ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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ただそうであるだけ (二)

「初めまして、マエストロさん」

 

 

「……あぁ、しかし初めましてでは無いのだろう?虚ろなる少女、其方は此方を見続けていた筈だ」

 

 

「ん〜まぁそうっすけど、一応謝礼事項っすね、無礼を嫌い無知を恥じ、美徳と品性を備えている……方が、マエストロさんは好みでしょう? これでも乙女で淑女なんで」

 

 

「さぁ、契約をしましょう」

 

 

あらゆる可能性を考える、目の前の存在は『何だ』?

 

 

羽音デミの複製にしては人格が異なる、負荷を掛けすぎたが為に精神分裂を起こしたのか? それも有り得ない、日常生活は全て監視しており拷問と実験、日常での精神負荷(虐め)含めそれですら変容の予兆すら無かった。

 

 

「いや〜…それにしても手酷くズタボロにしたっすねぇ、まぁこれでも足りなさ過ぎるんでもうちょいペース上げて欲しいもんっす」

 

 

「…契約、契約ですか…貴方は一体何が望みで?」

 

 

「ん?あ〜…その、表ボスが強すぎて誰も突破出来ないっていうのを繰り返し過ぎたんでどうにか出来ないかなって、漸く機会が廻ってきたってだけっすね、あれっす」

 

 

「『どうにかしにきた』その為に地道に精進努力中…的な?」

 

 

…ーー。

 

 

「ククッ……クックック…本当に、興味が尽きないお方だ」

 

 

「やだなぁ褒めてもなんも出ないっすよ?」

 

 

「虚構の閨よ、それは褒めているかどうか怪しいぞ?」

 

 

記録上、マエストロは羽音デミ、それも『この』羽音デミには私と示す反応が違う。私にとっては彼女は強大な力を持つ実験対象(モルモット)に過ぎないが……。

 

 

ここにゴルコンダが居れば彼女をどう指し示しただろうか?どう表現しただろうか?幾分かマエストロと私では見えている世界が違う、私が理解しきれる表現、又は理解を得る為には、やはり彼女が言うようにペースを上げて解析を進める必要がありそうだ。

 

 

「それで契約なんですけど…あ、マエストロさんは聞かないでね、ごにょごにょ」

 

 

伝えられた契約内容は次の三つ。

 

 

その一

 

 

私はこの契約の内容を羽音デミに伝えず、又先生以外の存在に他言しない事。

 

 

その二

 

 

契約履行に辺り、指示した時間、指示した行動、指示した内容まで辿り着けば契約終了となる。

 

代価は羽音デミの知識、そして羽音デミに対する絶対的な対抗手段、彼女のあらやる行動、権能から身を守れる物を与える。

 

 

その三

 

 

与えた物品の譲渡後は当人物の自由にしても可、尚この契約、譲渡品には所持者と羽音デミ、双方の了承を得た状態でしか効力を発揮しない。

 

 

 

指示については契約期間内に脳内に直接伝えるため、場合場合によって対応をしてもらうことになる。

 

 

 

 

 

 

「そしてこの契約を、私が元々契約していた黒服さんとの契約に上塗りするっす」

 

 

「……なるほど、私はこの提案を拒絶できない、貴女は本質的には羽音デミと同一人物であり契約上の『互いの提案の全面協力』に引っかかる」

 

 

「でも一方的に押し付けちゃうと黒服さんも嫌でしょ?だ・か・ら、互いに得のある取引にしましょってことでこの内容っす」

 

 

「分かりました、その相乗り…受け入れましょう」

 

 

「それじゃこの時点から活動宜しくっす!私にばれちゃダメっすよ?ただでさえアンタら崖っぷちなんだから…これ渡しておくんで、それじゃ!」

 

 

彼女は再び肉片に戻ってしまった、その後は何も反応せず、一応その肉片は保管室で管理してある。

 

 

渡されたのは黒い球、それ以上に形用できることは無いが手にした事で彼女の知識、そしてその仮の力を与えられてしまった。

 

 

「……マエストロ、ゲマトリア全員での会議を致します、準備を」

 

 

「…それは、『ゲート』か…ゴルコンダに協力を仰がねばならんな、剥き出しにしておくには余りにも危険すぎる、実在と虚像、名もなき神の権能をも超えた創神の力か」

 

 

「これを今放置しておくだけでも現実と夢の境界線が崩れかねない、キヴォトスに影響が出る前にある程度の『定義』による封印を…」

 

 

自分が放った言葉だったが、それは正に青天の霹靂に値したものだった、何しろ元々持って無い発想が口から飛び出てきたのだから。

 

 

「……『定義』による封印?」

 

 

これは後述ゆえに先ほど語らえた『蓋』の話と結びつけるが、私が最初に彼女の正体に違和感を持ち始めたのはここだった。

 

