ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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輝く貴方は消えてしまえ

 

“さて、前準備は終わったね……後は、どこまで凌ぎきれるかだけど”

 

 

「単身美食研究会とタメ張って逃げ切った女とゲリラ戦のプロっすよ?合流すれば勝ち確っす」

 

 

作戦実行の為にナギサのセーフハウスに向かった二人を見送り、先生含む四人が体育館に潜んでいる。…先生とデミしか預かり知らぬ事ではあるが、ハナコがアズサと共にセーフハウスに向かう理由は、案内が第一ではあるが、ナギサに対しての嫌味、そして帰り際にシスターフッドに連絡を取る為であり、想定よりは合流が遅れることは視野に入れている。

 

 

「……うぅ、デミ先輩!そのアリウスって奴らって強いの…?」

 

 

未知数の敵との戦闘を見据え、少しばかり震えながらコハルが問いかけた。この中でアリウスとの戦闘経験があるのは先生を除けばデミのみ、正義実現委員会でも戦闘指南に関しては評価が高い彼女からの言葉を聞けば安心出来るかと思ったのか、袖をつまんで聞いてくる。

 

 

「うーん、まぁ一回アビドスでヤッた経験からして、装備と連携は完&璧、けど単体としての戦闘能力はミソッカスっすね、先生が居れば楽勝っすよ、コハルちゃんのエリート力があればもっと楽勝っす」

 

 

「な、なーんだ!恐るるに足らず?って奴よね!」

 

 

「そういえば、先生がシャーレの顧問になって数ヶ月間当番制をしていた時に、アビドスの出張をデミちゃんは手伝っていたんでしたっけ……」

 

 

ドヤ顔を決めているコハルを撫でていると、そういえばと、もう懐かしさを感じるアビドスの一件をヒフミが掘り返す。

 

 

「内申点も貰っちゃってwin-winっす、あれのお陰で試験の点数ギリギリだったのに楽できちゃいましたし」

 

 

「…無茶、したのは…聞きましたよ?」

 

 

「…ッスー」

 

 

ニッコリ笑うヒフミから目を逸らす、掘り出せば掘り出すほど言い返せない弱みをどんどんと握られて……嗚呼…こうなるならば我が余分、黒歴史を作るな過去の私よ、と心の川柳を読み上げていた時、無線機から声が響く。

 

 

《こちらアルファ》

 

 

事前に決めておいたチーム名、アルファはハナコとアズサの二人を指すものだ、ナギサを確保出来たのかと思い、耳を傾ける。

 

 

《桐藤ナギサが、消えた》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ…!どうなっている…!」

 

 

深夜のトリニティ、複数人が物陰に身を潜め行動する中、リーダー格らしきものが舌打ちをする。

 

 

《チームⅥ、ワイヤートラップの解除中、踏み抜けば爆発はしないが撮影機が作動する、解除優先で行動している》

 

 

《チームⅢ、事前情報に無い人集りが校門近くに集まっている、迂回ルートにはプラスチック爆弾や地雷がトラップとして配置されていた、想定合流時間より大幅に遅延が生じる可能性がある》

 

 

「できる限り襲撃時間には間に合わせろ、『スパイ』と聖園ミカからの情報が正しければ、我々より先に桐藤ナギサを奪われる」

 

 

イライラを募らせる原因は、事前情報に無さ過ぎる想定外の数々、元々の襲撃時間を早く繰り上げて来たというのに、二人からの情報によって、シャーレの先生に先手を打たれる事態を避けるために更に予定を早めさせられた。

 

 

そうして来た結果が……計画の配備場所に張り巡らされた時間稼ぎのトラップの数々と謎のグッズを振り回す集団による妨害、ここまて円滑に物事が進まないと焦りより苛立ちが上回ってしまう。

 

 

「…………」

 

 

落ち着け、考えろ、ここで妨害される意味は……足取りを追わせない事、早く拉致し、私達に痕跡を残さず退却されれば手出し出来なくなる、となると最善手は……。

 

 

「…《こちらチームⅠ、計画を変更……配備完了を待たず突入する、各自ラフに動け、既に後手に回っている状況だ、その場の対応を重視しろ》」

 

 

《了解》

 

 

