(行ったところから目を反らしつつ)
なんかこう、色々あったけど、ついにわたしは、札幌最大の観光地を訪れた。
「ここが……ススキノ」
札幌最大の歓楽街。ススキノ。すなわち。
「アダルトとエクストリーム趣味の聖地。北海道一のエロの街」
ジェイルハウスのエロい人曰く、ススキノのアダルト製品は『スゴイ』らしい。
割と娯楽には乏しい旭川とは比べ物にならない。毎週ススキノまで行って色々買ってくる転売ヤーまでいるとかどうとか。
それを聞いていたから、わたしは楽しみにしていた。このアダルトの聖地をめぐることを。
えっちアイテムの聖地!何故かカーナは行くの嫌がったから行けなかったけど、今ならいける!
そう、今日から自由行動!なのでえっちアイテム買い放題!お土産としてクマとキラキラの分まで買っていかねばならないので、買うものが多い。
「というわけで護衛頑張ってね。処女と痴女」
ついさっき雇った処女と痴女に声を掛ける。わたし一人では持てる量に限界あるし、エンヴィーは荷物持ちできない。
……冷めたピザ1枚で雇ったと思えば、まあお得だ。今夜はちょっと謎の悪霊と殺し合いすることになりそうだけど。
「もうその呼び方で固定なんですね……いや、もういいです。どうせ名前出すのもアレですし処女呼びで。ああ、洗い立ての服気持ちいいなあ」
処女は洗濯仕立ての奇麗になった服を着て、遠いところを見ていた。目に光がない。ちょっときつめにレ〇プされた子みたいになってる。
まあ、あとでプラグかパールくらいは買ってあげよう。お尻の良さはいまいち分かんないけど、セーヘキって人それぞれだし?
「荷物持ちをすることに異論はありませんが……痴女って呼び方は辞めてください!」
処女から言葉の意味を聞いたらしい痴女が顔真っ赤にして抗議してくる。
「でも痴女じゃん。合羽の下にエロ鎧とか完全に痴女じゃん」「うぐっ!?」
うるさいので反論したら、普通に黙った。
痴女は今、下のコンビニで適当に買った透けない素材の雨合羽を着ている。
雨以外への防御力は全く期待できない奴だけど、まあ下のデモンズスキン隠すのには向いてるのでセーフ。
……雨合羽脱いだら一気に実質ボンテージなデモンズスキンなのもポイント高め。
ちなみにコイツの武器は『ミズチウィップ』だった。一度に複数攻撃できるし遠くまで届く。魔晶変化武器としてもかなり高位のガチ装備だ。
くるくる巻いて腰につけると、一応雨合羽で隠せるのもポイント高い。合法な感じだ。
本当は青かったんだけど殺された被害者の血を吸いすぎて真っ赤になってるってのもいい。
痴女は普通に剣とか槍のが得意だけど、こう、雇い主の意向だったのと、振り回すうちになんか使いこなせるようになったらしい。
痴女。やっぱり才能あるよ……ミナミにはスゴイSM倶楽部とかあるから、学んできなよ。
鞭でシバかれるのは嫌だけど、目の前で殺す勢いって言うか本当に殺しちゃうSMショーはちょっとだけ見たい。
多分、コイツが飼われてた闘技場は、そういう嗜好だったんだろう……ちょっとだけ、分かる。
そして私の今日のコーディネイトは、合法的なガチ装備だ。
身体をぴったり覆うボディースーツに、いつもの包帯風メタルターバン。手にはふわもこ手袋に見えるにゃん2クロー。
足元には軽快に動き回れるローラーブレードをつけて腕にはジンから貰った呪殺を防ぐ腕時計。
これで精神と魔力、呪殺を防ぎつつ素早く動ける『ワクワク☆サマナーいくせいけいかく ーおんなのこへんー』推奨の組み合わせだ。
更にその上からスカートだのコートだの着れば、外見はすっかり防寒対策ばっちりの秋葉系不思議ガールスタイルというわけだ。
流石にアールズロックは置いてきた。目立ちすぎるので。
というわけで、今のわたしは合法にエロアイテムを買える。なんならお金だって札束で持ってきた。
貯金だって旭川でのお仕事で稼いだ云千万円。なんかニコやカーナからの依頼受けてるとすごい勢いで貯まる。
悪魔業界人としてはきつい仕事多めなので稼げてるらしい。
まあ悪魔業界って装備が良いのはめっちゃ高いから、すぐ消えるけど。
というわけで、いまのわたしはエロアイテムを買い求める女!
