「飛べたァァァーーーー!?!?」
「確証無しにやったんですかあぁぁぁーーー!?」
……いや、これ、飛んだというより、跳んでるだけだから…。
「落ちるぅぅわぁぁぁ!?!」
「当たり前じゃないですか!!」
ワタシ…オウチ……カエル……
満月を背景に、シルエットとなって……。
「……はっ!現実逃避してる場合じゃ無かった!!もう一発だァァ!!」
「も、もう一発!?」
「これは助走っすよハナコちゃん!!
「そういえばこういう人でしたね!!」
■
《突入ーー!!》
“補習授業部、行こうか”
予定通り体育館へと籠り、トラップをかいくぐってきたアリウス生徒達と対面する。
“…聖徒は居ない、か…”
本来であるならば、あれは無尽の軍勢。戦力差という概念を根本から破壊する不滅の軍隊だ、しかし破壊されてから追加が来ないのならば幾らでも対応は出来る。マエストロの複製はどこまで行っても教義が付かなければ物質の複製以上は起こりえない。
頭に、あの木人形を思い浮かべる。己の理論の限界に立って尚、作品を作り続け『崇高』に近づく……物体に拠るしか無かった彼の、崇高という概念に対しての研究心は…いや、芸術心というべきだろうか?ゲマトリアの中でも群を抜いていた、誇りもだ。それを私は知っている。
“やっぱり教義通りに作成されたものでは無いね、創れただけ……”
「先生ぇ!?指揮止めないでぇ!」
“ごめん!”
現状、体育館の前線はコハルとアズサだけで食い止めている、ヒフミはというと……。
「先生ーー!沢山来てます!」
“沢山!?全部起動しちゃって!!”
「はい!」
天井に出て、ロケランやグレポンの迎撃をしてもらっている。外側から体育館を破壊されては元も子も無いので、急遽作り出した対空フレアでなんとか凌いでいる状況だ。
“………”
ギリッ…と、心の中で歯噛みする、理解はしていた事だが………。
じわりと血が滲む、先生の胸周辺から赤い色が広がって玉のような汗が湧き出てくる。
(“…また開いたか”)
アズサや皆に持たせたあの紐は、私のカードの破片を混ぜ込んで作ったものだ、あの針で削れた一部分を紐に混ぜ、一回限り…しかも超短時間ではあるが、『大人のカード』と同じ効力を発揮する。
但しタダで効果は発揮しない、無論その代償は先生が支払う。
“アカネ……ありがとう…”
一瞬ふらつきかけた足を、大きく、強く踏み込む。アロナに頼み、クラフトチェンバーから対空フレアの転移を頼んでおく。
袖で汗を拭い、指揮を続ける。最低限…いや…!私にやれる事を尽くせ、まだハナコとデミの安否確認は出来ていない、移動しているのは分かるが途中で信号をロストしてしまった。どのような動作をすればそうなるのか分からないが故に、心配で仕方が無い。
「先生、このままだと電力が……それに…」
“構わない”
「……わ、かりました!アロナ頑張ります!」
“ありがとうアロナ”
どんな時でも、情けない先生の姿を生徒の前で見せる訳にはいかないから。多少処理スペックが落ちてはいるが、■■■■をフル作動させる為にあの注射器を取り出した、私のミスだ……彼女達には隠している事が多い、申し訳無い限りだが…それが託された私の……
「ーーーーわぁぁーー」
“ん?”
「うわぁぁぁぁ!?!?!?!」
ズドォォォォォォン!!!
《な、何だ!?》
今尚突撃してくるアリウス学徒達に、空から降ってきた何かが窓を突破って直撃する。
「なになになにーー!?!?」
「為せば成っちゃった……カイザー、ありがとう…」
「ケホッ…ケホッ…む、無茶苦茶ですが…これも、青春っぽい……ような…」
“っ〜!!デミ!ハナコ!”