「いくぞ、どっちにしろセーフハウスに桐藤ナギサが居るか居ないかの情報を得る事が先決だ」

 

 

唯一配備場所に居る私達で突入する、マダムからはある程度現場の判断に任せるとスクワッドからお達しが来た。

建物の隙間を抜けてセーフハウスへと侵入していく、途中の見張りは気絶させておいても良いだろう、どうせ正義実現委員会は動かない、いや…『動けない』。

 

 

「指揮官、やはり既に侵入の形跡が」

 

 

痕跡の報告を受け取りながら扉をぶち破る、爆破で中を牽制しながら部隊と共に突入した、ここまで早く行動したのならば……きっと…

 

 

「全面展開!!中に居る奴を逃がすな!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

煙が晴れるまで照準を構え続け、その時を待ち続けた。

 

 

「……な!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……な!?」

 

 

「なんで…!?」

 

 

「…白州…アズサァ!!裏切ったな!?」

 

 

「幾らなんでも、()()()()…!!」

 

 

相対し、互いに発生した感情は共に『驚愕』。予想はしていたものの、ナギサが居ないのはともかく、『スパイ』が裏切っていたアリウス側と、事前に聞かされたアリウスの計画の開始時間より早すぎる遭遇に困惑を隠せないアズサ、ハナコ。

 

 

そして、考えていた事態と真反対の言葉を叫ばれる。

 

 

「貴様ら!桐藤ナギサを何処へ隠した!!」

 

 

「……!?」

 

 

「なッ!?……??」

 

 

ハナコもアズサも、裏切りに気づかれてアズサに知らされず計画を行い、『アリウス側』が桐藤ナギサを奪取したと思っていた。即座に先生と探索を行うつもりだったが……。

 

 

「…言うつもりは無い、と……白州アズサ、分かっていないのか?アリウスでの裏切り者はどうなるか……」

 

 

「……い、いや、分かっている…分かった上で、私達は…テスト、受けなきゃいけないから」

 

 

「何を!巫山戯た事を!!!この計画がーー」

 

 

両者の困惑は妥当なものだった、何しろ指揮官はアズサ達に計画の根本を奪われたと思っている上に、こうして目の前に姿を表しているという事は、既にアズサ達、先生にこの戦況を支配されていると思い込んでいる。逆にその心情を一切理解出来ていないアズサ側も、現状をアリウス側に手玉に取られていると思っていた。

 

 

妨害の事もあり、引き金を引くよりも先に言葉が飛び出てしまった指揮官の隙を見逃さず、ハナコが懐から投擲物を取り出す。

 

 

「アズサちゃん!耳を!伏せて!!」

 

 

「っ!分かった!」

 

 

空中に埴輪の形をした何かが複数投げられ、次の瞬間

 

 

ーー炸裂。

 

 

激しい爆破と、眩い閃光、そして爆音。ガスマスクに取り付けられた遮光グラスによってフラッシュを喰らうとは想定していなかったアリウス生徒に爆破が襲いかかり、大きく隙を晒してしまう。

 

 

「ぐアッ!?く、クソ!撃て!掃射しろ!巻き込んでいい!」

 

 

光に目を焼かれ、音も聞こえなくなったせいでハンドサインも声掛けも意味が無かったのだが、銃のトリガーに指を掛け部屋を打ち壊していく、が……視界が元に戻った頃には、敵の見る影も無かった。

 

 

「クソがッ!IEDか!!アズサめ、余計な入れ知恵を…!《全部隊に通達!!スパイが裏切った!仲間にピンク髪、目視身長160cm!手練だ、複数の部隊で囲んで潰せ!!》」

 

 

《必ず桐藤ナギサの居場所を吐かせろ!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《状況把握、迎えを寄越す》

 

 

 

 

 

 

 

無線機を握りつぶさんとする程に力を込めて、目頭を抑える。

 

 

()()!」

 

 

“分かった!”

