ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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主役の手へと

『隣人をかねてより愛したまえ、知己を誇りたまえ、自らを賜れしものとして、赦したまえ。

 

 

愚かさとは、ただそれを認知せず、日々を享受していく己自身(全てを治めれると思っていた事)であると、自戒したまえ』

 

 

 

 

 

「ごふっ…」

 

「っ!?」

 

ハルナの弾丸が、バリアを貫通して私に届いた。

 

 

「……あれ…」

 

 

何も、起こせてない?

 

 

「……ぇ…ぁ、くろ…ふく」

 

 

ここにきて?ここにきて、失ったのか?

 

 

「デ、デミさん!ぁ、あぁそ、そんな!しっかりしてください!」

 

 

ハルナが駆け寄ってくる、この程度で怪我をするなど彼女にとっても予想外だったのだろう、さっきまでの怒りに溢れた赤い顔が急激に青ざめきっている。

 

 

「わ、わたしの、せいで…!」

 

 

「大丈夫、大丈夫っすよ…ハルナ」

 

 

そういう前にこの惨状を作り出したのはハルナだろ、と突っ込みたくなったが………これは逆に好都合かもしれない。先程再生しようとしてみたのだが、それも出来なかった…腹部を貫かれた私は立っていられなくなってしまったが、まぁいい。

 

 

「ハルナ、逃げなきゃ…まだ間に合うから、ゲヘナに先に帰って」

 

 

「嫌です!貴方をここに置いてなんて…!」

 

 

…本当に良い子だ、色々おかしな所はあるけど…というかこうなってるのハルナせいって百回言いたいけれど…まぁご愛嬌と言っておこう。今ならば…死ねるかもしれない。

 

 

ガラガラガラ……!!と、瓦礫がハルナの頭上に見えた、突き飛ばして離す。

 

 

「キャッ…デミさん…!?」

 

 

「がふっ…ひゅー…」

 

 

今瓦礫に混ざってた鉄筋が刺さった場所から痛みと熱さが止まらない…これは……肉体が、先生と同じ…人の強度になっているのか?

 

 

「なるほどなぁ…」

 

 

ブルアカの世界には、種族というものがあった。アルちゃんは悪魔だったり、トリニティ生は天使がモチーフになっている、それはヘイローと共に神秘の表れであるのか、ただ種族としてあるのか分からなかったが…神秘を失った私の身体が先生と同じ人になったというのならば、キヴォトスに偏在する全ての生徒は、『神秘』に魅入られているからこそ、『生徒(人外)』であるのだろう。

 

 

「あぁ…あともうちょっと…」

 

 

倒壊してきたビルが目の前まで…。

 

 

「なんで…そんな顔して…!そ、そんな…嬉しそうなッ…!?」

 

 

嬉しそう?そうだな、嬉しいよ…もう何からも目を背けることなく、誰も傷つけなくていいから…。

 

 

そう思うと、心の底から笑みがこぼれていく、こんな幸せな事は無いだろう。何もかもその責任を、なんと不意に果たすことができるのだから……少しズルになってしまうが、先生との本格的な喧嘩が始まる前に、こんな形で終われるのも、また乙なものと言うものだろうか?ほんとに死ねたらそれでラッキー、死ねなくても…これからの活動にも希望が持てるというものだ。

 

 

「はは…あは、はぁ……ぁ…ヒフミちゃ…」

 

 

走馬灯とも言えないものだが……大好きなあの子を……

 

 

グチャッ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶ 大人のカードを使う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ」

 

 

ぼやける目を擦り、視界に先生が映ったところで、驚いて体を跳ね上げてしまう……先生、先生だ。なぜ今ここに先生が?ハルナは?ビルは?今までのは夢だったのか?

 

“おはよう、だね?お寝坊さん”

 

 

周囲を見渡す、何もないと言うよりは、先生におぶられていて、ただの商店街に居た。

 

 

「おはよう先生…あれれ、何も、無い?」

 

 

“任せてって言ったでしょ?サイフ係だって”

 

 

「サイフ係…?」

 

 

“ハルナの食事代も先生持ちだったって事さ”

 

 

「…?あ、そうだ…ハルナは?」

 

 

“ヒナに引き渡してきたよ、他の美食研究会の皆もね、フウカは元々私預かりの生徒だった事もあったし、大目に見て貰えたよ”

 

…全部終わっている?何がどうやってって?どんな手品を使えば、あの状況から何事もなく、収めることができているのだろう。むむむと頭を悩ませる、鉄筋に貫かれてついたはずの傷もなく、撃たれた腹部の跡もない。そこでようやく思い当たった。

 

「………ぁ、ま…さか?」

 

 

「せ、先生!?かーど…、か、カード見せて…あ、いや…ちが…」

 

 

“あはは、大丈夫大丈夫、そんな慌てなくても先生は平気さ”

 

 

「そんな訳ッ!!」

 

 

“生徒の為なら、それで今は納得してくれないかい?”

