■シャーレ 事務室
“しかし…C&Cか…”
彼女たちには何度もお世話になった記憶がある、そこから言えるのは……。
“ネルが来た時点で……詰むよね…”
ミレニアム……及びキヴォトスの中でもトップレベルに位置する彼女、現在は外部の仕事に出ては居るが……。
“鉢合わせしちゃうんだよなぁ…!”
どうしたものか……アリスに頼まれて、あの場でなし崩し的に引き受けてしまったが……正直圧倒的にミドリが思案する作戦の方が成功率は高い…まぁ覚えているが故の悩みだが……。
“アカネ、カリンはなんとかエンジニア部とヴェリタスで抑え込めるとして……”
問題は多い、400台の監視カメラ、50体近い警備ロボに押収再利用された戦闘ロボ数十体……
そしてアスナと、ネル…この二人は『作戦』そのものが機能しない規格外、アスナは作戦における要所を持ち前の神秘で先回りし、100%成功する作戦だとしてもその100%を99%…はたまたもっと低い確率に引き下げる…予測不可能、回避不能。ミレニアム最強であるネル以上のジョーカーだと言っていい。
ネルはかち合った時点で詰み、今現在の戦力での勝ち目は0だ。
“うーーーん……うーーーーーーーん……”
ヒマリはまだこちらからアクションは取れないし……あぁでもない、こうでもないと悩んでいると、携帯端末に電話がかかってくる。ヒフミからだ…。
“もしもし…?……え?”
“デミが!?”
“あ、うん……今はまた飛び出してどっかに行っちゃったんだ…”
“話し合えたから……一応は?分かった……”
“そっかぁ……やっぱりまだまだだな、私は……先生としても大人としても”
失踪から一週間と三日…色々聞きたい事も沢山あるけれど…。
“話す資格…無いよなぁ……”
あんな表情で飛び出していかせてしまった私に今更会える訳が…。
“はぁ…”
「どうしたんすか?ため息ついちゃって」
“うわぁぁぁ!?!?!”
後ろからふと声をかけられ、驚きのあまり飛び跳ねてしまった。
“デ、デデ、デミ!?”
「はい、羽音デミっす」
“……”
本当に色々と言いたい、聞きたいことはあるが……
“…これを言う権利も何も無いけど…”
“…、お帰りなさい。デミ”
「一応、ただいまっす先生」
■
真っ白になった髪、ボロボロの制服、色素の薄まった目……消えた胸の傷。アリスはデミが?今まで何を…どこで?本当に…本っ当に聞きたい事はあるけれど、彼女に対して私が聞けるような立場では無い事は理解しているので、口ごもってしまう。
「……先生、大丈夫っすよ、こっちこそ謝りたい事が…その、首…絞めちゃってごめんなさい!」
“うん、その事については許すも何も無いさ、私の不甲斐なさの現れだよ…”
「ありがとうございます…ふふ、改めて『貴方』と話してみると…先生も私と似た人っすね…本当、すぐそうやって自分のせいだー!ってなるの」
“ははは……私という大人はこれぐらいの卑屈さが……”
「まぁそれはそれとして、それ以上話したら殴るんすけど」
“酷い!?”
「あはは!ふ、ふぅ……ふふ、あははは……はぁ……ふふふふ…!」
“そんなに面白かった…?”
「はぁ、涙出てきた、あはは……はぁ………………」
流れ出る涙は止まっていない。いつしか、笑いに混ざるようにゴポゴポと彼女の体から異音が鳴り響いている……。
“……デミ…”
「あんまし、しんみりするもんじゃないっすよ?ともかく、今困ってる事あります?謝りに来ただけなんで何もなかったらまた少しお暇しますけど」
“うーん、まぁデミが消えて泣いてやまない風紀委員のお世話だったり色々あるけど……”
「うぐっ、あはは……私も人の事……言えないなぁ……」
“君と私、お互いに腹を割って話せてないのもあるし……”
「それはお互い様っす」
“うん……そうだね……まぁ今一番困ってることは……C&Cの事かな”
「…なるほど」
“……はは!やっぱり、デミの方がエスパーだったね、私も良く生徒からエスパーエスパーと言われてしまうけど…”
「はは、エスパーの名を帰す為にも……お互いいつか話しましょう、先生」
“分かってるよ…デミ、それじゃ今は…今だけは、私に手を貸してくれるかな?”
「はいはいっす」
“ありがとう…”
“……デミ、RTAって、知ってる?”
