ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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今回短め




幸せの為の涙

“はは、ははは!”

 

 

それはまさに光明だった。

 

 

行き詰まりどん詰まり、曲がり角の先で行き止まりにぶち当たったような、そんな状況。

 

 

どうしたらいいかと悩んでいると、壁の方から壊れてくれた。

 

 

思い返す度に喜びを咀嚼する、あの子は…あの生徒は、確かに羽音デミそのもので、希望的観測かもしれないが、まだ残っていたんだ。

 

 

“…デミと、彼女…両方とも救う”

 

 

まさに、光明。

 

 

希望、光、安堵と安心、熱烈な思いに突き動かされる私にとっての燃料。

 

 

“…叶わないよ、本当にね”

 

 

けれど、今視線は…背けてはいけない。

 

 

“ミカ、君もそうなんだよ”

 

 

何度、何百回、何億回だって言おうじゃないか……君たち生徒は、私の希望だって。

 

 

「あ゛ぁぁぁぁ!!」

 

 

ミカの拳が、地面に突き刺さる。

 

 

「ーーッッ!!」

 

 

もう、恥も外見も捨て去った。銃を放り投げて、服を汚して、顔を憎悪に染めながら…叫び続ける。

 

 

「ヒフミちゃん!私の事踏み台に!」

 

 

ホシノも既に腕が光となり消失し、完全に戦力外となってしまったが、それでも司令塔と肉壁として動き続ける。二人のチームプレイは先生の指示によるものだと錯覚する程には既に練り上げられていた。

 

 

「はい!」

 

 

「ぅああ!!」

 

 

「させないわよ!」

 

 

轟速で迫る拳をアルが狙撃で迎撃する、ホシノとは反対に足を失い後方支援のみとなってしまったが、ホシノとヒフミ、コハルの連携でアルまで近付けさせていない。

 

 

「あぐッ…!!邪魔!!!」

 

 

「ミカ様!」

 

 

そしてコハルだけが唯一単独で行動をしていた、ミカが範囲攻撃……全てをかなぐり捨てての突撃や破壊をしそうになれば、手持ちの手榴弾によりそれを阻害する。

 

 

完璧なコンビネーション……それでも、被弾は避けられない。

 

 

破壊された地面の飛沫がコハルとヒフミに、拳がホシノにダメージを与える。腕が無い為ノーガードでしか受けれないホシノ、その硬さを持ってしても退去時間をさらに早める攻撃を喰らう。

 

 

「うぐっ…」

 

 

「痛ぁ…」

 

 

「…っ、流石に腕が無いとキツいね…」

 

 

乱暴に振り回される暴力は、只人であれば問題は無かった、しかし目の前の敵はティーパーティーの武力派、聖園ミカ。

 

 

一挙手一投足が致命傷となり、逆にこちらの攻撃の被害は全て最小限に抑え込まれてしまう、アルの攻撃も効果は薄まり続けていた。

 

 

「……負けて、よ!!」

 

 

「嫌です!」

 

 

「そっちこそ!」

 

 

両者既に説得や語り合いは無い、お互いに大切なものを……己の核としている希望を抱いてここまで来た、これはそのぶつかり合いでしかない。

 

 

けれど両者の決着は、あまりにもすんなりと着いてしまうのだろう。

 

 

だってーー

 

 

「…!今だよ!二人とも!!」

 

 

ミカのスタミナが一瞬だが尽きた、そしてそれを見逃す者はいない。

 

 

「狙い撃つわ…!!」

 

 

後ろに跳んで体勢を立て直すのをアルが防ぎ、コハルとヒフミの二人がかりでミカを攻撃する。

 

 

その弾幕を受けて………ミカは、遂に背中を地面に向けて倒れ込んだ。

 

 

「か、勝った…?」

 

 

「……うーん、おじさん、今どきの女の子の気持ちは分かりずらいなぁ」

 

 

倒れ込んだミカにコハルが近付く。

 

 

「…ミカ様」

 

 

そうして決着は付いた、あっさりと…劇的にでもなく。

 

 

「……なに、コハルちゃん」

 

 

指を動かす気力も無い、言葉を返すのもギリギリ。

 

 

でも、コハルの目を見て聞かなければいけない。

 

 

「私…」

 

 

いつもの弱々しい姿と、勇気を混ぜ合わせて、心からの言葉を贈る……

 

 

「ミカ様がなんで…こんな事するのか、私には分かんない、けど間違ってるのは分かるから」

 

 

ーーだって……この勝負において勝負を決めるのは武力じゃなかったんだから。

 

 

「…」

 

 

「どれだけ正しい事でも、やり方を間違えれば正義じゃ無いって思う……これがミカ様のやり方なら」

 

 

勝負を決めるのは、最後まで折れなかった方。

 

 

「それ以外のやり方を、一緒に考えます」

 

 

それは、下江コハルのいつもの姿、自分の正義を持ち続ける者として……

 

 

「……」

 

 

聖園ミカは、既に負けていた。

 

 

どうして、何を言って、今更どうすれば、どうしていれば良かった、なんて言葉を返したりはしない、だって…その光に目を焼かれ続けて今があるんだから。

 

 

そしてその返答を聞いたのも初めてじゃない。

 

 

「………はぁ」

 

 

いつだって思考の片隅に居た、視界の片隅に居た、ずっと聞こえてきたし、聴いてきたし、言い続けてきて……

 

