サタスペ的成長
クマ:殺し屋取得。おたからゲット
キラキラ:戦闘が6にあがった。銃侠取得
ニコ:裏職人取得。恋人ゲット
権力者サイドにとっては、戦闘終了後からが真のお仕事なわけですね。
無茶した代償は払って貰おうか?
あの、奪還なんだか侵略なんだか分からない戦いが終わり数日が瞬く間に過ぎ去った。
「……なるほど、お前たちは少しでも目を離すととても危険なようだ。覚えておこう」
「ていうかそういうアニメ映画みたいなのをごく普通の街である旭川でやらないで欲しいんだけど?」
帰って来たダードとカーナはため息をつかれた。でもカーナ。多分だけど旭川も大分おかしい街だと思うんだ。
……変態連中もといTRPG同好会の連中から聞いた『魔都東京』ほどじゃないとは思うけど。
「ずるい。そんな冒険においてくなんて」
札幌で何があったのか、一回り成長してきて帰って来たポルノにはすねられた。
「悪いな。こっちもここまで話がデカくなるとは思わなかったんだ……ところでさ、ミナミに突然「旭川東方正教協会」とかいう謎カルト組織が出来たんだけど、なんか知らない?」
「……わたしはやってない。アイツらが勝手にやったこと」
どうやらコイツもコイツで札幌で何かやらかしたらしい。お前さあ……
「と、父さん……書類が、書類が殺しに来るんだ……書いても書いても終わらないんだ」
「地底人どもの管理、旭川市警生活安全課合法都市管理係に丸投げって、どういうことなの……地底人も一応は合法都市の住人って理屈は分かるけどさあ……」
ニコとフブキは、二人とも死にそうな顔をしている。オレはよくわからないけど『やったことの後始末』とやらでアホほど書類にまみれているらしい。
……自業自得だな。うん。
「若人が大いに挑戦することに異論はないが、君たちは大人だ。やったことの責任はきっちりととりたまえ。安心したまえ。日本にはポロニウムはないからな。
……『会計上の不備』と、『ちょっとした手続きのごまかし』については、私の方で担当しておこう。合法都市の住人に『許される範囲』をきっちり教えていくのが、今後の課題だな」
ダードが殺意を限界まで込めた笑みを浮かべていった時には、やっぱこの人こえーわと大いに思った。
「というわけで、なんとか処理が終わりました!」「イエー!やったねニコ!今夜はお祝いだ!」
一週間後、3徹目に入ったらしいニコとフブキが逝っちゃってる目で宣言した。無茶しやがって……
最後はお互いに信頼できる手伝い大量に呼んで人海戦術でなんとかしたらしい。それで大学のTRPG同好会の部室借りたとかどうとか。
ちなみに、二人ともそこはかとなく距離が近い。こりゃあ……
「……ニコが男になった。あっちのフブキとかいうのも女になった」
ポルノ。そう言うことは教えなくていいからな?そりゃあ若い男女が二人、一緒に三徹してなんか起きない方がおかしいけどさあ。
「……大学の部室で初体験かあ……クマ、ウチらも東京行ったらやってみる?」
キラキラ、そういうの言わないで?ポルノが何かすっごい顔で睨んでるし。
「というわけで、明日『ザンティンゼル牧場』の『復活記念式典』が開催されます!『勇者クマ』と『銃士キラキラ』は絶対参加するように!」
「勇者シグルドの剣を渡す大事な儀式がありますと『ジータ女王』からのお達しがあったので、行ってくださいお願いします!もうあのキ〇ガイ共と頭痛くなる交渉するの嫌なんです!」
……なんか泣きつかれたので、行くことになった。
ちなみに、折角なので関係者一同全部呼んで、ちょっとしたお祭りになるらしい。
*
「おおー……結構いい感じ?」
「地底人、バイタリティおかしいな……」
たった1週間なのに、大分様変わりしてるというか……普通に『村』出来てんじゃんどうなってんの?
オレはまだ舐めていたのかもしれない。異界でガチの生存競争やって生き延びてきた奴らの強さを。
「……これが、リアルファンタジー……」
ポルノも驚いている。初めて見る光景だから、無理もない。
立ち並ぶ、廃材利用したっぽい掘立小屋と、豪華に飾られた元牧場の主が住んでたという家。
厩舎と牧場は奇麗に整備されて、新品になってた。
少なくとも無名地区よりは治安は良さそうだ。住人は欠片も信用できないけど。
周りには多少は奇麗な服を着た地底人が仕事したり遊んだりしている……なんか明らかに数増えてるし、無名地区の住人っぽい人種混じってるのはなんなんだろう?
