ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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更新遅れてごめんなさいね……ちょっと用事がありやした……。





不穏の足音

■ロビー

 

 

「ただいまっす」

 

「お帰りデミちゃん」

 

「あれ?ハナコちゃんは?」

 

「少し出歩きに行きました」

 

「帰ったか、デミ…さぁこの古文の続きを……」

 

「ただいま!」

 

扉がバン、と開かれてニコニコしたコハルが帰ってきた、机の上に広げた参考書と古文の教科書と向き合いながら、無事に返せてきたのかと安堵する、但し一緒について行った筈の先生が居ない。

 

「おかえりなさいっす、コハルちゃん……ありゃ、先生は?」

 

「ハスミ先輩とお話があるっていってた」

 

「そうっすか…さて、コハルちゃんも続きやるっすよ」

 

皆が席について、円の形で集まりながらわいわいと自習を始め……また一日が終わりに近づいていく。

 

「……ハナコちゃん遅くないっすか?」

 

「そうですね…心配なので連絡してみます」

 

(……この時にハナコちゃん離席なんかしてたっけ?)

 

微かに思い出される記憶、浦和ハナコは確かこの自習後の談話で水着か否かの問答で、アズサとセイアの繋がりを……。

 

prrrr…

 

「…繋がらないですね」

 

「私が探してくる」

 

アズサが立ち上がり、外へ降りる階段へ向かっていく。

 

「私は着替え室や教室確認してきますね」

 

「私も!」

 

ヒフミとコハルも散開し、各々探索の範囲を広げっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見つかんない」

 

おかしい、既に時刻は水着雑談近い。そんな時にこのような失踪等…。夕暮れ、教室の一角に座り込んでいた私に暗闇が落ちていく。

 

「どうしたもんすかねぇ……」

 

ピロン…

 

「ん、モモトークか、誰か見つけたんすかね」

 

携帯を覗きこむと…宛名無しの画像付属のメールが。

 

「…あ?」

 

目と口と手を布で縛られ、どこか分からない暗い場所に置かれた浦和ハナコの写真が送られていた。

 

「…………ベアトリーチェだな」

 

察するに向こう側も、既に私の『知っている』範囲内では動いてくれないという訳だ。今、彼女の身にどんな危険が、どんな事態が起きるのか予想も付かない……。

 

「……お互い似た者同士(舞台装置)なんすから、大人しく先生を待てばいいのに」

 

私は、私が守りたいものをそうやすやすと手放す訳にはいかない。アイツにもそれ相応の罰も与えなければいけないし、この場で歯噛みするような私ではいけない。

 

「……」

 

少なくともベアトリーチェは私にこの画像を送るべきではなかった、恐らく一人で出歩いていたハナコをさらえた、先生と私を出し抜いて浮かれたが故の浅慮。私がハナコが攫われた事を知らなければ何とかなっただろうに、今、私は……何でも、できる。

 

迷わず宣言する。

 

「ーー神秘解放」

 

 

 

ーー神性顕現

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……デミ…ちゃん?」

 

「お寝坊さんっすね、ハナコちゃん」

 

「わ!良かった……!みんなー!目覚めましたよ!」

 

取り戻したハナコの拘束を解いて、みんなには裏庭の草むらで倒れていたと話しておいた、身体を探っても特段暴行ゆ何かしらを仕込まれた様子もなく、胸をなで下ろした。

 

「っ!?デミちゃん!!」

 

「おわっと」

 

膝上で寝かしておいていたハナコが目を覚まし、飛びつかれる、相当心細かったのだろう……いや、なんで私に抱きつきに来たのかは分からないけれど。

 

「大丈夫でしたか?ハナコちゃん」

 

「………すみません、意識を失ってしまっていたのか記憶が…」

 

「あれ?そうなんすか?」

 

(あ、しまった…)

 

思わず口に出してしまった言葉、攫われたことを私だけが知っているこの状況……てっきり攫われた恐怖で私に抱きついてきたものかと……。

 

「はい、夕暮れ時の風でも浴びにいこうかと……そしたら急に目の前が」

 

「……疲れてたんすねぇ、ちゃんと夜寝てますか?」

 

「ハナコ!無事だったか…!」

 

“ハナコ…良かった……”

 

続いてアズサと先生もロビーに飛び込んでくる、時刻は日が落ちて、すっかり夜になっていた。

 

「すみません…心配をおかけして」

 

最初目を覚ました取り乱しようとは、打って変わって凛とした雰囲気を纏って皆に向き合いお辞儀をする。特に身体に異常もないようで全員一安心といった様子だ。

 

“…バイタル異常無し……よし、みんな今日はもう寝ようか、お風呂を済ませて明日に備えよう”

 

先生は手元のタブレットを操作して、ハナコの体調に一切の異常……いや、強いて言うなら鼓動の速度が未だ緊迫状態であるぐらいだったので、休憩と睡眠を取って貰うように指示する。

 

「分かりました…」

 

 

 

 

 

 

 

 

■入浴後、消灯時間

 

 

 

 

 

先生の部屋にて。

 

「先生、その、ハナコちゃんの事なのですが……」

 

“………聞こうか”

 

コーヒーを片手に先生はヒフミに向き合い、相槌を打つ。それからヒフミはバッグの中から一つのプリントを取り出し、先生へと差し出した。受け取り、中身を確認する。

 

“これは、解答用紙か”

 

「――はい、一年生から三年生までの全試験に於ける解答用紙が纏まっていました、どういう訳か、その全てを回答した生徒がいまして……」

 

“ふむ…”

 

“全て満点、そして……浦和ハナコの名前が、という訳だね”

