ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

4 / 119
運命が変わる日

 

 

 

 

今日もいつも通りツルギ先輩に稽古を付けてもらったり、放課後にヒフミちゃんやカフェ巡りしている途中に出会った放課後スイーツ部の面々と話したり…。

 

部屋に帰り一息つく、部屋の模様替えはここ1年していないのですっかりベッドをソファー代わりにするのが癖づいてしまった。

 

お菓子を開けて明日について考える…そう、明日遂に私の日常が崩れる日、『先生』のご到着だ。

 

 

違和感を持ったのはそう、数週間前から私の正実の活動がより一層激しいものになってからだ。

 

ぶっ飛ばしてもぶっ飛ばしても湧いてくる不良共、ヘルメット団のやけに綺麗な装備品、終いにゃヘリコプターまで持ち出してきた時にはカイザーの影を疑ったもんだが…。

 

そう、数週間前の間に犯罪係数爆上がりになるこの現象、皆、覚えがあるだろう…未だ秘匿されてはいるが、『連邦生徒会長』の失踪だ。

 

それに、明日ハスミ先輩が連邦生徒会長に直談判しに行くという。

 

『先生』それはこの世界のメシアとも言える存在だ。生徒の為ならばその身を捧げることを厭わない狂人…ゲヘナ足舐めペットプレイをする変態…

色々問題点もあるが、間違いなく『先生』という存在はこの世界をハッピーエンドに導く大人だ。

 

しかし、不安な事が幾つかある。

 

 

まずその1

 

原作のブルーアーカイブには私は居ない。

 

 

 

記憶が正しければ羽音デミという生徒はブルーアーカイブの世界に居なかった。ヒフミちゃんの友達でも、正義実現委員会のメンバーでもない。

 

バタフライエフェクト…私が存在することで起きる影響は考えようも無いが、この世界は『先生』という機構に依存しきった世界だ。『先生』の死は世界のデッドエンドと言ってもいいだろう。

 

カイザー?ゲマトリア?エデン条約?デカグラマトン?色彩?

 

一体何が『先生』の死因になるか分からないこの状況で出来るのは、死ぬ気で先生を守ること…私は異分子とはいえ、『先生』の死は青春の崩壊だ。“私”の為にも、皆の為にも、先生には生きてもらなわなければいけない。

 

 

その2

 

『先生』がどのような人物なのか。

 

 

 

到着する『先生』次第で、この物語は一瞬で崩壊に向かう。これに関しては祈るしかないのでシスターフッドの礼拝堂に通いつめといた。

 

 

その3

 

『先生』がメインストーリー通りに行かなかった場合。

 

 

 

アビドスの手紙が先生に届かなかった、アリスの脳がクソゲーで壊されなかった、アリウススクワッドは許されなかった。

 

これはシンプルだ、『先生』が死ぬだとかそういう訳ではなく、あの奇跡のような道筋が無ければ色彩に対する戦力があまりにも足りない。

 

この問題については私の方で幾らか対策が積めるものなので、もしその時が来ればある程度補えるが…ある程度しか、といった所だ。

 

積み上がった課題、それを解決するためにまず1歩目

 

 

 

 

「ハスミせー〜んぱーい!やっぱ私も着いていきますー!」

 

プロローグに干渉する。

 

「デミ…大丈夫なのですか?今日の業務は…」

 

「大丈夫ですよ、昨日の内に書類は済ませといたんで、自治活動も前にボコった不良共とヘルメット団使って“今日騒ぎ立てた奴は殴り殺しに行く”って宣伝しといたんで!」

 

「なんなら今は連邦生徒会周辺の方が危険地帯なんじゃないっすか?なので護衛にもって思いましてね」

 

「はぁ…デミ、また無茶をしたのね?顔に疲れが出ています……帰ったらお説教です!同行も許しません、1度帰って休みなさい」

 

「え〜?そんな後生な……あ、ハスミ先輩」

 

こういう時の隠し球をハスミ先輩の手へと握りこませる。

 

「…?何ですか?一体…これ…」

 

「あ〜らこんな所に期間限定の爆盛りパフェの予約券が!しかも先着1名様限定ケーキセット付きの!どこから湧いてきたんだろうなぁ~!チラチラ」

 

「っ!も、物で釣られる訳にはいきません!ダメなものは」

 

そうはいいつつ目線は手元から離れていない。

 

「あ〜あーならこのチケットは落し物として私が責任持って保管しときましょーかねー!」

 

ヒラヒラと奪い返した予約券を目の前ではためかしてあげる。必殺!【ワガママ聞いて】の術!