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■ミレニアム ヴェリタス 部室
早速私はゲーム部、ヴェリタス、エンジニア部を呼び寄せて、作戦をお披露目する事にした。
“……ありがとう、来てくれて…!エンジニア部のみんな”
「あぁ、以前先生が言っただろう?ゲーム部に何かあれば手を貸してほしいと……まぁ理由はそれだけじゃないけど」
「部長……ふふ、理由は……その方が面白いから、だったっけ?」
「何より先生ともっと仲良くなりたいですから!」
作戦に必要不可欠な協力者、エンジニア部が揃ってきてくれている。
「先生!作戦が出来上がったって本当!?って、隣の人は…?」
“ああ、この方は……”
モモイに聞かれ、彼女に自己紹介を促す。
「日夜悪を裁くため、駆けずり回って正義執行!日雇い契約ドンと来い…レインボーカイテンジャー!っす!」
「新メンバーがパーティーに参加しました!パンパカパーン…傭兵が仲間になった!」
「は、はぁ……どうも…」
ミドリが凄い目でデミを見ている……。
デミには一旦カイテンジャー(真っ黒ヘルメット(変声機付き)に真っ黒スーツ(私の喪服))のフリをしてもらう事になった。
「レインボーなのに……真っ黒…」
「レインボーだからこそ、混ざったら真っ黒になるっす」
「なるほど……いやどういうこと!?」
「私の事はあんまし気にしなくていいっすよ」
“ぷっ……ふふ……”
珍しくモモイが振り回されているのを見て、クスッと来てしまう。
「も〜!先生までなんか変になってる〜!!」
まだ湧き上がってくる笑いを抑えて、テーブル中央に地図を広げる。
“ふふっ……はぁ、さて…作戦を説明させて貰おうか?見せてあげるよアリス……RTAって奴を!…アリス?”
やけにアリスが静かになっていたので、後ろを振り向くと……。
「アリスちゃんは本当に可愛いっすね〜ほぉ〜れ、モチモチ……」
「うむぬぬぬ……や、やめてくださ……フニュッ……ふ、振りほどけません!?」
“……レインボーカイテンジャー?お話はちゃんと聞こうか……???後アリスを離しなさい”
「アッはい……すみませんっす」
“…よし、仕切り直して……只今より、ミレニアム生徒会からの『鏡』奪取元い、C&C攻略RTAチャートを発表する!!!”
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皆さん、RTAの動画は見たことがあるだろうか?その中でもAny%という『エンディング』までの時間のみを追求する……何でもあり(チートを除く)のプレイの仕方を……。
そう、何でもあり、既存の道に従う必要等……どこにも無い。
「ユウカさんから聞いた……元いヒマリさんからの情報でヴェリタスとゲーム部が生徒会を襲撃をすると聞きました…が、まさかこの子……アリスちゃんの単騎突撃とは……可愛いですね、ほっぺもちもちです」
「バタンキュー……」
「まさか指紋認証システムの扉をぶち壊して進んでくるとは……それにこの意味わかんないほどデカい武器……エンジニア部のね?」
アリスの背負う武器……何処かで見たことがある、確か以前の予算決算及び会計令で……。
「…………考えなさい、私…相手は先生よ…?あのちょっと抜けててだらしなくて私が見張っておかないとお小遣いを直ぐに使い切っちゃう先生……あぁもう雑念!!」
ゲーム部はともかく、その味方に付いてしまったのは先生だ。あの人の『強さ』は間近で一度見ている。先生が味方についていてこんな馬鹿な特攻を…?
「ありえないわね……エレベーターの扉をわざわざ破壊?今の状態から帰ることが目的…?それとも…『アリスちゃん自体』がデコイの可能性…どちらも有り得るわね…」
「……ユウカさん、この…アリスちゃんは如何なさいますか?」
「……とりあえず、反省部屋に…置いときましょうか、流石に先生がわざわざ反省部屋からアリスちゃんを救いに行くとも考えにくいし、反省部屋の扉は電子ロックのものからシンプルな手回し扉にしとくわ。飛びっきり頑丈なのを」
「エレベーターは……生徒会から引っ張ってきましょう、エンジニア部の物を混ぜたく無いわ」
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ピピピッ……ポイントA1にターゲット確認、ポイントA2に移動中です。
「来たわね……」
「……そこまで入れば脱出は不可能、とユウカさんは最初言っていましたが……」
「えぇ、不可能を覆された時にこそ、一番大きな隙を晒してしまう…そしてそれを出来るのが先生」
「つまり…」
「全警備の4割をエレベーター周辺、そして上がった先のフロア…『突破される事を想定して』の位置に6割を割いた、先生を一切過小評価する気は無いわ」
早瀬ユウカは、先生の『強さ』を、『恐ろしさ』を知っている、故に油断を排した。
「では、私はお客様のお出迎えに向かわさせて頂きましょう」
そして、C&Cの爆弾魔が動き出す。
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「そこに隠れているのは知っていますよ、ミドリさん、モモイさん…私はC&Cコールサイン・ゼロスリー……本名は……」
「あ、アカネ先輩じゃん」
「アカネ先輩?アカネ先輩か、最近体重が……」
「重篤な秘密漏洩!?乙女の秘密を……じゃありません、姿を見せなさい!お二人方!計画は既に把握していますよ!」
「ん〜なんというか申し訳ないんだけど……この時点でそっちが詰んでるというか……」
「はい?」
「やっほ〜アカネ先輩」
「あ、あなたたちは!?」
『あなたたちはと聞かれれば!説明をするのが世の情け!』
『あの先生が加担した時点でこちらの勝ちだった、どんな質問にも答えをご提供!エンジニア部説明の化身豊見コトリ!』
『芸術と科学のコンビネーションのその先へ!ヴェリタスデジタルアーティスト!マキ!』
現れたのは、モモイでもミドリでもなく……!
