ブルーアーカイブの隅っこで   作:カピバラバラ

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ごめんなさい〜……ちょっと行事と用事が立て込み過ぎて書ける時間が無かったせいで、更新大幅に遅れちゃいました、許してください何でもしますから!!(更新速度早めれるように頑張ります!!!!!)





血に沈む太陽 灰に埋もれる明日 その1

「賑わってますねぇ…」

 

 

窓から見える見渡す限りの人だかり、人の波、人の海。

 

 

行列ができる前に滑り込んで来れたのは良いものの、この後外へ出る事を考えれば憂鬱になるほどの人が雪崩となってひしめき合っている。

 

 

「先生もお誘いしたかったのですが、条約の方で忙しいと……残念です」

 

 

ストローに口を付け、グラスを置く。回転したストローが氷を動かしコップにぶつかり、からん、と子気味良い音を立てるも大衆の発する音に消えていく。

 

今はどんな言葉を発しても、誰の耳にも届かず消えていく事だろう。

昔の時の様に……。

 

 

「■■■…」

 

 

「何言ってるの!?!?」

 

 

あら、今はそうじゃないんでしたね。

 

 

「何って…■…■…■…って言ったんですよ?コハルちゃん」

 

 

「ゆっくりハッキリ言わないでよ!!もう!引っ張って連れてこられて、こんな人だかりの中を掻き分けて、勉強会なんてもう私には…」

 

 

「そんな事言って、三年次のテストを受けてしまわない様にして下さいよ?」

 

 

「そんなアホみたいなミスする訳…!そもそも、私ってもう補習部じゃないのになんで」

 

 

「『なんで誘ったのか』そんな寂しい事言わないで欲しいです、コハルちゃん……私達補習授業部の仲間じゃないですか」

 

 

「それはそうだけど、またアンタに…その、えっちな言葉を……」

 

 

「■■■■■■■■…」

 

 

「!?!?!?!?!? エ駄死!!!」

 

 

「あらあら♡ついでにこちら、カーマスートラです」

 

 

「ミ。」

 

 

「あらあらあら♡♡ ただの本ですよ?コハルちゃん」

 

 

そのまま羽で顔を隠しながら横に倒れていったコハルなのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対岸が慌ただしくなっている間、此方も大変な事になっている。

 

 

 

「ヒフミ、これを飲んでみてくれ」

 

 

「……あの〜…アズサちゃん?その、これは…」

 

 

差し出されたグラスの中には、ドロドロのシュワシュワでグツグツとした謎の液体が入っていた。

 

 

「混ぜこぜドリンク、先生にやりたい事はやれる内にやっておいた方がいいって」

 

 

「…黒、色」

 

 

「うん、なんかこうなった、安心してくれ私も飲むから」

 

 

「安心出来ませんよ!?」

 

 

異臭、異音、異色のドリンク。口を付ければ必ず命の危機が訪れるであろう劇物を目の前にし、それがアズサから差し出されたものである事を考慮して下したヒフミの決断は……。

 

 

「い、いただきます…」

 

 

親友との思い出を、作る事を選ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「 」」

 

 

そのせいでトリニティカフェの一角にうつ伏せの死体が二つ出来上がってしまったのは、まぁ語るまでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、勉強を進めながらエデン条約のライブでも見ましょうか」

 

 

「はぃ゛…コハルちゃん……私の携帯を取って貰えますか…」

 

 

「だ、大丈夫?水飲む?」

 

 

「」

 

 

「アズサちゃん…目を覚まして……」

 

 

そう、当初の補習授業部の皆の目的は勉強会と称してエデン条約によって休校になったトリニティでの暇な時間を潰す事だった。

ここまで来るのにお祭りの様に賑やかだった街も、それが理由だ、今もエデン条約が始まるとなると民衆の視点が一斉にビルモニターに集まっている。

 

 

完全に人の波に埋まる前に皆でカフェに集合する事にして、鑑賞会をしようというのがハナコが持ち出した話で、結果今に至る。

 

