対策委員会の身柄を使ってシャーレと取引を行え…と提案されてな、それにノノミ嬢の身柄が次いでに手に入るなら儲けもの所の話では無い…………PMC兵、コイツらを私有地の不法侵入と戦闘、敵対行動を行った者として、一時的に身柄を差し押さえろ」
「は、はぁ!?そんな横暴が…キャァ!や、やめなさい、離せっての!」
「……」
「っ!カイザー理事…!」
各々の顔に絶望が浮かんでいく、
「フフ…ハハハハ……!そうだ、その表情だ、それが貴様ら本来の有るべき顔!自身の無力に苛まれ…諦める、本来の姿だ!!ククッ…ハハハ!」
「…引っかかりましたね☆?」
「…………何…!?」
「先生!!頼みます!!!」
[了解…!]
ノノミが古い型の無線機を取り出し、先生、そう口に出した。
「まさか…!!」
その瞬間、PMC兵全ての動きが止まる…。
「ぐっ…う、動けん…!?馬鹿なハッキングされている…?我々のメインosにどれだけのファイヤーウォールがあると……」
“こんにちは、カイザー理事……そして、どうやら反則の様だね”
砂嵐の向こうから、桃色の髪と、白衣が見える。
「…っ!!貴様ァ…!!シャーレの小僧!」
“ただいまより、シャーレ部員である『対策委員会』への誘拐未遂、業務妨害、そしてヘルメット団を利用した生徒誘拐疑惑を掛けられている貴方への調査活動を行う”
“そして…ゲヘナ学園所属シャーレ部員『空崎ヒナ』とトリニティ学園シャーレ部員『阿慈谷ヒフミ』によって要請された、カイザーローンの違法金融についての捜査をしに来たシャーレ顧問である『先生』だ、宜しくカイザー理事?”
はためく白衣の救世主による、死刑宣告が成される。
「貴様ァァァァ!!!!」
[prrrrr…]
「こんな時に通信等…!!」
“…取った方がいいと思うよ?”
「…何?[カイザー理事、いえ、元理事…議会の決定によりただいまから貴方は理事の任を解任させていただきます。以上です。]」
「な…ななな!?」
“良くも私の生徒達に手を出してくれたね…?ケジメをつけてもらおうか、カイザー…元理事”
「き、貴様の!貴様の仕業か!!生徒をデコイに使うなど…先生として有るまじき……!!うグッ…」
「お前が先生を語るな」
「ぐっ…貴様ァ…小鳥遊ィィホシノぉぉ!!」
“勘違いをしているようだからひとつ言っておくよ、カイザー元理事、これは私が考えたものじゃない、生徒達が思案し、貴方にお返しをしたかった血と汗と努力の結晶だよ”
“私はその子達の、支えに過ぎない。倒れない様に…道を見失わないようにね……”
「クソっ!黒服は!黒服は……」
[クックック、カイザー元理事、こちらからも貴方には利用価値が無いと判断されたので協定はここまでにさせて貰います]
そんな通信がカイザー元理事に突き刺さる。
「は…?おい待て…!?」
“ふぅ…さて”
“散々長い名乗りをして”
“舌の根が乾く前に生徒達を煽り”
“さも、これが大人の力だ、と見せつけるように借金利子を引き上げた後”
“全てが罠で、生徒にまんまとしてやられたカイザー元理事さん、いやカイザー窓受け係さん。全てを失った今……”
“どんな気持ちだ?小悪党”
「このっ!!!クソガキ共がァァァ!!!!」
いや〜もうだいぶ黒服は先生にデロデロにメロメロですねこりゃぁ……。
自傷行為の秘密……ヒント、ヘイローを破壊する方法。