“これが、結論…?”
【1Day】
回収場所 ミレニアム廃墟
権能使用未確認 phase1
「手始めにお伝えしておくべき事があります」
「なんすか?」
「私達ゲマトリアには、貴方のデータが足りなさ過ぎる、故に貴方の肉体情報を精査させていただきたいのですが…今の貴方の中には何も無い」
「そうっすね、空っぽなもんで」
「なのでコチラを」
「…これは、アツコちゃんの仮面…なるほど?」
秤アツコとの関係性の有無は確認済みであり、彼女が秤アツコを知り得る手段は無い。
「本来は特別な血統により作用する保護装置ですが、デミさんなら起動できる筈です、これにより貴方の肉体をこの世界に固定させます」
「なるへそ…そんな機能あったんすね、それじゃ…よっこいせ」
装置の起動を確認、送られてくるデータには『秤アツコ』の生体反応。
予想通りであり、規格外の力。
「素晴らしい、それでは始めましょう…手術台へ、服は脱いでください」
「……これが、肉体があるって感じか、数日振りだけど懐かしい」
手術台に搭載している『pass』探知機の誤作動、及び生体データ検査機の誤作動が起きた。
あくまで誤作動であり、作動結果はエラー。多くの生徒のヘイローが該当してしまう状態となり停止してしまった。
「ふむ」
「ちょっと、乙女が服脱いでるとこガン見すんなっす、仮面一枚に裸体は大分エロエロのエロっすよ?」
「安心して下さい、私にそのような趣味はありません」
「お前ぇ…だからワビサビが無いって……はぁ、まぁいいや、で何するんすか?」
「服は預かっておきます……さて、何をするか、これを見ればお分かりになりますよ」
「…うっわぁ、メス?肉体の情報つったところで悪い感じはしてたけど…解体って事っすか」
「ええ、それでは手足を拘束させていただきますね……大分
「……痛覚も戻ってんすか」
「えぇ、最初にお伝えした様にこの方法は
羽音デミの柔肌に、紅い花が咲く。
「……ぎッ…」
入刀開始。
つぷりと赤い線が彼女の腹部に縦一文字に刻まれる。保護である仮面を外し吐き出させるものを吐き出させる。
『固定』のテクスト…元い教義の祝福による『奇跡』が効果を発揮した。
神の奇跡、受肉という現象そのもの。
「いっだ…痛い痛い痛い痛い!!!痛い!痛い!!せんせい!先生…!せんッ…ぐぞ…いだ、いギャ…が…!!」
どれだけの負荷が加われば彼女は再生を始めるのか、まずはその調査を始めなければならない。
この流れる血の一滴でさえ、虚実の世界から真へと引き出す原材となる事だろう。
血あぶくを吹き出し、黄色のモノを吐き出しながら穴という穴から液体が垂れ流されるのを、彼女は飲み込む。
…凄まじい意思だ、既に致死の傷であり痛覚が復帰した今では視界すら保つのが難しい筈。
人として絶対に無視は出来ないとされている生命のライン、命を失う行動にはそれと同様に危険信号が脳から発せられる。
傷口を抑える、痛みを堪えるために歯を砕ける程に食いしばる、今貴方は死にかけているんだと身体が反応するもの。
「ァっ…゛…ぅううぁ!!!ギッアグャッ…ァァァァァ!!!!ぐぅぅぅ………先生!!先生…!!!先生、先生先生先生!!いだい!痛いッ……いっ!!……ゲポッ……」
あらゆる自己防衛本能を無視して叫んでしまうほどの苦痛であり、内蔵を摘出されながら声を出してしまえば中身が零れ落ちてしまう為、さらなる苦痛を呼ぶだけであるが死ぬことはない。
死んでしまえば即座に再生が始まってしまう事が難題の一つであったが受肉の奇跡と固定のテクストの併用により、『解除』するまでは死ぬことがなくなる為、解決した。
「どうします?歯に負担を掛けないように猿轡を致しましょうか?」
「う゛っ…あぁ゛ぁあ!!゛い゛ら…ない゛!!さけばせとげ………ぉ……ぁ……!!!!」
「分かりました、続けましょう、切開、切断、摘出の工程を経て…中身を空に、その後の貴方の『生成』観察させていただきます、長くなると思いますが…」
「ククッ、頑張ってくださいね」
【2Day】
薬物の投薬開始 権能未確認 解体進捗98%
解析進捗3%
赤い糸を引いて最後の臓器が切り取られる。
「……ぁ………」
腹部切開から始まり、胸部切開に至る。直腸から気管上部までの臓器の全摘出が完了した。
拘束されていた手首と足首の肉が暴れ擦れ続ける過程でこそぎ落ちてしまったのか、黒く変色している。
骨はすべて砕き採取済みであり、この無骨な黒い手術室には『少女の
噎せ返るような鉄の匂いと垂れ流された体液が混ざり合って作られる赤い水たまりが部屋を蹂躙している、そんな部屋に革靴の音が響く。
「少々悪趣味だが…良い、美しい」
「おや、マエストロ、来訪の連絡はありませんでしたが…」
「あぁ、件の少女との交渉に成功したと耳にしてな」
「マダムですね、困ったお方だ…他言無用とお伝えしておいたのに」
「それもこちらの交渉の結果だ、彼女を責める必要はない……私としてはこの事を隠されていたほうが残念極まる」
「仕方ありませんね」
部屋の惨状には似つかないほどの軽い声色が耳に入ってくる度にイラつきが増す。
「…ぉ……い」
「残りも……」
「…!その状態でまだ話せますか、流石ですね、手を止めて申し訳ありませんでした、続けましょうか」
「私も無礼をした、施術途中であったな…黒服、次の工程は?」
