ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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夏だ!海だ!出店じゃぁァァァァァ!!!!

テレレレッテッテ〜テー↑テン↓テー↑テン↓

 

 

 

“……”

 

 

夏の日差しがサンサンと輝く空の下。

 

 

海からの風とカセットテープから流れる曲に身をまかせ、まぶたを閉じた。

磯の匂いを嗅いでいると、海の家で何か食べたいものだ。こういう時はいつも食べているカップラーメンがとってもおいしく感じる。

こういった不思議な、理屈の付けれない感情と言うものは、夏の魔力と言って差し支えないのだろうね。

 

 

カレーがいいかなぁ、醤油がいいかなぁ………。

 

 

“動いてないのに熱いなぁ”

 

 

けれど、今は現実逃避をしている場合ではない。

 

 

「なんてったって、夏ですから」

 

 

“うんうん、夏といえば海、夏といえば浜辺…分かるよ、でもさヒフミ”

 

 

「何でしょうか?」

 

 

“どうして私は戦車の上で日光浴をしてるのかな”

 

 

「……?海に来たんですよね?日光浴は当たり前の内じゃないですか?」

 

 

“……そうだね!!”

 

 

眩暈がしてきた…いや、当たり前なのか?浜辺に来て戦車の上で日光浴はキヴォトスじゃ常識なのか?

 

 

“ねぇヒフミ、私がワカモと来た海にみんなが居たのってさ、偶然?”

 

 

「……あはは、それはご本人達に…」

 

 

ここは、キヴォトス最大の無人リゾート地。建物の跡地はあるが高いビル等日光を遮るものは一切無く、その上整備された浜辺が美しい夏の情景があり、味わい深い。

 

 

何故無人かというと、元々開発予定区だった浜辺が不良に占拠され、企業と不良の立ち退きと居座り……両者のプライドをかけた全面戦争は、絶え間ない不良のゲリラ戦と夜間の襲撃、守るものが多かった企業は後手に回り、企業側の撤退で決着がついた。

 

 

この美しい風景を守った伝説の不良……バシャバシャヘルメット団はこの浜辺を皆が利用出来るよう清掃と不法占拠を許さない掟を築き、今も尚この浜辺と海はキヴォトス住民の公共の場となっている。

 

 

ワカモにはお礼として連れてきた、けれど迷惑になってはいけないと思い、完全にお忍びで来たのだけれど…。

 

 

 

“……ねぇ、ヒフミ…私の個人情報…漏れてない?随分と荷物が多いね?”

 

 

「…………あはは」

 

 

“あは、あはは…”

 

 

 

 

 

やっぱり皆の水着でも眺めて、現実逃避をしよう……。

 

 

 

 

 

【夏空のアビドス復旧委員会とヒナ委員長のなつやすみ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ただいま”

 

 

 

誰もいないオフィスに私の声だけが響く、ナギサとの契約は解約され私は日々の生活に戻った。

私が倒れている間や、休暇を受けている間はリンやアオイが業務を担当してくれたみたいだ……ある程度システム化してるとは言え作業の量は膨大、一度あの二人のもとに訪れてお礼をして、ようやくシャーレに帰ってきたのだ。

 

 

といっても、これは一時的な帰還。

 

 

『“……コハル、ハナコ…?”』

 

 

『ひゃ、ひゃい…』

 

 

『うふふ……』

 

 

私がようやく職場に戻れたのも、長い時間が経ってからだ。その間に二人はまた補習部行きになってしまった。

 

 

だから今度からも補習授業部の面倒は見る、これからも彼女たちが悪意さらされないように。

 

 

“……ふぅ”

 

 

イチカから聞いた情報も精査してみたが……やはりあれ以上の発見は無かった。

 

 

エデン条約が始まるまで、あと少し。

目の前にまで迫った転換期を見逃すわけにはいかない。

 

 

ふと、デスクの上を見て気づく。

 

 

“綺麗に片付いてる……もしかして…ワカモー?いるー?”

 

 

デスクを触ってみれば、ホコリ一つすら無いのは流石に……つまりは私の部屋の面倒を見てくれた誰かが居るという事。

 

 

「はい、ここに」

 

 

振り返ればそこに面を付け跪くワカモがお掃除エプロンを付けていた。

よくみると面は埃除けだろうか?仮面を外してこちらを向いてくれたので、つい満面の笑みで飛びついてしまう、贔屓はしない様にとは意識しているのだが…。

 

 

“ワカモ〜!”