というわけでジェイルハウスのエロい人から聞いた名店『ススキノ花街』に行き、商品を見る。
……スゴい。旭川とはラインナップが違う。首輪だけでもサイズ違いと素材違いで20種類くらいある。
そのことに感動しながら、色々買う。むろん、気配りも忘れない。処女向けにプラグ、痴女向けに荒縄、そして二人両方にローターを買う。
きっと喜んでくれるはずだ。
というわけで、お会計。
「これ全部。よろ」
「売れません」
……え?なんで?
「なんで?」
「えっとね、君いくつかな?」
尋ねられたので、答える。
「16歳」
「ああ、見た目よりは歳行ってるんだね。でもダメ」
「どゆこと?」
年齢?どっか関係が……あ。
「最近、こうメシア教会から『子供にエロアイテム売るな特に業務用コンドーム』ってお達しが来ててね。18歳以上でないと売れないんだ。なので16歳には売れません」
「……さっきのはうそ。わたし、18歳、だよ?」
女が歳を誤魔化すのはセーフなはず。カーナだって初めてのお客さんとかに聞かれたら40歳とか平然と嘘つくし。
「そっかそっか。帰れクソガキ」
……バレた、だと?
どうする?どうすればいい?
……そうだ!わたしは後ろでなんか顔赤くしながら商品見てる処女と痴女を見る。
わたしの視線で、大体察したらしく、顔をそらされた。だが、聞く。
「処女、何歳?」
「わ、私は15歳です!なので買えません!」
ちっ、所詮は見た目通りの処女か。使えない。だが、本命は別にある。
わたしは明らかに色々デカいしガキには見えない痴女を見る。
「痴女、何歳?」
「……22歳です」
よくやった痴女!護衛ポイントを上げよう。
「よし、買ってこい!」
「くっ……まさかこんなことになるなんて」
ぷるぷると震えながらわたしの札束を受け取り、お会計。
「……ふふふ。なるほど雨合羽の下にボンテージ。古典ですがそそられるチョイスです。
露出と嗜虐ですか『アダルト』に加えて『エクストリーム』まで持っているとは、まさにエロの化身!痴女オヴ痴女ですね!」
さ、流石はプロ!一瞬で痴女の性癖を見抜いてきた!?
「……いっそ殺して……」
悪魔業界ではそれ言うと大体死ぬよりひどい目にあわされるから、言わない方がいいと思うよ?
というわけで買った荷物は全部カラジョルジョに送ってもらうことにして、店を出る。
そして、二人にとっておきのプレゼントを渡す。
「こ、こんなの貰ってどうしろと言うんですかぁ!?」
ピンク色のイチゴみたいなのと卵みたいなの抱えてぷるぷる震える処女。
「……縄の方はある意味では『実用品』ですから、ありがたくいただきます……もう片方は、捨てていいですか?」
「ダメ」
ダメです。人からのプレゼント捨てるとかどういう教育受けたんだ。
というわけで痴女に買ってあげたリュックに二人へのプレゼント入れて、次の店に行く。
「ここは……た、確かに女の子なら気になりますね」
「日本は、豊かなのですね」
ランジェリーショップだ。全体的に実用的だけど、デザインいまいちな下着しか売ってない地元旭川とは違う、豊富なラインナップ。
超おっぱいデカい人向けとか、子供サイズのエロ下着とかはもちろん、カワイイ系とかセクシー系、後ろや前に穴あいてる奴まで下着も色々揃っている。
こっちはさっきのお店と比べると普通の子も多い気がする。年齢制限もないから中学生くらいの子もいる。
(えっと、キラキラのサイズは……)
こっちは主にキラキラから頼まれてる。自分が持ってる下着がいまいち子供っぽいの気にしてるらしい。3サイズばっちり教えられて、色々買ってきてとお金も預かっている。
あとはまあ。
「……処女、痴女。一人3万までなら買ってあげるよ」
「「えっ!?いいんですか?有難うございます!」」
なんかハモる勢いで喜ばれた。
くそう、さっきのアダルトグッズより明らかに喜んでる。