 

あの少女はまず間違いなく羽音デミだ、あの少女こそが羽音デミなのだ。

 

 

実験対象であった彼女は羽音デミではなかった、あれは正真正銘『羽音デミ』という存在を人の身に縛り付けておく枷でしかない。

 

 

あれほど死臭と血に濡れていた部屋にいたはずなのに、それが思考に届かないほどの清涼感を感じる。

 

 

これで私に残された時間も少ないことが判明し、この事態の解決に先生の協力を仰がなければいけないと判断してこの記録を残す。

 

 

「あれは、あの存在は」

 

 

『羽音デミ』は正体不明である。

 

 

「あの存在は…」

 

 

『羽音デミ』は正体不明(UNKNOWN)である。

 

 

「■■■」

 

 

 

 

 

 

“……?”

 

 

“映像が、途切れた”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私』はそんなたいそうなもんじゃないっすよ?先生、ただの生徒っす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ッ!!”

 

 

危うく画面を壊しかけた、これは既に撮影された映像の筈…黒服が仕掛けたものか?

 

いや彼は中途半端な嘘は…付かない。この映像媒体に対しての干渉にしても消すのは自分に関しての話か。

 

 

“ねぇデミ、もう少し教えてくれても構わないんじゃない?”

 

 

 

えー

 

 

 

パソコンの画面に文字が映し出される。

 

 

“あ、会話してくれるんだ…”

 

 

 

先生とだけっすけどね まぁ…ヒフミちゃんとかに話聞いたら大体日常生活何してたのか分かるんじゃないっすか?

 

 

 

“そのことなんだけどねぇ…『思い出しにくくなっている』らしくて”

 

 

 

…まじ? 好き勝手しちゃってまぁ  なら私んち探ったら良いこと有るかもっすよ?

 

 

 

“…分かった、ありがと!お礼は会えた時に…『君達』おすすめのカフェで奢らせてもらおうかな?”

 

 

 

分かってるぅ!! 流石先生、絆レベル爆上がりっすよ!

 

 

 

“あはは…それじゃまた会うまで”

 

 

 

先生

 

 

 

“…どうしたの?”

 

 

 

今、先生がしているその顔を生徒に見せれますか?

 

 

 

“はは、見せれないね”

 

 

 

ならそのガンギマリ殺意漏れ出し状態抑えといてくださいっす、後ろで寝てるワカモちゃんに悪影響出ちゃいますよ?

 

それに私も生徒扱いしてくれるのなら特に

 

 

 

“……ごめん、見えているとは思ってなかった”

 

 

 

見えてないです、ただ

 

 

 

私だったらそんな風に そんな顔になっちゃうんで 見てきたもんですから

 

 

 

“そ……っか”

 

 

 

まっ、私の分まで先生が怒ってくれるならそれで 黒服に多めにパイルドライバーぶち込んどいてください 私も頑張っとくんで

 

 

 

“…デミは……”

 

 

 

敵か味方か、どうなのか?

 

 

 

“本当に優しいね”

 

 

…へぇ〜?そりゃまたどうも

 

 

“早く顔と顔を合わせてみたいな”

 

 

ふふん、先生譲りのエスパーを披露したかったっすけど、先生はそういう事、あんまし口出さない人でしたね

 

 

 

 

敵なのか、味方なのか、何をしようとしているのか、それは私が考慮すべき問題では無い。

 

 

抱くのはただ何の理由もなく未来への道を閉ざすものへの怒り。誰かが傷つかなければ解決出来ないというのなら、それは生徒が支払うべきモノでは無くて、私達大人が支払うモノ。

 

 

“続き、見るか”

 

 

先生

 

 

ちゃんと見てあげて それでいて哀れみを せめて先生だけはお願いします

 

 

これは本来知られなくていい物語 誰にも知られずとも何の影響もない どうだっていい話 これで得れる情報も元々黒服から聞き出せばいい 本当に何の意味もない彼女の軌跡

 

 

だから 見逃し厳禁っす

 

 

 

別に『どれだけ苦しんだか』を見せたいわけじゃないんで

 

 

 

“分かってるよ、安心して”

 

 

 

ん~! 先生百兆点満点!! 