 

「全くもう…!仕方ありませんね…デミ、同行を許可しますが、お説教をすることには変わりありませんよ?」

 

「やった〜!よし!それじゃ行きましょーか」

 

 

Now loading.....

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

その後、道すがら不良共をボコボコにしつつ、連邦生徒会まで到着した。本音を言うならば、ワカモを探すついでにサントゥクムタワー周辺を見ておきたかったが…

 

 

■レセプションルーム内

 

 

「ちょっと待って、代行! 見つけた、待っていたわよ! 連邦生徒会長を呼んで来て!うん?その隣の大人の方は?」

 

 

「主席行政官、お待ちしておりました」

 

 

「連邦生徒会長に申し付けたい事があるんすよ~」

 

 

「連邦生徒会長に会いに来ました、風紀委員長が現在の状況について納得のいく回答を要求されています」

 

 

「トリニティ自警団です、連邦生徒会長に直談判を――」

 

 

会話に混ざりながら体感する。『始まった』のだと。

 

 

「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね」

 

 

「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問しに来てくれた、暇そ……皆さん」

 

 

「理由なら分かっています、学園都市に起きている混乱の責任を問うためにでしょう?」

 

 

「分かっているなら何とかしなさいよ! 数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!? この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

 

「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱走したという情報もありました」

 

 

「戦車やヘリコプターなど、出所のわからない武器の不法流通も2000%以上増加しています、これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」

 

 

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの、今すぐに会わせて!」

 

 

「………」

 

 

小さくため息を吐くリンちゃん。

 

 

“リンちゃん、ここから先は私が話すよ”

 

 

1歩前に出て『先生』が話す。

 

 

…!!既にプロローグとは違う…?というか顔…!?めちゃくちゃエッっっ…な塩顔メガネイケメンだ....詳しく言うならどっかの連邦生徒会長がビル一棟とキヴォトスの権限丸ごとあげちゃうしそうな感じ!

 

 

端的に言うとホスト!!

 

 

先程までギャーギャー騒いでいたユウカが目を丸くして黙り込んでる…。

 

 

“連邦生徒会長は今、行方不明になってる、皆…協力をお願いしたい”

 

 

「「「「!!?!」」」」

 

 

連邦生徒会長の失踪、その重大さは皆がまさに今実体験している、それに加えて責任の住所が丸ごか消えたのと同じだ。

 

 

“現状、サントゥクムタワーの最終管理者が失われて今の生徒会には行政制御権は無いんだ”

 

 

“私は先生、連邦生徒会長に特別指定を貰ってキヴォトスの先生をさせてもらう大人だよ、よろしくね?”

 

 

あぁ...

 

 

(不味い…不味い不味い不味い!!リン生徒会長代理も驚愕した顔をしているッスよ、本当、ちょっと事態がイレギュラーしてきたなぁ!?)

 

 

事態がイレギュラーという訳の分からない単語を使いながらボーッとしていると……連邦生徒会長失踪に対してリアクション薄かったせいでめちゃくちゃ見られてる!超ガン見されてるよぉ…!

 

 

「先生…貴方は一体……いえ、今は話を続けましょう。本来認証を迂回できる手段もありませんでしたが…この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」

 

 

「ちょ、ちょっと待って!失踪した連邦生徒会長が指名って、余計混乱するじゃないの!」

 

 

“あはは…私もそう思うよ、ユウカ。だけど私は先生だからね、君たち生徒の頼み事は断らないんだ、特に困っている生徒にはね”

 

 

“私は大人で、先生だから存分に頼ってね?よろしく、ユウカ”

 

 

「は、はい!よろしくお願いします先生!ん?えっと、どうして私の名前を…」

 

 

頭を抱えてしまう、やってきた『先生』は私を超える超特大厄ネタの可能性が出てきた。

 

 

「はぁ...その煩い方は置いておいて、先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げたある部活の担当顧問として、此方に来る事になっていました」

 

 

「誰がうるさいって…!?というか、先生が部活顧問?」

 

 

「連邦捜査部、シャーレ」

 

 

 リンちゃんの言葉がルーム内に鋭く広がる。連邦の名が付く部活である以上は連邦生徒会所属であるのだろうが、彼女達はそんな部活の話を耳に入れたことすらない。

 

 

