ヒマリが〜当たらない〜!カスミも〜いつか来るのかな〜!!アハア八アッ八ッノヽ~!はぁ……
「汚れても良い服って言ってたじゃん!!?なんで水着なのよ!?」
「掃除する服って言われて何で水着になる訳!? 馬鹿なの!? バカなんでしょ!? バーカ!」
「ですが動きやすいですし、何かで汚されても大丈夫ですし、洗い流すのも簡単で――」
「そういう問題じゃないでしょ!? 水着はプールで着る物なの! っていうか、だっ、誰かに見られたらどうするの!?」
「誰かも何も、此処は私達以外いませんよ……?」
「先生が居るでしょう!?」
“……( ⸝⸝⸝ ⸝⸝⸝)…”
「あんたもアンタでウブ過ぎる反応してるんじゃないわよ!!!」
“ヒドイッ!?”
地団駄を踏みながら怒るコハルもなんだかテンプレだな……と思いつつ、生ハナコ水着と体操服ヒフミを見ることができた眼福さを味わうデミなのであった……後ジャージを着た先生の身体、今まで着膨れする服しか見てなかったが、女の子みたいな身体付きだ、ちゃんと食ってんのか…?
「ですがコハルちゃん、動きやすく、汚れてもすぐ水で洗い流せる……利便性とデザインを兼ね備えた衣服だと…」
「と、兎に角駄目! アウトったらアウト! あんたはもう水着の着用禁止!」
「あら、それはそれで、まぁ……仕方ありませんね、よいしょ――」
「わあああぁああああ!?」
“うぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!”
「ァァァァ!?見ちゃダメっすぅぅ!!!!」
先生の目が片手に塞がれつつ引き摺られていく、あまりにも教育に悪い光景にヒフミは耐えられず狼狽えるばかり、アズサはいつも通り……。
「何で水着脱ごうとするの!? 馬鹿なの!? 変態っ、この変態ッ!」
「いえ、コハルちゃんに水着の着用を禁止されてしまったので――」
「だからって全裸になるって発想がもう既におかしいのッ! 普通に体操着を着れば良いでしょう!? エッチなのは駄目! 死刑ッ!」
「あらあら」
“デ……デミ……くび、くび……しまっで……ガク……”
「先生ー!?!デミちゃん!!先生、先生が死んじゃいますってば!さつまいもみたいな色にーー!?!」
「わァァァ!?し、死なないで…!わ、ワカモ!セリナぁぁ……!」
「なんでそこで七囚人の名前が出るんですか!?」
「……あのバカ達はほおっておいて……ほら、部屋に体操着あるんでしょッ! それに着替えてッ! 早くッ!」
コハルがハナコの背中を押し、合宿場の着替え室へ押し込んでいく、その間に先生の命は三途の川を反復横跳びしていたのだけれど。
※普通に大丈夫だった。
■
「そ、それではまず、周辺の雑草抜きから始めて行きましょう……それと、デミちゃんは先生の傍から離れて下さい……」
今度はしっかりと体操服に着替えてきたハナコを迎え、集合し切った補習授業部だったが、未だに先生の背中に引っ付いて離れないデミを引き剥がしつつ、今日の天気を考えてみんなに注意しておく。
「今日は日差しも強いですし、熱中症には気を付けて下さいね」
「は~い♪」
「草を、抜く……まぁ、別に……」
「なんでそこで口篭るんすか?コハルちゃん」
「な、ナンデモナイデス!!」
「うん、確かに本陣の周辺で敵が隠れる事が出来るポイントを取り除くのは理に適っている」
「えっと、取り敢えず建物の周りを整えたら、その後はそれぞれ一ヶ所ずつお掃除をしていく、という順番でお願いします!」
“先生の年になると腰がね…おーいてて、頑張らなきゃ…”
「先生の腰痛はデスクワークのし過ぎです!今度の当番の時、ペロロ電動腰もみベルト差し入れに行きますからね!」
“………そんな商品あるんだ…?”
「はい!通販で買いました!……ほら、デミちゃんも離れて下さい、私と一緒に居たいんじゃなかったんですか?どこかに行っちゃいますよ?」
「ごべーーん!!すぐ掃除するからそんなごどいわなぃでぇ!!」
■
各々散開し、ガラクタや伸びきった雑草を刈っていく…途中コハルが羽をピン!と伸ばしながら体操服の中に何かを隠したような気がするが……まぁ気のせいだろう、真夏日の中、クラフトチェンバーの無駄使いで作った経口補水液を口に含みながら作業を進める。
こういった隙間時間にも仕事や先の事ばかりで頭の中がいっぱいなのは少し反省しなければならない、それで今を見失っては本末転倒になってしまうから。
“……ふぅ、ここら辺は終わったかな”
《先生》
“………なんだ”
普段から身に付けている通信機器から声が発せられる、黒服からだ。
《お耳に入れたい事が、これから一日と三時間後、ビナー起動の予兆が…急激な起動、まるで先程何かと共鳴したかのような反応です。私に予測出来なかった変数であり、私達の作為によるものでは無いと今ここで誓います》
“……分かった、見返りは期待しないでね”
《クックック……なに、大丈夫ですよ、一種の信頼稼ぎですから》
“すまないけど、君に対して仕事上の信用は持てるけど人として信頼は絶対に持てないから、宜しく”
《クックック…………………………それでは失礼しますね》
(……なんか寂しがってた?いや気の所為にしとこう、虫唾が走る)
(ビナーの起動、今から対策委員会の皆に連絡……試していた例の手段の実験にも丁度いいか……さて、どう考えれば良いべきか……ケテルの時といい、デカグラマトン側に何か変化があったのか?)