「筋肉と骨、眼も頂きます、そして肉体の再生後ではありますが、次は…」
「脳です」
【6Day】
投薬量増量 拘束器具の追加 新薬の追加 採取器具追加 採取量増加
ベアトリーチェとの交渉開始 ゴルコンダとの協定締結
ロイヤルブラッドの少女とマエストロの接触とベアトリーチェとの教義のミメシスを確約
あの後も腕の肉を全てそぎ落としたり歯を削りその反応を確かめた上で一度受肉の解除をしてみると、既に今日には受肉抜きで羽音デミの肉体が再生成されていた。
度重なる苦痛、それによる『肉体』の実感。
液体化し、溶けていた羽音デミの肉体が本来の形を取り戻していたのだ。
「…凄まじい、イメージの問題でしたか」
「なるほどな、次の工程が脳だという理由も察せれる、認識、記憶…そういったものを脳に焼き付けるために必要な感覚、肉体の部位をほとんど摘出した後の事すら情報として保管されているということは…?」
「ええ、彼女の存在証明をしているのは、彼女自身ではない…!その確たる証拠もこれでハッキリとします」
「………」
映像が映るその目の前には、頭を半分に切り落とされたデミが椅子に縛り付けられ、その剝き出しとなっているピンク色の肉塊には電極が差し込まれているのが分かってしまう。
もはや生きているのかすらわからない。
「さぁ、貴女の正体を見せてもらいましょう」
【■Day】
投薬の増量 切断した部位と他の部位を縫い合わせた上での再生を記録。
腕 胴体 両足に施行、
【■Day】
肉体を閉所空間に設置 頭部と胴体を切り離し別々の箱に入れることでどちらが自意識を持つかを検証する。
胴体部分は四肢を切り落とし、それぞれの箱は再生するスペースが出来ないように隙間を埋めた。
「……」
肉体は空間から再生成され、また羽音デミの全ての記憶を保有していることが判明。
箱内の肉体の気化を確認。
【■■Day】
投薬量を致死量の2倍に設定
ヘッドセットとVRを追加
【■■Day】
投薬量を致死量の3倍に設定
映像、音声のパターンを増加、又映像、音声ごとによる反応の機微を解析する。
【■■Day】
「なるほど」
phase2 権能確認 研究所が半壊 ヘイローの変化の解析開始
「トリガーはやはり先生でしたか」
鼻血とよだれをたらしながら放心している彼女を一度気絶させた。
「これが終幕たる力、その権能の実態…」
「黒服、彼女を寄こしなさい」
マジックミラー越しに彼女を観察していたベアトリーチェが話しかけてくる。
「すみませんがマダム、現状は彼女との契約によって保たれている関係でありその要求に私が出来ることはありません」
「愚かですね、私達大人ならこのような少女どうとでもできますよ、分かりませんか?この力があれば私はロイヤルブラッドの血統に固執する必要すらありません、キヴォトスを、この神秘の坩堝を手にしたも同然」
「『崇高』…その頂が目の前にあるのです、色彩など話にならない」
「理解はしています、が…それでも出来かねない相談です」
「……愚かな選択を手に取っていることが分かりませんか?」
「何か、勘違いしているようですが…私は彼女を研究対象とさせていただく代わりに、使われている立場です、それはマダム貴女も変わらない」
「…本当に貴方とは話が合わないですね、先生の件といい私はいつだって最善手を差し出しているというのに」
そう吐き捨てられた後に彼女は帰っていった。
羽音デミの権能は、正しくは全能の域に到達していない、最大値というには矮小すぎるため現状では高エネルギーの放出だとしか判明していないが、この手段が刺激を与えるには最適である事。
そしてこの無形のエネルギー体は、正に全能と呼んで差し支えない。神秘ではなく現実を変化させるほどのエネルギーであるが故の暴虐。
しかし未だ
【■■Day】
「お帰りなさい、デミさん…随分と制服が汚れていますがお着替えになりますか?生傷も随分とありますね」
「…大丈夫っすよ、それよりも黒服、結果は?」
「できていますよ、こちらを」
「…針?」
「『モイラの針』その試作です、一時的に貴女のヘイローを封じれるかと」
実験、検証の結果判明したことは…。
彼女は、壊れなさすぎる。
あらゆる手段を講じた、肉体的にも精神的にも発狂するラインさえ超えて刺激を与え続けた。
それで尚、健常であることが異常といえば異常であり、それ故このような推測を立ててしまったが、未だ仮定の域は超えない。
羽音デミとは、本来の姿を抑えるために形成された『蓋』の概念であるという事。
いや、壊れた蓋と言ったほうが正しいだろう、壊れているからこそそれ以上進行することは無く、蓋の概念、その機能だけを保つ構造の一部。
「羽音デミさん、貴女は本当に一体何で在るのでしょうか?」
調べなければいけないことがまた一つ増えてしまった。
※追加記載
記憶改変の影響を考慮し、伝達は先生のみに限定する。
【研究経過記録
「契約するっすよ」
想定外の事態が起きた。
「ありえません」
マエストロとの談合後、採取した肉片が羽音デミの形を成形し会話を始める、不可解な現象であり自意識の分裂だとしても説明がつかない。
「まずは自己紹介から、トリニティ学園所属、正義実現委員会二年生の羽音デミっす!よろしく!好きなものはおいしい食べ物…ちょい雑すぎるか」
「…貴方は」
「だから、羽音デミっすよ、黒服さん」
「……」