今回、迷宮キングダム独特な表現が多いので解説多めにしてみました。
その日は、クソ長い正式名称*1を略して『ザンク』の連中はあのままその場に残し、とりあえず旭川市警御用達だという焼き鳥屋に行き、作戦会議をした。
焼き鳥うめえ。
「……なんで豚肉なのに焼き鳥なんだろうな?」
「ね?なんか東京の方だと焼き鳥に豚は無いらしいよ?雑誌に書いてあった」
「ほーなのか」
キラキラも普通に焼き鳥(豚)食いながらアホみたいな会話をしている。
焼き鳥をガラナで流し込む。道産子スタイルにも慣れてきた。
「ところで、作戦会議とかしなくていいの?」
「……言うな」
やっても無駄だと判断しただけだ。
というか、オレら割と出る幕がなあ。
「いやあ、地底人とはまた変なことに巻き込まれちゃったねえ。聖華学園時代を思い出すよ。
……今だけはボクが旭川の代表なわけだし、ちょうどいい機会だから色々試してみよう。ま、失敗しても父さんが任命責任で尻拭いしてくれるだろうしね」
「ははは。聖華学園の誇る『外道:二代目』は割と相変わらずですね。悪対のお誘い断ってこのクソ寒い田舎までついてきた甲斐がありました。まあ元聖華の連中は坊ちゃんに任せます。
すぐ隣では大人どもが焼き鳥食いながら酒を片手に汚い会話をしている。というか、普通に大組織の幹部とかその辺の会話だ。
オレやポルノだったらもっとアホなことしか言えない。
「……オレはなれるんだろうか。あの二人のような『立派な大人』に」
「いやアレ、普通にクソみたいな大人だからね?真似しちゃダメな奴だからね?」
そんなことを呟いてたら、キラキラに教えられた……マジか。
そんな感じで大体腹も膨れたので、帰って準備をする。
(オレが出来るのはこれくらいか)
前に買っておいた三種の属性ボム。火炎相性のナパーム弾を赤く、氷結相性の窒素ボンベを青く、電撃属性のライアット弾を黄色く塗って鞄にしまう。
後は適当に回復アイテムをミナミで買った頑丈だけどデザインがゴミな安い鞄*2に詰め込んでいく。好きな時取り出してぶん投げられるようにする生活の知恵って奴だ。
それから、ニコのコネで買った装備の着心地を試してみる。
ガスマスクに、歩人甲、ローラーブレード。普段この格好で歩いたら間違いなく不審者扱いされるが、そこは歩人甲の胸元に堂々と描かれた『旭川市警生活安全課』の文字で無効化できる。
(……流石はニコ。完璧だ。悪用するなとは言われたが、これで街中歩くくらいはセーフのはずだ)
騙してはいない。こちらが生活安全課を名乗ってるわけじゃないんだから。
ただただ、ほぼほぼ新品だけど中古で手に入れた歩人甲の表面に文字が残ってるのを消すのが面倒だっただけだ。
……そう言っておけば契約刑事どもでも逆らわない。そうニコが言ってくれた。
よし、準備はこんなもんか。
最後にCOMPで仲魔の状態を確認し、就寝する。
思えば、一人で寝るのは久しぶりだ。キラキラはキラキラでなんか『準備』があるらしいので。
*
そして迎えた朝8時。
「やっばあ……お兄ちゃんの本気舐めてたわ」
「お前んち、いつも『やり過ぎる』よな」
日曜の朝の廃牧場は、お祭りのような様相を呈していた。
「はいはい!こちらのおにぎりと豚汁は無料ですよ!どんどん食べてくださいね!お代わりどんどん作ってますから!
