そこに温泉があるから開発するのか?開発したいから温泉を見つけようとするのか?魂が答える!両方だと!燃え盛り燃え尽きるが如く魂の叫びが身体を突き動かす!
ドッカァァァン!!
試験会場の廃墟は木っ端微塵!勿論中に居た人も物も無事では済まない!崩落に続く崩落で周囲の廃墟ごと、全て吹き飛ばされてしまった。
「ハーッハッハッハ!さて、目標地点に着弾したかな?」
「……どんなもんかと思ったら、こうズレるんすね」
「あ、あーー!!し、試験用紙が!!」
「嘘か本当か分からずとも、源泉のタレコミがあれば開発だ!うむうむ、綺麗に更地になったな!計算通りだ!」
「いてて…先生、大丈夫?」
“大丈夫だよ…なるほど、彼女を引き出したか”
辺り一体が瓦礫となり、土埃が収まったことで漸く現状を理解出来た。憤怒の表情をするハナコと、瓦礫がのしかかっているコハルとアズサ、そして涙目になりながら紙クズとなった試験用紙を瓦礫の中から掻き集めるヒフミ。
鬼怒川カスミ、キヴォトストップレベルのテロリスト……暴力沙汰、テロが当たり前のゲヘナで指名手配と最重要警戒人物認定を受ける天性の狂人であり、夢にただひたすらに真っ直ぐな温泉開発部部長。
「ハーッハッハッハ!おや?先生…いや、共犯者じゃないか!久しくだな!」
“久しぶり、カスミ……今日はどうして、なんて言うのはナンセンスだね、これを見た事があるかい?”
「ハッハッハ、L118か!なるほど、まぁこちら側としても丁度良かったからな!利害は一致していたぞ!」
“聡いね…”
非常に理解が早い、勝手にナギサからの妨害役として一手買っていた温泉開発部だったが、諸々都合が良かったのかそのまま流されるように開発を続けていたのだ。
「う、ぅぅぅ…」
「ヒフミちゃん」
「ま、待って下さい…まだ、まだ試験用紙を集めれたら…あう」
何故か、あれだけ大好きなヒフミちゃんの感情が、今の私にはイマイチ掴みきれない、理由は分からなかったが、酷い顔をしていたから両手で挟んであげる。
「ヒフミちゃんらしくないっすよ、泣きべそかいて…自分を責めちゃダメ、別にヒフミちゃんのせいじゃないんだから」
「ひょ、ひょんなほひょいっても……」
後は泣き止むまでひたすらに頬をムニムニしていると、瓦礫を掻き分けて現れたハナコの目もヒフミと同じ様に、何かドロドロとした感情に塗れていた
「ふ、ふふふっ…なるほど、なるほど……」
「はぁ……ハナコ、顔」
「……すみません、少し…少しだけ席を外します」
「早く帰って来るなら、良いっすよ」
「……はい、デミちゃん」
そのまま近くの路地裏に溶け込んで行ったハナコ、思っていたよりも皆の反応が暗い、私が見たあのブルーアーカイブではこの理不尽な状況を覆す輝きを見せてもらったのだが……。
「コハル、ヒフミ、デミ、無事か?」
「あうぅ…アズサちゃん…!試験用紙が無くなっちゃって…このままじゃ第二次試験は不合格に」
「…そうか、まさかここまで強引な手段に出るとはな」
「ど、どうすんのよ!?あんなに苦労してここまで来て……みんなとっても努力して、沢山勉強して……!それが、なんで…」
ヒフミもコハルも、涙目になりながら現状を嘆く。二人はここまでずっと初めてとも言っていい『謀略』の手に掛かり続けてきた、退学という圧力、各々の心はゆっくりとダメージが蓄積していた。
「どうしてこんな…アンタのせい!?アンタが試験会場を爆破させて…!」
怒りの表情をカスミに向けて、銃を構えるコハル。それを見たカスミは飄々と答えを返した。
「むっ、そもそもトリニティ生がゲヘナで試験を受けるなんて想定外だぞ?我々の目的はここら一体の温泉開発、偶然巡り会った私達とゴタゴタする必要は無い!」
「君たちが偶然ここに居て、偶然我々はここを開発場所にした、それが我々以外の誰かに仕組まれた事であるのならば、怒りを向ける方向は分かっているはずだろう?」
「そ、それは!分かって…分かってるけど…」
「分かっているなら話は早い!」
カスミがチラリとヒフミの手元にある紙クズになった試験用紙の一部分を見て、格好の餌を見つけたように目を光らせた。