 

「クロノス報道の方もあっちこっち動いているみたいで、ライブの視点も複数のチャンネルで分けてアップされてますね」

 

 

「あ!これ、このライブ配信先生映ってる!」

 

 

コハルが慌ただしく携帯をグラスに立て掛けて、映像を皆に見せるとそこには大量の正義実現委員会とゲヘナの風紀委員会の生徒達におしくらまんじゅうにされている先生が映っていた。

 

 

「「「「……」」」」

 

 

同時に連邦生徒会のインタビューにもその映像が流れており、にまにまとしながら記者がマイクを持ち始めて…。

 

 

『シャーレの先生の元に大勢の生徒が集まりすぎており!クロノス報道が立ち入る隙間もありません!連邦生徒会の先生は名実共に大人気ですね、連邦生徒会の七神リンさんとしては先程、無闇な混乱を防ぐためエデン条約には関与せず、という意思表示をなさいましたが……シャーレの先生に関してはその限りでは無いと?』

 

 

『連邦生徒会管轄下であるシャーレは、今現在トリニティティーパーティーからの依頼での参入となっており、私達の直接的な関与はありません、従って先生に関連する事象は、先生自身の自己責任能力の管理で行われている事であり、以前私達連邦生徒会はエデン条約に対しての介入は行わず、各自治区間の対応に任せます』

 

 

 

 

「うふふ、相変わらずですねぇ、連邦生徒会は」

 

 

「先生が揉みくちゃにされてる……身体細いから折れちゃいそうなのに」

 

 

「けほっけほっ……先生は今古聖堂か」

 

 

「アズサちゃん!起きてくれて良かったぁ…」

 

 

その後も雑談は続き、エデン条約に関する話題は尽きた頃……。

 

 

 

色々な話題を出して、雑談する度にヒフミの表情が僅かに、ほんの僅かに暗くなっていくのを、アズサは見ていた。

 

 

 

「開始まで後数十秒ですね…ドキドキしてきました」

 

 

「……」

 

 

「あ、そうだ…夏に遊びに行ったリゾート地でデミ先輩に会ったって本当?」

 

 

「…本当です、黒ヘルを被っていたけれどあれはデミちゃんでした」

 

 

「も〜!全く、一人だけ夏季休暇を取って姿を消したなんて噂を聞いた時はびっくりしたけど、悠々自適に遊んでるとは思ってなかった!昔っから何も言わずに何処かに行っちゃう癖、変わってないのね!」

 

 

「……夏季…休暇?」

 

 

「そうよ?ティーパーティーからなんたらかんたらってハスミ先輩が……」

 

 

「そうですねぇ、ここにデミちゃんも呼べたら良かったのですが、生憎連絡も着きませんし、仕方がないです」

 

 

「………」

 

 

「…ヒフ…ーー」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()は分からないけれど、ヒフミの暗い顔を見るのは嫌だ。

 

つい先程、この手に持っている眼鏡のペロロ様……合宿の時に彼女からプレゼントしてもらった宝物。そのストーリーを解説してもらった所なのに、今のその顔では大円団を話すには暗すぎる。

 

 

そう思いヒフミに触れようとした瞬間……。

 

 

空を流れる流星が、視界に入った。

 

 

 

「……っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「み、皆さん!押さないで下さい!怪我をしてしまう人が出るかもしれないので……!」

 

 

“う、動けない…”

 

 

「「【先生ー!!】」」

 

 

始まりは、警備巡回をしている正実の生徒に話しかけた事だったんだ…。

いつも通りに話しかけたら、その正実の子が対岸の風紀委員の子にマウントを取り始めて、最終的には巡回、警備含めた大半の生徒が集まってしまい、こんな事に。

 

 

『このヤローォ!!』

 

 

『こ、こっちには先生が付いてるんだ!ゲヘナ共には渡さない!!』

 

 

『“あわ、あわあわわわわ…!”』

 

 

そうしておしくらまんじゅう形式に道を塞がれているのだけれど……。

 

 

「ケヒャヒャヒャヒャ!!ギャハハァッ!!」

 

 

「「「キャーー!?」」」

 

 

「正実の委員長だーー!?」

 

 

“ツルギ!”