「先生ー!お疲れ様です!こっちも終わりましたよ」
難しい顔をした先生に、ヒフミが声をかける。残るは廊下や部屋の隙間、ロビー…食堂、教室、様々な大部屋の掃除、既にハナコやコハル、デミも合流して次の場所に向かうようだ。
“うん、お疲れ様…さて、お片付けお片付けっと”
■体育館
「へいへい!コハルちゃん!アズサちゃん!私のボールを取れるかな?見よ高速ドリブル!」
「う〜!やぁっ!」
「甘いっす!」
「なんという身のこなし…!やはりあの時、私を制圧した手腕は本物か…!」
“コラ、サボらない”
「「はーい…」」
「すまなかった…」
■教室
「げほっ!げほっ!凄いホコリ……」
「ロビーの時と同じく、ロッカーの上やホコリが溜まっている場所を掃除する時はマスクをつけた方が良さそうですね……これをどうぞ?コハルちゃん」
「…あ、ありがとう…ヒフミ……ちゃんも、はいこれ」
「…わっ!?これって!ウェーブキャットの雑巾…!コハルちゃんも、モモフレンズファンなんですか!?」
「……モモフレンズ…?何それ……」
「……」
「……」
“ごめんごめん、遅れちゃって……何この雰囲気、あ、私のウェーブキャット雑巾使ってくれてるんだね”
■寝室
その後もやけにマットレス交換の手際が良いデミがハナコに絡まれたり……。
「……デミちゃん、とっても手際が良いですね♡ 私にも手とり足取り…」
「ぐ、グワァー!?離れろこの色狂いぃ〜!?というかやっぱり私の事呼ぶ時なんかタメがむぐっ…ムムゥッ!?」
「エ駄死!!」
色々とあったが……。
「「「終わったー!」」」
「お疲れ様です皆さん♡」
“お疲れ様、飲み物はいるかい?”
「……貰っておこう、スンスン…何か入れている訳では無いな、いただきます」
“ははは、生徒にそんな事する訳…”
「あらあら…本当ですかぁ?先生…合宿中はずっと一緒だと言っておられましたが……♡」
「黙っとくっす色狂い」
“さて……全て終わったと言いたい所だけど……もう一つ掃除する場所があるよね?ハナコ”
ふと、先生がそんなことを口にしハナコに目線をやると、火照ったように顔を赤くして、嬉しそうに告げた。
「えぇ、屋外プールが♡」
「ぷ、プール……? あ、そう云えばさっき……」
■
その後、先生とハナコに連れられ合宿場裏手へと回ってみると……そこにあった光景に各々絶句してしまった。
「これは……」
汚れが酷いのも問題なのだが、草木が伸び放題となっていて、プール内部には落ち葉や木の実、枝やそれに付着した泥等、沢山のものがこびり付いていた。これを清掃するにはかなりの労力が必要だと一目で分かる。
「だいぶ大きいな、それに汚れが酷い、どこから取り掛かれば良い物か……いやそもそも、補習授業に水泳の科目は無かった筈だけれど」
「試験に関係ないなら、別にこのままでも良いじゃん、掃除する必要ある?」
「いえいえ、良く考えてみてください、コハルちゃん」
皆、プールの惨状を見て掃除は否定的だったのだが、ハナコが目を輝かやかせながら話す、まるで夢を語るような表情だ。
「キラキラと輝く水で満たされたプール、楽しい合宿、はしゃぎ回る生徒たち……」
コハルに一歩、ずいっと近づいく。
「ほら、楽しくなってきませんか?」
「……? え、何? 分かんない、何か私に分からない高度な話してる!?」
“…分かる、楽しく輝き過ぎて目が潰れそう”
「先生! やっぱり貴方も理解していましたか!」
「えっ?」
コハルは周りを見渡して、己と同じ気持ちになっている者を探す、そうでなければこのイカれた者たちの方が正しく思えて来てしまうからだ……デミ先輩もアズサも困惑した表情をしていたので一先ず胸を下ろす。
「ですが確かに、こうして放置されてしまったプールを見ていると、何だか……こう、もの悲しい気持ちになりますね」
「このサイズだし、昔はきっと使われていた時期もあったんだろう、元々は、賑やかな声が響き渡っていた場所なのかもしれない……」
「それでも、こんな風に変わってしまう――『vanitas vanitatum』……それが世界の真実」
「……?」
「えっと……」
「……アズサちゃんは凄いっすよねぇ〜」
「古代の言葉ですね、『すべては虚しいものである』vanitas vanitatum……確かに、そうなのかもしれません」