 

 

「はい!貴方様のワカモです!」

 

 

“良かったぁ無事で、私も貴方が居なかったら最後は駄目だったかもしれなかったよ、改めてお礼をしなくちゃね”

 

 

撫で回したい気持ちを抑えて話をしたい、今回に至ってはワカモに託したカードの一部が無ければ、私は悲惨な未来を歩んでいた頃だろう。

……デミの手の届かない人物として最適だったワカモは、デミが私の行動を予測する上で、予測されたモノより奇天烈な作戦を捩じ込む事で予防線として働いた。

 

 

「お礼なんて…!それよりも、貴方様が苦しむ事の無いように勤めさせて下さい」

 

 

皆、私の心配をしてくれている。

それに応えられる日が何時か来る、だから今はまだ返事を返せない。

返事代わりに獣耳を撫でることでしか誤魔化せないのを許してくれるだろうか。

 

 

“…済まないね、ワカモ”

 

 

「貴方様の為ならば」

 

 

“……そうだ!”

 

 

「何でしょうか?貴方様」

 

 

“お礼、じゃないんだけど、せっかく熱い夏の季節なんだから…一緒に海にでも行かないかい?ワカモは停学中だからね……夏の思い出を作るのも良いかなって”

 

 

どうかな?と聞いてみるとワカモは固まってしまって動かなくなった。

何度か呼びかけてみて、漸く声を出してくれたので耳を澄ませてみると…。

 

 

「海…貴方様と……熱い夏の日に……」

 

 

「あぁ…………」

 

 

「是非、是非是非是非とも!御一緒致します!溶け合う様な愛の夏を過ごしましょう!」

 

 

「私と貴方様の至高の夏を共に……私の愛の全てを味わって下さい!」

 

 

そう叫びながら急いで身支度しに何処かへ消えてしまった……予定、伝えてないのになぁ…。

 

 

その後、死ぬ気で残っていた業務を終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

 

ソファーから起き上がり、洗面台へと向かう。

 

 

昨日は地獄の様な一日だった、当番の子たちの顔を拝んだりして、活気を取り戻さなければそこら辺に横たわる屍として寝そべっていた頃だろう。

 

 

ソラが途中、Uhiber Eatsで栄養ドリンクを運んできてくれたのも有難かった。

 

 

ヒゲを剃り、歯磨きを終えて、顔を洗ってる途中タオルを手探りで探していると、ポンと私の手にふわふわの……

 

 

“うん?”

 

 

ふわふわなタオル…にしても、やけに艶と柔らかさがある。というかついさっきまで一人だったよね?

 

 

“……”

 

 

とりあえず顔を拭かなければ確認も出来ないので拭いてから顔を上げる。

 

 

「うふふ…貴方様、おはようございます」

 

 

“…ワ、ワカモ……おはよう”

 

 

乗せられていたのは彼女の尻尾だった、手入れが行き届いているのか全く違和感が無く、高級絹タオルが如き拭き心地。

 

 

それに、目が変になっていなければ何故か、何故かワカモは水着だった。

 

 

「業務、お疲れ様でした…この後は私にお任せ下さい」

 

 

“この後って…そうだ、ワカモにまだ何処へ行くのか伝えきれてなかったね、今日は…ーー”

 

 

とりあえず話を進めようと、尻尾を改めてタオルで拭きながら荷造っておいた荷物を取りに行こうとすると……。

 

 

ドカァァァァン!!!

 

 

“……え”

 

 

シャーレの窓から、市街地だ大爆発が起きたのを見てしまった。

 

 

「予定通り、ですわね」

 

 

“予定通りって…!?”

 

 

「いえ、貴方様との夏を過ごす上で……とやかく煩い羽虫と、私の入店を拒否した場所を破壊しようかと、どうですか?綺麗でしょうか、お気に召しましたか?この後も…」

 

 

“ワカモ”

 

 

「はい」

 

 

“正座”

 

 

「はい…?」

 

 

 

その後、泣き崩れるワカモを支えながら爆破された場所へ謝礼参りをしに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…っ…嫌わないで下さい……離れないで……」

 

 

“大丈夫だよワカモ、別に貴方の事を嫌う事も、跳ね除ける事もしないから……ほら、海が見えてきたから顔を上げて?”

