ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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『焦がれる私は蝶の様』

貴方に近づく私は、まるで焼き焦がされる様な痛みを感じる。

 

 

二年次に顔をチラッとみて、それっきり。

 

 

一方的な想いだし、彼女から『どうして?』と聞かれれば、『貴方が大切だから』と中身の無い内容しか言えない。

 

 

不思議に感じると思う、きっと彼女からしたら…『何もしていない』と言えてしまうぐらいの事だろう。

 

 

ゲヘナは嫌いだ、ナギちゃんを苦しめるから。ゲヘナは嫌いだ、セイアちゃんを苦しめるから。ゲヘナは嫌いだ、友達を傷つけるから。ゲヘナは嫌いだ、私を苦しめるし、悩ませるし、傷つける。

 

 

ゲヘナにも良い子は居た、彼女が紹介してくれた。ゲヘナにも良い所がある、彼女が教えてくれた。ゲヘナにも『大切』を守ってる子がいる、彼女が見してくれた。

 

 

ゲヘナは嫌いだ、けどあの子はゲヘナと関わりあってた。彼女は優しくて、公平だったから、大丈夫だって言ってた。ゲヘナにも良いところはあるから、嫌いだとしても、その考えは大切に…否定はしないであげてと。

 

 

 

 

 

なら、なんで私の『大切』を傷つけた?

 

 

 

 

私は認めた、貴方達の世界を。私は許した、貴方達の行いを。私も理解したのだ、貴方達の『大切』を。

 

 

 

 

なら、なんで、私だけがこんなに不幸に?

 

 

 

おかしい、なんでこんな風に私が苦しまなきゃならないの?……考えてみれば、理由は簡単だった。私の宝石を、私の『大切』を、あれだけ傷つけていて、なんでゲヘナは何も失ってないの?

 

 

 

……不平等じゃん。

 

 

 

 

私が傷ついた分、ゲヘナも傷つかないとおかしいよね☆

 

 

 

 

 

だからね、私はゲヘナが嫌いなんだ〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……様」

 

「…………カ様」

 

「…ミカ様!」

 

「…うん?どうしたの?みんな」

 

「どうしたもこうしたもございません、パテル派のリーダーである貴方が会議中にしっかりなさらないで、どうするのですか」

 

「え〜?良いじゃん私が口出さなくても順調に進んでるんだし」

 

「…ミカ様…!」

 

「(ノ≧ڡ≦)☆」

 

 

 

会議が終わり、自室で休む。

 

 

会議を行う皆は、優秀で…私の頼りにしているお友達だ。………今はみんなの顔をしっかり見れないけど。

 

 

『セイア様が…!何者かの襲撃により………お亡く………なりに……!』

 

 

 

「……」

 

 

私は、私が嫌いだ、ゲヘナよりも。

 

みんなが私に向ける思いが、今はこんなにも息苦しい。アリウスに向ける憎悪の、幾百倍自分が憎い。何故私は、いつも苦しみの道から逃れられないのだろうか…?

 

「先生…か」

 

トリニティどころか、キヴォトス全体を見ても珍しい『先生』という役。既にBD授業が主体となっているのにも関わらず、『導く職業』だから必要なんだ、と言っていた不思議な人。

 

先生なら、みんな救えるのかな?馬鹿な私じゃなくて、先生なら……きっと…。

 

「……」

 

私は人を騙し喰らう愚かな魔女だ、私の手にある宝石を…私自身で汚してしまう、だから早く手放さなければいけない。

 

「ナギちゃん…コハルちゃん…私、頑張れるかな」

 

手元に昔、ナギちゃんから貰った髪飾りを握る。

 

「また…昔みたいに…」

 

本音を、ただ本音を言うとするなら…楽しくみんなと過ごしたいだけ。

 

「あ…はは…自分で壊しておいて……」

 

ーーエデン条約、ゲヘナと仲良くなんて嫌に決まってる。ナギちゃんはそれを成立させようとして、色んなものを見失って走ってる。補習授業部なんか作って、トリニティの裏切り者だなんて…。

 

「ナギちゃんは馬鹿だな…ははは……」

 

あんな風になっちゃってるから、お得意の頭を使うとやらの『内政』で私に出し抜かれるんだ。

 

「うん、やっぱりゲヘナは要らない」

 

『ゲヘナは嫌い』私は、それが本音だ、もうそれでいい。

 

 

アリウスをトリニティの分派に取り組んで、新しい武力集団を作り…全ての憎悪を、彼女達の苦しみを……ゲヘナを消す事で、ようやくキヴォトスは『私が幸せになれる』世界になる。

 

「幸せになれる…か……」

 

 

 

『いつか、ミカちゃんが笑えるようになったらいいっすね!』

 

 

とっくに私は人殺し、手を下した白州アズサを責める気はあれど、私も同じ穴の狢。

 

 

「……まずは先生と話さなきゃね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■正義実現委員会

 

 

 

 

「そ、その…」

 

“…ふふっ…どうしたんだい?コハル”

 

隣を見れば、顔を赤らめてモジモジと身体をふるわせ、口ごもるコハルが先生の袖を掴んでいた。

 

「い、言っておくけれど、こればっかりは、その、本当に間違いだから!」

 

“本の事かい?”