「単なる部活ではなく、一種の超法規的機関です。所属は連邦組織になりますのでキヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを、制限なく加入させる事が可能……更に各学園の自治区で、制約なく戦闘行動も可能です」

 

 

耳に入ってくるあまりにも強大な権利、前例もないこの話はまるで嘘だと脳が誤認するほどに突拍子も無い事だ。

 

 

「なぜ、連邦生徒会長がこれだけの権限を持った機関を作ったのかは分かりませんが…」

 

 

「シャーレの部室はここから約30km離れた場所にあります。今は何も無い建物ですが、連邦生徒会長の命令でそこの地下に「とある物」を持ち込んでいます」

 

 

「先生をそこにお連れしなければなりません」

 

 

しかし、今シャーレの部室は…。

 

 

各々、様々な反応を表す中、物語はどんどん進んでいく。モモカの話を聞き、リンちゃんがキレそうになっているのを先生が宥め……なんか距離近くない??

 

 

ほらもうリンちゃん…いやまてよ?そういや最初にリンちゃんって…いや、そう呼ぶのはある程度話し合った後だろ?……本当にどうなってる?

 

 

……というか、あの顔で距離近…ほらなんか既にユウカの瞳からひかりが……チョロ…いや、待て待て不味いなぁ…女難方面は知らない。

 

 

モヤァ.....

 

 

ん?なんだか胸が....というよりなんか、なんだ?

 

 

違和感を払拭する前に、リンちゃんから暇を持て余した私達の力を借りたいと言われチュートリアルへと突入していく。

 

 

ん~まぁいいか!

 

 

「なんで私たちが不良たちと戦わないといけないの!」

 

 

「いっ、痛っ!痛いってば!あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!」

 

 

「もう傷が残るってのに…!許さないんだから!」

 

 

騒ぎ立てる太ももを無視して、私も不良に突撃しようとする。皆知っている通りキヴォトス外から来た先生は銃弾一発が致命傷になってしまうか弱い生き物だ。

 

 

憂いは断つ、いつ以下なる時でも先生の命には死神の鎌が掛けられているんだ。

 

 

“待って”

 

 

後ろから声をかけられる。

 

 

「ん?え、せ、先生!?ダメっすよ戦場に出てきちゃ!自分らが戦ってる時は安全な場所で…」

 

 

“あ、ごめんね?驚かせちゃったかな、ここは私が指揮するよ、任せて”

 

 

“それと、君の名前を聞いておきたかったんだ”

 

 

「わ、私ですか?私は…羽音デミって言います!えと、ハスミ先輩と同じ正義実現委員会所属です!」

 

 

“羽音デミ……いい名前だね、ありがとう”

 

 

「っ…いい名前って…!っす、あざっす」

 

 

ん…あ!あぁそうだ、この場面先生は指揮をしてくれるんだったな…焦り過ぎだよ私……だから近いって!もう、くそぉ…!な、なんだ?頭が働かないし、それになんだか恥ずかしい気持ちに!ん?

 

 

んんん?

 

 

Q.先生は何らかの要因で、既に早瀬ユウカやキヴォトスの現状を知っている→

 

 

話している時、ハスミ先輩やチナツ、スズミの事も知っていた様子だった→

 

 

その状況で、私の名前を聞いてきた……私はこの世界の異分子…名前……→

 

 

A.先生視点、自分が知らない生徒が急にこの世界に現われている。(恐らく何かしらの記憶を持っている)

 

 

 

「分かりました。これより先生の指示に従います、行きますよデミ。」

 

 

「あ、あがががが」 「デミ?」

 

 

「生徒が先生の指示に従うのは自然な事、ですね。行きましょう」

 

 

「えぇっ?先生が戦術指揮を?はぁ…分かりました!それじゃ行ってみましょうか!」

 

 

先生が通信機を持ち、各々が持つ受話機で指示を受け取る……そうして始まったのは、一方的な制圧だった。

 

 

“ユウカ、正面脇から4人飛び出してくる。二十メートル前進した後左側のバリケードを盾に使って、その間にシールド展開”

 

 

“スズミはユウカのサポート、私が言う敵の予測位置に閃光弾を…良いね。しっかり当たってる。5秒後にユウカを前に出すから、弾倉2つ分射撃した後、もう一度ユウカの前方三十メートル先に閃光弾を”

 

 

“ハスミはデミと一緒に後方制圧を宜しく、デミ、好きに動いて良いよ。サポートは合わせるから”

 

 