「フフフ。驚きましたか大帝閣下。あいつら『広い土地』を手に入れてどんどん拡大してますよ。シルキーも完全に取り込まれました」
「どわあ!?」
いきなり後ろからビカラに話しかけられて振り向くと……そこにはどこにでもいる『普通の女子っぽい恰好』したビカラが居た。
髪も黒くなってるし、獣人の耳もうまく隠している。気配も完全に一般人のそれだ。正直オレやポルノよりもはるかにどこにでも居そうな格好だ。
肩から掛けられてるのは、あの日やったクソダサ鞄。中身がパンパンなのか、大分膨らんでいる。
「ニンジャですから、忍び溶け込むのがお仕事ですので……あ、コレ。あたしの携帯*1の番号とメルアドです。連絡くれれば30分以内に行きますので。調査から夜伽まで、何でも言ってください……♡」
……なんだこいつ。一瞬で馴染みやがった!?てか30分てピザか!?
あと、夜伽はいらん。普通に間に合ってる。
「……これがマジニンジャ*2……」
「超本格志向じゃん……」
ああ、うん。コイツなら一瞬で紛れ込めるだろう。
多分、この影の薄さ使えばスリとか潜入とか暗殺とかも普通に出来るんだろうな……百鬼夜行のなんちゃってニンジャどもよりはるかに忍んでいる。
「あと、あのクソ宮廷は普通に見限りました。潰すならご一報ください。全力でやります。それと今後はお祭り運営委員会で働きます。
もちろん、クマ大帝閣下の指令は最優先するように、シズコ様からも言われてますのでお気軽にどうぞ」
それだけ言うと、再び姿を消したというか人込みに紛れ込んだ……なんかろくでもないのが勝手に仲間に加わった気分だ。
「あ!ポルノさん!お久しぶりです!」
「ジェイルハウスでお話は伺っています。今後ともよろしくお願いいたします」
そしてポルノも話しかけられてた。オレの知らん2人組に。
「うん。元気そうでなにより。頑張れ」
ポルノも普通に会話してる。多分、札幌で知り合った奴らだろう。
「……ねえクマ。あの人たちさあ」
「言うな。どうせ合法都市の住人だろ」
片方はまあ普通だ。ちょっと十字架にローブっていう宗教っぽい格好してるけど、それくらいなら旭川にもたまにいる。
……お付きが『ビキニアーマー着た女騎士』ってどういうことだよ畜生!?
「はーい!これから式典を開催します!皆さん集まってください!女王命令です!」
そんな疑問を持ったまま、ジータの呼びかけで式典が開始することになった。
……やっぱ軽くね?
*
式典は、珍しく快晴な寒い日の下で行われてる。
ビール瓶入れる箱並べて高くしたうえで布被せた壇上。
「本日は我が王国……じゃなかった牧場の再開記念式典にお集まりいただき、誠にありがとうございます!」
そう言ってるジータは、いつもの戦士Aな格好ではない。鎧とドレスを組み合わせた上に純白の、なんというかお姫様のような格好*3だ。
「フフフ。流石は我がTRPG同好会一のコスプレマニア、ハピエンマニアさんの作だわ。まるで姫騎士のようだわ同志オータムクラウド」
「今のは間に合わせのコスプレだから今日一日しか持たないらしいけど、これから正式衣装で作ってくれって依頼されたらしいわ同志ポポルスキー」
……なるほどなあ。あいつらそんなことできたんだ……
オレはあの変態ども思ったより才能あるな?と思い始めていた。
「そんで今日はまあお祝いだから、食べ放題!飲み放題だよ!駒場さんが知り合い中に声かけまくって色んな所から色んな人と食料集めてくれたから!式典終わったらガンガン飲んで食べてね!」
「ひゃっほーい!女王ジータ万歳!」
銀の匙とか書かれたトラックで焼かれる焼きたてピザに、甘いお菓子とチーズに、卵使いまくったオムレツ。搾りたてミルクと新鮮な卵使ったバケツプリンも用意されてるらしい。
ビールもジュースも当然のようにたっぷり用意されてる。まさにお祭りだ。
……予算処理はニコとフブキが一晩でやってくれました。また死にそうになってました。
式典会場まで漂って来る美味しそうなご飯の匂い。正直、式典さっさと終われよと言う気持ちになる。
「じゃ、お腹空いてきたからさっさとやろっか!」
女王ジータがノリノリで司会を行い、ザンク民がそれを適当な歓声だの拍手だので盛り上げる。
ちなみに賓客はみんなパイプ椅子だ。女王の椅子ももちろんパイプ椅子だ。
「なんていうか設定にはあってるんだけどこの、適当すぎるというか……昭和って感じ?」
キラキラ曰く、大体そんな感じらしい。
中学を卒業し、大好きだったおじいちゃんとおばあちゃんが泣く泣く廃業にした『ザンティンゼル牧場』を再建することにした『駒場ジータ』ちゃんが、仲間を集めて大奮闘。
……という『設定』になったらしい。ニコとフブキとその知り合いみんなで頑張って考えたそうな。
これから牛とジャガイモ育てるし、やり方は親戚の『駒場さん(シベリアで農業指導経験あり)』が住み込みで指導してくれるし、農業用の重機ないけど従業員が100人くらいいるのできっとなんとかなる!