「ただいまっす!先生!」
■
補習授業部が全員集合し立て籠って二十分程度、一向に到着しない正義実現委員会に違和感を抱き始めた。そして一方、アズサを取り逃したアリウスの指揮官側は、部隊全員が緊迫した雰囲気が漂っていた。
「……」
「………」
重い鉛の様な空気が漂う、その原因は勿論補習授業部だ。
逃げる事に関しては白州アズサとその仲間共に手練で、このまま逃げ切られるかと冷や汗をかかされたが、体育館に入ってからは逃げ道を自ら潰したバカ共だと侮っていた。
「あ、あの…指揮官」
「なんだ!!」
語気を強める、どうしようもなく腹が立つのだ。侮っていたとしてもこをな結果になるとは思ってもいなかった、たった五人……五人だぞ!?
「その…斥候兵、先発小隊全滅……火器類の四割消失、現在ここへ向かってきている中隊規模の軍を投入したとして……」
「黙れ……」
「は、はい!!」
補佐に対して低く唸るような声が響く、指揮官が場を乱す事があってはいけないのだが、つい口調が荒くなり一旦落ち着いて思慮にふけった。このままではただひたすらに兵力を浪費するだけ。
(……相手も消耗はしている、たった六人でここまで被害を出された時点で本来ならば負けだ、しかし逆に言うならば…ここまでの化け物達をここで潰せるのは得策とも言える)
「……《スクワッド》」
《なんだ》
「《マダムからは……》」
《確実に潰せ、幾ら被害を出してもいい》
ぶっきらぼうに言い放たれたその言葉には、マダムとスクワッド達の興味関心の無さが聞けて取れるが……。
「……了解」
(よし…よしよし!本作戦に動員される軍兵は、六百超…アリウス学園の大多数、第一第二中隊全員の総力戦、その人数差で一気に突破する…!入口からの侵入は一度に大体二十人が限度か?ならば…!)
このイライラと、損失に解消の兆しが見えるなら……それでいい。
「《全部隊に告ぐ!!全兵装を用いてこの別館を更地にーー》」
ニヤニヤと気持ちが昂る、あの裏切り者も、あの痴女も、ずっと小馬鹿にしながら逃げ続けていた黒髪も……この状況を作り出した先生とやらも纏めて……!!
グシャッ……
「ーーする必要はないよ?」
指揮官のガスマスクが、握りつぶされた。
「な、ななッなんだ!?」
「今から〜…貴方達アリウスには、私の指揮下に入って貰うからね☆」
「ーーーみ…その、ミカ…」
「親玉到着、って所かな?」
■
「……先生」
“あぁ…”
敵側の攻勢が止むと共に、話す余裕が出来たので天井にいたヒフミにも降りてきてもらった、かれこれアリウス生を撃滅し続けて数十分……。
「部隊数が多すぎる、既に本隊が到着して逐次投入していたとしか考えられない、悪手だったね」
「先生の指揮が、というのもありますが……本当に私達だけであの攻撃を凌ぎきれたのは幸運でした」
“けれど、問題はーー”
「先生ぇ……」
ヘニョヘニョとして疲れきった様子でコハルが先生にすり着いていく、そのままぴょんっと携帯の画面を先生に見せつけて不安そうに呻く。
「ハスミ先輩から返信が……」
“…正義実現委員会の音沙汰が、無い”
ここまでの騒動、本来であるならばナギサのセーフティーハウスでの銃撃音や爆発音、ここでのロケラン等、報告が入る筈…なのにも関わらず、一切の動きを見せない。
“デミ、そっちは?”
「こっちもこっちで何も返信無いっすね、というか有り得ないっす……こんな事態になって来ないっていうのはーー」
「正義実現委員会は、ここにいるよ?先生」
カツン……カツン…と、ヒールの音が鳴り響く。無言、無音になった体育館に、この場の誰でもない声が響いた。
「少し、お話しよっか、先生」
“ミカ……!”