お昼からは百夜堂特性の蒸したてのお饅頭もはんば……じゃなった配布もありますからね!」
「食わずに、お持ち帰りは厳禁やで!余った分はうちらの晩飯とおやつになるさかい、食わんでもええからな!?フリやないで!?」
お祭り運営委員会から派遣されたらしいシズコとアヤメが開いた炊き出し所には、ジェイルハウスからの雇われとザンクの連中*3と契約刑事共が群がっていた。
ここからでも豚汁の匂いが漂って来る。朝飯ちゃんと食ってこなかったら普通に行列に参加していたところだ。
「おらおめーら食え食え!タダ飯だぞタダ!宿舎の微妙メシ抜いてきた分まで腹に突っ込んどけ!」
「ほらほら、慌てないの♡お代わり自由らしいから、ゆっくり味わいなさい」
その中には元ブラックアドレスだったはずのバカと龍田の様子も見える。なんかちっこい子供が何人か一緒にいる。
そうか、アイツら多分コンビナートのガキどもか。はふはふ言いながら一生懸命食っているのが見える。
「同志オータムクラウド……ニコ様、旭川に戻ってから前よりパワーアップしてない?」
「同志ポポルスキー……正直私もそう思う。って言うかクマきゅん、タナちゃんの婿って噂はマジなのかしら……また女装してくれないかしら」
「うーん。良いわねえマジファンタジーな衣装!創作意欲が捗るわあ!」
「とりあえずキリギリスにスレ立てしておくか。旭川ファンタジー祭り実況スレとかで」
なんでいるんだあの変態コンビ。てかアイツら普通に集団になってる……こわ。
「いいかお前ら!今日の任務はアレだ!生き残りの雑魚蹴散らして生存者拾って来るだけのお仕事だ!戦いは雇われどもと坊ちゃんの手下がやるらしい!無理はすんなよ!」
「分かってますって!こっちは金と功績貯めて家族呼びたいんで無理は出来ませんて!」
「……ふ。アメリカに残してきた妻と娘、元気にしてるかな……」
「オレ……来月結婚するんだ……そうしたらアサヒカワ市民になれるって、ニコラウス様が……」
「……オレも」「アタシも」「僕も」「私も」
「お前ら結婚多い多くない?契約刑事全員にジャパニーズ結婚式禁止のお触れ*4出たからってさあ!?」
「世界のことなんざ知ったこっちゃねえが、アサヒカワはもう俺達の『故郷』だ。たとえこの前のクラゲみたいな怪獣*5が現れたって守って見せらあ」
多分、契約刑事の連中であろう奴らは、なんか独自の世界作ってた。近寄ったら死にそうな気配してるから見なかったことにしよう。
『はーい皆様ご注目!』『作戦概要を説明しますよ~!』
拡声器で響き渡る、ニコとフブキの声。
『まず、ウチのクマとタナが、仲魔連れて突っ込みます!入口付近にいるらしいヤバい敵を殺します!後は流れにのって一気に行きます。以上!』
『基本は、案内連れたクマ君の切り込み部隊、旭川大学TRPG部と雇われの残敵掃討部隊、それからザンク民*6救出する契約刑事部隊になります!作戦から外れた行為は自己責任です。以上!』
『終わったらジェイルハウス貸し切りにしてるから、飲み放題食べ放題だよ!お金は本田一家が出すので、心配しないで!』
『というわけで宴会前にうっかり死なないように、安全に気を付けて作戦をしましょう!ご安全に!』
湧き上がる歓声。
割とノリノリかつ適当な漫才じみた作戦説明が終わる。
……そうか、オレが一番危険なポジか。まあ、当然だな。
「え、ちょっと聞いてないんだけど!?」
キラキラはなんか焦ってる。予想外だったらしい。
「……怖いか?」
「……まさか!こんなん怖がってたらアキョウできないでしょ!?」
ちょっとビビってる様子だったので、オレは無言でキラキラ抱き寄せる。
「もうすぐポルノが帰ってくる……今夜はガッツリ楽しもうぜ」
「う、うん♡楽しみにしてる。今度こそ、アタシが守るからね、クマ」
よっしゃ落ち着いたし、今夜の予約、ゲットだぜ!
「……あのう。ニコラウス様に、案内役を頼まれたのですが」
おっといたのかビカラ。気づかなかったぜ。
「むむう……ニコラウス様の命令とはいえ、うちのニンジャ*7取られるの困るんだけどなあ」
「でもそれが今回の作戦の条件である以上、仕方ないでしょう」
「この際、ビカラの代わり埋められるような逸材*8、借りれませんかね?いやどうせなら回復役*9欲しいんですけど」
そんな会話が後ろから聞こえる……ビカラお前一体なにやったの?
