ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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一つ前の話で、大切な場面で【お姫様】が【魔女】に誤字ってました、本当に申し訳ございません、見直した上でこれって、コイツホンマ……ってボコボコにしといて下さい。

そしてその誤字報告ありがとう…ございましたっっ!!助かりました!!


仮定、推測、結論

ーー強い。

 

 

 

いつぶりだろうか?こうやって地面を舐めるのは。

 

 

私は紛れもなく最強だって自覚があった、あのツルギって子やゲヘナで噂の空崎ヒナに比肩する自信もあった。私がなりふり構わず戦えば、守るものがあるあの子たちには絶対勝てる…そう思ってた、それも事実になっちゃったし。

 

 

だから顔も知らない名前も知らない、そんな子に土の味を覚えさせられるのは不愉快極まる。

 

 

「はァっ……はぁっ………はぁ」

 

 

「……どうしたの?もう終わり?」

 

 

精一杯の見栄を張って、息を整えなければ……先生が一番大きな変数だとは思ってた……けど、本当に全部覆されちゃった、本当に、先生は凄いね。

 

 

負けてたんだ、先生を計画の一部に組み込んだ時点で。

 

 

「おじさん、膝をついてる子に追撃する程がっついてないからさ、時間が無いっちゃ無いんだけど……先生も居るし」

 

 

「舐めないでもらいたいわね、便利屋の看板はそう安くないのよ」

 

 

ある程度は先生を盾にしながらコハルちゃんとヒフミちゃんを重点的に狙った、恐らくこの二人は先生が仕掛けた何かしらのもの……制限時間があるだろうから、この後も動き続けれる二人を落とせばそれで勝てたと思う。

 

 

けど、目の前の化け物がそうさせてくれない。

 

 

ピンク髪で水着姿の怪物、目の前に立って戦えば分かった……恐らく私より強い、赤髪のゲヘナも火力だけで言えばこの子よりも高い。

 

 

先生の指揮能力は把握済だった、だからいの一番に拘束をしたし、絶対に戦闘に参加させなかった、今だってそうだ……けれど、この二人…似ている、頭に叩き込んだ先生の戦術、完璧な連携、先生は指揮を取っていない筈だけど、その背後には先生の影が見え隠れしているのだ。

 

 

しかも明らかに何かしらのブーストが掛けられている、特に赤髪の方は…その身についた実力と火力の高さが見合っていない、どう考えても火力が高すぎ、ピンク髪の子を超える火力を出せるとは到底思わないし、逆にピンク髪の子はあまり攻勢に回らない、基本的に守備に専念しているのも不思議だ。

 

 

そして、あの子に動かれれば……負ける。

 

 

「私…結構強い自信あったんだけどなぁ、先生に言った通り」

 

 

“私も、『私の生徒は強い』って…とある大人に伝えているからね、私の生徒は、強いでしょ?”

 

 

「うん、とっても」

 

 

先生には人質の体をとって貰っているが、戦闘に巻き込まれない場所に遠ざけている、勿論人質なので射線を被せたりして立ち回っていたが……。

 

 

バンッ!!

 

 

「おっと」

 

 

膝立ちからノーモーションで放った弾丸を受け止められる、しかもコハルちゃん、ヒフミちゃんに向けた発砲をだ。

 

 

自分に狙いのついた弾丸を弾き落とす事はそう難しくない、私も出来る、けれど他人への狙った弾丸、それも二人分を弾き落とすのは神業と言って差し支えない。

 

 

「…守るのが、上手だね」

 

 

「守る事がおじさんの役目だからね」

 

 

(……見えなかった…この二人、ヒナと同じくらい怖いわ……)

 

 

発砲音が一つに聞こえる程の早撃ちを止められる、神秘による隕石の呼び出しは……何故か使えなくなっていた、あの黒い蛇、私の闘いを邪魔したあの蛇は起きたら消えていたが多分先生がなんとかしたのだろう、それのせいか神秘を使おうとすると不安定になって呼び出せない。

 

 

「でも、時間がもう無いんじゃない?手…消えかけてるよ?」

 

 

「………」

 

 

やっぱりあった制限時間、光を放ちながら手指が消えかけてる……これを耐えれば、私のーー

 

 

「私の……勝ち」

 

 

勝ち……?