「君たちが私を追うなら、今から君たちに罪をなすり付けるように私は爆破を繰り返す!元々ここら一体は更地にするから丁度良い!逆にこのまま帰ってくれるなら何事も無く君たちはトリニティに帰れるぞ!」
「…相変わらず口が達者っすね」
「何、悪い話じゃないさ…服装を見るに君とそこの子は正義実現委員会、この爆発跡に居て、私を捕まえようとこの場で戦うなら……一見、トリニティ生がゲヘナで問題を起こした事に関わっているように見えるな!ハーッハッハッハ!」
「はぁ!?なんでそんな方向に話が行くのよ!」
「ふむ、エデン条約が間近に迫る中で、そんな問題の渦中には居れない、即刻この場を離れて逃げなければ君たちの立場が危ういんじゃないか?ほら、今にも風紀委員がここに到着しようとしているぞ!」
耳を済ませれば、補習授業部の耳に風紀委員会の声が聞こえる。この爆破に誘われて主要人物を捕らえに来たであろう声が。
“カスミ、早く見逃して帰って、で良いんだね”
「流石は先生、早く話が通じるな!ハーッハッハッハ!」
“うん、これはナギサにしてやられたね……このままこの場所に長居する事は出来ない、捕まるのが最悪のケースだ…第三次試験を受けれなくなる可能性がある”
ゲヘナの風紀委員に捕まり、責任の所在を聞かれてもティーパーティー側がシラをきれば釈放されるのに時間がかかる、ハイウェイでの戦闘には万魔殿とティーパーティー、両方の暗黙の了解で風紀と正実が戦っていたが、私たちはそうにはいかない、その証拠に…。
“…やっぱりもう消されているか”
掲示板を除けば、あの理不尽な試験会場の指示が《第二次試験は終了しました》として消されていた。
“皆が無事なら良かった、早く帰ろうか…第三次試験を頑張るしかない”
「う、うぅぅ…こんな事、あのティーパーティーのナギサ様はどうしてここまでするのよ!どうしてこんなに、私たちを退学にしたいの…?こんな事されて、努力を踏みにじって、ハスミ先輩に…頑張ってって…」
カスミに反論され、現状への不満が爆発しそうになったコハルの怒りが溢れ、そして膝を折り地面にへたりこんだ。
「…っ、コハル…」
思わず声が出てしまうアズサ、『私は裏切り者だ』その呪詛が張り付いて離れないせいで顔まで歪んでいく、私が話出せなかったから?私がもっと早く真実を伝えていれば、悲しみは減っていたのではないか?と、全て虚しくとも抗う事を信条に置いていたのに、怠惰によって責められる心が痛む。
「大丈夫っす、コハルちゃん……みんなを、先生を信じれば良いんすよ、まだ第三次試験もあるんだから、正実のエリートはこれぐらいじゃ挫け無いっす、ほら行くっすよ」
「デミ先輩……」
伸ばされた手を取って立ち上がる、正実のエリート、その言葉がコハルを元気づけた。彼女のアイデンティティであり誇りである『正義実現委員会の一員』という証を、思い出させれば、また立ち上がれる…コハルはそういった点で、強い子であり、誰よりも自分に正直なのだ。
「エリート…そう、私は正実のエリートだから、こんな事でメソメソしない!」
「うん、コハルちゃんは本当にエリートっすよ」
強がりではなく、目標の自分に成りたい決意が籠った口調で自身を鼓舞するコハル、そうこうしているとハナコも帰ってきた。
「…戻りました」
“皆揃ったね、それじゃ帰ろうか”
「ハーッハッハッハ!話は纏まったかな?それでは開発だー!」
“カスミもまた話そうか”
「ああ!先生との会話は温泉開発と同じくらい楽しいからな!また会おう!ハーッハッハッハ!」
そうして爆破を撒き散らしながら街の奥に進んで行ったカスミ、それに釣られて風紀委員の声も遠ざかっていく、カスミと部員を捕まえに方向転換したようだ。
しかしここまで来るのに、皆疲弊しており爆破も相まって安全に帰れる保証は無い、風紀委員会と正義実現委員会の争いが終わったかどうかも分からない。
“アロナ、神の目起動……周囲一帯の道から退避ルートを算出できるかい” 「もうやっておきました!補習授業部の皆さんにも共有しますか?」
“頼んでおくよ、それと…デミ”
「はいはい…どうしたんすか?」
“…知ってた?”
