瓦礫の上に立っている
その下には亡骸が敷き詰められている
一つとして失う訳にはいかなかった
何一つなし得なかった
空気に混じる血と硝煙の匂い、息をする度に自分の愚かさを証明するかの様に肺を染め上げる。
落陽が世界を包み込んでいる
ヘイローが消えた■■■を抱き上げ、開かない瞼に気が狂いそうになった。
自分の首に手を伸ばす
体に刻まれた記憶が、死にたいと言っている。おかしい、だって私はまだ十六歳で…ヒフミちゃんや…カズサちゃん、正義実現委員会のみんなと……楽しく…!青春を!
狂えない。その瞬間に、背負ったものの価値が、皆が死んでしまった意味が…
頭に浮かぶ前世の記憶、私の人生が崩壊した全ての《要因》。
だけど、きっとそれだけが原因では無いのだろうと思う、今の私は、その記憶を持った『羽音デミ』でしかない。じゃあ何で?何で?こんな事に?
自分の首に指をかける
頭に黒服の言葉が鳴り響く。
「…羽音デミさん、そのまま進めば貴方はきっと全てをお一人で乗り越えてしまうでしょう」
「それはきっとこの世界にとって良い事で、失われるものは最小限に、相対する敵を最効率で乗り越えていく」
「クックックッ…貴方は実に興味深かった。ある日突然、その神秘に混ざった『恐怖』」
「私は暁のホルスに目を配らしていましたが…マエストロやゴルコンダならば貴方をどのような作品、テキストとして現したか興味が尽きませんね」
“何が…言いたい?”
「話がズレてしまいましたね。…ククッ…クックックッ……言いたい事はただ一つ、貴方は『生徒』で『先生』では無かった」
“……は?”
それの何がダメだったんだ?先生が死なない様に、傷つかない様に、考えうる全てを潰した。皆の失うものが無いように…。
「カイザー」 「ゲマトリア」 「守護者」「無名の司祭」「色彩の嚮導者」
今はもうない仇敵を口に出す。今となっては、どれでもいい…私を殺して欲しかった。
指を一本一本締めていく
“ デミ…!!!”
瓦礫の山になったキヴォトスから、まだ唯一残っている宝物の声が届いてくる。
まだこんな私を救おうとする。まだ先生としての責任を負おうとしている。
分かっている筈だった、知っている筈だった。『色彩の嚮導者』がそうであった様に、何処までいっても先生は先生なのだから。
なのに、今私は自死を選んでいる
分かっていて、知っていて……理解してなかったんだ。私はまだ『生徒』だから。
……先程の問いの答えが分かった。今、何故こうなっているのか。誰が原因なのか。
辺りを見渡す、誰もいない。近づいてきた先生は既に眠らせた。
敵を探す、誰もいない。シッテムの箱を叩き割って先生の傍に置いておく。
馬鹿だったんだ、自分って。
馬鹿で子供で未熟で、それなのに前世の記憶があるからって…背伸びして。
「何故?誰が?どうしてこんな事に?なんで?」
もう一度自分の手を首にかける
「あ〜そっか、なるほど……そうか」
掠れた声で、誰も声を返してくれる人なんていないのに、喉が張り裂けるほどに叫ぶ。
この言葉が地平線まで飛んでいって、また自分にぶつかって欲しいから叫ぶ。自分へ、殴りつけるように叫ぶ。
「私か」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……」
跳ね起きて、時計に目をやる。
確か、先生をシャーレビルまで送り届けて、シッテムの箱によって復旧したサンクトゥムタワー。
一通りの事務手続きも終わり、解散した後、ハスミ先輩の説教を食らってからカフェで一服し帰って……数日間はいつも通りの日常 (先生からのモモトークを除く) を過ごしていた。
対策委員会編がいつ始まるかは分からないので、カイザーの動きを監視するぐらいしかなかったので、あのアホ毛バカ(カヤ)対策を練ったり何やかんやしていたが……。
夢を見た。
ハッキリ内容は思い出せない、だけど……気分が良いものでは無いのだろう。
数日間、全て異なる夢を見た。寝ようとするたびに身体が震え、恐怖に頭が支配される……が、日常を崩したくなかった。
寝る度、髪が白く染まる、精神に負担がかかっているせい?まぁ……原因はよく分かっていない。普通に考えてこんな綺麗に染まったりはしないだろう。
その恐怖に打ち勝つ為に、また今日も手段を用意していく。誰にもバレない様に、誰にでも効果がある様に。
どこか、間違った方向に突き進み続けているのではないか……。そんな不安を押さえ込んで朝のマラソンを始める。身体作りも大切な対策の一環だ、無茶する場面も出てくるだろうから。
「ほっほっほっほっ、ふぅ…」
休憩を挟み、シャーレ下のコンビニで飲み物を買う。ついでにソラちゃんのおデコを眺めといた。
「ヒッフッ↑ ヒ↓フ→ミッ↑ミッ↑ ヒッ↑フッ→ミッ↑ ダ↓イ→スッ↑キッ↑! 」
超絶お気に入りの神曲をボソボソ呟きながら数百kmのマラソンを行う。作業している時、このbgmが頭からこびり付いて離れないのだ。マラソン後は正実でシャワーを浴びて着替えるのもルーティーン化している。
マラソン途中にトリニティ生からカツアゲしようとしている不良共をフルボッコにしたり、朝っぱらから騒がしいヘルメット団や、美食研究会……美食研究会!?!?