 

 

「なんてね…☆」

 

 

もう、負けてるけど。

 

 

「え?これだけの時間しか先生に会えないの!?」

 

 

「ちょ、ちょっと、先生!聞いてないわよ!貴方に会えるって心の底から……」

 

 

…赤髪のゲヘナがギャーギャーと空気を読まない、腹が立つ。

 

 

“ごめん、アル”

 

 

「…財布」

 

 

“ん?”

 

 

「先生……財布、大切にしてるから、二つとも」

 

 

「便利屋の皆も、先生に逢いたいと思ってる……待ってるわ、先生」

 

 

“…ごめん、本当に”

 

 

「あぁもう!それ以上謝らないでいいわよ!」

 

 

「…うへぇ〜二人とも、TPOは守ろっか」

 

 

所構わずイチャつきだす二人を抑えて、ホシノが〆にかかる……言われた通り残された時間は少ない、自分だって先生に甘えたいけれど、それは今すべき事では無いから我慢をする、先生の為にここに来たんだから。

 

 

「……」

 

 

「きゃーー!?怖い顔して向かって来ないで!?ホ、ホシノちゃん!助けて!」

 

 

「社長ちゃんは相変わらずだねぇ……ッと!」

 

 

苛立ちで我を忘れ突撃する、これも普通の生徒にとっては防ぎようの無い致命的な攻撃だが……まさかの鯨の形をしたバルーンで受け流された、盾の様に使ってるソレの、使用用途から外れ過ぎた行動に脳が困惑に包まれる。

 

 

「うん、ミカちゃんの言う通り時間が無い……先生にも、時間は残されてない、だから……二人とも!」

 

 

「ミカちゃんを倒すのは君たち二人だよ」

 

 

叫んで指を指すのはコハルとヒフミの二人。

 

 

「わた、私!?」

 

 

「ええぇええ!?」

 

 

「大丈夫大丈夫、おじさん(先生)の言う通り動いたら良いだけだからさ、いくよ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獅子奮迅の如く動き回る四人を見ながら、胸を掻きむしる。

 

 

“……〜っふぅ…”

 

 

確実に命を蝕んで来ている闇は、既に右足を黒く染め上げている、だがこれを手放す訳にはいかない、これは鍵だ、これから向かう先に立ち入る為の唯一の鍵。

 

 

“…………”

 

 

どれだけの時間が残されているかは分からない、それに、この後がどうなるかも分からない。

 

 

『鍵』であるこの闇が身体を蝕み続ければ、死ぬ。

 

 

“それがどうした”

 

 

まだ、私は人質だ、彼女にとって人質でなくてはならない、故にここから移動するのは許されない。

 

 

彼女にとって、魔女の物語が終わるには、私が見ている必要がある、そして私は先生としてそれを見る義務がある。

 

 

だから、耐える、絶対に。

 

 

“…ははっ…まさかのまさかだったよ、セイア”

 

 

セイアの中で何が変わったのかは分からないが、彼女は既に踏み越えた後だった。

 

 

『最悪の未来』

 

 

それを全て識った後に、抗ったんだ。

 

 

闇による影響で、一瞬だが倒れてしまった時に夢でセイアと会遇した。

 

 

 

 

 

 

『先生』

 

 

“セイア!?”

 

 

『…やはり、彼女を起点に全ての時間軸での記憶が固定されたか、会うのは二度目だね、先生』

 

 

“……”

 

 

『流石の先生でも情報が足らな過ぎると見て、干渉させて貰った……いや、今の先生に足りないのは情報よりも答えかな、どれもこれも不確定の推測を決定づける根拠か、疑問に対する答えが必要だ』

 

 

『良いだろう、その為に私は来た……私が集めれる限り拾い上げ、形作った……そうだな、今回の事件の真相を一緒に語り合おうか、時間は十分にある』

 

 

『ここでどれだけの時間が流れようとも、現実では数秒たりとも動いていない、もう一つ先生に足りなかった時間も、私から提供しよう』

 

 

“ありがとう、セイア”

 

 

『なに、それよりも…ティーパーティーホストとして要求しようか、まずは茶を一杯…入れてくれるかな?先生」

 

 

“喜んで”

 

 

 

『漸く、この時が来たんだ』

 

 

 

『私も馬鹿だからね、決まった結果なんて嫌いなのさ』

 

 

 

それからの話し合いは、私の中に眠っていた疑問に答えを与えてくれた。

 

 

 

『大袈裟に言わないでくれ、前から先生はこの答えにたどり着いていたんだから』

 

 

…まず一つ、羽音デミとは?