 

 

黒服は言っていた、私の神秘の物質化。それは先生のカードとも同じものだと。同じもの…つまり先生が起こしたのは、まさに私と同じ奇跡だ。

 

 

「バカ!バカバカバカ!先生はバカっす!もう本当にバカ!!」

 

 

“ぐえっ…く、苦しいよデミ”

 

 

先生の背中から伝わる体温、先生の命をよく体に感じる。しっかりと抱きしめ、先生がここにいることを認識しなければ、私は今すぐにでも崩れ落ちてしまいそうだ。

 

 

「先生は私と同じぐらいバカ!!ハルナの数百倍バカの大バカ!」

 

 

“ご、ごめんね…し、しまってる、謝るから、謝るからその前に私死んじゃう……”

 

 

「嫌、嫌っす!何したか分かってんすか?それのリスクがどれだけ…!」

 

 

「先生は、先生だけは私と最期までって…!好き!バカ!嫌い嫌い嫌い!!もう本当にバカ!大好きって言ったじゃないっすか!」

 

 

ぐずり、泣き出してしまう。私の心にはただ、先生への愛が湧いて止まらない。要らなかった筈なのに、やはり嫌なものは嫌なんだと再認識させられた。

 

 

“い、いてて…本当に大丈夫だからさ、ほら、泣き止んで?”

 

 

「ズビーッ…赤ちゃん扱いするなぁ…」

 

 

“どう?ハルナとはちゃんと話せた?”

 

 

「………はい、ちゃんと話した上で…全部、突っぱねたっす」

 

 

“ふふっ、そうかい、良かった”

 

 

「微笑む場面じゃないと思うんですけど…」

 

 

“あはは!いや、なんだ…デミらしいねって思っただけだよ”

 

 

…らしい、か。愚かな私を、らしいと肯定してくれるのか……なんて、甘美な響きだろう。

 

 

“あ、それで…デミに少し聞きたいことがあるんだけど…”

 

 

「ズビッ……なんすか?」

 

 

“これ、何かな〜?”

 

 

ホルスターに入った、例の無垢金の針が先生の手の上にあった。

 

 

「…あっ、返してください!」

 

 

“アロナ” 「了解です!」

 

 

一瞬にして手元から消えた、アロナの物質転移だ。そして背中側から手を伸ばした私の手をぺちンと優しく叩かれる。正体の予測は、きっとまだついてないだろうが、これがどれだけ危険なものなのかは、アロナを通じて理解しているのだろう。無垢金の針、これは一刺しでヘイロー破壊爆弾と同様の効果を示す、特大の厄ネタだ。

 

 

“以前、話したよね…いつまでも自分を蔑ろにしていると……幾らそれが君の望むものであれ、私がデミのことを手放さなくなっちゃうって”

 

 

「あ、あぅ…」

 

 

“私はね、生徒を助けるんだ、信じ、救い、導く…どんなことがこの身に起きようがね、言葉通り”

 

 

「わかってるっすよ…!」

 

 

“でも、駄目な人間でもあるからね!卑怯だと言われようがこれが大人の戦いなのさ!!”

 

 

「アロナの手ぇ借りてまでやる事が、持ち物没収とか狡いんすけど!?大人の戦いでもなんでもないの知ってますからね?黒服とプロレスしたり…ケツ揉むっすよ??」

 

 

“なんでケツ揉むの???………とりあえず、今日は帰ってゆっくり寝るといいよ、疲れてそうだし”

 

 

そうやって言われてしまうと、だんだん目がしばしばとして眠たくなっていく。ただの外出だったはずが、スイーツも食べることなく、こんな騒ぎで終わってしまったことを悔しく思うが…まぁ先生がなんとかしてくれるだろう。そう思い、ゆっくり目を閉じていく。

 

 

「はぁ……バカ、バカばっかっすね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美食研究会が輸送されている車両内。

 

 

 

「……」

 

 

「お腹空いた…」

 

 

「ゴールドマグロ…」

 

 

「ハルナさん…」

 

 