 

 

即刻クラフトチェンバーで制作した弾薬と投擲系の火力武器を渡される、この合宿場に張り巡らされたトラップも、起動の権限は先生が全て握って貰った、不測の事態に備えてだったが功を奏した様だ。それに各地のトラップが起動すれば各々の端末に通知が来る様にもして貰った。

 

 

…にしても、途端にわけの分からない状況になったな…元々の最初に動員されるアリウスの部隊数もだいぶ増えてるのか?先生のタブレット、私達の携帯の通知も凄まじい数になってる。

 

 

「計画は失敗!二人は逃げている最中っす、アズサちゃんは敵を引き付けにハナコとは分散、ハナコも直ぐにはここに来れないから私とコハルちゃんで迎えに行くっすよ!」

 

 

「なになになに!?どうしちゃったの!?」

 

 

「ナギちゃんが居なくなった!しかもハナコの推測ではアリウス側も事態を把握していないっぽい、事前に用意しておいたトラップが効果を無くす前に二人と合流したい、行けますか?コハルちゃん!」

 

 

「…っ!はい!」

 

 

持ち直したコハルの力強い返事を受け取って、ヒフミにも予定を伝えておく。

 

 

「ヒフミちゃんは先生と体育館待機、ここから動くよりもトラップで要塞化したここに居座る方が安全っす、先生…ヒフミちゃんを任せるっすよ?」

 

 

普通、身体能力も強度も、銃も全然扱えない先生は守られる側、誰かに託す側だが……。

 

 

“任せて”

 

 

先生は、強い人だから。

 

 

視界に皆の現在位置が表示される、アロナの支援だ。

 

 

「…さぁ、善は急げ、行くっすよコハルちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かれ構わず、人助けをする。

 

 

悪い子も、良い子も、困っているなら手を差し伸べる。

 

 

暴力には暴力で、対話には対話で、解決法を探して、その人が『救われる』まで手を伸ばす、行先が地獄であろうと。

 

 

正義は

 

 

荒野に生き、死んでいく道すら見失って、飢えて渇き、満たされる事は無い。その名を口にする事が許されないから。

 

 

正義(ヒーロー)

 

 

救う者、救われる者、その名を口にし報われる。生を、正を、死を渇望を飢えを乾きを満たし、導く者の事。

 

 

正義(■■)

 

 

在るだけの者、拠り所になる者、変わらぬ者、疑わぬ者、楽園となり、地獄となり、安寧を、安らぎを、赦される場所。

 

 

そしてあれは正義では無かった。

 

 

『気分で』

 

 

『助けたかったから』

 

 

『適当に』

 

 

けれど、温かかった。

 

 

別にヒーローでも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ーー報告は以上、追撃に戻る》

 

 

報告を受け取って、通信機の電源を切ってベッドに飛び込む。

 

 

「……ほら、すぐ話さないから、先生の事はみんなが信じてるのに」

 

 

「襲われたって、先生が話して、私を諦めれば、こんな事態にならなかったのにね」

 

 

トリニティの部屋の一角で、ベッドに横たわりながらボソボソと呟く。

 

 

何故かは分からなかったけれど、あの襲撃の事は結局誰にも知られず終息した、私の命令を無視して発砲した子を呼び出したけど……どうせあれもスケープゴート、苛立ちの発散にすら意味をなさない、だからもう帰ってもらった。

 

 

あの日から悪夢が途絶えない、視界に覆い尽くされる紅が……真っ赤に咲いた花が、ずっと出てくる。先生だけじゃない、私の大切なみんなに……その紅い花が咲いた夢を。

 

 

「…私、馬鹿だからさ」

 

 

「よく分かんなかったけど、やっぱり……利用されてるってのはとっくに分かってた…」

 

 

「だからね、一人じゃ無理だって……ね?ナギちゃん」

 

 

「…はい」

 

 

私一人じゃ、何も出来ないから……私が出来るのは人から奪うだけ、幸せも、夢も、人生も。私の目的はゲヘナを潰す事、それで良い、エデン条約の締結後は新しく武力集団の核になったアリウスと共にゲヘナを討ち滅ぼして、終わり。

 

 

ナギちゃんはずっと泣きそうな顔をしながらあれ以来私に付き添ってる、彼女はもう自分で考える事を諦めてしまった。無事にエデン条約が締結されて、ヒフミちゃんや……トリニティの皆が無事ならそれでいいと、私に力を貸してくれてる。

 

 