 

「……はい」

 

浦和ハナコーーその名前が耳に届くと共に、ヒフミは目線をプリントを捉え握る両手が更に強い力で握りしめられている。感情が混ざりすぎて、何を話せばいいか分からなくなるのをこらえ、それからゆっくり呟いた。

 

「昨日見つけた一年生時の成績に引き続き、盗み見る形になってしまったのですが……ハナコちゃんは去年、一年生の段階で三年生の秀才クラスでも難しいとされる学修課程を含めて、《全ての試験》で満点を叩き出しています……完膚なきまでに秀才、と云えるレベルです」

 

“飛び級……なんてレベルじゃないね、それだけの能力があれば……今ここでは……”

 

「はい……一年生時の試験結果を見て、ハナコちゃんはきっと今年になって急激に成績が落ちてしまったのだと思っていました、でも、この結果を見る限りは、そうではなく――」

 

“わざと点数を取らず、試験に落ちているとしか思えない”

 

「……はい」

 

表情は暗く、心に傷がつくのが目に見えるようだ。ヒフミの努力が、気持ちが無駄になっていくかのような……そんな顔をしている。

 

「――ハナコちゃん、どうして……」

 

“………”

 

「ーーーーー生!」

 

“……?今誰か……”

 

 

 

 

 

 

■深夜――合宿所、ロビー

 

 

「………」

 

アズサは今日も一人、銃を担ぎ何事も無いかのような表情で合宿場を抜け出す。

 

そして、そんな彼女を見つめていた一人がいた……。

 

「……アズサちゃん」

 

既に裏切り者として確定した彼女をやすやすと見逃す訳にはいけないのは分かっている。

 

「……」

 

けれど、私の心は頭に反して『違う』と叫んで止まない、あの子から貰った経験が、優しさが、心が今引き止める事を否定する。

 

「……はぁ」

 

ため息をついて帰ろうとし、通路に差し掛かった所で、トイレの照明が付いているのが見えた、誰がこんな夜遅くに用を足しているのだろうか……気になる所はあるが、親しき仲にも礼儀ありというのでそのまま帰路についた…その時…。

 

 

パン…

 

 

「……サプレッサーの音?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オエェッ…!!!」

 

ビチャビチャビチャッ…!!

 

「いだい…痛い痛い痛い…!!」

 

久しく感じていなかった痛みを味わう、いつの間にか機能しなくなっていた痛覚が戻っている、吐き出す血も何が混ざっているのか分からない程ぐちゃぐちゃな塊として出てくる。それをトイレに流す。

 

ーー代償。

 

「ぁ…ぉ、オェッッッ!!!!」

 

望む事象を引き起こす私の神秘、その代償は、私の身体が徐々にあの中身さえぐちゃぐちゃな超再生の肉体へと戻っていく事……しかし、あの処置を行えば一時的に進行は止まり、いつも通りになる、今は身体の中身が元に戻っているのにも関わらず、他の部位、骨や肉がミックスジュースになっているせいで機能がバグっている。

 

「グゥっ…ぎぃっ、があぁぁぁあ!!!」

 

ダメージが限界を超え、潰れる内臓もゆっくり再生してはすり潰されていく、生半可に元に戻っているせいで地獄のような苦痛を味わうが…代償としては軽いものだ。

 

脳への負荷が溜まっていく、痛みによる処理落ちが起き始めた。

 

芋虫の様に這いずりながら自分の頭を撃ち抜く、カタカタと手が震え痛みによる死の恐怖に怯えてしまうが、私は…死なないから大丈夫と落ち着かせて引き金を引く。

 

「ぐぅっ…ふぅっ、ふぅっ……ふぅ……」

 

少し、楽になった。

 

 

 

「誰かいますか…」

 

「……っ!」

 

最悪のタイミングで……ハナコがトイレに入ってきてしまった。

 

(そうだしまった……この時間帯、ハナコはアズサのあとを……クソっ、思考が……!)

 

痛い、肉体的な痛みが襲いかかりすぎて訳が分からない。

 

(と…りあ……えず!)

 

トイレットペーパーで口周りを拭いて、トイレを流し、気を踏ん張りながら立ち上がってトイレの扉を開ける。

 

「私っすよー」

 

「デミちゃん……」

 

やけにしんみりとした雰囲気を纏う彼女を横目に、せり上がり続ける血と肉の塊の処理を思案する……間も、無かった。

 

(あ……えっと……次のことば……)

 

「がぼっ…」

 

「……デミちゃん?」

 

(しまっ……えと、まずは処置しなきゃ……)

 

カチャッ…

 

「……え?」

 

限界に達していた私は、口の中に溜まった血を吹き飛ばす為に拳銃を加え、そのまま頭を吹き飛ばす。

 

「え………ぁ……ぁ、ああ…あぁぁぁ!!?!!!?」

 

(あれ……これみせちゃダメだったっけ…?)

 

「デ…デミ……デミちゃ……ぁあ…散らばっ…夢じゃなかった……!!」

 

吹き飛ばされた脳髄や頭の肉片を、制服が血塗れになるのを問わずにかき集め出すハナコ。

 

「だ、ダメェッ!!も、元に……元に戻っ……ぁ…嫌……」

 

普段からの処置で重点的に吹き飛ばしている頭部の再生速度は、普段と比べ物にならないほど落ちている、今のハナコは傍から見れば死体の肉片を抱く異常者にも見える。

 

「だ、誰か……!あっ…先生ッ!先生!!!助けてェッ!!」

 

絶叫が夜の校舎に響く、残念ながら……

 

 

まだ救いは訪れない。

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