一手一手が見事に先読みとなり不良共をなぎ倒していく、ユウカを攻撃しようとした不良はかすり傷1つ負わせる事無くダウンさせられ、スズミの閃光弾は毎度効果が最大限発揮できる場所に投げられる。

 

 

進軍スピードもどんどん上がり、シャーレのビル周辺までもう少し。

 

 

……ハッキリ言って化け物である。全員の被弾も明らかに少ないし、制圧にかかる時間も圧倒的に少ない。なんなら好きに動いているはずの私の動きはハスミ先輩であっても中々タイミングを合わせるのが難しい筈なのに、指示という手順を1度挟んで尚、戦いやすいようにサポートしてくれている。

 

 

これで、これでシッテムの箱無し…?どう考えても人の脳で処理仕切れるスピードじゃないだろうに。

 

 

「これが先生の指揮……素晴らしいですね、戦いやすい、などというレベルではありません」

 

 

「普段より弾薬の消費も被弾もほとんど無いですね…」

 

 

「なるほど、これが連邦生徒会長が選んだ先生の力…あの連邦生徒会長が選ぶ訳だわ…」

 

 

“皆、お疲れ様。怪我は無いかい?”

 

 

「はい、大丈夫です。次の戦闘指揮もお願いします、先生」

 

 

“君たちはみんな私の可愛い生徒だからね、私が尽くす事で防げる怪我なら、頑張りがいがあるよ”

 

 

(可愛い生徒…) (可愛い生徒…) (可愛い生徒…) (私も戦線に立てば良かった…!)

 

 

(なんだこのクソボケ…色気を振り撒きやがって、ほらみんなモジモジし始めちゃったよ!)

 

 

チョロ過ぎるのも違和感があるが……なんかそんな毒電波でもあの口からたれ流されてるのかな?

 

 

『先生』

 

 

端末が震え、声が聞こえてきた。

 

 

“リンちゃん、どうしたの?”

 

 

『リンちゃんはお止め下さい先生、この騒動の主犯が分かりました。』

 

 

『名はワカモ――百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です、似たような前科が幾つもあります、気を付けて下さい先生』

 

 

“ワカモ…分かったよ、ありがとうリンちゃん”

 

 

『先生、リンちゃんはお止め下さい…!』

 

 

耳が真っ赤に染まっているせいで、やめて欲しさの裏にある欲望を隠しきれていない。

 

 

「ワカモって…あの7囚人の!?」

 

 

本来ならば気が重たくなるビッグネームだが、先生の指揮能力を味わったからか皆心には余裕がある。

 

 

不良共を片付けて、進みながら話しているとハスミ先輩が声を上げる。丁度話題の人物の登場だ。

 

 

「……っ!前方に敵影!あれは、ワカモ!騒動の中心人物を発見…先生指揮を!」

 

 

「フフ、連邦生徒会の子犬達が現れましたか。お可愛らしいこと…行きなさい」

 

 

「あらほらサッサー!おら野郎ども!連邦生徒会、潰スゾ!!」

 

 

ワカモ+αと接敵する、予定通りならばワカモ撤退後にクルセイダー1型との戦いになるので、先生が被弾しないように構えておく。

 

 

“やるしかないようだね……行くよ!みんな!”

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

戦闘が始まってからというものの、ワカモは焦っていた。

 

 

(おかしい…幾ら有象無象の集まりをぶつけているといっても、減りが早すぎる)

 

 

5人対30人、戦闘能力に差があると言っても異常……原因はやはりあの男、ヘイローが付いていないのを見るにキヴォトス外の人間であるのは明らかだが…

 

 

ダダダダダ!!

 

 

「くッ…!」

 

 

先読みに次ぐ先読み、あわよくば程度の気持ちであった筈だが、今こうして追い詰められている。

特段あの5人に追い詰められる要素は無い、という事は

 

 

(問題はあの男の指揮能力!)

 

 

ゲリラ戦における自身の実力の自負を全て叩き折られるほどの能力…!

