『百合園セイア』は未来予知能力を持っている。
また、夢の中であれば時間軸を超越した干渉を行うことができ、会話等を行える。
私が、はっきりと夢を認識していなかった為か、今まで干渉は無かったが……
『やぁ、こんにちはっす、百合園セイア…又は予言の大天使とでもお呼びした方が良いっすかね?』
『き、君は……この世界は……!』
『あ、ここはそこまで気にしなくていいっすよ?ほら座って座って』
瓦礫から椅子と机を引っ張り上げて座ることを催促する。
『馬鹿な…私は、私の夢の中から君を見ていただけの筈、本来であれば私の見る夢の中で…!どうしてここへ……君は…一体……!」
『あはは、そこはもうひとひねり考えてみることっすね』
『……まるで上位権限を持たれたかのように君に私は引きずり込まれた……………未来を見て…………ここは現実…か?いや、この光景と私が予知した未来は一切干渉し合って無い……』
『ん〜ちょっとややこしいっすよね、まぁここは現実であって、確定した未来でもあり、夢でもある……矛盾してるっすけど』
『まぁヒントとしては、私が居る限り、『全部替えても同じ』ってぐらいっすかね、そうじゃなきゃ出来ないっていう仮定を、全部出来るって考えればシンプルっすよ』
『……!テセウスの船に類似したものか!というより未来の雛形、君という存在自体が世界と同レベルの互換性を持っていなければ、こんな未来を持って来れない……!!』
『つまり、君という存在が世界と同価値なら……あらゆる未来になりうる……根源になっている……だと?どんな状況であろうと顕現しえる世界……なのか……?これがか……!?この地獄のような光景が…!?』
『そうっすね、始まりと終わりさえちゃんとしてたら、その過程なんて関係ないってだけっす……ほら、立ちっぱなしは疲れるっすよ?』
『……っ!!君は!君は一体!!』
『答えは今言ったっすよ?始まりと終わりさえちゃんとしてたらって』
『……は……はは、ば、馬鹿な、そういう事なのか…?君は……創世と破壊を……担当する存在、という事か』
『まぁそういう存在ってだけで、特に頭も良くないトリニティ学園正義実現委員会 二年生 羽音デミなんですけれど、まっ大丈夫っす……この光景は私が何とかするんで、セイアちゃんはエデン条約の事に集中してもらって』
『……私が予知した未来には一切君の姿が見えなかった……、その正体がこういう事だったとは……はぁ、座らさせてもらうよ』
ちょこん、と目の前のガタガタなイスにセイアちゃんが座ってくれたので、お手製のヒフミちゃんから作り方を教えて貰ったクッキーと……
『飲み物は何がいいっすか?』
『…紅茶を頂こうか』
『ナギちゃんのお気に入りの奴にしとくっすね』
地面に手を突っ込み、クッキーと紅茶を取り出す。
『何を一体どうしたら地面からクッキーと紅茶が………………ッッッ!!?!!?』
『あ、気づいたっすか?』
セイアちゃんは下を見て青ざめながら震えている。
『瓦礫の下に……ある…の……は……屍の山……?……!!ナギサ……ミカ……わ、私まで……!!』
『うん、そこから生徒達の思い出を引きずり上げてるだけっす、顕現の悪用バンザーイ、私と同じやり方でクッキーと紅茶を出せるんすから、みんな天使や神の器だったんすかね?』
『うっ……』
口を抑えて吐き気をもようしてしまった様なので、袋を取り出して渡してあげる。ついでに背中とんとん…
『ほっそいっすね〜ちゃんと食ってんすか?』
『……オエッ…き、君はこの光景を見てなんとも思わないのか……!?』
『いや、沢山思うところあるんで、絶賛今試行錯誤して解決しようとしてるっすね』
『な、そ、そうか…済まない……君という人格に関しては存在とは関わらないのだったね……浅慮だった』
『律儀っすね……よし、それじゃお話しましょうか!あ、食べます?クッキー……いらない?そうっすか……セイアちゃんは何か聞きたい事や話したい事あるっすか?』
『絶賛この世界についてもっと聞きたいものだが……エデン条約、そちらについて話したい、近々私はアリウス分派に襲撃され一度身を隠す』
『エデン条約の瓦解を狙ったアズサちゃんの潜入、襲撃っすね?』
『あぁ……大体君は分かっている様だね、なればこそお願いしたい……この先の未来では陰謀、確執……多くの怨嗟が舞う未来なんだ…私にはその先を…………見る事も、変えることもできない……』
『多くの事を識ってしまった私は、恐ろしくて堪らなかった………既に私以上の事を抱えていた君にお願いするのも忍びないが、どうか……手を貸してくれないか?』
頭に思い浮かべるのは、親友の姿。
『………良いっすよ、より善い未来を望む事は…誰も否定できないんすから、さぁ話がそれだけならお帰り願うっす』
『あぁ、ありがとう……帰り方は分からないけれどね』
『簡単っす、今この世界の軸が失われればセイアちゃんは元いた場所……夢へと帰れる』
『
『っ!!待て、この世界は君にとっては現実なのだろう!?死ねば、死んでしまう……』
『はい、分かってるっす…分かってるからサヨナラっすね、役目も終えたんで漸くって所っす、それじゃまた』
『待ってく……』
セイアちゃんが言葉を口に出しきる前に、私は私の頭を撃ち抜く。ようやく地獄に行ける、そう安堵しながら。
■トリニティ 自室
「はァっ…はァっ……ハッ…………はぁ…」
飛び起きた拍子に花瓶を倒して割ってしまう。
「セイア様!!大丈夫ですか!?お気を確かに……!!」
「大丈夫…少し寝付きが悪かっただけだ、心配しなくていい……」
「さ、左様で……掃除しておきますね、お飲み物はお飲みに?」
「あぁ…頂こう、…紅茶でも入れてくれるかな?」
「了解致しました、少し失礼致します…葉を取りに行ってきます」
バタン…と扉がしまったのを見て、頭の中を整理する。
「…………ナギサ…………ミカ……」
エデン条約まで後数ヶ月、タイムリミットはすぐそこまで近づいている。