 

 

上空に影が差し、皆が聖堂の上を見上げる、赤い凶星が降ってくる。

先生の元へと着地した赤黒い物体が唸るように声を出した。

 

 

「…お前ら」

 

 

たった一声、発しただけではあるが覇気がその場の全員に十二分に伝わってきて皆呼吸を出来なくなりそうになる。

 

 

「「は、はい!」」

 

 

「風紀委員含め両者とも、ここに居るのはシャーレの先生だ……多忙であり、そしてキヴォトスにとっての重要人、ティーパーティーとの連帯で来ていただいている」

 

 

「迷惑をかけるな、そして私達の役目を間違えるな、先生を含めここに居る者達を守る事が使命だと胸に刻め」

 

 

「ぐっ…トリニティの奴に正論を……!」

 

 

「解散」

 

 

「「【はい!!!】」」」

 

 

聖堂に詰まる程押し寄せていた生徒達もその号令で解散し、聖堂には数名の警備とヒナタ、先生、ツルギが残るのみとなった。

 

 

元より先生はエデン条約の立会人、元い緩衝材としてナギサに依頼されてここに来たのだが、先生自体には別の目的がある。

記憶の返還……託された記憶は、最悪の未来を歩んだ未来。

 

 

『“…ぅ…ヒ…ナ……ツルギ…アズサ…”』

 

 

この場で、何かしらの事態が発生し……その結果先生だけが生き残った、そんな未来。

 

 

“ツルギ、ありがとう”

 

 

「……は、はははへひ、はい!」

 

 

数十分後に起きる最悪の光景、それを防ぐ為に急ぐ必要がある、彼女の通った未来を見ておきながら易々と繰り返す訳にはいかない。

 

 

の、だけれど……古聖堂をヒナタに案内して貰っている途中にこんな事に。

 

 

“本当に助かったよ、いつも優しくしてくれて……今度またお礼をさせてくれる?”

 

 

なんだか最近は恩のツケが溜まりすぎてきて、大丈夫かな?取り立てにシャーレのビルとか差し押さえられそうな量だけど。

 

 

「い、いえ、そんな…とんでもありません、先生…それでは私は別の任務があるので…失礼します」

 

 

“またね、ツルギ”

 

 

 

「ふ、ふぅ……大変な事になっちゃいましたね…」

 

 

“ヒナタも助けてくれてありがとう、確かこの後は調印場に行くんだっけ?”

 

 

「はぃ…エデン条約締結の場として選ばれた古聖堂を先生に案内して欲しいとナギサ様からお達しが来ていましたので」

 

 

『通功の古聖堂』第一回公会議が行われた、因縁の地。

 

 

「力以外取り柄の無い私ですけれど、任された役目を果たせる様に……したかったのですが、迷惑をかけてしまってごめんなさい…」

 

 

“あはは、大丈夫だよ?さっきのは私の責任だから気にしないで、こちらこそごめんね、それじゃ案内を続けてもらおうかな?”

 

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲヘナ

 

 

 

風紀委員会 風紀委員長の執務室

 

 

 

 

 

「引、退…?」

 

 

「…そこまでじゃないけれど、これからは活動を控える形になる、ETOは実質的な風紀委員会の後任、マコトに枷を嵌めるのと同時に私の役回りは不必要になる」

 

 

ETOの発足は、同時に絶対的リーダーを必要としない新しい自治活動の形だ。先生が話してくれた通り、このまま行けば私は後を憂う事無く引退する。

 

 

ゲヘナは生まれ変わる、そしてその世界に私という装置は要らない。

 

 

