「あはは〜!身体が動こうとしてくれない!世界が回ってるよー!」
「ごめんなさい、アスナちゃん…時短時短っす」
瞬間的に拳を叩きつけた事で飛び散った瓦礫を蹴り飛ばし、アスナちゃんを昏睡させた。
「よっと!」
ボゴォォォォオン!
差押品の保管室、その壁をぶち破る。
「え〜と、『鏡』『鏡』……あ、しまった……」
今やこの身体は……肉体のリミッターを外す……なんて優しいものでは無く、『全力を振るう』だけで血煙に爆散するほどの領域まで限界を超えてしまえる今の私は、凄まじい程の膂力を出せるようになっていた。その際の火力は、以前は何発も叩き込んでスクラップにしたクルセイダー1型を、一撃で鉄クズにする事も出来るだろう。
そして…
グジュグジュグジュ……
「はは、これじゃ『鏡』を持っていけないな……」
「ヒフミちゃん……こんな私が……大好きって、大好きか……はは」
まるで粘土がこねられていく様に再生していく右手。ヒナちゃんとやった時と同じだ、0から1が産み出される…そんな急速再生…。しかし、私の身体は未だ…不定形だ。
廃墟の時、『身体』という形さえ失いかけていた私を……大好きって、ヒフミちゃんが言ってくれて、なんとか外側だけは形を保てるようになった。けれど内部…身体の中身は……。
「……」
ビチャッ…
赤色、というよりピンクであろうか?…内臓と肉…骨すらも…身体の中を構成している重要な部分をミキサーしたような液体が私の傷や口…再生する際の欠損部等から漏れる。
……ホシノからあの話を聞いた時から、私の精神は肉体に依らなくなった。今までは骨が折れれば立てない、人としての機能を失うような負傷をすれば、相応に動けなくなっていたが、そういった肉体の縛りから解き放たれてしまった。
「ははは……まるで………化け物、いや…化け物そのものか…」
きっと…ヒフミちゃんがいなかったら……流れる涙すらこの液体になっているんだろうな……。
『終幕』それに適応するかのように私の身体は作り替えられていた……いや、『私』が死んだ日に、あの日から元々こうだったのだろう。
私が…まだ普通の生徒だと勘違いをしていたからなのかな…?肉体を超えた先、精神そのものが……私という化け物の正体だ。
「………」
ゴキンッ…!!
“あの夢”の様に、自分の首に手をかけてみるが……握りつぶしても、今の私は生きている。きっと意志だ、『死ぬ』という精神力が今の私には足りてない。
「ヒフミちゃん……」
大好き……私が?『私』が?「
……あんなに言葉を伝えてくれたのに、まだ…分からない……
けど……
「……違う……、今の私は……レインボーカイテンジャー!」
答えは私が決めなきゃいけない……壊れたものを…修復して使い続けるのが、日本人の美徳なんだっけか……。
役目を思い出し、『鏡』を探す。
「レインボ〜はは、『鏡』〜?どこ〜?あ、これか!よっしゃ帰るか!」
「おい」
「はい?」
つい声を掛けられたので返事をして振り返った。
「あ、ネルちゃん」
…?
「ネルちゃん」
……??