 

 

「はぃぃ…」

 

 

ズビズビと鼻水と涙を流し止めてあげなければ今頃車内は水浸しになっていた頃だろう、ワカモは普通の生徒より……より弁えている子でもあるのだが、彼女の世界に映らないものが多すぎるのが欠点だ。

彼女にとっては、自分の世界に羽虫が飛んでいたのと同じ、常識を理解はしているが自分に当てはめられない。

故に出来る事は付き添い続ける事、彼女が本当に大切だと思えるもの持って周りを尊重しながら歩んでいけるまで。

 

 

“う〜んと、こっちで合ってる筈なんだけどな”

 

 

海が見えてきた事もあり、マップを確認しながら車を走らせているが……どこもかしこも通行止めで侵入できない、しかも通行止めをしているのはゲヘナの風紀委員所属の子だ。

 

 

“……おっ!こっち側が空いてる……というより、破壊されてる…?”

 

 

バリケードがめちゃくちゃに破壊されて、周りに風紀委員が倒れている道を発見したのでこっそりと通らせてもらう事にした。

 

 

それで浜辺の駐車場に到着はしたのだけれど……。

 

 

“よし、着いたね…”

 

 

ワカモに対して…少し落ち込ませ過ぎてしまった、怒ったつもりでは無いのだけれど、まずその前に伝えるべき言葉があったのに。

 

 

「…ここが……」

 

 

車から降りてきたワカモは、そう水着である。

 

 

“綺麗だね、ワカモ”

 

 

「…!!!」

 

 

最初に伝えるべき想いを話しておかなければいけなかった。

 

 

「…ありがとう……ございます♡」

 

 

“可愛い水着だし、ワカモに良く似合ってるよ”

 

 

「はい、貴方様との夏の為に……珠玉の衣装を選びました」

 

 

 

噛み締めるように返事を返すワカモに手を差し伸べて、浜辺に向かいながら談笑を交わして小一時間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浅瀬で楽しみながらパラソルを立てて、クーラーボックスも持ってきたし、服も着替えた事だ、漸く海に入ろうと……。

 

 

“…あれ?ワカモ?”

 

 

着替えから帰ってくると、パラソルの下に居た筈のワカモが消えていた。

 

 

“おーい!ワカモ〜?ワカモー!”

 

 

結構大きな声で叫んでみたが、返事は返ってこない。あのワカモがこうやって呼びかける私の声に反応しないと言うのはなかなかありえないことで、何か事件に巻き込まれたのかと周囲を走りながら、探索していた時。

 

 

この夏の波乱が幕を開ける事になる。

 

 

「ん、先生」

 

 

“……え、シ、シロコ!?”

 

浜辺を探索して、数分。

 

 

問題があって…このリゾート地、とてつもなく広いのだ、流石キヴォトス最大のリゾート地、私一人で探しれるかと心配していると…まさかのシロコと出会ってしまった。

 

 

「うへぇ〜…私も居るよ?先生」

 

 

“ホシノまで…”

 

 

「先生も来てたんだ、私達対策委員会もアビドスの復興アイデアの一つとして偶然貰った無人島から、リゾート地を作ろうかと思ってて、色んなリゾート地を回って参考にしようと……先生は?」

 

 

“私はワカモとここに、色んな事があったからそのお礼としてね”

 

 

そしてその夏の波乱は意図せず私の手で引き起こしてしまった。

 

 

「「……え?」」

 

 

「…先生、それってデートって事?さっき災厄の狐が叫んでた…」

 

 

“…ん??え?いや、違うよ?ってワカモが叫んでた?”

 

 

「ほら、あそこ見てみなよ先生」

 

 

ホシノが指差す先に視線を向けてみると岩礁場でゲヘナの風紀委員メンバーと戦闘していたワカモを見つけた。

 

 

“ワカモ!?”

 

 

というか、何故ここに風紀委員メンバーが?みんな水着だし……アコは居ないけれど……。

 

 

「へ〜…そっか、先生がデートじゃないっていうなら本当にお礼なんだね……本当かな…本当に本当なのかな?」

 

 

“本当にそうなんだけど、今はごめん!ワカモを迎えに……んん?”

 

 

体が動かない、というか手が動かせない。走り出そうとした瞬間に右手が金縛りを受けたように硬直して……硬直じゃない、掴まれてる!