 

「そう!いつものはちゃんと隠……じゃなくて、あんまり持ち歩いたりしないし……」

 

袖を掴む手までが赤く紅潮していく、嘘をつくのが下手すぎるコハルは、▓▓本を日常的に持ち歩いていることを白状してしまっている。先生は理解を示すようにコハルへ語りかける。

 

“――バレない様に、今度は上手く隠さなきゃね…?”

 

「っ~!?」

 

指摘される恥ずかしさと、妙に背徳的な言い草に羽をパタパタさせて顔を隠しながら、耳を赤くさせる。

 

「な、何言ってるの!?それ、バレなきゃ持っていても良いって云っているのと同じじゃん!?先生なんでしょ!?エッチなのは駄目! 死刑!」

 

“あはは、それだとコハルも同じ刑になっちゃうよ?”

 

「えっ?いや、ちがっ……わ、私は……その……」

 

“良いんだよ?コハル”

 

「えっ?」

 

“別に興味を持つことは罪じゃないし、知ろうとすることも悪い事じゃないよ”

 

「な、何よそれ!大人の余裕って奴!?」

 

“ううん、ただ私はコハルがコハルらしくあるために、やりたい事はやってもいいんだよって、思っているだけさ”

 

「う、うぅ……ま、まぁ先生が私の事…そんな風に考えてくれてた事は、嬉しいけど…」

 

実際に、この年齢でこういう事に興味関心を向けるのは何らおかしい事でも無い。逆に封じ込めてしまうというのは、その人の個性を損なう可能性がある。

 

「…じゃあお返しに、ひとつ秘密を教えてあげる!」

 

“秘密かい?”

 

「実は私…えっと、うーん…あ、ハスミ先輩に頼まれて!……補習授業部が上手く回っているかを監視するための、スパイなのよ!」

 

“スパイ…”

 

「そう!つまり秘密のミッションを遂行中の身ってこと!だから私が今はバカみたいに見えてるかもしれないけど、フェイクなの!」

 

“……それは…私に言っても良かったのかな?”

 

「……」

 

“……”

 

「せ、先生は生徒の秘密をやたら言いふらしたりなんかしないって信じてるから!!…信じてるからね!!!」

 

 

 

 

 

■正義実現委員会 押収品管理室

 

 

 

「えっと、確か押収品目録には……書類系統の保管場所は……」

 

「…ここね、よし…取り敢えず、これでひと安心――」

 

書類押収品の保管されている棚を見つけ出し、本をしまい込むコハル、一息付き、保管庫を後にしようとしたが……。

 

「あら……」

 

扉の向こう側から副委員長のハスミがやってきた。

 

「コハル…?それに先生まで」

 

「合宿で別館に居ると聞きましたが……それに、成績を取り戻すまで正義実現委員会には……」

 

「あ、えっ…と、その…」

 

“私が落し物をしてね、補習授業部の為に作ったプリントだったんだけれど……紛失物の保管場所をコハルに聞いて、ここに探しに来たんだ、丁度見つかった所だよ”

 

「そうでしたか」

 

手元に抱いていたプリントをヒラヒラと見せると納得したように頷き、コハルを一瞥すると、彼女を労わるように微笑んだ。

 

 

「コハル、案内ご苦労さま……このような形で先生のお役に立てているのなら喜ばしい限りです」

 

「あ、ありがとうございます…!」

 

コハルにとって、ハスミとは憧れの正義実現委員会の象徴、副委員長である彼女の活躍を間近で見ているからこそ、賞賛の言葉が身体に沁みる。

 

「……そうでした、コハルが此処に来てくれたのはある意味、丁度良かったです、コハルに改めて伝えておきたい事がありまして」

 

「え? わ、私に……ですか」

 

「先生、今は少々お席を離れていただけますか?……不躾ながらその後に話したいことが…」

 

“……分かったよ、終わったら連絡してね〜”

 

「態々すみません……ありがとうございます」

 

「う、ぅ……」

 

“ん?…あっはっは、そこまで肩の力を入れなくても大丈夫だよ、コハル”