 

 

羽音デミという存在、それは黒服の推測が正しければ、この世界の自浄機構、私が迎えてしまったあの終わりの様に、『終わった後』を看取る存在だ。

 

 

……それは私の死因、そして今の彼女との辻褄が合わなくなってしまう。

 

 

私は、託された者。

 

 

元々あった『私』という人間を上から塗りつぶし、その記憶と、生徒を託された。

 

 

託されたのは…『彼女』、名前も知らない子、けれども私の生徒だ。

 

 

その為に、受け取った。

 

 

先生として、あらゆる世界で『彼女』に滅ぼされた私達が、ある一人の先生に全てを託した結果が今の私。

 

 

『そう、君は状態として限りなく羽音デミと類似している、それが狙いだったのか、私には計り知れないが』

 

 

羽音デミとは、元ある人格を上から記憶で塗りつぶした存在。

 

 

破壊と殺戮衝動、この世界を壊す事だけを目標とした世界に操られるもの。

 

 

 

そして……羽音デミを、殺してしまった者。

 

 

 

『手遅れ』

 

 

 

頭によぎったその三文字を否定する、けれど解決方法が一向に分からない。私自身でさえ、『託された私』である以前を取り戻す方法なんて分からない……取り戻したいとは一向に思ってはいないが。

 

 

つまり不可逆にも彼女は羽音デミの人生を横取りしてしまった存在であり、彼女の苦悩、その苦しみの最たる要因は、『羽音デミ』という存在自体。

 

 

植え付けられた殺戮衝動と破壊衝動、彼女の人生を奪ってしまった罪悪感、そして罰として受け入れている苦しみを、本当は跳ね除けて生きていたいという自己顕示……。

 

 

最悪にも、彼女という存在は罰に対する苦しみさえ赦されず、報われる事も無く歩き続けている状態にある、日々の生活さえ苦しみに濡れて、あらゆる罰を罪悪感と共に飲み干す、自分自身として生きていたい欲求さえ枯らしてしまって、流れるのは血の涙だけだ。

 

 

“……セイア、君が見た未来で……デミは、世界を滅ぼしたの?”

 

 

『…あぁ恐らーー……』

 

 

“……セイア?”

 

 

『待て、待てよ?……先生、羽音デミは、滅びを迎えた後に、終局を迎え入れる存在だ……では何故…彼女自身が動いている?彼女が存在している事が、世界の終わりを逆説的に決定するものだとして、ならばその終わりを待っているだけで済む筈だ』

 

 

茶席を立って、ウロウロと考えを脳に行き渡らせるために歩き始めるセイア。

 

 

『……そもそも、彼処で出会った彼女は…………羽音デミなのか?』

 

 

行き詰まるが、少しばかりの進展が話し合いの中であった。

 

 

漏れ出た疑問として、彼女自身が動く理由が無い、絶対にそんな未来にさせないとはいえ、終わりが決定した世界で彼女自身が干渉する理由が無い…………?

 

 

そうか、理由が無いなら、動く理由を考えれば良いのか。

 

 

“……なる、ほど”

 

 

“つまり、私は…覆せたんだ”

 

 

『覆せた……?』

 

 

“世界の終わりを”

 

 

破滅が決定された世界で、未来では成し遂げたんだ。

 

 

セイアは世界の終わり、その単語を耳にして…狐耳をピーンと張り上げて何かに気づいた様子になる。

 

 

『…そうか!先生、君という存在が前提である世界の破滅を、乗り越えてしまったが故に、羽音デミの存在前提が狂ってしまったのか!!』

 

 

彼女の存在が、破滅した後を担当するが故に、パラドックスで世界の破滅が決定した、それなのに彼女が行動している理由は、その前提が無くなってしまえば……動くしかなくなる。

 

 

私という存在が、存在定義を打ち壊した。

 

 

仮定だが、私が未来…この世界に訪れる破滅を乗り越えてしまったとする、そうなると羽音デミは存在出来なくなってしまったと考えた方がいい、始まりと終わりは一本線に繋がっていて、未来も過去もバラバラの線ではなく…いうなれば運命ともいえる一本線として繋がっている。

 

 

故に、【前提】が無くなったそこでねじ曲がってしまった、彼女は最早滅びを自ら引き起こし、自らの手でキヴォトスを、世界を終わらせる、辻褄が合うようにそう修正されてしまった……だから殺戮衝動や彼女自身が干渉する様に、何かしらの世界からの矯正力によって壊されてしまったのだ。

 

 

それが彼女の正体、私の運命と絡みついて離れられなくなってしまった生徒。

 

 

あらゆる世界で、彼女が滅びを齎さなければ行けなかった理由は、私だ。

 

 

『先生』という存在が、彼女にとっての呪いだったんだ。

 

 

“……概念的な、キヴォトスの………”

 

 

ならば、どうすれば良いのか?