 

 

既に敗北までの未来を察するワカモ、今この状況で取れる最善手を取る。

 

 

「私はここまで、後は任せます…!」

 

 

「へ?ちょっ!ワカモさん!?!?」

 

 

逃げるは脱兎のごとし、その宣言の反応で出来た一瞬の隙に逃げ出す。

 

 

「に、逃げた!?先生!すぐ追うわよ!」

 

 

“落ち着いてユウカ、私達の目標はシャーレの奪還。無理に追う必要は無いよ”

 

 

「そうですね、このままシャーレのビルまで前進しましょう」

 

 

「うん…まぁそうね、あいつを追うのは私達の役目じゃない」

 

 

「罠の可能性もあります、建物の奪還を最優先で行きましょう」

 

 

先生の号令で一瞬にして一丸となった所で、進軍を再開する。

 

 

「……流石、っすね」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!建物の前まで到着っすね~!」

 

 

(ゴゴゴゴゴー…)

 

 

「ん?あぁこの音は…」

 

 

低く響く重音、何度も聞き覚えがあり、尚且つこの場面で聞かされるとなれば選択肢は一つ。

 

 

「気をつけて下さい!巡航戦車です!」

 

 

爆音鳴り響かせ奥からでかい影が突撃してくる。

やってきたのはクルセイダー1型、我らが学園と同タイプの不正入手されたものだ。

 

 

「不法に流通されたものに違いないわ!PMCに流れたのを学生が…」

 

 

ユウカが解説を始めると同時に、配備を待たずしてクルセイダーが発砲を行う。

 

 

ズドォオオオオオオンン!!!!

 

 

「ぇ」

 

 

叫ぶ暇もなく、いつの間にか…先生に向いていた照準、そこから飛び出してくる先生を殺す砲弾。

 

 

本来ならば有り得ないヘイローを持たぬ者への砲撃。

 

 

世界がスローモーションになる、生徒の間を通り抜ける砲弾、耳をつんざく砲撃音、その全てが手遅れを告げる。

 

 

(……なるほど?)

 

 

起きてしまったイレギュラー…反応出来るものはおらず、このまま砲弾は先生へと直撃する、待ち受けてるのはそれによる世界のデッドエンド…だが。

 

 

ガゴぉぉぉぉオン!

 

 

「ぇ?」

 

 

そちらがイレギュラーであるように、私も異分子だ。

 

 

「いてて~先生大丈夫ッスか?怪我は?どこにも?良かったです!」

 

 

飛んで来た砲弾を殴り飛ばす、ぐちゃぐちゃに変形した砲弾が横のビルの壁に埋まる。

 

 

“ごめん!私の不注意だ…デミこそ大きな怪我は…?”

 

 

「私も大丈夫です!はぁ、それにしても……先生?やっぱりちょっと危ないので少しだけ後ろに下がって貰ってもいいっすか?」

 

 

………正直に言えば既にキレそうだ。やはり射線に立ってよかったと思うと同時に、『世界の悪意』を感じる一撃だった。明確に、だ。先生が何かしらを持つように、相手側も相応に仕掛けてくる。

 

 

色々原因はあるだろう、初手で先生が有能過ぎたこともあって、結構先生が前に出てきてしまっていた。

 

 

「デミ!貴方怪我は…!それに先生も!」

 

 

遅れてハスミ先輩が反応し、戦車に銃撃しながら近づいてきてくれる。

 

 

「大丈夫ですよハスミ先~パイ!まぁちょっぴり痛かったんで、お灸据えてきます!」

 

 

3()()だ、3秒だけ本気を出す。

 

 

集中すると共に、世界の全てが遅くなったような感覚に包まれる

 

 

バゴォォォォン!!! と、地面の破裂音がただの歩行によるものだと、その場に居た者が知る頃には……。

 

 

1歩目、クルセイダー1型の目の前まで跳躍する。

 

 

2歩目、蹴り上げ、空中に浮いた戦車を鉄クズにする為に3歩目、跳躍。

 

 

後はこのゴミクズ(悪意)を本当のゴミになるまで殴り続ける。

 

 

3秒、その時間が経つ頃には地上にクルセイダー1型だったものが転がっていた。

 

 

ブチブチ…と筋繊維が弾ける音がするが、今は苛立ちの方が強く、痛みをあまり感じない。

 

 

何故ここまで感情的になっているのか?……分からない。

 

 

事態が思うように行ってないから?どう考えても不自然な事態、明らかに私のせいだと分かる異変だからか?

 

 

それとも、先生が未来で起こす輝きを…知っているから?