「ははーん、お得意の表情読みっすか、今回はそうはいかな……」
“なるほど”
何やら納得した顔をして踵を返す先生、最早気持ち悪い領域にまで達した『察する力』に思わずため息が出てしまう。というよりデミが隠すのが下手過ぎるというのもあるのだが……本人は気づいていない。
「……だから、…はぁ、先生は?」
“全然”
「…もー!卑怯っす!何時もそっちばっかり私から情報を抜き取りまくって、こーゆー事苦手なんすよねぇ…」
“お互い様だよ、デミ、君はコハルやヒフミ、補習授業部の皆が悲しむ事を知ってこの選択を取ったのだろう?”
その言葉には、眼差しには、非難でも無く怒りでも無く、ただ淡々とした事実を述べるだけの意味合いしか無かった。知っていて、この選択を取る……その由来がデミが皆を信じているからこそ選んだ道だと、しっかり目の前に差し出すように。
「仕方無いっすねぇ……」
パッパと、土埃を払って先生の元に近づこうとする。
ズチュッ…カタン…
「…かふっ……」
グラりと視界がボヤけて、足が絡まってコケてしまった……耳に奇妙な音を残しながら。
「ゲホッ、急になんすか…」
ゆっくり立ち上がって謎の立ちくらみの原因を探す、やけに胸が痛いので風邪でも引いたかと触ってみると指が沈みこんでしまった。衣服の上から心臓までめり込んでしまう。
「は?なんで…あ〜…」
崩落途中、何度か瓦礫に潰されて死んだ気がする、ただ死ぬだけではデミはあの時の状態に近づくだけで、適切に神秘を穢しながら再生を繰り返さなくてはならないのだ……つまり数日の間に死にすぎた。何故、皆が悲しむ姿を見て何も感じないのか、悲しみを、哀しみを、その感情に共感できなかったのは、それが原因。
つまり今の奇妙な音は……。
“……大丈夫?急にコケて、怪我は無い?”
「よいしょっと、大丈夫っすよ、帰りますか」
“皆、疲労している事だし…帰ってからは何もせず先に寝ようか”
コケた場所に落ちた拳銃を握り、立ち上がる。愛銃が胸の中から零れ落ちていたのだった。
さっきまで使用を躊躇っていた針もパパっと取り出して先生に背を向け、視線が補習授業部に移った瞬間に刺しておく、そうすればまた心と身体がいつも通りに戻るから。
胸元のポケットから粉々になったピンク色のヘアゴムケースの残骸も、ぐいっとポケットを裏返して捨てておく、何故大切にしまっていたのか、今は分からないが……ここまで壊れてしまえば必要無いだろう。
「ヒフミちゃん、アズサちゃん、コハルちゃん、ハナコ……行くっすよ!次は三次試験!目指せ合格、打倒ティーパーティー!」
「そ、そうです!三次試験で合格して、今度こそ…!」
「今度こそ、みんなで笑って補習授業部を卒業しましょう」
「…あぁ」
ハナコが何時もより少し真剣味を含ませて、また一日が終わっていった。皆の胸の内に隠されているものは多い、それを打ち明けて話す瞬間も、きっと訪れるから……心配は要らない。
「……」
なんだろう、何故かは分からないけど。
「………はは、暗いっすね」
何が、とは、答えを出せなかったけれど。誰にも聞こえないように、呟いた。
何も進まず、何も解決せず、何も打ち解ける事無く、無情にも時間の歩みは止まらない。故に若者よ、残された時間は少ない、有効に使いたまえ。
ダラダラと話が中だるみしてすみません……けれど、実際何も打ち明ける気が無い人間との関わり合いっていうのは、いつしか歪んで何も起きずに時間が進んでいくだけかなと思って……皆、胸の内のしこりが解消せず、そしてしこりの原因であるデミや、今の現状が互いに牽制しあってる状況は……なんというか、暗く、陰湿なんじゃないかと、何も発展する事が無いんじゃないかと………思いまして、作者の都合ですがお許しを。だからこそ、本編のブルーアーカイブのアズサの『裏切り者』を打ち明けた時の輝きって本当にに凄まじいものだったんだな、と今更ながら感じております。
次回ーーーー補習授業部 反撃開始