「……ナギちゃんは、本当に凄いね、先生を手玉に取れるなんて」

 

 

「いえ、恐らく計画したのは先生では無いでしょう……こうやって襲撃の計画を即座に立てれるのは、長らく『こうしたかった』人……ハナコさん、でしょうか」

 

 

「補習授業部の必須条件は、テストを受ける事、アリウスの計画を防ぐ事、アリウスに関してはミカさんが…その、私を襲撃する計画を事前に知り、それを防ぐ為に暗躍していたと聞かされた時は驚かされましたが、ここまで『しなければいけない事』を絞れるなら、予測も立てやすいですね」

 

 

闇が晴れれば、ナギちゃんはトリニティでも有数の策略家だ、浦和ハナコや先生には劣るとはいえ、現状を私が操作出来るのであれば、その実力は引けを取らなかった。

 

 

「『二重スパイ』…白州アズサを使って、アリウスの計画を破壊し、逆に裏切られた事を口実にアリウス分校のある程度の実権を握って私兵を作り出す……いつの間にミカさんがそんなに賢くなったのは疑問でしたが……」

 

 

「言ったじゃん、ナギちゃんの為に、ナギちゃんを助けたい為にとっても頑張ったってさ」

 

 

「……そう、でしたね」

 

 

「その上で、先生と…補習授業部は、必要な……犠牲に」

 

 

揺れ動く瞳を抑えて、こちらを向かせる。

 

 

「ち・が・う・よ?ナギちゃん、私言ったでしょ?犠牲になるのは、裏切り者の白州アズサだけ、補習授業部のみんなが調査委員会に捕まっても、ナギちゃんの大好きなヒフミちゃんや………コハルちゃん、デミちゃん、ハナコちゃん、先生は元に戻る、追求する証拠は私が消すからさ」

 

 

「私はナギちゃんの望みを叶えたいだけ、みんなを救いたかったナギちゃんの、その希望を叶えたいんだ、トリニティの…みんなの不安を取り除いて、元のトリニティに……ね?」

 

 

「……っ、は…い、分かって、います」

 

 

私だけを見せれば良い、ナギサの目に私だけが映れば良い、貴方の為に生きている私がそこに在れば良い、彼女にとっての正しさに、正解になればもう動けなくなってしまうのだから、甘い毒に犯されて…指一本すら。

 

 

「さっ、行こうか…ナギちゃん」

 

 

手を取らせる、私からは動かない、癖になってしまった『させる』事を今もまた強制させる。意思は私が動かしているのに、動かさなければいけないその手はナギちゃんに握らせている。

 

 

意思を折る、心を堕落させる。

 

 

檻の中で育ち続けた小鳥は、飛び方を忘れてしまうと何処かで聞いた事がある。

 

 

空を見た事の無い鳥は、飛び方を知らないという。

 

 

『それじゃ、ミカ様ちゃんが教えてあげたら良いよ』

 

 

『代わりにね』

 

 

『優しいからさ』

 

 

手を引き上げられ、部屋から出ようとしていた時に、ベッドに誰か座って…そう話しかけて…

 

 

「うるさい」

 

 

「ひっ…」

 

 

「…あぁ、ごめんねナギちゃん、ナギちゃんに言った訳じゃないから…ほら行こ?」

 

 

ビクビクと怯えながら私の手を離さないナギちゃんと共に、白州アズサと浦和ハナコが逃げ入った場所へと向かおうとする。

 

 

「そうだね、黒幕登場…って所かな?正義のね!」

 

 

『正義のヒーロー登場!』

 

 

また、部屋を出ようとした時に後ろから声が聞こえた。

 

 

「…うるさいなぁ」

 

 

伽藍堂に、声が届いた。

 

 

 

 

 




窓の無い迷路

小さく咲いた花

残月に背を向けて

世界を知らずに

ゆら、ゆらゆらり、揺らめいて

彷徨う、淡い肩

垂らして

きら、きらきらり、煌めいて

枯れた希望を辿りながら

芽吹く黎明を待つね






                 
ノノ"パチパチパチパチパチパチ!!!!!



(スタンディングオベーション)(感極まり過ぎて止まらない涙)(尊死)



陽ひらいた彼女達に万雷の喝采を。
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