 

 

「ん~」

 

 

あ、分かったそうだ、一番の理由…これ、先生を狙ったんだ。

 

 

失われたら、いけないもの。

 

 

また苛立ってきたので、丸い鉄塊になったコレを蹴りつけておく。

 

 

きっと、私は心のどこかで、あの“私”も私でさえも先生は救ってくれるものだと思っていたのだろうか。ブルーアーカイブの物語の記憶を持つ今の私には、先生に向かったこの悪意が腹立たしいのであろう。

 

 

愛なのか好意なのか、それとも前世の想い(救われた自分)なのか。

 

 

自覚は出来ない。私が救いを求めるなど、“私”は思いもしないだろうから。

 

 

「…ミ、……デミ!」

 

 

「ん?あぁハスミ先輩、片付けたんでさっさとシャーレビルに入っちゃいましょう」

 

 

「もう…!そういう事では無いのですが…!」

 

 

「羽音デミ、だったかしら。貴方……ゴリラの生まれ変わりか何かなの?」

 

 

「ちょっと!?乙女にゴリラってなんですか!?!」

 

 

“あはは…それにしても凄いね、デミ。そんな力を持っていただなんて”

 

 

「先生もゴリラって言うんですか!?泣きますよ私!!」

 

 

“私は生徒にそんな風には絶対言わないよ”

 

 

“それと、デミも私の生徒なんだから無茶はしないでね?君に傷が付いたら私も泣き叫んじゃうよ…?”

 

 

擦り傷が付いた私の手を優しく、ゴツゴツとした手が重ねられ、チナツから受け取ったであろう軟膏を塗ってくれる。

 

 

「…先生?一応聞いとくんすけど、自覚…あります?」

 

 

“……?”

 

 

(こっんのクソボケ!アホ!バカ!死因女難ッんんーーはァァ…)

 

 

顔が!良い!顔が良いのだこの男、ひたすらに顔が良い、訳が分からない位に顔が良い、声もイイ、見た目と声の二重奏でアルティメットなダイレクトアタックを決められ続けている。

 

 

思わず、少しだけ顔を熱く、赤くしてしまった。

 

 

「はぁぁぁ……とりま、行きましょうか皆さん」

 

 

ユウカに肩をポンと叩かれた、太ももを叩き返してやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた!」

 

『シャーレの部室奪還完了です、私ももうすぐ到着予定なので、建物の地下で会いましょう』

 

 

 

Now loading…

 

 

 

 

 

■ シャーレ 建物の地下

 

 

 

 

「うーん、これが一体なんなのか全く分かりませんね、これでは破壊するにしても……」

 

 

シャーレ地下、ワカモは目の前にある歪なオブジェの対処に困っていた。撤退後、せめて部室の破壊だけでもと思いやってきたが、破壊するものがこれでは歯切れが悪い。

 

 

そんな中、ツカツカツカ…と足音が聞こえ、その主が姿を現す。

 

 

“こんにちは、ワカモ”

 

 

「……っ、あらあら」

 

 

件の先生、先程仕入れた情報が示す。その人物が目の前にいる。

 

 

1歩2歩と詰め寄ってくる、絶とうと思えばその柔肌に銃を放てばいい。

 

 

自分の目の前まで近づいてくる先生、顔を近づけて…近づけて……。

 

 

「あ、ああ……」

 

 

“ん?”

 

 

「し、し……失礼いたしましたー!!」

 

 

“……?”

 

 

「お待たせしました先生……何かありました?」

 

 

“やぁリンちゃん、さっき振り…別に何も無かったよ”

 

 

「リン……はぁ、ともかくここに連邦生徒会長が残したものが保管されています」

 

 

スっ…とタブレット端末のようなものが先生に手渡される。

 

 

「連邦生徒会長はこの『シッテムの箱』がタワーの制御権を回復させると」

 

 

「私達では起動も出来ませんでしたか、先生ならばきっと…」

 

 

その後の詰まりには、今の彼女が立たされている状況、縋り頼るしかない無力故の苦さを感じる。

 

 

「……では私はここまで、ここから先は先生に全てかかっています。邪魔にならないように離れておきますので」

 

 

“……。”

 

 

この瞬間から、運命は更に流転を続ける

 

 

《……我々は望む、七つの嘆きを。》

 

 

《……我々は覚えている、ジェリコの古則を。》




先生が登場しましたね。

はい、先生です。多分前世は背中を刺されてます。色々秘密を抱えていて、イレギュラー×イレギュラーなのでこの世界はしっちゃかめっちゃかです。




やっぱり愛に燃える女は強いな…うぉ!それは強すぎ…!なんだこいつキングコングか?ユウカもノソノソしてると、この怪獣に先生が貪られるぞ!頑張れユウカ!アオイにも負けるな!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。