 

 

それを否定した。

 

 

 

憎しみを忘れてはいけない、忘れ無い、どんな事があったって…過去は無くならない、憎しみとはそういうものだから。

 

 

ただ……

 

 

『それだけで生きていける程、ミカ様ちゃん図太く無いっすよ、適度に楽しんで生きていければ良いんじゃないっすか?……あ、ほらこんな感じこんな感じ!私めちゃ楽しんでるよ、カフェ巡り』

 

 

「どんなやり方でも、私の最後は…終わりが破滅ならどうしようもないんだ、みんな不幸になっちゃえってね……私は、壊れたかったんだ」

 

 

「あはは…でも、やっぱり…」

 

 

そうやって生きていくには、図太さが足りなかったみたい。

 

 

“ミカ”

 

 

「……せんせい」

 

 

“立てる?”

 

 

「……今の私を見て、それ言っちゃう?」

 

 

「もう立てないよ、先生」

 

 

“それじゃ、私の手を貸すよ”

 

 

…手を、差し伸べられる。

 

 

指一本すら動かない身体を、酷使させるなんて酷い大人だ。

 

 

「……は、あは…はは…」

 

 

軋む肉体を無視して……手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…だからって普通お姫様抱っこ、する?」

 

 

“『頑張った』んだから、後は任せてよ”

 

 

手を伸ばした後は、ミカは身体ごと持ち上げられて移動していた。

 

 

「…ナギちゃんは?」

 

 

“ずっと視ておいたから大丈夫、退避済み”

 

 

「そっか」

 

 

その返事だけして、ミカは眠ってしまった。

 

 

アルとホシノとはお別れの言葉を軽く交わして、グラウンドに辿り着く。

 

 

『頑張ってね、先生』

 

 

『先生!便利屋への依頼、また…待ってるから!!』

 

 

いつだって貴方達は……私の希望だよ。

 

 

『…うん』

 

 

背中を、押してくれる、何時も、何時までも。

 

 

『えぇ』

 

 

ありがとう、二人とも。

 

 

 

 

“………”

 

 

「先生!」

 

 

グラウンドに、先生の名を呼ぶ声が届く。

 

 

“アズサ!”

 

 

「聖園ミカは……」

 

 

“少しお休み中、アズサも大事は無かった?”

 

 

「うん、行動出来なくなる傷は特に」

 

 

抱き抱えるミカを、アズサがそっと見つめる。

 

 

「…私も、報いは受けるから」

 

 

事態はまだ終息しきっていない、敵は居なり、全てが円満に終わろうとしているのは…表面上だけだ。

 

 

“……これは”

 

 

グラウンドの砂の上に黒い塊が鎮座している、その周辺には…。

 

 

“…聖槍?”

 

 

砕け散った弾丸の破片が散らばっていた。

 

 

…それは有り得無い筈のものだ、聖槍は役目を終えれば砕け散り灰になる、破片が残っているのがおかしい。

 

 

“まさか、負けたのか”

 

 

黒い塊の正体は分からない、が…聖槍が通用仕切っていない、役目を終えていないから破片として残ってしまったのだろう。

 

 

身体に潜む闇が、あの黒い塊に近づくにつれ痛みを増す。

 

 

“…ミカを頼むね、ヒフミ”

 

 

「は、はい…それと、その黒いのって……」

 

 

“デミとハナコ、連れ戻してくるから”

 

 

「…っ!連れ戻してくるって、つまりその中に二人が…!!」

 

 

“行ってくるよ”

 

 

黒い塊に向かって足を進める、彼女の言った通りこの闇が鍵だというのなら、きっと……。

 

 

“…ガッ…!?”

 

 

侵食が進んだ足に激痛が走る。ちぎれ飛ぶような痛み、気を張り詰めなければ今すぐにでも倒れてしまいそうだ。

 

 

「先生!?」

 

 

黒い塊が数本、触手の形をしたものを私の足に巻き付ける。

 

 

感じるのは、肉と骨の断裂と破壊。

 

 

“………な…る、ほど”

 

 

闇に犯された足が食い潰されていく、これは分かる、取り戻せないんだろうと。

 

 

“持っていけ…!”

 

 

それが鍵なら、これで生徒を救えるなら、構わない。

 

 

そうセリフを吐いた後、急激な眠気に私は意識を手放してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪だ

 

 

 

 

一面を覆い尽くす雪、銀世界のようになっている。

 

 

 

 

 

トリニティが、雪に沈んでいる。

 

 

 

 

 

 

“…………”

 

 

 

猛吹雪の中、それでも聞こえてくるのは……嘆き。

 

 

 

“……傘”

 

 

 

いつの間にか、私の手には傘が握られていた。

 

 

 

視界は晴れず、何処へ行けば良いのか、何処を目指せばいいのかすら分からないけれど……。

 

 

誰に差し出せば良いのかだけは、知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“迎えに来たよ”

 

 

 

 

 

 

 

傘を差すと、君が傍で泣いていた

 

 

 

 

 

 

“したい事、みつけよっか”

 

 

 

 

「………何度目っすかね、迷惑かけんの」

 

 

 

誰かの為に動く君に、迷惑だなんて思った事は無いよ。

 

 

 

“まずは……恋バナかな”

 

 

 

 

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