「ユウカ!」
「もうやってる!監視カメラ復旧……やられたわね、録画映像だとは……まさか!?まさか、アリスちゃんが攻め込んできたあの時…?いや不審な点は……」
『やあ、ユウカちゃん』
「!?」
オペレーション室にヴェリタスのハレの声が響き渡る。
『録音音声だから返答しても無駄だけど…言っておくね』
『ドンマイ』
「…!!本物のモモイとミドリを探して!アカネはカリンに連絡、索敵完了と同時に位置情報は送るわ…!」
『今頃大慌てで頑張ってるだろうけれど、更に一言』
『全部デコイだよ』
「…っ!カリンと連絡が付かない…アスナ先輩は…電源くらいつけててくださいよ!……マキさん、コトリさん。一体何を……」
侵入者を告げるアラートが鳴り響き、シャッターが下がっていく。
「アカネ先輩、これは本当に仕方がないです、あれは卑怯っすよ……」
「まぁある程度はヒントをあげますよ、上です」
「…………上?」
ーー瞬間、停電
■屋上
「ぐっ……何故、何故貴方達がここに!?ウタハ、モモイ、ミドリ…!!」
「さぁ、何でだろうね?カリン」
「うりゃー!喰らえー!!」
「お姉ちゃん前出すぎ…!」
屋上で対面するはエンジニア部の部長、ヒビキにより降り注ぐ迫撃砲……そして……。
「…ユウカからの推測で分かっていたのは…エンジニア部、ヴェリタスの協力、しかし、作戦実行犯のゲーム部がここにいては差押保管室には……!!」
「ふふっ…カリン、貴方を抑えた時点でこちらの勝ちだったよ……。そして「雷ちゃん」の魅力を貴女に語る前に一つ……上を見てご覧?」
「……上?」
うっすら、うっすらとだが暗がりに隠れて……頂上にある差押保管室の更に上、空に…………。
「ヘリコプター!?」
■
ユウカの誤算を上げるならただ一つ
万全を期したこの状況、それでも……
先生を……彼女の脳内に収まりきる行動をすると、『過小評価』していた事だ。
「馬鹿っすね〜本当に……普通に攻略できないんすか……?」
“まぁ、デミなら出来るって信用してるし……最短で行くならこれかな〜って”
「というか先生ヘリ動かせたんすね」
“伊達に大人じゃないからさ…『鏡』の確保後は直ぐにヘリを寄せるよ”
「……はは、まっ…行ってくるっす、アリスちゃんの悲しむ顔も見たくないしね?」
“行ってらっしゃい、レインボーカイテンジャー”
■
「なっ!?馬鹿な!対空警備システムは……」
「既にシャットダウン中、後は外から生徒会を見渡せるカリン、君を妨害し続けたら勝ちだったんだ……だから私達は既に『勝ちの盤面』の上さ」
「そ……それでも!あそこから落下して一体何を…?」
「ぶち抜く、先生はそう言ってたよ」
「馬鹿なのか!?セクション事に区分けされた最上階の間にはチタンシャッターと、外敵からの侵入を防ぐ強化シャッターそれに加え鉄筋コンクリートだぞ?」
「……それもあの距離を抜くとなると計算違いにも程が……爆薬もあの距離じゃヘリコプターにも被害があるだろう、そもそもあの装甲を破壊できる爆薬はアカネの全力ぐらいで……」
ドォォォォォォン…!!!
夜のミレニアムに、爆音が鳴り響く……それはまるで……まるで?
「後もう一つ、装甲を抜くのは……素手だとさ」
「は?」
■
「……とびっきり嫌な予感がして、最上階で待ってたけど……」
自身の勘が告げる、目の前にいる化け物の脅威を。
「お、こんばんはっす。私はレインボーカイテンジャー!日夜悪を裁く為!正義の鉄槌ほにゃららら……日雇いされた、ゲーム部の傭兵っす!」
「……C&C、コールサイン・ゼロワン!アスナ!……よろしくね?傭兵さん」
夜に紛れる様な真っ黒なヘルメットに、真っ黒な喪服を着た人……間なのだろうか……それが目の前に、空から壁をぶち破って降ってきた。
「やっぱりアスナちゃんは可愛いっすね!勘が良いのも考えものですけど……はは……私はレインボーカイテンジャー!」
「今なら……私は、レインボーカイテンジャー!!!」
「三回聞いた〜!貴方変な傭兵さんだね……ッ!」
自身の神秘が、勘が告げる……“身体を放り捨ててもいいから避けろ”と。
ズドンッ!!!
後方へ跳ねとんだ、自分が元いた場所には拳が突き刺さっていた。
「…っあはは!!なんだか楽しくなってきた!」
「奇遇っすね、アスナちゃん…私も今……本当に楽しいよ……」
「あぁ……でも」
「これ、RTAなんすよね」