フラッシュバックする、何度でも何度でも、あの光景が。死ぬ寸前で大輪の花のような笑顔をするあの子の顔が、焼きついて離れない。私でも、フウカさんでも引き出せなかった、本当の笑顔が。

 

はっきりと何があったかは覚えていない、ただ先生に捕まり引き渡された後、彼女の寝姿の写真が送られてきたので生きていることを知って一安心したが…。

 

 

「……」

 

 

幸せそうだった、あんなに幸せそうな彼女を見るのは……初めて、初めてだ。初めてだった。

 

手がブルブルと震える、彼女を撃って傷つけてしまったこの手が怖くてたまらない。

 

 

「…私じゃ、駄目でしたか」

 

 

引き出したと思った、私なら二の足を踏まずに、彼女に飛び込んでいけると…、飛び込んだ先が暗闇と知らずに居たから踏み出せたのだ、何も分からない恐怖を知らなかったから……。

 

 

「食べたかった〜!ゴールドマグロ!」

 

 

「…えぇ、またいつか狙いに行きましょう」

 

 

結局、先生の力によるものなのか、あの爆発も建物の倒壊も何もなかったことになっていた。アカリは覚えていたが、イズミとジュンコは覚えていなかった、あの出来事を覚えてるのは…多分、近くにいた私とデミと先生、他にも誰かいたかもしれないけれど、今は知りようがない。

 

 

「…振られてしまいましたね」

 

 

もう私では、あの子に届かないのだろうか、はっきりとそう思いはしないが、脳裏にはチラつく。

 

 

「ハルナ」

 

 

「…如何致しました?アカリさん」

 

 

「もう一度、やりましょう☆」

 

 

「…………えぇ、勿論、たった一度の失敗で諦めるようなものではありませんでしたね」

 

 

口では、そう話せているが震える手は止まらぬず隠すことでしか、今は自分の心を守れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■合宿場 トイレ

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ…ぐっ!」

 

 

頭痛が止まらない、先生から送り届けてもらって、この場に帰ってきたのは良いのだが…何か忘れている気がする。今のこの場所にも、何か違和感が…。

 

両手に目をやる。

 

 

「ひっ…」

 

 

血まみれだった。

 

 

「い、いや…!」

 

 

頭を振って目を背け、もう一度見てみると、血は無くなっていたが、何か思い出しそうな感じがする、先生が大人の力とやらであの場を収めてから、どうも頭痛がしているのだ。

 

 

私は基本賢くある為に、記憶していることもしっかりと選んでいるはずだ。何かを忘れる事は無いだろうと思っていたのに…。

 

 

「……ハナコ?」

 

 

「ア、アズサさん…」

 

 

トイレに訪れたアズサと鉢合わせた、普段通りに過ごそうとする。

 

 

「…ハナコ、何故…泣いている、教えてくれ」

 

 

「…え?」

 

 

泣いている?私が? 頬にそっと手を当ててみると、確かに濡れており、言われて初めて涙を流していたことに気づき、目元の熱さが気になってきた。

 

 

「あ、いえ…これは……ごめんなさい、分からなくて…」

 

 

「何か…心配なことでもあるのか?私でよければ力を貸すよ?」

 

 

「大丈夫ですよ、アズサちゃん……ちょっとはしゃぎすぎて疲れ切っちゃったんだと思うんです…私も早く寝ます」

 

 

「……そうか、ならいい」

 

 

人は涙を流すような何かを忘れることなどあるのだろうか?ありはしないだろう、そんなこと。

先に部屋に帰った私は、枕に顔を埋めた。

 

 

「………何を…忘れて…」

 

 

あのトイレと言う場所で、なぜか強烈な違和感を感じることに繋がりがあるのだろうか?何が、何が起きているのだ、私に。そしてなぜ今…デミの顔が思い浮かぶのだろうか、なぜこんなにも胸が締め付けられ、涙がこぼれるのだろうか。

 

 

『本音をぶつけたい』

 

 

「………」

 

 

それはほんとに、私を救える…あの子を救えるものなのか、未だわからない。

 












こ、これって、NTRやんけ〜!?ハルナの覚悟と名場面の後始末、先生が片付けちゃいました…。

『私では駄目なのですか』→『貴方は私の大切な親友だよ』

からの…

『先生のバカ!先生だけはずっと一緒に…!』→『大丈夫、一緒に居るから』

WSS(私が先に好きだったのに…)が決まっちまったなァー!!


しかも走馬灯の居場所もヒフミだったぜぇ?ゲラゲラゲラゲラ!!
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