「……あはっ」
■
「一通りの説明を始めよっか!えっと…黒幕は私!敵は貴方達、『トリニティ』の敵、以上」
聖園ミカの登場と共に、ゾロゾロとアリウス学徒達が体育館に入り込み包囲を始めるが、補習授業部誰一人として動けなかった、それは…『威圧感』。
聖園ミカが放つ圧倒的な重圧、そこに居るだけで具現化されている様な鋭い殺意の塊に誰もが身を固めていた。
「みんな、入ってきて〜」
そうしてまたゾロゾロと人が体育館に入ってくる。それを見た全員の目が開かれ、驚愕に染まった。
「……え?……なんで!?」
ミカの掛け声で、アリウスとは別の……赤色と黒色を基調とした制服を身に纏う正義実現委員会が……アリウスと共に補習授業部を取り囲んだ、が……。
「……ミカ様ッ!どうなってるんすか!?敵が体育館に立て籠ったと報告を受けてッ!!」
イチカが叫ぶ、到着して目に入ったのが親しい同僚と、可愛い後輩……そして、先生。
「ん〜?だからさぁ、いるじゃん…敵」
「何処に!」
「わからないかな〜……敵は先生と補習授業部、その一同だよ?」
「……なっ」
ギリッ…と歯を噛み締めて、ミカを睨みつける事しか出来なかった。今ここに剣先ツルギは居なかったが、それでも副部長とイチカ、正義実現委員会のメンバーを相手にするならば、補習授業部の勝率はゼロ。
桐藤ナギサからの要請でここに来たが故に、反すればこれから先、トリニティに居れるかどうかはわからない。
ミカは再び視線を補習授業部へと戻し、ニコっと笑いながら話し始める。
「……コハルちゃん、デミちゃん、えーっと…確か腑抜けの浦和ハナコちゃんと…ナギちゃんが大好きなヒフミちゃん!」
「それと、白州アズサ」
「先生、借りてくね?」
「ッ…!」
眼光がアズサに注がれる、一生徒から放たれていい筈の無い圧が、見えない手となって押さえつけるように、アズサの息を締めていく。
“ミカ”
「……あはは、ごめんごめん」
“………”
スっ…と先生がミカに腰を低くして、手を差し伸べられる、この状況でその行動をする意図が掴めず思わず皆、困惑してしまった。
「ど、どうしたの?先生、今更……」
“違うさ、これはミカが選んだんだろう?”
「…うん」
“なら、エスコート”
「…………え?」
“エスコートだよ、ミカ……私の大事な
ジリジリと、ミカの目が揺れる。
「……あは、先生ってやっぱり、おかしいんだね」
「はぁ〜…今更っすよ、ミカ様ちゃん」
誰も口を挟めなかった二人の間に、お気楽な声が挟まった。
“キザっぽく無かった?キザっぽいよね?大丈夫かな今の……”
「そこ気にするんすか!?いや、あんな事して今更の今更っすよ?バカなんすか、キザとかそういう領域じゃ無いっすよ」
「…あのね、先生、デミちゃん……私、結構大切な話を始めようとしてた時なんだけど」
「ミカ様ちゃんは……その、色々と重いんすよねぇ…私みたいにチャラける人居ないと今すぐにでもみんなを殺しちゃいそうじゃないっすか」
「おもっ……はぁ、もういい、そういえば貴方はそんな人だったね」
伸ばされた先生の手を優しく掴んで、体育館の外へ連れ出していく。
連れ出される瞬間に、先生と……正義実現委員会のメンバー、その一人、羽川ハスミと一瞬視線を合わせ、両者無言のコミュニケーションを取っていた。