 

「う、うん…また後で、先生」

 

 

 ■

 

「――コハル――でください」

 

「―も―」

 

「本来の――を――ないで―――」

 

「でも――には、無理――……! ――なんて、私―――あまりにも――事で―……!」

 

隣の部屋にいる先生にも、微かながらだが話し声が聞こえてくる。

 

「――それでは駄目なんですッ!」

 

不意にハスミらしからぬ怒鳴り声が聞こえたが、ハスミの性分を理解している為、疑うことも驚くことも無くコハルの帰りを待つ。

 

「――なさい――ずっと―為に―――先生――を―です――」

 

「………はい――――ます」

 

扉が開き少しキョドついたコハルが出てきたが、表情を見て安堵する。コハルの表情は、それはそれはわかりやすく…

 

「お、お待たせ……先生」

 

“おかえりコハル”

 

「それじゃ、私は先に帰るね、お先に先生!」

 

麗らかな顔だった。先程の怒鳴り声が彼女を傷つけるものでも無いことが分かる。そのまま補習授業部の皆の元へと足取り軽く帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……先生、失礼します」

 

その後、ハスミが部屋に入ってきて、対面する形でソファーに座らせ、用意しておいた紅茶を差し出す。

 

「ありがとうございます」

 

“ナギサのおすすめハーブティーだよ”

 

『ナギサ』という言葉に対し、少し緊迫した趣を見せるハスミを観察し、話したい内容を理解した。

 

“さて……ハスミ…話っていうのは…………デミ、元い補習授業部自体の事かな?”

 

「……!先生…やはりお分かりになっていらっしゃいましたか…」

 

「ナギサ様の策略で、コハルもデミも、ゲヘナに対して過激派寄りである私に対しての牽制によって、二人共補習授業部に入れられてしまいました」

 

“包み隠さず私にそう話してくれている、つまり私を信頼してくれているんだね”

 

「はい、私が信頼し、信用している先生に対して嘘はつきません」

 

生徒との強い絆、そこから産み出される会話は、謀略渦巻くトリニティでこれまでにない清純さを見せる。

 

“ありがとう、ハスミ……不甲斐ない大人だけど、私は生徒の為に全力を尽くさせてもらうよ”

 

「こちらこそ……ありがとうございます、先生……。デミは、確かに帰ってきてくれましたが、彼女のトリニティ内での立ち位置は非常に危ういものになっています、ナギサ様が自身の特権で作った補習授業部に、デミを入部させる危うさはナギサ様も理解しているはず」

 

「エデン条約が近づいている中、わざわざパテル派に隙を見せる様な真似……つまり、ナギサ様は、補習授業部を元から見捨てる気でいます」

 

“驚いた…!その結論に辿り着いていたんだね、ハスミ”

 

「…やはりそうでしたか、先生……単刀直入に言います、彼女達を私も助けたい……シャーレの仮入部をお願い致したいんです、私の正義実現委員会という立場では、ナギサ様に干渉できない」

 

ハスミは既に、デミのシャーレ仮加入の件を見て、そのリスクを理解しているはず…なのにも関わらず強く熱い決意を込めた目が、先生に突き刺さる。

 

“それは……”

 

「分かっています、先生を信用していない訳でもありません」

 

その返事を貰い、安心する。無謀でも、罪悪感でもない。彼女の表情から読み取れる心情はただひたすらに『助けたい』想い。

 

“そうか……ハスミ、君は…強くなったんだね”

 

「はい」

 

策略に対抗する知恵を、気づきを……彼女達を救う覚悟を、ハスミの心は、以前とは見違えるように成長し、強くなっている。

 

「私はもう、手が届かない事に後悔したくありません」

 

「私は、私の大切な者達が、私の前で傷ついていく姿を、『傷ついていく事』を許せないのです」

 

「……私は…!私は! 先生、私は、私の正義を全うするために、貴方にお願いしています!」

 

 

ーー了解した。

 

 

彼女の想いに答えるため、カバンから一枚の書類を取り出し、ハスミの目の前に差し出す。

 

「……これは」

 

書類に見える文字は、一見するとただの入部届け、早速書類にサインを書こうとペンを取り出した所で、先生に止められる。

 

“待って、ハスミ、この入部届けには…先生の相棒によって、ある仕掛けが施されてるんだ”

 

“不甲斐ない大人だけどね、先生として……同じミスをする訳にはいかない、これにはとっておきの、あるものが掛けている”

 

「仕掛け、それに…あるものとは…?」

 

“先生とっておきの”

 

“魔法さ”




あの…みなさん……なんか…私のお話、明るく楽しい時ありましたっけ…?
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