あれから少し談笑を挟み、対策委員会の腹に隠してある事情、借金についても話し合う場面となった。
大方の事情は知っている、と先程先生が述べたように、アビドスの現状その殆どを理解している先生から放たれるのは、『対策委員会』そのものをシャーレを通して連邦生徒会子飼いとする事で災害支援金という名目でアビドスの借金の返済を効率化する。と言ったものであった。
しかし、燻っているものが一人、いや二人いる内、黒見セリカが声を荒らげる。
「私は、私は認めないわよ!どれだけ優しく語りかけてきても私達が今まで頑張ってきた所に貴方みたいな部外者が急に割り込んできて…!」
“そうだね……済まない、私はどこまでいっても君たちの苦しみは味合わずに後からノソノソ君たちの領域に踏み込む『悪い大人だ』”
「そ、そこまで言ってるわけじゃないわよ!だけど……だけど…!」
そこまで話して口ごもってしまうセリカ。
「セリカちゃん、そこは踏みとどまらずに言っちゃって良いよ」
そこに合いの手が入り、意を決した様に口を開く。
「ホシノ先輩……うん、私、納得いかない!!今まで私達の学校がどうなろうと見向きもしなかった大人に、学校を預けられる訳無いじゃない!!」
“……うん”
噛み締める様に先生は相槌を打つ。
「ごめんね?先生、幾ら先生が私達を助けようと甘くて素敵な話をしてくれても、おじさん達は先生……大人達に対して絶対の信頼が持てないんだ」
「それに………先生がもし本当に『悪い大人』だった時、それこそ今この場で話してた案、災害支援金をパッ!と打ち切られて……」
「そのお金に頼ってしまったおじさん達は、継続させる為に先生のお願いを沢山聞かなきゃいけなくなる…とか?」
「『本当は対策委員会をアビドスから切り離す事が目的』だったとか、まぁこんな砂だらけな場所にどんな用があるのかは分からないけど……とりあえず私達には先生達、連邦生徒会の権力に立ち向かう事が出来ない。一方的に振り回されるのがオチかもしれないからね」
ホシノの口から紡がれる最悪のケース、普段の言動とは全く異なる聡明さに対策委員会の皆々の目が丸くなる。
「ホシノ先輩って真面目な事話せたのね…!?」
「普段の姿との差がスゴすぎます…」
「うへ〜セリカちゃんもアヤネちゃんも酷いよ〜……で、先生、貴方は一体どうやって私達を『納得』させてくれるのかな〜?」
目に見えない重圧……いや、可視化しているのでは無いかという程に重い視線から先生は一瞬足りとも目を離さず話す。
“そうだね……まずは、君たちの『信頼』を頑張って得てみようかな”
“生徒が先生を頼る第一歩、頼りになる……信頼できる大人なんだって背中をね”
「ふ〜ん?」
“未だにアビドスに攻め込み続けているカタカタヘルメット団、その問題をまずは片付けようか”
「「!!」」「うへ、先生もしかして」
“うん、ホシノ、君が考えていることと同じだよ”
「うへ〜………………デミちゃん、先生ってもしかしてエスパーかなんかだったりするの?」
「私も知りたいっす」
マジで怖いなこの先生、もしかして私と同じパターンだったりするのかな…?いや、うーん……なんか『違う』って気がする。言葉には現せないけど。
“さっきの戦闘で今ヘルメット団は一番消耗している。このタイミングで、こっちから先に前哨基地を襲撃しよう”
「うへ、流石先生。本当に合ってるよ」
「今からですか…!?」
「というかホシノ先輩そんなことまで考えてたの!?ホシノ先輩が!?」
「補給うんぬんは先生が入れば問題無いからね〜……後セリカちゃん、おじさん本当に泣いちゃうよ?」
「ん、アイツらの前哨基地はここから30kmぐらい、今からいってすぐに潰そう」
「良いと思います!意表を突いた反撃、先生のサポート付きなら楽勝です☆」
“皆、準備はいい?”
「善は急げっ、てことだね」
「はい〜それでは」
“うん!対策委員会、レッツ”
「「「「「ゴー!」」」」」
(あれ……?もしかして私、ハブられとる…?)