鋭意従業員募集中!待遇はちょっとだけブラックだけど、人間味あふれるアットホームな職場です!それと牧場の隅のマンホールに近づくと死ぬので決して近づかないでください!
……これで通るのが旭川クオリティである。
「というわけで最初は勇者クマに、勇者シグルドの剣を授与したいと思います!みんな拍手!」
ジータのノリノリな司会進行に合わせて拍手が鳴り響く。
ジータの周りには、シルキーとヴィーヴルがいるし、よく見たらジータの小手がスマホ取りつけた『ガントレット』になっていた。
……アイツ悪魔召喚士になったのかよ……ただでさえ剣士としては相当な腕前っぽいのに。
多分、あいつにとっては人間も悪魔もそう変わらないんだろうな。地底人だし。
「では勇者クマ、来てください」
「はいよっと」
ま、オレは剣を受け取るだけだ。パイプ椅子から立ち上がり壇上に上がる。
「では受け取ってください……私のお父さんでもある『勇者シグルドの剣』を」
いきなり設定増やすなやと思いつつ。受け取る。
「ああ……ありがたく受け取っておく」
革製の鞘に入った剣を恭しく受け取り……なんか不思議な違和感を覚える。
……見たことがある?
「こちらは、私には使えない剣でした。剣に宿る妖精が女を嫌うので……私が使いこなせれば良かったのにね」
……聞いたことがある?
「さあ、抜き放ち、母なる太陽の下で見せてください!その美しき輝きを!」
……抜き放ち、太陽の下で見た時、オレは確信する。
「これは……ジンの剣!?」
「あれ?話したっけ?そうだよ。『勇者シグルド』はね、みんなに『ジン』って呼ばれてんだって。
そうやって愛称で呼ぶのが彼の祖国である『約束の国』での習わしだったからって」
そう、それはいつもジンの腰に下げられていた剣。妖精ヴィヴィアンの魔晶変化武器である『ランスロットの剣』だった。
(これを持ってるとなんか考えがまとまりやすくなる気がするとか言ってた。もしかして、地底を旅したって時か!?)
魔晶変化装備は比較的作り直しが容易だ。同じ悪魔を忠誠上げるだけで作れるのだから。
……いや、違う。
これは間違いなくジンが消えた2年前まで持ってたジンのつるぎだ……そうか、ジンは地底を伝って合法都市から出てたのか……
異界の内部では時間の流れが違う……つまりジータは『ジンの実の娘』でもあるのか。
そう思うと、いきなり色々見え方が変わってくることに困惑する。
ジータは剣はもう渡したからとばかりに、みんなの方を向いていた。
そして、爆弾のごとき宣言をする!
「私たちは、遠い昔、わたしたちが地下に逃げ込む前にあったという太陽の国『ランドソル』にたどり着きました!大勝利です!
ですが、今の地上にはランドソルという国はないそうです!よって今ここに『王位継承権39位だった38代目ぺコリーヌ先王』の意思を継ぎ、
『ぺコリーヌの娘ジータ』として『新生ランドソル大牧場』を建国します!はい!拍手!」
歓声が上がり、拍手が鳴り響く。ザンク民は普通に喜んでるし、他の住人も面白イベントで笑いながら拍手している。
「ふざけんなよ地底人!この期に応じてノリと勢いで改名とかバカか!?」
「てめえらのノリと勢いに振り回されるこっちの身にもなれよクソ地底人!?」
アホほど書類に振り回された二人がブチギレしてるのを除いて。
え?という困惑の空気が起きたと思った、その時だった。
「ふっ……なるほど。旭川こそが君たちにとっての『約束の国』だったというわけだ。ならば認めないわけにはいかないな?カーナ」
「そうね。素晴らしいわ。応援してる!……というわけで、ニコとフブキは事務処理、お願いね?」
ダードとカーナが『賛成』に回った。嫌らしい笑みを浮かべながら。
旭川の支配者直々の『お墨付き』が出た。それはもう旭川では『決定事項』ということである。
「クソ親父!?裏切ったな!?ボクたちの苦労を裏切ったんだ!」
「速くコイツら引退に追い込まないとこっちが過労死するわ!?ニコ!全力で行くぞ!」
その決定に、ニコとフブキがブチ切れた。なんだアイツら、結構ガキだったんだなって……あー。まあ、アレだ。
人間、結構大人と子供の境目は曖昧なんだなと思った。頑張ってくれ。所詮はオレらにとっては他人事だから。
そう思いながらオレたちはバカみたいに拍手をし続けた。腰に『ジンのつるぎ』を下げたまま。
ヨシ、奇麗に落ちたな!
というわけで色々設定出しつつ、次回からポルノの札幌編です。