 

 

私に残っている記憶や知識は、そのまま現状を乗り越える力になる。

 

 

“……”

 

 

すまない、どうか、どうか今一度、力を貸してくれ。

 

 

 

 

【勿論】

 

 

 

『……先生?』

 

 

 

 

【あなたのせいじゃない、そう言ってあげてね】

 

 

 

 

『……ッ!!??』

 

 

 

先生の姿がブレ始める、何が起きているのかを夢の主であるからこそ理解してしまう。

 

 

『なッ!?』

 

 

『何が…!?き、君は!!先生!君はどれだけのものを犠牲にして…!?そんな、馬鹿!それは君そのものの存在の消失と同意義なんだぞ!?』

 

 

慌てて駆け寄って来たセイアに手首を掴まれて揺すられる、いつも謝る事しか出来ない私は、また謝る事しか出来ない。

 

 

 

“無名の司祭”

 

 

“色彩……色彩の、嚮導者……か”

 

 

幾数人分のカードが重なった、私の大人のカード、その厚みが少し消える。

 

 

この記憶を全て託してくれた『先生』は、もう消えて欠片すら残っていない。

 

 

“……ありがとうございます”

 

 

全てを背負って、消えてしまった。

 

 

『は、はは…そんな、君は……何故、そうやって……』

 

 

ぺちょんとヘタレた耳を向けられて、頭を胸に突っかけられる。

 

 

『…今のは…君自身には、何の影響も無い…けれど、それは……人生の、その全てを前借りしての奇跡だ、もう易々と使わないで……いや、言っても無駄だったね、先生』

 

 

“ごめんね、心配ばかり掛けて”

 

 

『ホシノの言葉を借りるようだけど……もう少し、自分を大切にして欲しい、貴方を愛している全ての者達にとって、先生…貴方の事が何よりも大切なんだ、私も含めて、みんながそう思っている』

 

 

“……ごめん”

 

 

『…蔑ろにして欲しくない、我儘なのは分かっているけれど』

 

 

“…………”

 

 

『そこで何も言わずに微笑むだけなのは、狡いよ先生』

 

 

『…こら、撫でるな、撫でたら許す訳じゃ………んう、もう、先生!』

 

 

狐の尻尾と耳をピンと立てて怒り顔をする君を、私は直視出来ない。

 

 

『…目を、合わせてくれないか?』

 

 

“…分かったよ……本当に、ごめんね”

 

 

『……あぁ、今、君が…撫でてくれるのなら…それで……今だけは、許すよ』

 

 

数秒、数分……こうもゆっくりとするのも、何時ぶりだろうか、撫で続けていると満足したのか、セイアは自分の席に戻って行った。

 

 

『ごほん、それで……まだ疑問は残っているのだろう?』

 

 

“うん、デミ自体の問題なんだけど……記憶を操作した事が引っかかってね”

 

 

“必要あるのか、と問われれば…無い、ナギサの記憶をどう変えるにしろ、元々彼女はデミを補習授業部へ入れさせるつもりだったろうし、アロナから二日分の記録データを消す必要も無い”

 

 

『それについては私から結論を話そうか、あの針だよ先生』

 

 

この瞬間から黒服に対してのプロレス技のバリエーションが増えた事は、誰にも知られる事は無かった。

 

 

“…うん、あの針は私のカードを傷つけられた、どんなものであれ不可能だと思っていたんだけど……”

 

 

『…そうだね、先生のその切り札は、神秘と奇跡の結晶体、如何なる物であっても傷一つ付ける事すらままならないだろう……先生は察している、いや、知っているかもしれないが……ヘイロー破壊爆弾というものを何百発喰らおうが何事も無い』

 

 

その上で、私のカードに傷をつけれる条件は……

 

 

“記憶だね、あの針は記憶を封印か忘却させる効果がある、私のカードに含まれた記憶を破壊できるから、傷つけられたんだ”

 

 

しかし、あの針を使用したのはデミ本人、針にその効果があったとしてこの疑問と何が結びつくのか?