すべては虚しいものである、このような寂れた場所を見て、そういう風な感想が出てくるのもおかしくは無い、繁栄と衰退は世の常であるから。
「……アズサちゃん、デミちゃん、ヒフミちゃん、コハルちゃん!」
ハナコの麗らかな声が響き渡る。
「――今から、遊びましょう!」
「え、えぇっ!?」
勉強の為の合宿であるはずなのに、そんな宣言を聞くとある種、不真面目さを感じさせる言葉の筈なのだが……。
「今から掃除をして、プールに水を入れて、みんなで飛び込んだりしましょう!」
「で、でもハナコちゃん、私達は此処に勉強をしに――」
「明日からは頑張ってお勉強をし続けなければなりません、となると今日が最後のチャンスかもしれないじゃないですか!」
何か、『青春』を感じて止まない、感じる不真面目ささえ…ハナコのペースに呑まれ、『青春』に裏返る予感がする。
「さあさあ、早く濡れても良い格好に着替えて来て下さい! プール掃除を始めましょう!」
「う、うぅ……わ、わかりました…?」
「……うん、例えすべてが虚しい事だとしても、それは今日、最善を尽くさない理由にはならない」
“顧問として、許可しようではないか……そんな時間があっても良いと!”
「分かる男はイイ男っすね!さっさと私も着替えてくるっす!
いち早くこの場から立ち去っていくデミに続いてアズサも走っていく
「私もちゃんと水着も持って来ている、待っていて」
「あ、アズサちゃん!? って、早……っ!?」
「さぁ、ヒフミちゃんもコハルちゃんも行きましょう!」
「で、でも確かに……此処だけ掃除しないのも何だか気持ち悪いですし――分かりました、私も着替えてきます!」
「え、えぇっ!? 補習授業とは全然関係ないじゃん……うぅ、何で……」
「――ふふっ、コハルちゃん♡」
無言で近づいていくハナコ、その構えからは一寸の隙さえ感じられず、己の抵抗の無力を悟る。
「わっ、分かった! 分かったから! 無言で近寄らないでよッ!?」
皆がハナコに連れられて着替え室に行ったのを見て、先生もある程度濡れてもいい……。
“………あ、しまった…”
■
「待て待て待てっ!!?!?」
驚きを隠せないコハル、その理由は……
“どうかしたかい?コハル”
「どうかしましたか?コハルちゃん」
「どうしたんすか?コハルちゃん」
何故か制服でいるハナコと、先程の体操服を脱いで上裸となった先生と……黒ビキニ…?を着ていたデミだった。
「なんで!?先生は……まぁ…うん、着替えがなかったのは分かるけど!せめてシャツを着てよ!そしてハナコはさっきが水着で今が制服なの!?濡れてもいい服って!!?デミ先輩はさっさと学校指定の水着着てください!!エ駄死!!」
「……分かってない、コハルちゃんは分かってないっすねぇ……」
「濡れても良い恰好……それは各々の美学によるんです、コハルちゃん」
“人は皆、己の『良い感じ』を求めるものなのだよ……コハル”
「訳分かんない!!それがなんで制服とビキニと半裸になるのよ!!」
「ハナコちゃん、先生……私ちょっと思った事があるんすけど………全員がビキニなれば、トリニティの校則…変わりませんかね……?」
「うふふ……デミちゃん、それはアリ、です♡ 私も下に着ていますし」
“布面積に関しては議論の余地ありだけどね……”
「あ、あはは……」
夏の空の下、その時、肌色面積支配率はキヴォトスにおいてトップを飾ったのだった。
最近さぁっ!曇らせ……少ないよねぇ……?分かるよぉ?分かるとも、皆の気持ちは……実によく分かる…………けれど私はこの時間すらも曇らせの一種だと思っているんだ、確かに直接的な表現や欠損、苦しむ描写は無い……けれど今までを振り返ってみると、各々の内面を思案してみると……どうだろうか?
こんな平和で青春をしている中でも、デミは己を異物として常に演技と自死を望む、ハナコはそんな彼女の姿に常心を焼かれ、共にあるだけでもはち切れそうな感情を抑えて…彼女が教えてくれた自分らしさを全うしている。
……足りなくない?やっぱり足りねぇじゃねぇか!!!曇らせ成分……最近ずっと平和だったんだ……ちょっとくらい……ちょっとくらい良いよね……?駄目……?嫌だーーー!!!早く!!失意に沈めぇ!!!!