そのことにちょっと不満を覚えつつ、漁りだす。
(セクシー系はマンネリ防止のために3枚、あとは普段のクマにだけこっそり見せるカワイイ系が2枚、あとは……ドレス用のストッキング何枚かとガーターベルト……)
キラキラに頼まれたのを先に片づける。一応依頼でもあるので。
わたしたちがクレジットカード持てないからって、これだけの依頼でお釣りは良いからとか言って『札束』渡してくるのが割とマジお嬢様なんだなって思った。
終わったら、こっちの分を買う。旭川では買えないような紐みたいなのとか、めっちゃ体にぴったり張り付くやつとか、つるつるてかてかしてるのとか、ゴスロリってるのとか。
(クマは、えっちだから……えっちなのの方が喜ばれる)
そういうのをちゃんと知ってるのがわたしだ。この前覚えたてのまだまだおさるさんなキラキラには負けない。
「どれも縫製もしっかりしてるし、デザインも……え?これまさか絹ですか!?下着にこれだけの手間暇をかけるなんて。う、高い。3万円でも高いの買うとすぐに……」
「……私のサイズでもデザインは色々ありますね……ガーターベルト、確かにあった方が……」
処女と痴女も楽しんでいるようだ。3万円以内になるようにめっちゃ計算してる。
そのことに満足しながら、夕方辺りまで下着を物色した……処女と痴女は『消費税』分を忘れて見事に予算オーバーして涙目になっていたので、おまけしてあげた。
なんかめっちゃ感謝された。
*
そしていよいよ夕方。一度ホテルに戻って荷物を置いて代わりに装備をつけたわたしたちは電車に揺られて、街はずれの誰もいない原っぱを目指す。
「ミズコノオウは夕刻、太陽が沈んだ瞬間に私の周りを異界化して現れます。そのとき周りにいた人間を巻き込んで」
「なのでアクリス様と一緒に居れば、ポルノさんも参加は出来るはずです……ですが、よろしいのですか、開けた場所での戦いなど。
いえ、民間人を巻き込まぬよう人気のない開けた場所で戦うのは良いのです。ですが、敵は大量の幽鬼や悪霊を従え人海戦術で攻めてきます。開けた場所は不利では?」
「だいじょうぶだ。問題ない」
そう、処女と痴女から言われたが、気にせず移動しつつ、気になることを聞く。
「で、ミズコノオウって、物理効くんだよね?」
「はい、昨日戦った感じですが、私のヒートウェイブによる斬撃と電撃裏拳による打撃、アクリス様の
「ん、それだけ分かれば問題ない。殺せるーーーさもんタクヒ、カマプアア」
周りに人がいないのを確認して、仲魔を召喚する。今回は体力に不安があるけど、わたしが前衛に出る。
「うおおおおお!うぉれのでばんかあああああああああああああああ!」
「うん、いつもの、お願い」
タクヒには一番大事な仕事がある。
「ワレハ、マタ、壁カ?」
「そうだね。あの手のは呪殺と物理が定番だから」
クマとお揃いの仲魔であるカマプアアにも説明する。
屍鬼、悪霊、幽鬼。俗にアンデッドとか言われてたコイツらは死人が毎日何人も出てた無名地区だと夜になるたびに歩いてるレベルにポピュラーな存在だった。
逃げ遅れた住人が食いつくされて仲間入りも珍しくないくらいに。
そんなわけで対処法は知っている。
「太陽が……沈む」
そして地平線の向こうに太陽の最後の残滓が消えた瞬間、周囲が異界化する。
空には血のように真っ赤な満月。恐らくは交渉は無意味だ。そういう意味だろう。まあどうせ悪魔との交渉なんてする気ないけど。
「……着ました」
処女の言葉と共にのっそりとそいつが姿を現す。
ーーーママぁ……産んでぇ……
頭が異様にでかくて、その下に人間の大人くらいのサイズの身体がついた5mくらいの巨大悪魔。
そいつが姿を見せると同時に、雑多な、だが沢山の悪霊と幽鬼が姿を見せた。
「悪霊や幽鬼はいくら倒してもどこからか湧きますので意味がありません。なんとかして奴を倒さなければ、終わらない」