「安心して、アコ……今は不満足かもしれないけれど、時々姿は見せに行くから」

 

 

「委員長!そういう話では……」

 

 

「アコが私の事を好いてくれてるのは分かる、けれどその私情を業務内容に持ち込んではいけない、ETO発足後の戦闘指揮は貴方が取る事になるだろうから」

 

 

「や、そ、そんな……いえ!違います、そもそもあのタヌキにトリニティの連携とはいえ、武力行使できる権限を持たせればどうなるかなんて、委員長なら…!枷にすらなり得ません!」

 

 

「うん、だから引退まではいかない、マコトは同じ事を何度も繰り返す奴だから……まだ私が必要、トリニティがマコトに首輪を付けれる時まで」

 

 

「っ…」

 

 

「とりあえず今は調印式に向かおう、話はそれからね」

 

 

「分かり、ました…万魔殿から車が配備されています、本人達は新しい飛行船を買ったらしく、『空を飛ぶ私達と綺麗に比較できるように、地べたを這って来い』と」

 

 

「……イロハも大変ね、とりあえずチナツもイオリも待ってる、行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古聖堂地下 カタコンベ

 

 

 

 

灰色の世界で、闇が動き出す。

 

 

 

運命を縛られた少女達の歩みが今、始まろうと。

 

 

 

「……準備は?」

 

 

「問題無し」

 

 

「は、はい!終わりました、チェックも出来たし問題無しです」

 

 

「あの人形、そして黒い男との接触は?」

 

 

「(スッ、スッ……)」

 

 

「なら問題無さそうだな、準備は整った」

 

 

通信機を手に取って、天罰を下す、その命を与える。

 

 

《全部隊に告ぐ、……私達の憎しみを、私達の苦しみを思い出せ》

 

 

アズサ、お前も直に思い出す。

 

 

《全ては虚しく、そしてそれは等しく降り注がれる、それが真理であり真実、嘘偽りの無い世界そのもの、私達が歩んだ世界だ》

 

 

この世界の真理は何時だって変わらない、お前は一時期の安寧と平穏の中で忘れているだけだ、ゲヘナとトリニティと同じ様に。

 

 

《ゲヘナ、トリニティが忘れ去った、いや……忘れる事を選んだ世界の真理を、思い出せ》

 

 

《Vanitas vanitatum et omnia vanitas》

 

 

誰も彼も逃げられはしない、真実はただ虚しく、世界はそうである事が正しい形として私達をこの世界に産み落とした。

 

 

忘れているだけなんだ、気付いていないだけだ、この世界に希望は無く、夢は無く、未来は無く、ただひたすらに虚しくあるだけ。

 

 

故に、私達は審判を下す裁定者である。故に私達は楽園(現実)の名を持つに相応しい者達である。

 

 

《作戦を開始せよ》

 

 

子供の頃に抱いた(希望)は幻だった、私が信じた楽園など、最初から存在していなかった。

 

この世界に楽園が存在しないのならば、私達がその名を以て教えてやろう。

 

 

 

楽園に、私達は既に足を踏み入れているのだと。

 

 

 

《では、散開》

 

 

 

「………私は、少し用事がある、後で合流する」

 

 

「(スッ……スッスッ)」

 

 

 

なら、どうしてアズサはこの世界(現実)から駆け出して行ったんだ?

 

 

「……」

 

 

何故居なくなってしまったんだ、アズサ。

 

 

何故何処かへ『行けてしまったんだ』

 

 

何故、それを私達は見つけられないんだ。

 

 

アズサ、教えてくれ、私達はどうすれば良かったんだ。

 

 

「……だから、思い出させてやる」

 

 

否定しなければ、拒絶しなければ、そのようなものを抱いてはいけないから。

 

 

 

そうでなければ、私達は、何のために…ーー

 

 

 

何のために、今まで…

 

 

 

何のために、生きてきたんだ。

 

 

 

ーー全部、真実()である筈なのに。

 

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