 

 

 

 

 

愛してるっす!!! 先生!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【■■Day】

 

 

解析方法 解析手順追加 機材追加 ・裁断機

 

 

【■■Day】

 

 

解析方法 解析手順追加 薬品、薬剤追加 ・苛性ソーダ ・フッ化水素酸

 

 

・濃アルカリ性薬品 ・ジアモルヒネ 

 

 

        ・

 

 

        ・

 

 

        ・

 

 

 

【■■Day】

 

 

解析方法 解析手順追加 ・塩5㎏ ・塩素系洗剤1.73ℓ

 

 

【■■Day】

 

 

解析方法 解析手順追加 ・粉砕機5台

 

 

 

        ・

 

        ・

 

        ・

 

        ・

 

 

【■■Day】

 

 

解析方法 解析手順追加

 

 

【■■Day】

 

 

解析方法 解析手順追加

 

 

 

【■■Day】

 

 

解析方法 解析手順追加

 

 

【■■Day】

 

 

解析方法 解析手順追加

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【■■■Day】

 

 

 

 

 

足りない、何もかもが足りなかった。それでいて間違っていた。

 

 

空のプールに手掬いで水を入れて満タンに、死体に食事を、枯れ木に水を。

 

 

「というわけなのでこれからは少し研究に没頭させていただきます、しばしのお別れになるかもしれません」

 

 

あのビナーの顕現、そしてあの闇の放出で分かった。『羽音デミ』も確かに怪物ではあるが、目の前の少女自体も引けを取らない厄介事であり、これならば確かに世界を滅ぼせてしまう。

 

 

ちいさな少女が抱いている憎悪に実行力が肉付けされてしまった、名もなき司祭の顕現の予兆も現れてしまい、『羽音デミ』を取り巻く事情程、複雑怪奇なものではないのだが私に止める手立てはない。

 

 

その上、私には私なりの目標がある。彼女達に振り回されるばかりではいられないのだから。

 

 

「…どういう心がわりっすか、ミキサー機に放り込まれるのも、そろそろ嫌になってきたんすけど、ジュースにされながら焼かれる感覚味わったことあります?同じ目に合わせてやりましょうか?」

 

 

「そう言われましても…貴女にコキ使われてさすがの私といえどヘロヘロですよ、全く」

 

 

「はん、こっちが幾ら使っても大丈夫な資材で契約したんすから、自分の愚かさを…ーー」

 

 

携帯を触りながら話していたデミの言葉が一旦止まる。

 

 

「…そうだ、トリニティでの一件落着したことだし、海でも行きます?」

 

 

「ほう、海ですか?」

 

 

「そうっすねぇ…大体二週間後に先生とワカモが秘密裏にこのリゾートにデートしに行くらしいんで、カチコミかけましょ」

 

 

「…どうやってお知りになったんですか?」

 

 

「神性顕現…アンタらがさんざん鍛えてくれたおかげでいろいろできるようになったんすよ」

 

 

これ以上の干渉はこちらの譲渡品に対しての対抗策を理解される可能性もある。

 

この映像の先生への引き渡しに対して一時的に譲渡品の封印解除を行い保護を行ったうえで引き渡す。

 

 

出来る限りの研究を重ねたうえで、推測の終着点を記載する。

 

 

 

 

 

【羽音デミ】

 

 

 

【 多次元解釈によるキヴォトスの外からの来訪者 自身が引き起こした行動をトリガーに精神のみを羽音デミに宿したアストラル体

 

無名の司祭の干渉による脅迫概念 それによる自閉的な自責、呵責によって統合失調、解離性障害、躁鬱混合状態にある

 

 

羽音デミの記憶を枷と杭としてこの世界に根を下ろせていると考えられる 又 ヘイロー自体も変質しており、外見を除く神秘の変質が起きたと推測される

 

 

肉体は存在している事が重要なのではなく、あくまで肉体情報が保存されたヘイローが本体であり、コピー&ペーストの要領と何ら変わりはない

 

 

あらゆる精神負荷を拒絶する程に破壊された精神 あらゆる負荷を無視する存在方法

 

 

基本的に彼女が存在していようがしていまいが、どのような事があっても『世界の終幕』足り得ることは無く、完全に放置されていたとしてもこの世界には何の影響もなかったと考えられるだろう

 

 

先生の死のみを以て終幕機構として機能する

 

 

与えられた『終幕理論』 それと同じ解明だった

 

 

 

 

 

 

 

『先生、確かに検証は無駄だったかもしれません、彼女に依頼されたのは彼女を殺す方法ですが、それも難しいでしょう』

 

 

『しかし結論は手に入れました、どんなものであれ確証がなければ行動にも支障が出ます』

 

 

『…結論ですが、少々品のない言葉になりますが語りましょう』

 

 

 

 

『彼女は廃棄孔、あらゆる世界で無視され続けてきた『負』の側面そのもの』

 

 

 

『デカグラマトンのPASSを汚染し得る程に汚染された、《もしもの世界》の…』

 

 

『いうなれば、ごみ箱、それが無いと都合が悪いという理由で存在する必要悪、それ故にその存在意義は絶対に覆らない《都合のいい存在》』

 

 

『ただそれだけです』

 

 

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