 

 

それを教えてくれたのは、アズサ…君の勇気だった。

 

 

“…………心の底から、全てを忘れて楽しみたかったんだ”

 

 

“補習授業部での時間を”

 

 

『………』

 

 

【みんなと笑いあってる時間を、壊してしまうなんて、したくないのは】

 

 

結局は、もうそれ以上の事が無いんだろう。

 

 

誰かの幸せの為に、自分を犠牲にし続ける、それだけの事だった。

 

 

“誰にでもある思春期、後から振り返って……恥ずかしくなる事とか、あるよね……はは、ねぇ……デミ”

 

 

要は照れ隠しだ、自分のミスを隠したくなる事は私にだってある、シャーレで椅子を膝立ちでクルクルと激しく回りながら乗ってた所をノアに見られた時なんか、恥ずかし過ぎて寝込んでしまいかけた。

 

 

案外子供っぽいとこあるんですね、先生……なんて、あんなにこやかに言われると爆発してしまう。

 

 

“つまり、彼女自身が記憶して欲しく無い事を忘れさせる術がある”

 

 

それを己の内側からも消して、もう誰も心配する必要が無いように。

 

 

“針と併用すれば、彼女はあの合宿での活動を望むがまま、受け入れたいものだけを受け入れれる、私からは記憶を消さなかったのは……デミが、したくなかったから…って考えるしかないかも”

 

 

『概ね正解だと思うよ……けど、【記憶を消した事】さえ忘れてしまうせいで多用し過ぎた彼女は、この物語に大きな歪みを産んでしまった、そしてその歪みは彼女自身が精算するさ』

 

 

セイアが背景を変化させて映すのは、これから先の未来。

 

 

ヒフミが、コハルが、アズサがミネがハスミがツルギが……そして、ミカまでもが一致団結している場面。

 

 

『結局、生徒は生徒なんだね、先生』

 

 

【生徒は生徒】、トリニティにおいて政権のトップに立ち、自らが持つ未来視、その強大な力に振り回されるセイア自身がそう話せる事は……きっと、大きな意味を持つ。

 

 

『行きがけの駄賃を渡しておくよ、先生……悩んでいるそれは、別にそう大したものじゃない、浦和ハナコの誘拐、それは羽音デミのミスによるもので、彼女の手で連れ戻されている、それを忘れたかっただけさ』

 

 

“……”

 

 

『そして今現在、浦和ハナコは羽音デミの夢の中に幽閉されている、彼女を助けてあげて欲しい』

 

 

“勿論”

 

 

『まだまだ謎は残っているが、時間だ』

 

 

『これから先、大きな試練が君を待ち受けている、未だに羽音デミはその全容を明かしていない、余りにも暗闇は深い』

 

 

『彼女に握られているこの物語を……彼女の苦しみを、どうか解き放ってくれ』

 

 

茶席、その向かい側に立つセイアの背後に亀裂が出来る。

 

 

“セイア…?”

 

 

『……話し過ぎたからね、仕方がない』

 

 

亀裂から闇が溢れ出し、肉の触手が飛び出てくる、セイアを拘束し引きづりこもうとしている様だ。

 

 

“……っ!”

 

 

『大丈夫だよ先生、待ってるから』

 

 

セイアを助けようと立ち上がろうとするが、先生も引力によってこの夢の世界から退場しようとしていた。

 

 

 

『……そうだな、私の代わりに…羽音デミに伝えておいてくれないかい?』

 

 

 

『思春期め、恋バナでもしろ、とね』

 

 

 

“…分かった!”

 

 

 

そうして、引き戻される中で……。

 

 

 

 

 

 

【彼女】が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生」

 

 

『……!?』

 

 

“………デ、ミ?”

 

 

「先生に渡しといた奴……あ〜えっと、闇っすね、闇って単体で言うと厨二っぽいっすけど……まぁそれ、鍵なんで」

 

 

「夢の中に入れる唯一の鍵、手放さないで下さいよ?」

 

 

“君は……”

 

 

「返事は!」

 

 

“…うん”

 

 

「宜しいっす、それじゃ頑張って!」

 

 

黒髪で、麗らかに笑い、ペロロ様のヘアピンとピンクのヘアゴム、髪飾りを付けて、【彼女】は名乗りを告げた。

 

 

「羽音デミ!正義実現委員会二年生、好きな物は正実のみんなとヒフミちゃんと、ラーメンとカフェと、後色々と!嫌いなものは綺麗じゃないやつ!宜しく先生!」

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