ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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番外編:D.C4月1日

トリニティ学園

 

 

 

羽川ハスミ宅

 

 

 

 

「朝日が気持ちいいっすね!ハスミ先輩!」

 

 

「…」

 

 

朝からチャイムを連打され、頭に来ながら思いっきり扉を開けると後輩が満面の笑みで突っ立っていた。

 

 

「……貴方は朝から随分と元気ですね、デミ」

 

 

「休日なんで遊びに来たっすよ!!なんか無いっすか!」

 

 

予定を決めなさい予定を、計画性の欠片も無いのになんで突っ走る事だけは得意なんですか、子犬かなんかですか??

 

 

「…はぁ、全く…取り敢えず部屋に上がりなさい、ケーキでも食べましょうか」

 

 

「朝からケーキマジっすか?」

 

 

「文句を言うのなら何も出しませんよ!」

 

 

「へいへい、お邪魔〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミレニアムサイエンススクール

 

 

 

ゲーム部 部室

 

 

 

今、部屋に鳴り響くのはただひたすらにタイピング音。

 

 

早瀬ユウカからのお怒り、進まない作業、浮かばないアイデア、オンライン大会出場中のユズ。

 

 

そう、この部室に満ちているのは絶望……。

 

 

絶対に作業が一週間では終わりそうに無い絶望感が…( ᵒ̴̶̷̥́ ^ ᵒ̴̶̷̣̥̀  )

 

 

「もう無理ぃぃぃ…」

 

 

「アリス、先生の所に行ってきます!勇者としてゲーム部の危機を救う為に!」

 

 

「アリスが行くなら私も行きたいー!」

 

 

「駄目だよお姉ちゃん…まだ広告掲載すら出来てないのに遊びに行くなんて、ユウカに知られたら今度こそ部費止められちゃう」

 

 

「遊びに行くんじゃない!先生に助けて貰いに行って、この部室に満ちた悪魔を……元い魔王ユウカの試練を打ち払ってもらうんだよ!」

 

 

「そもそもお姉ちゃん二日はお風呂入って無いでしょ?その…大分だからさ、今から先生の所に行って……もし、もしも臭いなんか言われたら…」

 

 

「…そうだった…お風呂…入って…ーー」

 

 

先生はきっと直接的にも、遠回しだとしても本人の前では気遣って言わない、人を介して伝えてくれるのを以前見た事があるから、本人の口から万が一にも聞こえる事の無い筈の幻覚幻聴だ。

 

 

その筈なのに、ミドリがしっかり目に匂いについて触れてしまったせいで…。

 

 

『“モモイ…ごめんね、ちょっと臭うかな…”』

 

 

「う゛わ゛ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!9999ダメージ!!

 

 

散らかりまくった部屋を転がり回る事で、更に汚れていくモモイを片目に、アリスの冒険もスタートした。

 

 

「それではアリスは出発します!」

 

 

「行ってらっしゃい、アリスちゃん」

 

 

「クエストクリアの条件は、モモイがお風呂に入る事と、先生をパーティーに招待する事!アリス頑張ります!」

 

 

バンッ!と扉を開けて、軽やかにアリスの冒険は始まった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンジニア部 部室

 

 

 

今日も今日とて電ちゃんを弄くり回す。変わらない光景に変わらない匂い、機械油とテツの香りが混ざった空間には慣れたもので、今ではこの時間が心地よい。

 

 

以前、作戦の内とはいえ…カリンに直接戦闘で遅れを取ってから、電ちゃんと私の戦闘能力の頭打ちを感じ、ならばと電ちゃんの計算による戦闘中の判断の共有を目指して改造を始め……はや二ヶ月。

 

 

完成は……遠い。

 

 

「アリス、今日もお出かけかい?」

 

 

そうしていたら、部室の開いた扉からアリスが見えた。ウキウキな様子でスキップをしながら歩いていたので声をかけてみる。

 

 

「はい!アリスはとても困難なクエストに挑んでいる最中です!シャーレの先生に逢いに行くんです!」

 

 

「そうか、怪我しないように気をつけて行ってらっしゃい……先生の所へ、か」

 

 

……しまった、先生から借りたオーパーツ合金∞カイテンジャーMark.0を返し忘れていた。

 

 

「すまないアリス、先生に返し忘れていた物があってシャーレに着いて先生に会えたらこれを返しておいてくれないかい?」

 

 

「わぁぁ…こ、これは、光り輝く黄金の像!先生が大切に飾ってあったものですか?」

 

 

「うん、本当はこのプラモに組み込まれた謎の金属の性質を研究しようとしていたんだが、どう調べても未知ということしか分からなくてね……お願い出来る?」

 

 

「承諾しました!先生の元へ大切にお返しします!」

 

 

ただ、使いっ走りにするのも悪いから…。

 

 

「報酬を先渡ししておくよ、クエストには報酬が付きものだからね」

 

 

「これは…?」

 

 

手渡したのはミニ電ちゃんストラップ。

 

 

「お守りみたいなものさ、勇者の旅先に幸あれってね」

 

 

「ありがとうございます!パンパカパーン、アリスは新しい装備品を手に入れた!装備します!」

 

 

ストラップを付けてくれたのは、彼女だけが扱えるスーパーノヴァ

その機体とも言える銃座に小さくて可愛い電ちゃんが装着される。

 

 

「それじゃ今度こそ行ってらっしゃい、アリス」

 

 

「行ってきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

エンカウント1

 

 

「おぉ、チビじゃねぇか、何処行くんだ?」

 

 

「先生の所へ行きます!クエストを並行して受注中です!」

 

 

「クエスト?まぁ…ふ〜ん先生の所へ、ねぇ…よし、アタシも連れてけよ」

 

 

パンパカパーン!チビメイド傭兵が仲間になった!

