ーーデミの失踪から一週間
■ エンジニア部
(デミの失踪数日後にアリスがゲーム部を訪れた……)
“…………”
思い浮かべるはアリスの事情、今は武器選びに夢中になっている彼女だが……
《名も無き神々の王女》
アリスとケイが接触すれば起きてしまう最悪の事態……世界を滅ぼす機能を持った小さな女の子、それがアリスだ。
(けれど、アリスの起動……元よりあの施設の開閉には資格が必要なはず……)
デミが目覚めさせたなら資格を彼女も持っているという事。
(世界……それに救世を背負わされたからか?資格とは…救う者であること…?)
「……生」
端末を操作し、廃墟にアロナ操作のドローンを送り込んでおいた、ヴェリタスにも協力してもらった。
(彼女が……あんなに苦しそうに、逃げてしまった理由……)
「…………ん生」
それと、アリスを起動させたとするならば……何故、ゲーム部へ?それを知っているならば彼女は……。
「先生!」
“おっとっと、ごめんね…どうしたんだい?”
声が頭の中に入ってきて現実に引き戻される。
「全く、ボーッとし過ぎです。アリスの武器……あんなのになっちゃいましたよ?」
“……わぉ”
『光の剣:スーパーノヴァ』
“ ミレニアムのエンジニア部が宇宙戦艦に搭載するべく、大気圏外での運用を前提として制作した実弾兵器……実態は下半期の予算の約70%とロマンをかけて作り上げた、人の身長ほどもある巨大なレールガン、尚倉庫番と化している……”
「やぁ、先生…物知りってレベルじゃないね?ヴェリタスにでも頼んで調べてきたのかな?」
“やぁ、ウタハ”
「アリス!これにします!!まさしく勇者の剣です!光よ!!」
ドゴォオオオォオオン!!
「「うわぁぁぁぁ!!??!」」
エンジニア部の部室に穴を開けてモモイとミドリが泡を吹いて倒れる中、ウタハと会話を続ける。
“ありがとね?無茶させちゃって…少しだけだけど予算代わりにエンジニア部に振り込んどくよ”
「いや、別に良いさ……今はあれが動いている感動の方が大きい……戦闘データ、取らせてくれるんだろう?」
“勿論”
「流石先生だ」
「「え?」」
モモイとミドリの声が重なる中、ゾロゾロとドローンがやってくるのが見えた。
■
「光よ!!!」
チュドォーーーン……!!
「HAHAHAHA!!素晴らしい!やはりエンジニア部の科学力は世界一ィッ!!」
“ウタハ……凄く顔が何処ぞのドイツ軍人みたいになってるよ……”
「ぶ、武器一本の為に…」
「「酷い目にあった…」」
「アリス、これで改めて光の剣は貴方のものです!」
「テッテレー!アリスは勇者の剣を手に入れた!!やったぁ…!」
「それを使いこなせるなんて……本当に凄いね、おいで、アリス…もう少し使い方と、手持ちを調節してあげる」
「はい!」
「…………」
(……しかし、最低でも1トンは必要とされる握力、発射時にも一切ブレがない完璧な体幹バランス、あれほどのドローンの掃射を受け傷一つ無い肉体強度!!更に……ナノマシンによる自己修復機能まで……この機体を……いや、彼女が作られた目的は……)
思考の沼にハマっていく中で、ポンと肩に手を置かれる。
“ウタハ、君の思案は正しい……彼女、もしくはゲーム部に……何があった時、助けてくれるかい”
「……話題のエスパーか、先生」
恐ろしい、あのミレニアムの全知、ヒマリを前にしても感じなかった『知られている』事への恐怖を先生に抱いてしまう。
「逆に先生、先生の事を当てて見せようか?」
“あはは……エスパーを名乗ってる訳では無いんだけどね……私の事かい?”
「“女”の事を考えてる」
“え…!?ウタハ、どうして……”
「か・お。分かりやす過ぎだよ、先生……まぁエスパーの代金程度に思っておいて」
“あ、あはは……なんだか恥ずかしくなってきちゃった…”
■ 廃墟
“ゲーム部一同、出発!!”
「「「おー!!」」」
「お、お〜!」
「アリスは先生、モモイ、ミドリ、ユズのパーティーに参加した!」
みんなを引き連れてやってきた廃墟、ドローンの調査は身を結ばなかったが、逆に工事内部までの最適解を導き出せた。
“今からみんなの視界に少しアクセスするね”
「アクセスって…キャッ!?こ、これが先生の…大人の力!?」
「凄いです!先生は遊び人でありバッファーでした!」
「うぉおお!?このルートに従えばいいの!?おりゃー!!」
「ま、待って……みんな…」
“遊び人って言葉を覚えさせた子誰???”