“あ、30kmなんて走ったら私、本当に死んじゃうからさ。デミ、よろしくね?”
「顎で使われてる!!!」
■カタカタヘルメット団 アジト
「はぁ…!はぁ…!はぁ…!クソっ!!対策委員会の奴らめ…!」
二十人もの人数でアビドス学園を制圧しようとしたヘルメット団、たったの5人でそれを覆され、息も絶え絶えでアジトに帰還していた。
「たった、たった五人に…クソ!!!」
「おい、どうした?お前らには最新鋭の装備を渡しただろう?」
背後から声が聞こえ、末端であったヘルメット団の一人は驚いて後ずさる。
「か、幹部!申し訳ねえっす……だ、だけどアイツら異様に強くて!」
「あぁ、分かってる……もういい」
「へ?」
ガツン!!!
ドサッ……
「カイザーから新しい人員が届いた、飼っている軍で育てた兵士だとよ」
無機質、無表情でヘルメット団の部下を気絶させた数十名の真っ黒なヘルメットを被った者たち。
「適当に路地裏にでもほっぽりだせ」
「はい」
無機質な声がアジトに響く
「幹部!?ちょ、ちょっと待ってくだ…ぐぇっ!」
アビドス襲撃の指揮を取っていた五名が気絶させられる。
「はぁ〜ったく、下は無能、私は上から突っつかれる…ヤダヤダこんな生活は」
ため息を吐くと同時に叫び声が届いてくる。
「幹部!幹部!!アビドスの奴らが攻め込んできました!」
「はぁ!?!がーー!!クソが!全員武器を持て!返り討ちにすっぞ!」
「お前らもカイザーの兵士ならさっさと動け!行くぞ!」
「はい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「敵襲ー!てき…ぐがっ!!」
「あんまり叫ばない方がいいよ〜?舌噛んじゃうぞ?」
盾を巧みに使い肉薄し、伝令を伝えているヘルメット団の腹に愛銃『Eye of Horus』を押し付け複数回発射、気絶したヘルメット団を更に肉壁として向かい打とうとして遮蔽物に隠れている部下達に突進していく。
「う、撃ち方やめ!盾にされてるやつが死んじまうぞ!くそ、この外道…ボガァ!?」
「わあ、ブーメランってこういうことなんですね☆」
「アンタらが今までやってきた事のツケを払いにきたわ!覚悟しなさい!」
後ろから撃たれ察する、接近してきたアイツは囮で既に挟み撃ちの形になっているのだと。
「おい!今どうなって……対策委員会共!?う、撃て!全員諸共撃ぇ!!」
「はぁ!?おいちょっとまてよ!「知らん黙れ!」グガ!ウベベベベ…!クソが!」
味方諸共ガトリングで周囲を吹き飛ばす、遮蔽物も壁も全て砕く勢いで発射されていく。
「きゃあ!」「セリカちゃん!後ろに!」
ホシノが盾を構えながらカバーに入る。脇目を降らずに走っているせいで弾に被弾しているはずなのに1ミリも怯むことなくセリカの元にかけよる
「よし!当たってるぞ!おいあのはぐれた黒髪をや……「ぷげらっ!」なんだよもう!」
「ん、周りが見えてなさ過ぎる。それも囮、だよ」
「うへ、ナイスだよシロコちゃん」
本来この場に居ないはずのセリカを加えた強襲作戦、攻め込んだ情報を流してからの待ち伏せは先生が指揮したものだが、見事にハマり既にアジトは半壊滅状態だ。
「……暇っす、先生」
“ハハハ、じゃあ一人だと弱くて生徒達に着いていけない私の事、支えててくれないかい?”
「それはズルいですよ、も〜!」
感じる、先生が意図的に私を前線に出さないようにしているのを。なんとか反論して前に出たい、この人に絆されすぎると自分の大切な何かが崩れていく気がして……
「そのあのもにょもにょ…」
“ほら暴れない暴れない、デミの力で暴れられると私の身体直ぐに折れちゃうよ”
背後から抱きつかれて引き剥がせないのをいい事に、好き勝手に制御されている。というか距離感が近すぎ、アホばか知らんもう。
[御二方、戦場で…その…]
“ごめんね?こうでもしないとデミはすぐ突っ込んでいっちゃうから…あ、吸っていい?”