「ネルちゃァん!?!?!」
ガバチャーの要因、その化身…
「ちゃんちゃんうっせぇな!?ぶっ飛ばすぞテメェ!!」
ミレニアム最強のおチビこと、美甘ネルが私の頭にサブマシンガンを突き付けていた。
「あ!待って下さい!わ、わたし避難民!停電しちゃっテー……」
黒ヘル喪服 倒れているアスナ ぶち破られた天井と壁
「……」
「……」カチャッ…
「あはははは!!そうですよね!!」
「チッ、アスナがやられてるとはな……お前何モンだよ、ツラ見せろ」
小銃がカチャカチャと、ヘルメットを突っつかれ外すことを催促されている。
「あ、あ〜その〜わ、私の名は!レインボーカイテンジャー!」
「黒じゃねぇか」
「えっと……日夜悪を裁くため!正義の鉄槌……」
「悪を裁く奴はこんな事しねぇよ」
「はは、えっと…ゲーム部の日雇いバイトっす…どうも」
「アスナをタイマンでノせるヘルメット団もバイトも居る訳ねぇだろ」
「……」アセダラダラ
「……」
シーン……
「……三十六計逃げるに如か…グベァッ!!」
「この距離でアタシが逃がす訳ねぇだろ!オラ、ツラ見せろや」
ゴロゴロと撃たれた事で壁へとすっ飛んで行った。
ヘルメットの一部が欠け、さらりと真っ白な髪が外に見えてしまう。
「……白髪であたしを知っててアスナをタイマンでやれる奴……いねぇな…噂の便利屋に白髪の強い奴が一人は居た気がするが……アスナに楽勝は出来ねぇ、本当にテメェ誰だよ」
ネルの鋭い目付きが更に鋭利に、その分強くなった視線が私に突き刺さる。
「……はは、まぁ…やるだけ頑張ってみますか、そしてさっさと逃げさせて貰うっす…RTAだもんねこれ」
「“逃げる”だァ…?お前、あたしを知ってて、それでいてこの間合いにいて……逃げ切れると……“本気”で言ってんのか?」
美甘ネルーーこのキヴォトスにおける接近戦のプロフェッショナル……対『アビ・エシェフ』において、状況を揃えたとはいえ勝利した、本物の化け物。
ーーーしかし
「真正面からやってみてもいいっすけど…さっき言った通りRTAだから…さッ!!」
化け物ならば、目の前にもう一人…
ガゴンッ!!
保管室の床がーーー抜けた。
(『鏡』をミドリとモモイに渡す、私の目標はそれだけ…なら無理に戦い合う必要も無い)
今やヒナ委員長の時と同じ戦闘能力を有した羽音デミ。
身体の何処であろうと全力をぶつけさえすればは、その破壊力は発揮される。
(足で床下を……!)
冷静な思考は保ちつつ、目前で披露される人間離れした力による破壊に驚愕する。そして確か今……
(見間違えじゃなけりゃ…足が吹き飛んでたぞ……!?)
驚きが更に大きかったのはそっちだった。目を疑いたくなる光景……。
「アデュー★!」
「っ!逃がすかァ!!」
両者着地…その瞬間に走り出した相手を見て追いかける。
(見間違えなのか…?なんで今走れてやがる…!つうかなんつう速さだよ)
互いに驚異的なスピードを保ったままビル内を爆走していくが、『鏡』を抱えているデミと、小柄の機動性を活かしたネルの高速機動の二つの理由よって差は埋まっていく。
「ゲゲゲゲッ!?早すぎるっす!?」
「捕まえ…たァ!!」
愛銃『ツイン・ドラゴン』単純な火力面、取り回しにも優れたダブルサブマシンガン…その二つを繋げる鎖でさえもネルは手足の様に扱う。デミの胴体に弧の字をえがいて引っ掛け、接近戦で押さえつけようとする。
「テメェがどんな手品使ってるか分かんねぇが、この間合いであたしに勝てるやつは……キヴォトスにいねぇよ!!」
「それは…そうかもしれないっすね…!」
対面する喪服白髪野郎……気づいた事がある、
(こいつ銃を持ってねぇな…?さっき鎖から伝わった感触が生身しかねぇ…)
突撃しながら周囲を一瞥しても仕掛けも遮蔽も無し、闇雲に逃げただけのズブの素人の可能性…身体能力に振り回されている、戦闘技術はそこまで……
(つまり保つべき距離はコイツの手が届く程の至近距離じゃなく…)
「オラオラオラァ!!」
「ちょっと!?鎖で止めておいて引き撃ちは無いっすよ!?」
ズガァン!ズガァン!と、床が爆散していく。
ネルのいる位置に拳を叩きつけるが、先読みされてるのか一歩ズレて避けられる。
(付かず離れず、あたしの得意距離とコイツの範囲外から撃ち続ける…!!)