「あいつらは主に物理と、呪殺、それからバッドステータスの魔法を多用します。動きは鈍いし大した考えはないようですが、数が多い」
昨日の戦いを思い出したのであろう処女と痴女がこわばっている。特に痴女は装備に『呪殺』を無効化させるものがない。
それで3回ほど処女のリカームで蘇生する羽目になったらしい。
「産んで、産んでぇええええええええええええええええええええ!」
わたしたちを見つけたミズコノオウが嬉々として叫び声をあげた。
戦いの始まりだ。
「エンヴィー、子守歌」
「にゃ~ん♪」
最初に動いたのは、エンヴィーだ。子守歌。精神に作用する眠りの歌。
幽鬼、悪霊は神経や魔力は弾くことが多いけど、精神を無効化できるのは殆どいない。
逆に屍鬼だとコレが効かないのが普通だけど。
無数にいる悪霊、幽鬼の取り巻きが何体か眠りに落ちてその場に漂いだす。
まあ、全部は無理だったけど、かなりの数減らせた。で、次。
「汚物はしょうどく!」
アールズ・ロックで弾幕を張る。当たるたびに悲鳴を上げて悪霊どもが吹っ飛んでいく。
アンデッド系は基本的に『火炎に弱い』というのは無名地区では常識だ。
とりあえず、焼け。焼けない奴は大体見た目で分かる。そう言われてた。
よし、前衛は大体片付いたので、本命、行く。
「……タクヒ便の!」
「はいたつでーす!うおおおおおおおおおおおおおおおおお」
わたしの合言葉に反応してデフォで頭おかしいタクヒが全力で突っ込んでいく。
わたしが『タクヒ便』と呼んでるそれは、一撃必殺狙いの大技。すなわち。
ーーー肉弾
タクヒの命が砕ける。ついでにミズコノオウの頭も砕ける。大体の敵はこれで死ぬほどのダメージを与えられる。
無名地区にはこれ使うの専門のダークサマナーもいたくらいだ。所詮鳥なのでコンビナート連中にハチの巣にされたらしいけど。
……クマがタクヒを見ると血相変えて『肉弾鳥だ!最優先で殺せ!』って叫ぶのは伊達じゃない。
ぎゃああああああああああああああ!?
ミズコノオウの頭にどでかい穴が開いてのたうち回る。即死まではいかないが、大ダメージ。
あと1発で終わるので。
「痴女!」
「分かっています!」
状況を的確に見て取ったらしい痴女のミズチウィップがうなりを上げてミズコノオウの頭に吸い込まれ、縦に真っ二つにする。
ああああああああああああ……
ミズコノオウが崩壊すると同時に、異界が消えていく。
「こ、こんなにあっさりと……す、すごいですポルノさん!」
何もせずに終わったことに処女が感激の声を上げる。
昨日死ぬほど苦戦したのが嘘みたいとか、大分興奮してる。
そして、異界が消えた後には、なんか尻尾の生えたミイラみたいなのが残されていた。
「……ドロップ品?」
それを拾い上げて、処女と痴女の方を見る。
「恐らく、それが呪いの根源であり、ミズコノオウの依代」
処女がそう言いながら、懐から同じものを取り出す。
「昨日も、倒した後に同じものが残っていました」
それを見て、心底嫌そうに痴女が言う。
「で、これなに?」
わたしの質問に、処女が少しだけ黙った後、その正体を告げる。
「……人間の、胎児のミイラです」
わお、思ったよりばっちいやつじゃん。
わたしはぽいと処女の方に放った。
「わ、ちょっと!?生まれる前とはいえご遺体ですよ!?粗雑に扱ってはなりません!」
なんかいって慌てて受け取る処女。今後は処女に拾わせよう。うん。
そうして終わった後は、身体が冷えたのでスーパー銭湯行って豪遊した。
「ふあああああ……お風呂ってこんなに気持ちいいものだったのですね……」
「アクリス様!あっち!なんかサウナもあるみたいです!行きましょう!」
処女と痴女はこんなデカくて色々あるお風呂初めて見たとか言って最初はおっかなびっくりだったが、すぐに楽しめたようで何より。
わたしたちの観光1日目はこうして終わりを告げた。
敗因:ミズコノオウにはボス属性がなかった