「殺します」
「うへ〜なんだかおじさん胸焼けがしてきたよ」
「奇遇ですねホシノ先輩、私も砂糖が口から出そうです☆」
“おかえり、皆。怪我は無いかい?囮として出てもらったから大事が無いといいけど”
「ホシノ先輩が守ってくれたお陰で私はなんともないわ、シロコ先輩は?」
「ん、私も特に」
対策委員の面々が集まり互いの無事を確認している最中、その間を割く様に銃撃が飛んでくる。
「っ!先生下がって!デミちゃん、先生宜しく!」
「了解!ほら先生一旦引くっすよ!」
“ぐぇぇ!デミ…!締まってる締まってる…!”
[敵影…見えません…!?こちらからだとソナーの反応が……]
「な、何!?どこにも姿が見えないんだけど…!」
「電磁パルスに光学迷彩?やってくれるねぇ〜おじさんちょっと頑張らなきゃいけないかな?」
[対策委員会だな、排除する]
何も無い空間から機械を通した声が聞こえてくる。
「そっちじゃ私達有名人なのかな?そこんとこ詳しく…身体に聞いてみよっか!!」
“ホシノ!!絶対にサポートする!突っ走れ!!”
「うへ、了解だよ!先生」
そう後ろから声が聞こえてくると同時に、視界が鮮明になっていく。『先生の相棒』とやらの力は凄まじく、電磁パルス光学迷彩なんのそのと敵の位置が強調表示され、そこに向かって突き進む。
数はたった五人、姿が見えないというアドバンテージを失った相手を仕留めるのにそう時間はかからない。筈だったが……。
「オラオラオラァ!!対策委員会共!自ら首を差し出しに来たかぁ!?」
赤いヘルメットが視界に入り、大量のグレネードが投げ込まれる。
炸裂ーー
ダメージにはならないが、元より速攻の姿勢だった為、隙を晒してしまう。
「おっとっと、危ない危な……」
ガゴォオオン!!
崩した体勢に更に強力な一撃を加えられるがノーダメージ。
しかし、一瞬、ほんの一瞬だがあの五人を視界から外してしまった、既に分かれられ対策委員のメンバーがそれぞれタイマンをしている状況になっている。目の前には五人の内二人と赤ヘルメットが構えていた。
「ハッハァ!三対一だが悪く思うなよ?」
[……勝てはしないが、貴様を足止めするだけで此方の目的は完了する]
「おい弱気な事言ってんじゃねぇ!」
「………」
「ハッ!黙っちまって、怖気付いたか?」
ため息を付く、さっさと皆の元にサポートへ向かいたい心を抑えて敵と向き合う。
「あのね…本当は聞きたいことが沢山あってさ〜その潤沢な武器だったり、君たちの事だったり…でも」
「おじさん、ちょっと傷ついた事があってね?」
「あん?なんだよ」
「高々お前らに、足止めを出来ると思われている事がね」
「なん……ぐおっ!?」
護る為の盾、その本来の役割を無視して面前の赤ヘルメットに投げつけ、未だ姿を現さない卑怯者たちにショットガンの銃底で殴り付ける。
確かに頭にクリーンヒットした感触を得てから、指を滑らせ殴り付けた姿勢のまま発砲。対岸に位置する透明野郎に当たった事を確認した後、そのままショットガン本体で殴り抑えている方にグーパンをくれてやる。
「は、おい曲芸師じゃねぇんだから」 ドゴン!!
軽口を叩く暇なくショットガンの銃撃が腹に刺さった。
「ぐぇぇ…!話ぐらいさせろ!」
「お話なら後で沢山しようね〜それじゃおやすみ」
そのまま銃撃を続け、意識を落とそうとする。
「ガ、ガハっ…馬鹿が、お前が想定してるよりこっちは新しい戦力揃えてんだ、二十人!その意味が分かるよな!ボヘッ…」
今、二十人と言ったか?いや別に戦う分には問題無いが……。
「………まさか、目的は先生?」
そう気づいた時に、視界から先生のサポートが外れたのは同時だった