そしてスタミナ切れの所を叩く、振るわれ続けてる馬鹿力、燃費がいいはずが…
「も〜!どうするっすかねぇ…そうだ、ネルちゃん!受け止めて〜!」
(…ッ!?はァ!?)
先程からの銃撃で、相手の喪服には血が大量に滲んでいる。なのに弾丸が吹き荒れる至近距離をダッシュしてきた。
「あぶッ…!ねぇなマジで!!」
「あ、避けられた…ぶへぇ!」
飛び込みをかわされた事で、顔面を床に擦り付けながら滑っていった…。
…僅かに心に浮かぶ恐怖
「マジでなんなんだテメェ…………?名乗れよ、喪服野郎、あたしはC&Cコールサイン・ダブルオー……今は依頼じゃねぇが、ウチのメイドやっといてハイさよならって訳にはいかねぇよ……テメェの名を言え」
…思い出す
「イテテ、ん、私の名を名乗れって…?……は、は」
“貴方の名は?”
「…はは…ふふふ、また、名乗りか…あははは…」
“貴方の名は?”
アリスちゃんにも問われた……私の名前、ヒフミちゃんが見てくれている私の事…。
「…ぁ、そうだった……今は………ゲーム部の……はは……ふふふ!」
「あん?何笑って…」
“いってらっしゃい、レインボーカイテンジャー”
そうだった、さっき名乗ってたじゃないか。
「…ははは!!私の名は!」
「日夜悪を裁くため、駆けずり回って正義執行!日雇い契約ドンと来い!レインボーカイテンジャー!!今日だけゲーム部の傭兵にして、今日だけ先生の協力者!宜しくっすネルちゃん!」
「はん、話さない…なら、無理やりそのヘルメットを剥いで尋問だ!!」
「とりま逃げるっす」
「だからすぐ逃げてんじゃねぇ!!」
イラついたせいで、勢い余って少し奥目に踏み込んでしまう。
「隙あり、隙は無いけど隙を作って隙ありっす」
拳が前に突き出される、この状況で、この距離でされても何一つ効果が無い…はずの一撃が、暴力的な風圧をもって放たれる。
ドパァン!ベチャッ…!
(ぐっ…クソ!衝撃波だと!?どんな速さでやりゃぁそんな事なるんだよ!…つうか今の音、なんだ?)
危機を感じ拳の直線上から顔を捻って回避したのにも関わらず振り出された拳の衝撃波は頬を裂く、デミはヒナ委員長との戦いの経験がここで出た。
一つは腕が破裂した音、もう一つは…
「銃…?どっから取り出した?」
左手を己の胸に
「…?」
「まぁ無いものの代わりに入れておいただけっす、気にしないでください」
発砲、天井に直撃し、崩壊。
(んなハンドガンでそんな…!瓦礫が…!)
瓦礫が二人を分つ、降ってくる瓦礫を避けたネルに対し、デミはそれに押し潰された。
「なっ…!馬鹿、何してんだよ……はぁ、掘り起こすのも面倒が……」
愚痴をたらそうとすると、ガタガタと瓦礫が揺れ破砕していった。
「よっこいせ、『鏡』…無事か、それじゃ〜」
明確に出来た大きな隙、そのまま壁のぶち破ってビルの外に飛び出す。
「あたしが外まで追えねぇとでも…んなぁ!?」
デミが破った壁のその先にはヘリが待ち構えており、開かれたドアにすっぽり入る形で離脱された。
「流石、先生」
“はい、おかえりなさい…だね?モモイとミドリの所へ行こうか”
「クソが!!待てやコラァァァァ…!!!!」
伸ばす手、響く怒号は届かず、離れていってしまった。
「……はぁ、マジでなんだったんだよ…アイツ、クソ…アスナ回収してさっさと降りるか」
「……チッ!!覚えたからな、クソ白髪喪服野郎…!!!!!」
曇らせが〜書きたいけど〜エデン条約まで我慢我慢〜!!出来るかなぁ…?