 

 

「ん、先生……私達と一緒に海、入ろう」

 

 

掴まれてしまった右腕は一ミリたりとも動かない。

 

 

「ちょ、ちょっとシロコちゃん?駄目だよ先生の迷惑になる事をしたら……」

 

 

「嘘、ホシノ先輩もこうしたいって顔に書いてある」

 

 

「あ〜…」

 

 

“ふ、二人とも…”

 

 

イチカの言葉をこんな時に思い出したくなかったなぁぁ…!?

 

 

二人がバチバチと視線を合わせていると、何処からか銃撃が飛んでくる。

 

 

「うわっ!?」

 

 

「…ッチ!」

 

 

その銃撃が飛んできた頃には私の視界は反転し、ものすごい風圧を感じながら引っ張られていた。

 

 

“あぶぶぶぶ”

 

 

「先生!無事か?」

 

 

“ア、アズサまで…”

 

 

目を開けばアズサに引っ張られていることがわかる。しかも向こうからクルセイダー型の戦車が走ってきており、頭部座席からはヒフミとマシロ、ツルギが覗いていた。

 

 

そのまま振り回されるままに意識を失って……目覚めると…。

 

 

 

 

 

“…動いてないのに、熱いなぁ”

 

 

 

戦車の上で、日光浴をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“………”

 

 

辺りを見渡す。

 

 

ツルギに蹴散らされる不良。

ワカモを追いかけるアズサとゲヘナ風紀委員。

美食研究会が出店をしており、ゲテモノから一級品まで出揃った焼きそばや海の店メニュー。

 

 

クルセイダー型戦車に乗るヒフミと、ヘリを操縦するアヤネのレースに、砂の城を作っているマシロとシロコ……砂?なんか今セメントが……。

 

 

ヒナと出会った時も驚いた、アコが海で訓練をすると言い出して聞かなかったらしいから渋々来たらしいが…まさかのスク水。

 

 

“……”

 

 

ワカモから連絡が来て、片付けたらすぐこっちに来ると言ってくれたので待っている。その間に海の店にでも寄ってお昼ご飯を食べようかと近場の店に来たのだけれど……。

 

 

一番の問題がそこには構えていた。

 

 

〔開店!!夏限定ゲマトリアショップ!!〕

 

 

“…うん、聞かなかった事に…”

 

 

〔開店!!夏限定ゲマトリアショップ!!〕

 

 

“……”

 

 

〔開店致しました!夏限定のゲマトリア…ーー〕

 

 

“分かった!分かったから!無視しないから一回メガホン降ろして!?”

 

 

「ククッ……焼きそば、どうですか?」

 

 

「何故私がこのような無意味で無価値な美が欠落した事をしなければいけないのかと思ったが……先生との出会いが為であったか」

 

 

“コイツら…”

 

 

最悪だった、本当に最悪、メガホンを持ったデミと焼きそば作ってる黒服、極めつけはカレーを煮込み始めたマエストロまで居た。

 

 

しかも出店方式で、店番としてゴルコンダが看板を持ってるし。

 

 

ラスボス盛り合わせセット特盛りみたいな状況で、カードを今は持ってきていない事をめちゃくちゃに後悔している。動ける様になった今、黒服にはここで……。

 

 

〔先生〕

 

 

“…いや、いい……デミ、本当に普通の店だよね?”

 

 

〔えぇ〜…はい!絵面が面白そうだから連れてきました、後先生の個人情報が偶然、各校の参謀に届いたのは秘密っす〕

 

 

“…………”

 

 

「先生、此方デミさんによって開発された焼きそばソースです、ご賞味なさいませんか?」

 

 

「あぁ先生、貴方も見たのであろう?かの少女の崇高を、ケイオスを、アレが依然として形在る事に私は感激してしまった、崇高を、混沌を有しながら概念として器に…ーー」

 

 

〔そこー!白米の面倒をちゃんと見る!〕

 

 

 

“………………”

 

 

 

“夏空の元でって、こういう事!?”

 

 

白いエプロンにソースを飛び散らせながら焼きそばをかき混ぜる黒服を見て、もうどうにでもなれと一つ買ってしまった。

 

 

案内されるがままにビーチチェアー(テーブル付き)に座ってワカモを待つ。

 

 

夏の騒乱は……始まったばかり。

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