 

 

 

 

 

 

エンカウント2

 

 

「ヒャッハーー!!全部奪え!全部殴れぇ!!」

 

 

「おい!そこのチビ二人ぐm……ゴハァァァッッ!?!?」

 

 

「誰がチビだ、誰が…ったく、降り掛かる火の粉を払うって言いてぇのに、火の粉が多すぎだっての…火の粉にすら値してねぇがな」

 

 

「チビメイド先輩とアリスの装備品は最強無敵です!喰らえ、バランス崩壊!」

 

 

「……なんでストラップからビームと銃弾が出てんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イベント発生!

 

 

 

 

「緊急クエスト発生です!チビメイド先輩!おばあ様が歩道橋を登れずに困っています!」

 

 

「あん!?だからチビ言うなチビって、はぁ…手伝うか?」

 

 

「はい!」

 

 

「ん…?お〜!アリスっち、お久〜!」

 

 

「あなたは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

D.U区間

 

シャーレビル 先生の仕事部屋

 

 

 

 

 

 

 

手元の端末を操作しながら、扉の前で待ち構える。

 

 

数十秒少し経って、話に聞いていた通り目の前の扉が勢い良く開かれた。

 

 

 

“いらっしゃい、アリス”

 

 

「先生!ゲーム部の事で…はっ!まさかその手に握られし聖なる剣は…!」

 

 

“ん?あ、コレか…ポッキンアイス、アリスも食べる?ちょうど二人分あるし”

 

 

「はい!」

 

 

先生が手招きをしてアリスを膝の上に誘導する、ちょこん…とアリスが座った後はそのまま仕事椅子を回転させて書類の前に向き直し、業務を再開。

 

 

「……する訳にもいかないか、おいで、ネル」

 

 

声をかけると、仕事室のテラスに上から落ちてきたネルが不満そうに姿を表す。

 

 

「んだよバレてんのかよ、せっかく驚かそうと窓から入ろうとしてんのにどうやって分かったんだ?」

 

 

“う〜ん、大人の秘密かなぁ”

 

 

へっ、と口を鳴らしてスタスタと先生の元に近づき、そのままポッキンアイスのもう片方を奪って……

 

 

一口、パクりと半分食べてしまった。

 

 

「ん、美味し……さてと先生、まずこのチビから話したい要件があるとよ」

 

 

「あ!そうでした…!えっと確か、この黄金像のゲーム開発が魔王ユウカの試練…?」

 

 

“ユウカに叱られちゃって期限ギリギリのゲーム開発部が今大変な事になっているから助けて欲しいのとウタハに頼まれて借りたものを返しに来た……で合ってるかな?”

 

 

「す、凄いです先生!流石RTA王者!!」

 

 

「本当になんで分かってんだよ……」

 

 

“ふふ、アリスは本当に可愛らしいね、これはただのチートだよ?特別な事じゃ無いから”

 

 

「チート…そうだったのですか、少し残念です……あ、先生!それとアリスの事はもっと可愛いと仰って下さい!そうすると…そうすると!アリスの可愛さレベルが更にアップしますよ!」

 

 

“ん〜?それじゃぁ可愛い目、可愛い鼻、可愛い耳、沢山可愛いがアリスには付いてるよ、勿論ネルにもね?後もう入ってきても大丈夫だよ、キララも来てくれてありがとう、ヘルメット団の皆も”

 

 

誰もいない扉に向かって声をかける、一見すれば意味不明な行動だが先生に至ってはそうでは無い。

 

 

「ヤバ!?なんで分かったの?う〜んとりあえず、やっほ〜先生、休日だし遊びに来たよ!」

 

 

「お邪魔〜…ネル先輩にボコボコにされて連れられて来ました……」

 

 

ゾロゾロと先生の仕事室に大勢の生徒が入ってくる、寂しかった仕事場も今ではすっかり宴の様に賑やかだ。

 

 

“そんな事だろうと思って傷薬と菓子パ用のお菓子沢山買ってきてるから、皆で食べよっか”

 

 

歓声があがり、先生と膝にのったアリスを中心として菓子パが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トリニティ学園

 

 

 

時刻 夜

 

 

 

 

「ボウリング楽しかったっすねぇ」

 

 

「貴方には大差で負けてしまいましたけれど、楽しかったですよ」

 

 

「そりゃその両胸にボウリングの球かどうか見分け付かなi…ベブゥッ!!?」

 

 

「デ・リ・カ・シー!! …が無いですね、デミ」

 

 

「ご、こべんばばい…」

 

 

そうして夜闇の帰り道、声も姿も電灯がなければ暗闇に溶け込みそうな道のりをスタスタと歩いていたら、ふとデミがポツリと言葉を零した。

 

 

その言葉は、何処にも溶け込まず、しっかりと私の耳に届く。

 

 

「……本当に、楽しかったな……幸せだ」

 

 

当たり前の日常を、この子はよく大袈裟に言うのだが……やはりこうして心から喜んで貰えると私も嬉しくなってしまう、すぐさま声をかけようとデミの方を向いたのだけれど……。

 

 

「………あぁ、幸せだ」

 

 

何故か泣いてしまっていた彼女を抱き抱えて、今日はもう家に連れ帰った。

 

 

 

 

 

当たり障りの無い、ただの日常。

 

 

それでも一度失われれば、もう戻れる事は無い。

 

 

失われた日常を過ごすだけだ。

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