「後は好きにして、目標は敵の撃滅、それ以外は無いから……よろしくね?正義実現委員会」
「アリウスも、私の命令は越権しないでね?裏切り者の処分は任せるけど……必要以上の攻撃は無駄、貴方達が弱いから費用も沢山使わされちゃったし」
ミカの手には、ぐちゃぐちゃのゴミの塊の様になったガスマスクが握られていて、アリウス側に投げ捨てられた。
「それじゃ、バイバイ、補習授業部」
暴風の様な圧力に、誰も、今度こそ誰も彼もが言葉を挟めなかった。
■
月下、照らされる月明かりが注がれるのはたった二人だけ。
合宿場のプールに、再び腰掛ける。藻が張って緑色に濁ったプールにも関わらず、そこに足をつけた。
虫の死骸が、漂っている。
ちゃぷちゃぷと響く音に、夜空は応えない。
「……先生、先生はさ、どうしてあの事を言わなかったの?私に襲われたって」
“襲われてなんかいないよ”
「…撃ったじゃん、先生の事、あの時死にかけたよね」
あれは致命傷だ、誰がどう見ても。あの時点で私も人殺し……元々だったけどね。
“君が撃った訳でも、ミカのせいでも無いからね”
じゃあ、誰のせい?こんな事になったのは……私だ、私がバカだからだ。
「…撃ったんだよ!先生の事!!私が、私が先生をあそこに呼んで、それで………だから、私のせい」
“…それでも、一番最初に倒れた私を支えてくれたのは、ミカだ”
“あの時の優しさも、暖かさも、別に嘘だって訳じゃない”
「…………は、はは、あはは!それって私が生徒だから?嘘じゃないって?そんな訳無いじゃん!さっき先生は、それが私の選んだ道だって言ったよね?私、私なんだ!分かってる?先生、私は魔女なんだよ?」
ミカの叫びを真正面から受け止めて、だからこそ、この現状を紐解かなければいけない。
“……ナギサがセーフティーハウスに居なかった理由、アリウスの行動が早すぎた理由、ミカが私だけを連れ出した理由、今なら分かる”
“アリウスの手網を、握りきれていないんだね?”
「…………違う」
「違うよ、何言ってるの?先生、私はアリウスをトリニティの新しい武力集団として……ホストのナギちゃんの了承、正義実現委員会の動員、私との契約を破ったから、仮とはいえアリウスはトリニティの手足となる、そうしたらゲヘナとの全面戦争を始めるだけ」
“ナギサがセーフティーハウスに居なかった理由は?”
「あはっ……ナギちゃんはおっちょこちょいだからさ、どっか別の場所にでも居たんじゃ………」
“いや、ナギサは君の手の中にある”
「……」
“セイアの様に、私の様に、もう誰も傷つけたくない君は『選ばされてる』し、『歩まされてる』、けれど君は……その中でもがき、努力し、こんな状況になっても尚諦めていない”
彼女は……優しい子だ、優しくて不器用で、でも……前に進める子。
“ナギサをアリウスの手に落としたくなかったんだろう?殺されてしまうかもしれないから、補習授業部の皆を死なせたくなかったんだろう?その為にアリウスに『正義実現委員会』という監視を付けた、補習授業部の制圧と称して”
思えば、ハナコからの報告でシスターフッドが動けないと分かった以上、彼女達からすればアリウス学徒だけで私達に勝てる程の戦力はあった、勿論備えはしていたが……わざわざ、反発されていたのにも関わらず正義実現委員会を引っ張り出す必要はあったのか?