「おい!ちょっと待てぇい!」
「あら、デミさんおはようございます」
「おはようございます、じゃないよ!フウカちゃん縛り上げて何してるんすか!」
んっー!んっー! と叫んでいるフウカ……ぐぎががーー!これだからこの馬鹿共は!!!
「トリニティに存在する幻の秘カフェ……モーニングにしか開いておらず、噂だけでしか無かったアルティメットモーニングセット…」
「ついに居場所を突き止めましたので、そこへ突入しようかと♡」
「じゃあなんでフウカちゃんを縛り上げてるんですか????」
「あら、それはフウカさんが以前、“そんなものがあったら参考に1度食べてみたい”と」
「以前話した事をしっかりと覚えておいて、一緒に食べに行く関係……これぞ友情、友達ですね☆」
普通に連れてけよ!!?!?!っていうか不満足だった瞬間店吹っ飛ばすだろうが!!
「フウカちゃん……助けて欲しい?」
コクッ…と頷いたので、身体に少しだけ力を入れる。別に私はゲヘナだとかトリニティだとか、そんな意識既に吹っ飛んでいるので気にしない。
「待ってください、デミさん……私達はまだ何も」
素早く近寄り、
路地裏まで逃げたので、今回はそこまでフウカちゃんに執着が無いであろうアイツらは追いかけてこないだろう。
「はぁぁぁ……ありがとうございます、デミさん」
「大丈夫っすよ~!またろくでもない理由…というか存在自体がろくでもない奴らに毎度毎度……フウカちゃんも大変ですね…」
どちらの記憶でも、美食研究会に振り回されっぱなしで憐憫の情しか湧かないフウカちゃん……。
ゲヘナへ送り返す為に、駄べりながら路地裏を突き進んでいると、視界の端に一瞬“Cafe”の文字が見えた。記憶が正しければ、こんな場所にカフェは無い。
おかしい……週5度、ありとあらゆるカフェを巡っているこのカフェマイスターの私が知らないカフェだと?
「フウカちゃん…もしかして、あれって……!」
「はい?どうしたんです……って、あれってもしや!」
「「幻の秘カフェ!?」」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
偶然にも見つけた秘カフェ、各地に出没する噂は本当で、借店スタイルで開店場所を変えているらしい。
「「おいし~い!」」
あの後フウカちゃんと入店し、『アルティメットモーニングセット』を頼むと出てきたアイスクリームとパンケーキ。
一見すると普通の品々だが、食べてみるとその実態を現した。
「おいおい今まで食ってきたデザートは全部腐ってたんじゃねぇのか!?」
「デミさん!?顔!顔の画風がなんか変わってます!詳細に言うと凄くグルメでバトルな顔ですよ!?というかめちゃくちゃ失礼!?」
濃厚!緻密!なんという舌触り!頭の中で破裂する甘み!
この世の全ての食材に感謝しそうになりながら、今日一番の幸運に感謝し、完食……。
店を出た頃には2人とも何らかの細胞の悪魔が目覚めていそうな顔をして、ゲヘナ区域にまで足を運んでいた……。
「早朝からありがとう!またいつか一緒にカフェ巡りしましょうね!」
「どういたしまして~、フウカちゃんにそう言って貰えると私も嬉しいっす」
お別れの言葉を告げ、さっそうとトリニティまで戻ろうとする私を呼び止める声が届く。
「ん?どうしたんすか?フウカちゃん」
「あ、いえ、その……髪の毛…」.
髪、その単語が耳に入った瞬間反射的に答えてしまう。
「これ?大丈夫っすよ、イメチェン失敗を取り返そうとして更に失敗しただけで」
以前より増えている白髪、疑問に思われても仕方がない。
「そう…ですか、その、本当に大丈夫…」.
「大丈夫ですって~杞憂杞憂!」
振り切るように、突き放すように言葉を投げつけその場を去る。
「デミさん…」
愛清フウカの心に、しこりは残ったまま
領域展開【曇天曇空】
初手で主人公をお労しい状況にする事で、日常全てに曇らせが必中する閉じない領域……!無自覚という隙を作る事でその必中効果は最大半径友人~先生までに達する!!!