「ううう……確かに『列強*10にて最強』名乗って属国*11にしたのに王国壊滅の時にクソの役にも立たなかった*12のは認めますけど!?」
……どうも嫌われる理由があるらしい。新ワード垂れ流すなや。
「しゃあねえなあーーーSUMMON妖精シルキー」
余りにも不憫なので、オレは二軍枠から仲魔を呼ぶ。
「あらサマナー。今回は私の出番ですか?」
「ああ、このビカラの分だけ、入れる枠が余る*13からな。あそこにいる『自称宮廷*14』ども、手伝ってきてくれないか?適当に」
呼び出されたのは、メイド妖精で有名な妖精シルキー。氷結魔法と回復に特化した安定の回復役だ。
Lvがちょっと足りなくて使えてなかったのでちょうどいい。
「……サマナーが言うのでしたら」
シルキーは不満げだが、忠誠度カンストだし、お手伝いくらいはしてくれるだろう。庇うのは期待できんが。
「おーいそこの、人材を貸してやろう」
大声で呼び出すと、どやどやとこっちに来る。
「これは……見たことない種族ですが妖精のメイドですか?」
「Lvはちょっと弱そうな気がします」
「メイドにメイドが被るなあ。で、この子は何が出来るの?」
適当なこと言ってる宮廷どもに、説明してやる。
「妖精シルキーだ。Lvは24。出来るのは『メディア』『ディアラマ』に『ブフ』だな。戦うの嫌いで、耐久もそこまで高くないから、前衛にはできんぞ」
シルキーが使える最強の技である『忠義の氷結』については省略する。
どうせコイツらに忠誠誓うとは思えないので、言うだけ無駄だ。
「全体回復と単体大回復に加えて遠距離攻撃魔法って……マジですか?」
「死んだリフ様よりずっと強い*15ですよこれ!?この方と比べたらリフ様実質ただのきずぐすりですよ!?」
メイドコンビが驚愕の表情を浮かべたまま、酷いこと言ってる。
で、国王様の判断*16は?
「……あの、ビカラ上げるので、このシルキーさん、くれませんか!?逸材トレード*17しましょう?」
だから、お前らいちいち即断即決*18過ぎるだろ!?
「……シルキーが承諾したら認めよう。頑張って口説き落とせ。失敗してもビカラは返さん。それでいいなら」
「よっしゃあ!?聞きましたね!?なかったことにはできませんからね!?*19」
断られる前提で言ったのにOKなのか……というか明らかにやる気出してる*20の何なの?
「……お前、なんでアイツらに仕えてた(過去形)の?」
流石に合法都市人よりヤバい価値観の持ち主*21にドン引きしながら聞く。
「え?まあボクは『ダイナマイト帝国*22から派遣された大使*23』で余所者だったから……探索はドロシーで大体足りる*24とも言われてたし」
「お、おう……」
流石の地底人、その辺滅茶苦茶薄情だな。てか『ダイナマイト帝国』ってなんなんだよ。面白ワードこれ以上増やすなや。
オレは、地底人の常識は理解できない*25と言われてた理由が理解できた。
無名地区はなんだかんだ身内にはそこそこ優しかった。余所者と敵と裏切り者には一切容赦しないってだけで。
「しょうがねえな。これやるよ」
余りにも不憫なので、昨日用意した消耗品セットをそのまま渡す。
まあ緊急用の回復アイテムは別途持ってるから……
「ええ!?こ、こんな上等な鞄*26頂いて……中身がいっぱい!?」
「ああ、赤いのが炎、青いのが氷、黄色いのが雷の『爆弾』だ。9個ずつ*27ある。あとは魔石とか宝玉とかの回復アイテム*28だな。
蘇生用の地返しの玉は3つしかない*29から、使いどころ間違うなよ?」
……なんか固まったあと、地面に這いつくばったぞ?
「一生ついていきます。『クマ大帝*30』閣下!とりあえず靴をお舐めすればいいですか!?そうすれば返さなくていいですか!?」
やめろ!靴を舐めようとするな!お前らの忠誠全体的に軽すぎる*31ぞ!?