皆にアロナを介したサポートを送ると、それぞれ違った反応を見せた後に進行を開始した。
最適のルート、完璧な指示、最高効率の移動方法……そう、アリスに抱えられながらの高速移動……大人として!私は醜態を晒そう!!
「先生……」
「先生は遊び人です、戦闘能力はありません!アリスに任せてください!」
“…………スゥ-”
「……?先生は一体何を…いや!これは遊び人の固有スキル!!アリス知ってます!先生はキヴォトスでも有名な遊び人、マスター遊び人です!」
「先生…!?!?!?」
“……今は先を急ごうか”
「……先生」 「やっぱり先生って時々変だよね!」「モモイ」「事実じゃん!」
……醜態を晒そう!!!
■工場内部
《
「な、なんだか物々しい雰囲気の所に着いちゃった…!先生、ここにG.bibleが?」
“うん、多分ここで合ってる、ヴェリタスの力を貸してもらってね……先生も色んなことを知らなきゃいけないからさ”
「凄いですね…流石先生」
「……ぜーっ……ぜーっ」
ユズは しにかけだ !!
「……」
“…?アリスどうしたの?ぷるぷるして……”
「先生は……」
「先生は!RTAの人だったのですね!!」
“え?”
ーーRTAとは、リアルタイムアタック(Real Time Attack)の略……ゲームスタートから終了までの時間を競うものだが…
「またアリスが変な言葉を…!お姉ちゃん…!」
「ぐぇぇぇ…!だってアリスが一番ゲームが上手い人のプレイが見たいって……ならRTA動画かなぁって……」
「確信しました!先生は遊び人とバッファーの上位職!RTAだったのですね!」
“RTA…ね、ユズの奴なら見た事あるけど……そんなに凄くないさ。みんなが優秀なだけだよ”
「え?ユズ先輩の?」
「せっ、先生…!恥ずかしいです…!」
“世界一を取ってるんだ、恥ずかしく……モゴモゴ…”
ユズに手で口を塞がれてしまう。
“ごめんごめん……さて、本題の…………”
『G.bibleを…』と言いかけた所で、偶然、本当に偶然ではあったが視界に『《
(…は?)
(《
有り得ない、そう有り得ないのだ。《
(狙いは?アリス?モモイ?ミドリ…ユズ?)
(…………っ!!)
(全員かッ!!)
一瞬の思考、その一瞬で正解を導き出したが……狙いは全員、生徒に怪我をさせる訳には……!
「アロナ!!!」
私の意図を汲み取って、モモイ、ミドリ、ユズの三人にバリアが張られる……と共に、私はアリスを抱えて後方へと飛び跳ねた。
ドカァァァァァン…!!
■
「いってて…ビックリした〜急に何〜?」
「お姉ちゃん…は大丈夫そうだね、私も怪我は無いや。先生とアリスとユズは…?」
「わ、わたしも……」
「先生!?先生!!」
互いの安全を確認している最中、割って入る声が聞こえる。
“グッ…ゥゥ……大丈夫、大丈夫だよアリス、本当に大丈夫だ“
「ア、アリスはヒーラーに…なれない…!先生!怪我が……無い?」
アロナに頼んで背中側の火傷を隠してもらう。
“《後でお説教です!!》”
“あはは、ごめんねアロナ……ほら、アリス私は何ともないよ?”
「アリス、アリスは……うわぁぁぁん!先生!アリスは勇者なのに先生の事を…!」
“本当に大丈夫だから…ほら、ヨシヨシ…”
「「「先生!」」」
“みんな、怪我は無かった?”
「は、はい私達は…それより!先生は大丈夫ですか…?」
“うん、アリスが庇ってくれたからね…何ともないよ”
心配して駆け寄ってきてくれる生徒達……本当に良い子達だ。
それにしても… 《
繋げれるとするならば、『世界』の話か……やはり既に私の身一つでは対応が後手に回ってしまうか。これについては先を知らない、故に先読みも難しい……。
“ともかく、アリス…この場所に来て何か感じた事はあるかい?”
「っ!はい!アリスの中に…何かセーブデータのような、例えるなら何度もプレイしたゲームをもう一度遊ぶかのような……」
“あのコンピューター……あれが違和感の正体かな?”
「……!先生はRTAでありエスパーなのですか!ヒーラー……では無いんですね…」
“あはは、ごめんね…?”
アリス達がパソコンに近づくと……起動音が鳴り響いた。
《Divi:Sion system へ、ようこそいらっしゃいました。お探しの項目を入力してください》
「キーボードを発見、G.bible と入力してみます」
《……》
「あ、何かでた」
《貴方は……AL-1Sですか…?そして…創世の主は……》
致命的なズレ、その迫る足音はすぐ近くまで来ている。
やっぱりデミちゃんは必要だったってコト!本人の居ない内に立証(身体に傷)されていくぜ、ワクワクしてきたなぁ〜!!