否、後の事を考えれば考える程、ここでの不和は響く。それでも尚正義実現委員会を動かしたかった理由は、アリウスを自由にさせない為だ、彼女達の監視があれば、正義実現委員会との戦力差がそこまで無いアリウスはそうそう動けない。
つまり、補習授業部の命を護るためだ。
恐らくナギサが居なかった事と、アリウスの作戦開始時間がアズサに伝えられていたよりも早かったのは、アズサにアリウスからも、トリニティからもナギサ誘拐の疑惑、スケープゴートになってもらうから。その上でナギサを自身の手元、絶対安全な場所…………。
“というより、もうここに居るかな……出ておいで、大丈夫だから”
「……先生」
後ろから、私の名を呼ぶ声が聞こえる。ミカにとって絶対安全な場所とは、私だ。
ミカは、私を信用し、信頼した。絶対に生徒を死なせないと、故にナギサを自分自身と私で守れる場所……今ならここだ、ここに呼んでいたのだろう。
“やぁ、ナギサ”
「わた、私は…その……」
「ナギちゃん、大丈夫」
そのセリフが彼女の優しさの表れだ、皆の命を守る為に足掻き続けているのだ、魔女という肩書きを背負って、誰からも恨まれて、それでいてもう二度と戻れない道を選んで、そしてもう二度と過ちを繰り返さない為に。
“……本当に、敵わないね…”
君たちの真摯で純粋なその心に、私は報いる事が出来るのだろうか。
“ミカ、それでも私は君の味方だ”
「誰の味方でもあるんでしょ?」
“だから君の味方でもある、ミカが背負っている責任は、君が背負うべきものでは無い”
「私の選択、私が選んだ道、それの責任は私が取るべきだよ」
“…………”
責任を、背負うもの……か。
私は、託された想いに応えられているのだろうか、生きていたいと思える時間は、きっと幸せなのだろうから、死んだまま歩き続けちゃ駄目だ。
肯定しなければならない、幸せを、生きることを、明日を望む事を、世界が救われる事を。
理不尽に奪われるのならば、理不尽に助ける存在が居てもいい、苦痛に満ちた人生ならば、幸せに満ちる事だって許されている、彼女達の世界が…………彼女…達……の…。
『子どもの「世界」が、苦しみで溢れているのなら……
子どもが、絶望と悲しみの淵でその生を終わらせたいと願うのならーー』
「……ッ!?先生!??」
先生が膝をついて盛大に血を吐き出す、驚いたミカはプールから足を上げて駆け寄ろうとするのを、片手で静止させ、立ち上がる。
『そんな願いが、この世界のどこかにまだ存在するというのならーー
それはーー
その「世界」の責任者のせいであって、子どもが抱えるものじゃないーー』
“ミ…カ、ゲホッ……責任は、罪に対する罰じゃ無いよ……『責任を負う』というのは……”
胸の痛みが増す、滲む血の量が増えていく。頭痛が止まず、裂けるような痛みに襲われる。
『世界の「責任を負う者」が抱えるものだよ。
たとえ罪を犯したとしても、赦されないことをしたとしてもーー
生徒が責任を負う世界なんて、あってはならないんだよ。
いつ、いかなる時であってもーー』
“自分の行動に、後悔を持たない事、君が『背負わされた』ものは、私達、大人が背負うべき責任だ、私が言った君の選択は……皆を守ろうとしていた事”
「……だから!私は人殺しで…っあ……ちが、ナギちゃん…」
人殺しの単語に、ビクッとナギサが反応してしまう。嘘をついていたからこそ保たれたこの関係性、先生との話し合いはこれ以上進めては……。
“……違うさ、大人として、先生として今の君を否定しよう、それは『ミカ』じゃない、聖園ミカの事は、皆が知っているさ……優しい子だって”
「違うッ!!」
“魔女なんかじゃない、立派な私の生徒だ……ゲホッ…だから、何度でも言うよ、それは君が背負うべき責任じゃない、それは……”
“【子どもと共に生きていく大人が背負うべき事だからね】”
肯定して欲しいんだ、この世界に産まれた事を。
幸せになって欲しいんだ、この世界に生きることで。
救われて欲しいんだ、明日を望める様に、希望を持てるように。
願った、望んだ、行った、託した、託された、私は託された側だ。数多の奇跡に、数多の運命に、数多の
そして、
【“だから…生徒たちを……よろしくお願いします”】【“私の生徒達を宜しくお願いします”】【“あの子達を……頼みます”】【“私の責任、だからこそ……よろしくお願いします”】【“頼みました”】
数多に、託された、託されて、受け取った。多くに背中を押された、立ち上がれと喝を入れてくれた、立ち上がって走った。託されたものを……少しでも救えるように、叶えられる様に。
ここは、失われた廃棄口の底、終わらず、叶わず、消え去った全ての奇跡が集う場所。
『先生』
『何時か、私を』
『殺してください』
『っす、ってつけるの忘れてましたね!ふふっw』
『“うん、絶対に迎えに行くから、待ってて”』
それが、全てだ。