*
というわけで一瞬で忠誠度がカンストしたらしいビカラを連れて、異界に入る。
入り口は、地下へと繋がるマンホールだった。
下っていくうちに、異界へと入った感覚があり、たどり着いた。
「ここが、地底。無名なる地下帝国*32か……」
ジンから聞いたときは『御伽噺』としか思ってなかった場所。
それが目の前に広がる、混沌の場所であった。
地底、すなわち『合法都市よりもデカい超巨大地下異界*33』である。
ーーーいいか。クマ、ポルノ。どんなに飢えても絶対に地下に潜ろうとするな。『取り込まれる』ぞ。
子供だった頃、そう教えられた。
ジンの故郷では、親を失った浮浪児は、下水道や地下通路などに潜るのが普通にあった*34らしい。
そこで地下ギャングと化すのが普通だったというが、合法都市では事情が違う。
合法都市の地下には『無数の異界への入り口』があるという。それも現実との境界がとても曖昧な状態*35で。
そしてそれに迷い込んだ者たち*36は、基本的に出られない*37。
そうして時間の流れも、場所も混沌とした異界に染まり、最終的にその住人*38となるのだ。
(ここを、ジンは旅したことがあるってのか……)
そこは、極めて普通な石造りの牢獄のような作りになっていた。
異界としてみればまあよくある光景……だが、その広さは『合法都市よりデカい』という。
(実際、旭川から合法都市まで広がってるってことだよな……ジンの言葉通りなら)
旭川の外れに地下帝国の末裔が現れたってことは、そういうことになるんだろう。
その事実に、キラキラともども惚けていたときだった。
「ーーー来ますよ!」
ビカラから鋭い声が飛ぶ。
そうだった。ここは、もう敵地*39だ!
そして、敵が姿を見せる。堂々と、正面から。
「我こそは『邪龍王四天王』にして邪龍王が娘、ヴィーヴルなるぞ!ひざまづけい!」
「ククク……どこの国のものか知らんがここで死ぬがいい。この『邪龍王四天王』が一人、アマゾーンの矢によってな!」
「さあ逝きなさい。我が死霊術により蘇ったラームジェルグども。この『邪龍王四天王』がウィッカの配下を増やすためにねぇ……」
「ふふふ……殺す前にそこのキレイなお兄さんを吸い殺したいわ!この『邪龍王四天王』アルラの養分になりなさい!」
「……し、四天王って普通『1人ずつ』じゃないの!?おかしくない?」
敵の群れを連れて現れた邪龍王四天王に、キラキラが思わず叫んだ。
「「え?」」
「「「「え?」」」」
その意味不明な言葉に、オレとビカラ。そして邪龍王四天王が首をかしげる。
「……え?」
何故かキラキラまで困惑する。
「戦力の逐次投入は絶対やめろってジンが言ってた」
「普通に全員の圧倒的なパワーで押しつぶした方が、強いですよね?」
四天王とかいう強力なのなら、全部一気に襲ってくる方が強いだろ、普通に。
「なんで一人ずつ?そんな余裕流石にない*40わよ?」
「こっちだってあと2部屋抜かれた*41ら邪龍王様の居室よ!?全力で迎撃するに決まってるでしょう!?」
「あの宮廷ども、逃げる時に徹底的にぶっ壊してったせい*42で罠作ってる時間もなかったのよ!?もう戦力ぶつけるしかないじゃない!?」
「まだ抵抗しとる第二領地*43奪う前に戦力整えてきおって!ふざけるなよ!?」
四天王も一斉に抗議する。そういうもんだ。
というわけで。
「「「「いざ死ね!我が国の繁栄のために!」」」」
「殺るぞ!全員作戦通りに!」
「はい!クマ大帝閣下万歳!」
「……え、これもしかしてアタシのがおかしいの?」
かくて、戦いが始まった。
戦闘はソウルハッカーズに準拠するものとします。
というわけで『シニカルポップダンジョンシアター』にして『迷宮国家運営TRPG』である『迷宮キングダムの世界観』を大事にしたバトルで行きます。
このゲーム『人口』が割と大事なゲームです。人口が『国家レベル』にもろ関わってきますし、『人口すりつぶす』ことで色々出来ます。
なお、初期作成の国家Lv1の人口は『50人』です。